【文徒】2018年(平成30)8月3日(第6巻144号・通巻1318号)

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1)【記事】「週刊少年ジャンプ」とサザンの新曲「壮年ジャンプ」
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】「週刊少年ジャンプ」とサザンの新曲「壮年ジャンプ」

今年デビュー40周年を迎えたサザンオールスターズが創刊50周年を迎えた「週刊少年ジャンプ」8月6日発売の36・37号の表紙に漫画キャラ化されて初登場する。そもそも「週刊少年ジャンプ」の表紙をミュージュシャンが飾るのは50年の歴史で初めてのことである。
しかも編集部による桑田佳祐へインタビューも掲載されるそうだ。ちなみにサザンオールスターズの最新曲「壮年JUMP」。
https://www.oricon.co.jp/news/2116720/full/
https://rockinon.com/news/detail/178559
サザンオールスターズが「勝手にシンドバッド」でデビューしたのは1978年のこと。昭和53年である。私が21歳の時である。そんな私が11歳であった1968年に「週刊少年ジャンプ」が創刊された。小学校では「週刊少年ジャンプ」連載の「ハレンチ学園」の影響でスカートめくりが一大ブームとなっていた。
今から振り返れば「ハレンチ学園」というマンガは、それこそイヴァン・イリイチの「ディスクール政治学」に共振するようなラジカルな思想を秘めた作品であると位置づけることも可能だが、小学生のオレは「ハレンチ学園」を率先して、実践していたクチであった。
イリイチの「脱学校の社会」からは次のような箇所を引用しておこう。
「『学校化』されると、生徒は教授されることと学習することとを混同するようになり、同じように、進級することはそれだけ教育を受けたこと、免状をもらえばそれだけ能力があること、よどみなく話せれば何か新しいことを言う能力があることだと取り違えるようになる。彼の想像力も『学校化』されて、価値の代わりに制度によるサービスを受け入れるようになる」
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488006884
ハレンチ学園」は「学校化」に対する異議申し立てでもあったのである。1968年という時代の気分なしには成立しなかったマンガである。ここでは詳しくは触れないが、創刊期に「ハレンチ学園」とともに「週刊少年ジャンプ」を支えた本宮ひろしの「男一匹ガキ大将」の主人公たる戸川万吉も、言ってみればディスクールが生んだ才能であり、その活躍ぶりは「ディスクールの英雄」と呼ぶに相応しかった。
そんな「ディスクール政治学」に依拠するマンガを熱烈に支持した1968年のちびっこたちにとってサザンオールスターズは同時代のロック(=音楽)であった。そのサザンオールスターズが「週刊少年ジャンプ」の表紙を飾るというのは、私のような「週刊少年ジャンプ」創刊世代からすれば歓迎すべきことではあるが、今の10代にとってサザンオールスターズは果たして同時代のロックと言えるのだろうか。それこそサザンオールスターズの新曲ではないが50年の歳月を経て、「週刊少年ジャンプ」という雑誌の本質が「週刊壮年ジャンプ」に変化してしまっているのだとしたならば、私たちはどのような雑誌の未来を覚悟すべきなのか。いずれにしても私のような「壮年」が「週刊少年ジャンプ」36・37号に飛びつくのだろう。
サザンオールスターズのリーダーである桑田佳祐は私よりも2学年上の現在、62歳である。サラリーマンであれば定年は、とうに過ぎている。

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2)【本日の一行情報】

◎「帝国の慰安婦」(朝日新聞出版)の朴裕河が「帝国の慰安婦、法廷での1460日」「帝国の慰安婦、知識人について語る」の2冊を上梓した。日本では朝日が刊行するのだろうか。
「著書『帝国の慰安婦』で、元慰安婦の名誉を傷つけたとして起訴され、昨年10月の控訴審で罰金1千万ウォン(約100万円)の逆転有罪判決を受けた韓国の朴裕河(パク・ユハ)・世宗大教授がこのほど、法廷でのやり取りや朴教授を批判した専門家らへの反論などをまとめた書籍2冊を出版した」(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASL7Z3JWZL7ZUHBI00N.html
私にとって朝日新聞出版から刊行された「帝国の慰安婦」が不満なのは韓国語版の翻訳ではなく、日本語で書き下ろされた日本版であるという点である。

