【文徒】2018年(平成30)8月13日(第6巻150号・通巻1324号)

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1)【記事】「その出版社、凶暴につき 情報センター出版局クロニクル」に注目!
2)【本日の一行情報】
3)【人事】セブン&アイ出版 7月30日付人事異動

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1)【記事】「その出版社、凶暴につき 情報センター出版局クロニクル」に注目!(岩本太郎)

「note」で先月下旬から「その出版社、凶暴につき 情報センター出版局クロニクル」と題した連載が継続中だ。筆者は匿名の「古き良き時代のノンフィクション書籍編集者」。第1回目の7月23日付のエントリは、こんな書き出しから始まっている。
《1979年、四谷の新宿通り沿いの古びたビルの一室に、
小さな出版社が産声をあげた。
その小さな出版社は、大阪から出てきた一人の男によって立ち上げられ、
およそ一年ほどで、当時の出版業界にその名を轟かせることになる。
男のつくる本がたちまち業界を席巻していった。
――その男の名は、H山K須也。
男の興した出版社は、情報センター出版局》
https://note.mu/eden_rrr/n/n98521b9a4f45
「H山K須也」とは言うまでもなく同出版局から椎名誠の『さらば国分寺書店のオババ』や村松友視『私、プロレスの味方です』、藤原新也『東京漂流』などのヒット作を送り出し、例えば椎名の本に「A出版社の男」などといった異名で登場する星山佳須也のことだろう。後に自ら立ち上げた同出版局を去り、四ツ谷で三五館(昨年秋に事業停止)を設立した人物でもある。
連載は《毎週土曜日更新予定》で始まったものの《実質はもっと多い不定期更新》とテンションも上がりまくりの様子。8月10日までで既に6回に渡って続いている。その6回目の「下部構造が上部構造を規定する」と題された項では、今から34年前の1984年4月に大学新卒の編集者として同出版局に入社した筆者が、早々から倉庫作業などの出版社の基礎を仕事を通じて叩きこまれる以下のような描写が印象深い。
《朝は9時半始業。午前中はスリップ数えと電話番(おもに書店からの電話注文を受ける)。昼メシを挟んで午後は倉庫で出荷。たいていの場合、途中に夜メシも挟んでまた出荷。夜の8時か9時にようやく出荷が終わった後は、四階の事務所に戻り、日報のようなものをB5判のレポート用紙一枚分ぎっしり書いてO営業部長に提出。会社を出るのは毎日夜の10時過ぎ(時には終電ギリギリ)だった。最低でも一日12時間かそれ以上の労働――。
これが新入社員である俺たちの一日である》
《このときの体験が俺たち(少なくとも俺)の精神にもたらしたものは身体の芯にしみいる根深い感慨のようなものであった、といまになってみれば思う。ひとことで言ってしまえば、一冊の本を「つくって売る」ということにまつわる原体験である。この原始的な原体験があるとなしでは、のちに「編集者」としてつくる本の、その「質」自体が変わっていたのではないか。倉庫での搬入・搬出、出荷の作業といういわば下部構造の原体験が、本づくり(編集)という上部構造を規定するのである。大げさな言い方をすれば、そういうことだ》
《もちろん、これらはすべてH山局長の方針によるものだった。重版の搬入の際には、H山局長自ら率先して搬入を手伝っていたこともある。
栗本慎一郎いわく「現代をリードするソーソーたる執筆陣を擁して出版業界に大旋風を巻き起こしている原爆的張本人」であり、会社のトップでありながら、時には汗まみれになって社員の先頭に立ちパレットに山積みの商品を倉庫に搬入する男、それがH山局長という人間であった――》
https://note.mu/eden_rrr/n/n93b69d385425
筆者の「古き良き時代のノンフィクション書籍編集者」は自らの名前は明記していないが、プロフィール欄に記載された過去の担当書名からすると、同出版局の編集者だった田代靖久であろうか? 10年前の「ほぼ日刊イトイ新聞」のコラム「担当編集者は知っている。」に、西牟田靖『誰も国境を知らない―揺れ動いた「日本のかたち」をたどる旅』や城戸久枝『あの戦争から遠く離れて―私につながる歴史をたどる旅』を編集者として手掛けた田代靖久による手記が載っていた。
https://www.1101.com/editor/2008-10-03.html
https://www.1101.com/editor/2007-08-31.html
ちなみにこの「古き良き時代のノンフィクション書籍編集者」はTwitterでは「エデンRRR」の名前でアカウントを持っており、ここで私(岩本)の近著『炎上! 一〇〇円ライター始末記』を橘玲の『80"sエイティーズ』と共に《この当時もっとも勢いがあった出版社はいずれも四谷界隈にあったことが知れてじつに興味深かった》と評価してくれていた。
https://twitter.com/EDEN_RRR/status/971584545299427329
しかもさらに嬉しいことに私のツイートに対してこんなリプも。もしかして拙著が呼び水のようになったのだとしたら実に光栄なことだ。
《フォローありがとうございます。凶暴もお読みいただき恐縮です。赤石さんも星山さんも、あの時代の人はとんでもないパワーがありましたよね。貴著作を読んで親近感を憶えました。三五館倒産もあり、ちゃんと書いておかねばとの思いからNOTE始めた次第です。こちらこそよろしくお願いいたしします。》
https://twitter.com/EDEN_RRR/status/1026638581484281857
往時の活力にあふれていた出版業界の舞台裏を描く書物が今後もさらにまた続いて出ていくことになるのかもしれない。
ちなみに田代靖久は、出版人で一時期ライターをつとめていた田辺英彦同様に今井照容の大学時代の後輩。今井の悪い影響を受けないで良かったと思うよ、いや、本当に。
なお、その事業停止した三五館のほうはというと、現在でも検索すると「三五館シンシャ」というサイトが(確か以前と同じURLのまま)出てくる。代表取締役中野長武による「社員数だいたい1名」の会社で、昨年12月7日付で設立されたという。
http://www.sangokan.com/
そしてここでもまた「倒産する出版社に就職する方法」と題された連載が、今年5月9日の第1回以来、既に21回に渡って続いている。三五館シンシャの設立の舞台裏話に混ざる形で、筆者が2000年に四谷の三五館を訪ね、「H社長」の面接を受ける場面も出てくる。
http://www.sangokan.com/%E9%80%A3%E8%BC%89/
上記「note」と併せて読みながら、お盆休みに出版界の遠い過去と近い過去を顧みるのもよいだろう。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

