【文徒】2014年(平成26)12月10日(第2巻232号・通巻434号)

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1)【記事】百田尚樹朝日新聞と雑誌ジャーナリズム
2)【記事】ピケティの「21世紀の資本」が店頭に並んだ!
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2014.12.10 Shuppanjin

1)【記事】百田尚樹朝日新聞と雑誌ジャーナリズム

出版社系の週刊誌は、こぞって百田尚樹「殉愛」擁護に回る流れだと「リテラ」は書いている。この問題は「殉愛」批判に回ったほうが記事としては面白くなるはずと考えるのは私だけであろうか。百田本の恩恵に浴したいという利を優先させたということなのだろう。
http://lite-ra.com/2014/12/post-689.html
ところで、朝日新聞出身の団藤保晴が次のように指摘している。これは非常に重要な指摘である。
「朝日の社内で昔から東京と大阪の編集局の体質差を伝えて『東京の傲慢、大阪の野党』と言われます。朝日の社長は東京の政治部と経済部の部長経験者が担ってきました。霞ヶ関の権力取材の中心セクションです。社会部出身者は稀でした。こうした在京マスメディア体質が『傲慢』を生み、一方、権力から遠い大阪編集局は野党精神を発揮した取材に徹してきました」
渡辺新社長は東京編集局長を経験したことがないのだそうだ。団藤によれば「東京を中心にした愚かな権威主義」は朝日新聞の専売特許ではないという。読売新聞にしても、東京から出稿された記事を大阪が紙面化する際に手を加えていることを禁じているそうだ。新聞が「東京の傲慢」から自由になるには、記者クラブ制度を解体してしまうことが一番の早道のはずである。記者クラブ制度は「大本営発表」のためにあるようなもので、もともと非民主的な仕組みなのである。GHQ記者クラブ制度を解体しようとしたんだよね。
http://blogos.com/article/100649/
もちろん、雑誌は新聞に対するアンチテーゼとして存在しているが、「東京を中心とした愚かな反権威主義」に毒されていないか、たまには検証したほうが良いだろう。総ての雑誌が東京発なのだから。冒頭の話に戻るのならば、雑誌ジャーナリズムによる百田尚樹の「殉愛」擁護は「東京を中心とした愚かな反権威主義」であるような気が私にはしてならないのだ。

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2)【記事】ピケティの「21世紀の資本」が店頭に並んだ!

新聞の書評欄を騒がすことになるのは間違いあるまい。遂に店頭に並んだトマ・ピケティの「21世紀の資本」(みすず書房)。本文だけで600頁を超える大著だ。定価は5500円+税。高いけれど話題に引きずられて私も購入。
さすがに一気に読むというわけにはいかない。「資本税」がキイワードらしいことは何となくわかるけれど、読むのは正月休みになりそうだ。一昔前であれば、こういう本の解説を週刊誌がやってくれたものだよなあ。「週刊ポスト」なんか得意技のひとつであった。
http://www.msz.co.jp/book/detail/07876.html
その点、筑摩選書の一冊として刊行された徳川家広の「マルクスを読み直す」はサクッと読める。それでいて刺激的かつ挑発的な内容である。
徳川はマルクスを根底から批判しながら、マルクスの魅力を語ってしまう。徳川が言うように「共産党宣言」と「ルイ・ボナパルトブリュメール十八日」を読めば「今日の日本において国内政治や国際情勢、経済の動態を語る文章がいかに退屈で、そしてその中身の無さの発露であるということがわかる」のは事実だ。著者の徳川家広は徳川宗家十九代目である。
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480016102/
金曜日から竹信三恵子の「ピケティ入門」も刊行されているが、これはオススメできない。竹信は元朝日新聞記者。
http://www.kinyobi.co.jp/publish/publish_detail.php?no=3368
池田信夫の「日本人のピケティ入門」(東洋経済新報社)のほうが断然、優れている。
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51921458.html

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3)【本日の一行情報】

◎「失われた近代を求めて」全3巻(朝日新聞出版)を完結させた橋本治が読売新聞に登場し、「近代文学をそれ以前のものと切り離しては、言文一致体のことは何も見えないと思う」と語っているが、その通りだと私は思った。
http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20141203-OYT8T50013.html
同様にケータイ小説ラノベ近代文学と切り離しては論じられないのではないか。

◎オールアバウトとマーケティングソフトウェアの企画・開発を行うイノーバが業務提携。企業・団体がオウンドメディアを構築して情報発信を行う「コンテンツマーケティング領域」において両社の強みを生かしたソリューションを提供する。具体的に言えば、870名の専門家を抱え、16万本以上の専門性・信頼性が高い記事を保有するオールアバウトのコンテンツ生成スキルと月間総利用者数3,830万人にもおよぶメディア集客力に、サイト構築・SEO対策・アクセス解析などがオールインワンで利用できるコンテンツマーケティングに特化したイノーバのクラウドソフト「Cloud CMO」を組み合わせる。
http://corp.allabout.co.jp/corporate/press/2014/141208_01.html
オールアバウトの大株主は大日本印刷である。

◎ネットは岸田一郎で盛り上がっている。芸能記者は次のように発言している。確かにそうだよなあ。
「今回の騒動でどちらの言い分が正しいのかは分かりません。ですが、岸田さんの“会合で同席したA子さんと意気投合し肉体関係をもった”という旨の主張には、多くの人が首をかしげるのでは? 23歳の女性が、63歳のおじいちゃんを気に入って、ホテルにいくというのはまずありえないでしょう」
http://wotopi.jp/archives/13077
http://lambdach.blog.jp/archives/18265669.html
http://nikkan-spa.jp/761303
http://dmm-news.com/article/901227/
岸田のフェイスブックには次のような投稿が12月7日にあった。
「『「おはようわん!お騒がせしてますが、真実はひとつだそうで、ご主人いたって元気。 これまでどおり、よろしくわん!』」
何にも反省していない「やんちゃシジイ」。干場編集長と一緒に写っている写真を掲げている。
https://www.facebook.com/ikishida?fref=nf