◎後藤広喜の「『少年ジャンプ』 黄金のキセキ」(ホーム社)は紛れもない名著である。それだけに後藤と鳥嶋和彦の激突対談を読んでみたいと思うのは私だけだろうか。
https://ddnavi.com/review/475935/a/

◎「AbemaTIMES」が「月刊『ムー』編集長・三上氏、『死体が蘇って、人間を襲うのはありえる』」を掲載している。私からすると三上の語っていることは嘘八百に過ぎないのだが、私には「ムー」を笑い飛ばせない。なぜなら学研プラスが擁する月刊「ムー」編集長の三上丈晴が語っていることと麻原彰晃を教祖にしたオウム真理教の信者が信じていたことの間にさしたる隔たりはないと私は考えるからだ。麻原彰晃をデビューさせた「ムー」は麻原が死刑になろうとも健在なのである。
https://abematimes.com/posts/4653611

百田尚樹のツイート。
「菅野完氏と山口敬之氏、マスコミの扱い方がまるで違うな」
https://twitter.com/hyakutanaoki/status/1024474533669953537

◎「リアルライブ」が「乃木坂46最年少・岩本蓮加、“不適切発言”で炎上? 欅坂46ファンも巻き込む騒動に発展」を掲載した。問題となっているのは「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)の公式ホームページ上にアップされた岩本蓮加の動画である。
「事の発端となったのは、30日に発売となった雑誌『週刊ビッグコミックスピリッツ』35号(小学館)の表紙撮影のメイキング動画。『スピリッツ』初登場で表紙を飾った岩本だったが、その撮影中、スタッフとの談笑の中で乃木坂と同じく秋元康プロデュースグループの欅坂46の名前を挙げつつ、不適切な差別用語発言があったのではないかとネット上で話題になっている」
https://npn.co.jp/article/detail/28506679/
ソーシャルメディアで指摘があったことを踏まえてのことなのだろうが、現在、問題となった箇所は削除されている。しかし、問題になる前に削除できなかったことが大問題なのである。「編集者」の名刺を持つ以上は最低限の人権意識を持ってもらいたいものである。ニッポンの記者や編集者はポリコレ感度が低過ぎるのだ。

KADOKAWAは創刊10周年を迎えた「角川つばさ文庫」は、夏休みスペシャル企画として、「毎週10冊 角川つばさ文庫無料読みホーダイ!」を8月28日(火)までの期間限定でスタートした。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000004821.000007006.html

楽天は7月27日開催の取締役会において、ぐるなびは、7月30日開催の取締役会において、両社の間で資本業務提携契約を締結することを決議した。楽天は、ぐるなびの発行済株式総数比 9.60%の株式を取得する。楽天は第2位の株主となる。
https://corp.rakuten.co.jp/news/assets/pdf/press/20180730_03_J.pdf
https://corp.rakuten.co.jp/news/assets/pdf/press/20180730_02_J.pdf

橋下徹の指摘に全面的に賛成する。諸悪の根源は夏の甲子園なのだ。プレジデント社の公式メールマガジン橋下徹の『問題解決の授業』」(7月31日配信)でこう述べている。
「甲子園はこれまで徹底的に球児の青春物語を中心とする『きれいごと』ばかりを強調してきた。その結果、高校野球や学校スポーツの世界で蓋をされてきた『負の問題』が何も解決されずに放置され、今それが爆発し始めているのではないか。最近大きな話題になった、日本大学のアメフトタックル事件や、女子レスリング日本代表のパワハラ事件の問題の根っこも、結局高校野球の甲子園大会にあるように思えてならない」
https://president.jp/articles/-/25735