日経BP日経ビジネス アソシエ』が8月10日発売の9月号限りで休刊。同日に公式サイトほかで《読者の皆さまには突然のお知らせとなり誠に恐縮ではございますが》と、編集長の米田勝一が発表。
https://www.nikkeibp.co.jp/associe/
https://www.facebook.com/nikkei.associe/posts/2112667472078912
ITmediaビジネスONLINE』が「『日経ビジネス アソシエ』休刊 ネット上で別れを惜しむ声」を掲載している。
《休刊を受け、Twitter上では「『手帳特集』を見られなくなるのは残念」「寂しい」「残業しなくても結果を出せるようになったのは、この雑誌のおかげ」「一つの時代が終わった」――と別れを惜しむ声が相次いだ》
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1808/10/news086.html

電通は9日開催の取締役会で、2020年1月を目処に純粋持株会社体制に移行することについて検討を開始する決議をしたと同日発表。現在の電通を事業会社と純粋持株会社に分離のうえ、分離後の事業会社と既存の国内事業会社を、海外では電通イージス・ネットワーク(DAN)を純粋持株会社の下に配置することを基本に、具体的なスキームなどの検討を今後行っていくという。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2018083-0809.pdf
『Japan In-depth』編集長の安倍宏行がこんなツイートをしていた。
持株会社があるから、法令順守できるわけでもない。全ては経営陣が改革を行う意思があるかどうかだ。定時に帰りなさい、などというのは改革でも何でもない。企業風土を本当に変えることが出来るのかが問われているのだが》
https://twitter.com/senorbarba/status/1027692092477210625
電通が発表したリリースには次のように書かれている。
《ダイナミックな市場と顧客の変化を適時的確に捉え、当社グループが持続的な成長を維持・強化していくためには、変化に直面する事業部門に対し権限委譲を進めるとともに、適正な統治の仕組みを確立し、組織全体の一体性とコンプライアンスの双方を確保する必要があります》
純粋持株会社体制への移行は電通イージスネットワークの適切なるアンダーコントロールが最大の狙いなのではあるまいか。

電通の2018年度上期(1〜6月)累計期間連結決算。前年同期比では収益が8.6%増、売上総利益は8.1%増、調整後営業利益は1.8%減。国内ではデジタル領域での増収や受注案件の増加が寄与したが、労働環境改革推進に伴うコスト増が作用した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2018/0809-009588.html

博報堂・大広・読売広告社の7月度単体売上高。インターネットは三社とも前年同月比でプラス成長だ。
http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1620920

