【文徒】2015年(平成27)3月23日(第3巻54号・通巻499号)

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1)【記事】楽天が黒船OverDriveを完全子会社化
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】楽天が黒船OverDriveを完全子会社化

楽天は、図書館向け電子書籍貸出サービスを展開する米OverDriveを約4.1億ドル(約500億円)で買収すると発表した。OverDriveは米国、カナダ、英国などを含む約50カ国で、約5,000の出版社が提供する250万以上のタイトルを取り扱い、3万を超える施設にサービスを提供している。
Koboが236億円であったことを思い起こせば、決して安くはない値段だが、それでも楽天は良い買い物をしたと言えるのではないだろうか。楽天KoboOverDrive電子書籍事業においてシナジー効果を期待できる両輪と位置付けることになる。eBook USERは次のように書いている。
楽天Koboが提供していないオーディオブックをOverDriveでは提供していたり、展開地域での補完、つまり、楽天Koboがサービスを展開している欧州やアジア圏でOverDriveの展開を加速したり、あるいはOverDriveが強力な存在感を放っている米国での楽天Koboのブランド強化なども期待されるなど、補完関係にある部分が多い」
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1503/19/news123.html
いずれにせよ、楽天OverDriveを買収することで電子書籍事業の黒字化が見えて来たのは間違いあるまい。相木孝仁常務執行役員は数年以内に「10億ドル(約1200億円)ビジネスに飛躍させていきたい」と語っている。
OverDrive社は図書館や教育機関などからの利用料を主な収入源とするなど収益性の高いサービスを展開し、2014年度はEBITDAが2,500万米ドルでした。OverDrive社が加わることで、2015年の楽天グループの電子書籍事業は、EBITDAベースで黒字に近づく見込みです」
http://corp.rakuten.co.jp/news/press/2015/0319_01.html
OverDriveは日本ではメディアドゥと提携している。OverDriveを介する形で楽天とメディアドゥが協業にについて協議を始める。
「本日、楽天株式会社から米国OverDrive,Inc.の買収に関する発表がありましたが、当社が同社との間で2014年5月に発表した戦略的事業提携による電子書籍事業展開については、これまでの発表の通りであり、何ら変更はありません。
ただし、現在、楽天グループと弊社との間で、今後の電子図書館サービスをはじめとした電子書籍事業展開の協業について協議しており、今後開示すべき事実が発生した場合は、速やかに開示いたします」
http://www.mediado.jp/corporate/1167/
楽天によるメディアドゥの買収があってもおかしくはない。そのうえでメディアドゥと大阪屋を経営統合すれば、全く新しいタイプの取次が誕生することになるのだけれど。

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2)【本日の一行情報】

◎もう一度言っておこう。1年前から大日本印刷紀伊國屋書店で共同事業の検討を重ねてきた結果が出版流通イノベーションジャパンという合弁会社の設立でしかないのか。この程度の提携では、アマゾン、楽天、CCCを凌駕することにはなるまい。それこそ「会議は踊る」に終始してしまう可能性も否定できまい。総ては紀伊國屋書店の決断次第だと思うのだが、社長の高井昌史にその勇気もなければ、度量もないのだろう。楽天に比べると、こちらは亀の歩みだ。
http://toyokeizai.net/articles/-/63798

◎「日経ウーマン」4月号が再発売された。回収措置が取られた4月号は赤い表紙ロゴ、訂正後の4月号は青い表紙ロゴが目印だ。早速、青本を買って池上彰×増田ユリアの「壁ドン!世界史入門」をチェック!
http://wol.nikkeibp.co.jp/article/info/20150318/202481/?ref=top&rt=nocnt

◎「止まった時計 麻原彰晃の三女・アーチャリーの手記」(講談社)の担当編集者は「週刊朝日」の取材に次のように語っている。
「…事件当時は子供だったとはいえ、被害者感情を考慮すれば出版に議論があるかもしれません。ですが松本氏の貴重な証言や本音が吐露されているのは間違いないと思います」
http://dot.asahi.com/wa/2015031800066.html

双葉社が隔月刊で立ち上げた女性ファッション誌「Violetta」(ヴィオレッタ)は「広告局内に新たに新設した『メディアプロデュース部』発のビジネス戦略の一環としての女性誌プロジェクト」なのだそうだ。マイナビニュースは次のように書いている。
「同誌では、百貨店、TV局、レコード会社、航空会社・peachとのコラボレーションや、雑誌の表紙を手掛けるマルチクリエイター・内藤ルネ氏のライセンス事業を行うルネ、および大手ブロガーサイト『デコログ』を運営するミツバチワークスと連携し、大規模なプロモーションを展開。そのひとつとして、第1号の発刊に先駆け、新雑誌のロゴと表紙となる内藤ルネ氏のイラスト“RUNE GIRL”のラッピング飛行機が、航空会社・peachとのコラボレーションにより就航している」
ミツバチワークスが噛んでいることに注目したい。
http://news.mynavi.jp/news/2015/03/19/183/

ブックオフは、連結子会社のB&Hがブックオフの持分法適用関連会社のブラスメディアコーポレーションの全株式を日販に4億8500万円で譲渡する。ブラスメディアコーポレーションは、フランチャイズ加盟店「TSUTAYA」を運営している。日販とCCCの関係は、トーハンセブンイレブンのように切っても切れない関係になったということだ。
http://www.bookoff.co.jp/info/2014%203%2017_jouto.pdf

ベルサール渋谷ファーストで、30蔵元が参加する日本酒イベント「ぴあ日本酒フェスティバル2015 春酒祭」が3月28日に開催される。「日本酒ぴあ」の刊行を記念してのイベントだ。
http://news.mynavi.jp/news/2015/03/19/027/