◎日本ABC協会では、「雑誌発行社レポート(冊子)」で、Webの数値を半期ごとに発表していたが、いよいよ協会ホームページ(URL:http://www.jabc.or.jp/web_2018_2q)で、発表頻度を四半期にして、公開することになった。参加20社70サイトの中には、初の試みとして「ハピプラワン」(集英社)や「ゲキサカ」(講談社)といった、出版社の印刷版がないWebメディアも含まれている。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000036200.html
大手出版社で言うと小学館の媒体が加わっていない。小学館は「NEWSポストセブン」も「@ダイム」も「MERRY」もエントリーしていないのである。またマガジンハウスも不参加である。
それにしても「HAPPY PLUS」の会員数が51.7万、自社UU数が797.8万、自社PV数が1億5262万という数字は凄い。

◎学研プラスは、「第2回 小学生のための国際理数コンテスト」を、8月5日に東京ビッグサイトタイム24ビルで開催する。日本、香港、タイ、マレーシアから10歳〜12歳の小学生、計77名15チームが5人1組のチームで参加する。
https://edtechzine.jp/article/detail/1231

外山滋比古の「思考の整理学」を始めとして、発掘ベストセラーは筑摩書房お家芸である。2008年に刊行した菅野仁の「友だち幻想 ――人と人の〈つながり〉を考える」(ちくまプリマー新書)が2018年になってからの7カ月間だけで24万5,000部の重版がかかり、7月30日の28刷によって累計発行部数が30万部を突破した。又吉直樹日本テレビ系列「世界一受けたい授業」で紹介したのが切っ掛けとなったようだ。
https://www.atpress.ne.jp/news/162410

ファミリーマートと、日販の100%子会社で全国のグループ書店を統括するNICリテールズは、書店一体型店舗の出店など新業態の展開に向けた包括提携契約を締結した。
この提携に基づく第1号店として、日販グループである積文館書店との一体型店「ファミリーマート積文館書店三日月店」を8月2日(木)7時に開店した。
CVSエリアと書店エリアの間仕切を無くし、レジも一か所に集約することで、利用者が自由に店内を行き来し、CVS商品と本を一緒にゆっくりと選べるようにし、書店エリアには、カフェスペース(18席)を設けている。カフェスペースとは別にイートインスペース(11席)も設けられている。24時間営業!
http://www.family.co.jp/company/news_releases/2018/20180801_01.html
https://www.nippan.co.jp/news/fm_sekibunkan_20180801/
言ってみればコンビニの小型ショッピングモール化であろう。

◎「週刊少年サンデー」(小学館)で1997〜2006年まで連載されていた藤田和日郎の「からくりサーカス」がテレビアニメ化され、10月よりTOKYO MXBS11などで放送される。
https://mainichi.jp/articles/20180731/dyo/00m/200/022000c

講談社の幼児誌「たのしい幼稚園」で2017年5月号、2018年5月号と、2年連続完売した付録「きせかえクローゼット」が現在放映中の「HUGっと!プリキュア」はもちろん、
キラキラ☆プリキュアアラモード」、さらに初代プリキュア「ふたりは プリキュア」の3シリーズのプリキュアで遊べるスペシャルな仕様のムックとなって発売された。価格は1600円(税別)。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001812.000001719.html

マイナビはビジネスニュースメディア「NewsInsight」を8月1日に創刊した。
https://biz.news.mynavi.jp/list/about
https://biz.news.mynavi.jp/articles/-/1844

MERYは、女性向けメディア「MERY」で培った知見やアセットを活かして顧客企業の総合的な課題解決を目指すコンサルティング事業を開始する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000029212.html
MERY」をプラットフォーム化するという方向性もあるはずだ。「MERY」のもとに小学館の擁する女性誌を母胎としたウェブメディアも結集してしまうというアプローチである。私であれば、この可能性を模索する。

◎「LINEマンガ」は、集英社のマンガ誌「マーガレット」「別冊マーガレット」「ココハナ」とコラボを行い、オリジナルマンガ作品を公募するマンガ賞「集英社少女マンガグランプリPowered by LINEマンガインディーズ 2018summer」を開催している。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001188.000001594.html

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3)【深夜の誌人語録】

常識は非常識の金城湯池にほかならない。