カドカワの2019年3月期・第1四半期決算。売上高が前年同期比0.6%減の496億3100万円、営業利益が49.5%減の3億9900万円。純利益は3億6800万円(前年同期は2300万円の赤字)。ドワンゴniconico」のプレミアム会員数は6月末までの3か月間で7万人減。サービス改善への投資もありWebサービスセグメントの営業赤字が4億1100万円と、前年同期のマイナス7200万円から拡大した。
http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?template=ir_material_for_fiscal_ym&sid=51584&code=9468
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1808/09/news107.html

◎一方で「niconico」のドキュメンタリー配信企画「ニコニコドキュメンタリー」は今年12月に初開催される「東京ドキュメンタリー映画祭」の協賛につくそうだ。映画・テレビ。ネット動画の枠を超え、参加費無料。参加資格も不問(年齢、国籍、性別、個人、グループ、プロ・アマを問わず)という映画祭だ。
http://itlifehack.jp/archives/9886666.html
http://webneo.org/festival

講談社コミック誌『NEMESIS』も9日発売の第41号限りで休刊。2010年に『月刊少年シリウス』の別冊として創刊されていた。連載中の作品のうち「ベアゲルター」(沙村広明)は『月刊少年シリウス』へ、「後遺症ラジオ」(中山昌亮)ほか5作品は「コミックDAYS」に移行する。
http://shonen-sirius.com/
http://news.nicovideo.jp/watch/nw3742125
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001825.000001719.html

◎ZUUは昨年11月号限りで休刊としたマネー雑誌『ネットマネー』を『NET MONEY』として8月21日に発売の10月号より月刊誌として復刊させると発表。 復刊記念特集として「ZUU online」上で8月15日より復刊号の一部を特別公開する。
https://zuu.co.jp/news/detail/id=507
ZUUを創業した富田和成は野村證券の出身。
https://zuu.co.jp/company/message/
http://tomitazuu.com/archives/548

小学館『Precious』は7月31日にLINE公式アカウントを開設した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000102.000013640.html

集英社YouTube上に『週刊少年ジャンプ創刊50周年公式チャンネル』を10日に開設した。連載漫画作品のテレビアニメを公開・アーカイブするもので、『キン肉マン』『北斗の拳』『SLAM DUNK』『幽☆遊☆白書』など過去のレジェンド級から現在連載中の作品まで80タイトル以上を今後配信する。
https://www.youtube.com/jumpchannel
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1808/10/news077.html

◎その『週刊少年ジャンプ』の表紙を先頃飾って話題を呼んだサザンオールスターズが、今度は9月10日発売の『文藝春秋』10月号に「大特集」で登場するらしい。
https://www.musicman-net.com/artist/77993

八重洲ブックセンターが9月8日から10月8日までの1カ月間、「開業40周年記念祭」を開催する。
http://www.yaesu-book.co.jp/events/other/14479/

東京医科大学の女子受験生減点問題をめぐる報道の中で、一部のメディアに間違って自校の写真を使われた東京医科歯科大学が「メディアへの対応と要望」を8日に公式サイトに掲載。
《「東京医科大学」が女子受験生の入試得点を一律で減点していたとする問題を報じたメディア(Japan Today、Financial Times、Newsweek)の記事内に、誤って本学(「東京医科歯科大学」)の写真が掲載されていたことが判明しました。本学では直ちに当該メディアに対して写真の誤用を指摘し、厳重に抗議のうえ削除要請をいたしました。残念ながらまだ修正がなされていないメディアもあり、迅速な対応を望みます。このような事態は、本学及び本学関係者の名誉を著しく傷つけるものであり、許されざることであると強い憤りを覚えます。マスコミ各社には2度とこのような誤報がないことを強く要望いたします》
http://www.tmd.ac.jp/news/20180808_1/index.html
https://rocketnews24.com/2018/08/09/1101346/
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1808/09/news063.html

◎東京MXは「番組『ニュース女子』の『沖縄基地反対運動特集』に関する当社見解」を10日に発表。BPOからの意見・勧告を受け止め、再発防止策などを講じると共に、4つの「主な反省点」を挙げつつ《沖縄県民をはじめとする米軍基地反対運動に平和裏に参加する方々に上記のような誤解を生じさせたこと、及び人種や民族を取り扱う際に必要な配慮を欠き、辛淑玉氏の名誉を毀損し、多大な苦痛を与えたことに対し》謝罪した。
https://s.mxtv.jp/company/press/pdf/press2018_440001.pdf
蛇足ながらこの件については『週刊金曜日』7月27日号に掲載の拙稿でもレポートした。MXからの謝罪を受け、以後の舞台はDHCを相手に法廷へと移る。
http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/2018/08/10/news-24/