◎「鳥獣戯画」の特別展が東京国立博物館で来年4月28日から開催されることになった。「鳥獣戯画」こそマンガの原点である。
http://www.huffingtonpost.jp/2014/12/07/chojugiga-tokyo_n_6285464.html

◎風の吹かない衆院選で与党が圧勝しそうだが、日共には「そよ風」が吹いているのかもしれない。元公明党副委員長・元運輸大臣の二見伸明が生まれて初めて日共を応援しているようだ。
http://togetter.com/li/754854

資生堂は、企業公式やエリクシール、UNOなどの商品ブランド、グループ事業など国内において現在42のSNSアカウントを展開しているが、これを一つのページに集約させたSNSまとめコンテンツ「SHISEIDO キレイロ」をリリースした。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000237.000005794.html
一般企業は動きが早い。出来はもう一つだが、方向性としては間違っていない。
http://snsmatome.shiseidogroup.jp/?rt_pr=tr234

◎扶桑社が社員募集をしている。
http://www.fusosha.co.jp/news/info/info_article/89

◎映画「図書館戦争」の続編が製作される。弓きいろによるマンガは白泉社から刊行されている。
http://www.hakusensha.co.jp/toshokan/

白泉社の「第3回花丸WEB新人大賞」の投票が始まった。
http://www.hakusensha.co.jp/hanamaru_new/newface/vote/index.html

◎ブラウン管テレビが市場から消える。昭和がどんどん遠くなる。
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20141207-OYT1T50106.html

小沢一郎が落選する可能性が出て来た。
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20141208/plt1412081529004-n1.htm

◎苫小牧の主婦による「かんたん が おいしい」が10万部のヒットとなり、第2弾の「やっぱり、かんたん が おいしい」が初版3万部で新潮社から刊行された。
シロウトとプロの境界線が曖昧化する時代であることが、こうした事例からも理解できる。
http://www.tomamin.co.jp/20141219749

◎エイベックスが保有するKADOKAWA・DOWANGO株を総て売却。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL08HAQ_Y4A201C1000000/
売却益は34億円。

◎eBookJapanのユーザー数が100万人を突破した。累計販売冊数は約4400万冊。一人当たり約44冊購入していることになる。累計販売ランキングで男性マンガの第1位は「静かなるドン」、第2位「進撃の巨人」、第3位「ゴルゴ13」。女性マンガは第1位「ちはやふる」、第2位「のだめカンタービレ」、第3位「天は赤い河のほとり」。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1412/08/news081.html
電子マンガ市場が急成長していることは間違いない。

◎ノルマンディー上陸作戦に参加した米軍兵士は、ノルマンディーの人々からはセックスに飢えた荒くれ者と見られていた。メアリー・ルイーズ・ロバーツが「What Soldiers Do: Sex and the American GI in World War II France(兵士らは何をしたのか:第2次世界大戦中のフランスにおける性と米兵)」を6月に刊行予定だとAFPが伝えている。
「米兵たちは、女性を見れば既婚女性でさえ公然とセ ックスに誘い、公園、爆撃を受けて廃墟と化した建物、墓地、線路の上など、街中いたるところが性行為の場となった。しかし、全てが両者の合意のもとで行われたわけではなく、米兵によるレイプの報告も数百件残されている」
http://www.afpbb.com/articles/-/2946474

◎「東洋経済オンライン」によれば、ニューヨークタイムズはアマゾンについて、こう書いている。
「もっとも、アマゾンは何かと謎の多い企業だ。そこで別の解釈をしてみよう。すなわち、アマゾンの生態系に多くの顧客を取り込むために、主力製品の売り上げを意図的に減らしている──音楽や映像、電子書籍を無料もしくは無料に近い価格で提供している──のではないか」
http://toyokeizai.net/articles/-/55320

JR東日本中央線快速で「Amazonトレイン」が走っている。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1412/08/news148.html

◎「シングルマザーの貧困」(光文社新書)の水無田気流が「ウートピ」でインタビューに応じている。
「シングルマザーは8割以上が就業しているのに、貧困率は5割を超えます。だから、必要なのは就労支援ではなく、就労によって貧困から抜け出す支援です」
http://wotopi.jp/archives/13089

集英社が創刊した「ダッシュエックス文庫」が好調のようである。アニメイトの販促部担当者によれはせ「はてな☆イリュージョン」が一番人気だそうである。
http://www.crank-in.net/game_animation/news/34171

クエンティン・タランティーノは本当に趣味が良い。タランティーノとロンドンの情報誌が「第2次世界大戦映画ベスト50」を発表した。1位「炎628」、2位「シン・レッド・ライン」、3位「Uボート」、4位「最前線物語」、6位「地下水道」、7位「戦争のはらわた」、8位「無防備都市」、9位「天国への階段」、10位「火垂るの墓」…だもの。
http://eiga.com/news/20141208/9/
私であればジャン・ピエール・メルビルの「影の軍隊」を「Uボート」あたりと入れ替えてベスト10に入れるだろうけれど。

◎「小悪魔agehaメモリアルBOOK」が主婦の友社から発売される。「小悪魔ageha 」8年間の軌跡を188頁に収めているそうだ。ゼロ年代を知るためには欠かせない資料ともなりそうである。
http://www.fashionsnap.com/news/2014-12-09/ageha-memorial-book/

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4)【深夜の誌人語録】

感性はおっちょこちょいで良いのである。気取ったり、すましたりしていたのでは感性は磨かれない。