◎8月10日付文徒で報じた「銀座ソニーパークで発売した西畠清順コラボによるバオバブの苗木」は販売中止となった。ソニー企業(株)による告知文は以下。
《一昨日2018年8月9日に開園しましたGinza Sony Park(銀座ソニーパーク)内の店舗「アヲ GINZA TOKYO」(日本緑化企画株式会社)において販売が行われていた商品「星の王子さまバオバブの苗木について、オンライン及びお電話にて様々なご意見を頂きました。
ソニー企業は、「星の王子さま」の長年のファンの皆様の心情を考慮させて頂き、「アヲ GINZA TOKYO」と協議を行いました結果、当該商品の販売を終了して頂くことになりましたのでお知らせいたします。
お客様におかれましては、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。》
https://www.ginzasonypark.jp/info/20180811/
https://www.huffingtonpost.jp/2018/08/11/star-prince-baobabu_a_23500366/
こんなツイートも発見した。
《#銀座ソニーパークださい っていうけど、これ企画した日本緑化企画って日本出版販売の子会社じゃん。一応、本で喰ってる会社が星の王子さま悪用するってソニーよりださくないか》
https://twitter.com/nande/status/1028183317273665536
田中康夫も呟きまくっている。
https://twitter.com/loveyassy/status/1027731208057249792
https://twitter.com/loveyassy/status/1028113279573352448
https://twitter.com/loveyassy/status/1027726813760446464

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3)【人事】セブン&アイ出版 7月30日付人事異動

新井 良一
新:執行役員 販売本部 本部長
旧:執行役員 販売事業部 事業部長

石塚 明夫
新:執行役員 編集本部 本部長 兼 書籍編集部 部長
旧:執行役員 パブリッシング事業部 事業部長 兼 書籍編集部 編集長

田島 尚子
新:執行役員 編集本部 yogaJOURNAL編集部 部長
旧:執行役員 コンテンツプロデュース事業部 yogaJOURNAL編集部 編集長

佐藤 信二
新:編集本部 マーケティング部 部長
旧:パブリッシング事業部 副事業部長 兼 マーケティング部 部長

橋爪 剛
新:販売本部 販売部 部長
旧:販売事業部 販売部 部長

佐藤 洋介
新:販売本部 販売促進部 部長
旧:執行役員 コンテンツプロデュース事業部 事業部長

大森 美緒
新:編集本部 雑誌第一編集部 部長
旧:パブリッシング事業部 雑誌第一編集部 編集長

毒島 由哲
新:編集本部 雑誌第二編集部 部長
旧:コンテンツプロデュース事業部 saita編集部 saitaPULS 編集長

若杉 美奈子
新:編集本部 雑誌第二編集部 編集長
旧:執行役員 コンテンツプロデュース事業部 saita編集部 編集長

小尾 則久
新:編集本部 yogaJOURNAL編集部 マーケティング担当部長
旧:コンテンツプロデュース事業部 yogaJOURNAL編集部 兼 saita編集部 マーケティング担当 部長

藤田 弘子
新:編集本部 マーケティング部 マネジャー
旧:パブリッシング事業部 マーケティング部 副編集長

北田 寛之
新:販売本部 販売部 マネジャー
旧:販売事業部 販売部 マネジャー

小野 尊
新:販売本部 販売部 マネジャー
旧:販売事業部 販売部 マネジャー

上原 聖司
新:管理部 総務担当 マネジャー
旧:管理部 総務・広報担当 部長

肥沼 操
新:管理部 経理担当 マネジャー
旧:管理部 経理担当

宮崎 由美
新:編集本部 雑誌第一編集部 副編集長
旧:コンテンツプロデュース事業部 saita編集部 副編集長

中島 元子
新:編集本部 書籍編集部 副編集長
旧:パブリッシング事業部 書籍編集部 副編集長

宮澤 ひろみ
新:編集本部 yogaJOURNAL編集部 副編集長
旧:コンテンツプロデュース事業部 yogaJOURNAL編集部 副編集長

岸田 朋也
新:デジタル戦略プロジェクト メンバー
旧:コンテンツプロデュース事業部 saita編集部 担当

二階堂 恵
新:デジタル戦略プロジェクト メンバー
旧:コンテンツプロデュース事業部 yogaJOURNAL編集部 兼 saita編集部 マーケティング担当 マネジャー

藤野 準史
新:デジタル戦略プロジェクト メンバー
旧:コンテンツプロデュース事業部 yogaJOURNAL編集部 兼 saita編集部マーケティング担当 副部長

渋谷 敦子
新:デジタル戦略プロジェクト メンバー
旧:コンテンツプロデュース事業部 yogaJOURNAL編集部 yogaJOURNAL ONLINE担当 副編集長