日本民間放送連盟(民放連)会長の井上弘は3月19日の会見でテレビ番組の「広告付き無料配信トライアル」を、在京キー5局で10月から、PC、スマートホン、タブレット向けに実施すると語った。
http://www.j-ba.or.jp/category/interview/jba101457

ウェブマガジン「フイナム(HOUYHNHNM)」を手掛けるライノが、雑誌「フイナム・アンプラグド(HOUYHNHNM Unplugged)」を3月24日に創刊。年2回刊。
http://www.fujisan.co.jp/campaign/houyhnhnm/
ネットから紙へという流れが加速するとどうなるだろうか。紙だけの雑誌が駆逐される可能性もあるはずだ。出版社は紙からネットへの流れを加速させる必要がある。独力で無理ならば、IT企業をパートナーとすれば良いだろう。

白泉社の月刊ウエブマガジン「Love Silky」から紙のコミックスを刊行開始。マンガはウエブから紙へという流れを確立しつつある。
http://www.hakusensha.co.jp/index.shtml

◎日販が発表した2月の雑誌・書籍・コミック売上動向。雑誌は2.9%減。書籍は2.2%減。コミックは2.2%増。合計売上は前年同月比1.5%減。
http://ryutsuu.biz/sales/h031815.html

◎「週刊文春」は、NHKの看板報道番組である「クローズアップ現代」に「やらせ」があったと報じた。事実なら大スクープである。
http://shukan.bunshun.jp/articles/-/4932
ところが、NHKの森永公紀理事は記者会見で「今の時点でやらせがあったとは考えていない」と「週刊文春」の報道を否定した。東京スポーツは次のような事情通の発言を紹介している。
「文春がNHKに取材をかけた以降に、この担当記者から“事情聴取”を行ったところ、文春に情報提供したブローカーを演じたという男性の素性や、取材時の不審な点が出てきた。NHKとしては文春が偽情報をつかまされたと判断しているようです」
http://www.tokyo-sports.co.jp/entame/entertainment/379219/

学研パブリッシングは2015年「本にしたい大賞」の中止を発表した。
http://gakken-publishing.co.jp/news/201503/20150320.html
いくら何でも中止は早過ぎるのではないだろうか?いい加減なつもりで「文学」に関わって欲しくないものだ。

幾夜大黒堂がブログで、「境界のないセカイ」が、「マンガボックス」で連載中止となったのは、講談社による単行本化が中止になったからと告発した件で、性的マイノリティ(LGBT)の団体「レインボー・アクション」が次のような声明を発表した。
<●この作品の性に関する描写に、他の作品と比べて特段の問題があるとは思われません。
●「性的マイノリティの団体・個人の圧力」という多分にフィクショナルな理由に基づき、表現行為に対して自粛を迫るという行為がもしもあったとするならば、それは人権を守るためとても大切な、表現の自由を抑圧するものだろうと考えます。
●それはまた、「性的マイノリティの団体・個人」を怪物視・あるいは怪物化し、性に関する差別を助長するものに他なりません。
●もちろん、性に関する差別表現に対しては、これからも引き続き闘ってまいります。>
http://rainbowaction.blog.fc2.com/blog-entry-228.html

◎「新・公民連携最前線」によれば、JR桶川駅前の商業施設「パトリア桶川」のリニューアル工事に際して、4階にある駅西口図書館を3階に拡大移転するが、この図書館に隣接して、店舗面積1300平方m程度の丸善が運営する書店と、カフェが入居するそうだ。桶川市は書店を図書館の隣接施設とせず、融合施設として位置づけ、共同スペースを設け、図書館と書店のそれぞれの特徴を活かした利用方法を共同で企画するそうだ。図書館の運営は丸善CHIホールディングス傘下の図書館流通センターが担う。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/tk/20150318/439645/

ベネッセホールディングスは、オンライン講座を提供する教育プラットフォームを擁する米Udemy社と包括的業務提携を締結した。
http://blog.benesse.ne.jp/bh/ja/news/m/2015/03/16/docs/20150316release.pdf

学研教育出版は、小学生向けオンライン英会話用テキスト「しゃべって覚える小学生の英会話Talking Time 1」を1944円で発売。
http://hon.gakken.jp/book/1130424500
QQイングリッシュが提供する「しゃべって覚える小学生の英会話」オンラインコースは1回25分ずつ月8回で月額5,890円+税。
http://hon.gakken.jp/reference/special/tteikaiwa/index.html

◎ルミネが次のような「お詫び」を掲げている。
「この度は、弊社の動画においてご不快に思われる表現がありましたことを深くお詫び申し上げます。今後はこのようなことのないよう、十分に注意してまいります」
http://www.lumine.ne.jp/topics/topics_details.html?article_no=183
ルミネがWebで公開した「働く女性たちを応援するスペシャルムービー」が「男性のセクハラ的な言動がまかり通り、それに主人公が迎合しようとしている(ように見える)内容に非難が殺到」し、炎上してしまったのである。何しろYouTubeのコメント・評価欄で99%以上がダメ出しをしたのである。ルミネは慌てて、この動画の公開を中止してしまった。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1503/20/news077.html
しかし、ルミネ批判がネットから消え去ることはない。
「いつまでもこんな女性蔑視なものを垂れ流して、お咎めなしってことにはしたくないので、私もこんな不愉快な動画をつくるようなとこにお金を落としたくはないが、悲しいことに田舎なので元々ルミネなどないのだ…。
栄えたとこに住んでる人は、ボイコット頑張ってください」
http://pokonan.hatenablog.com/entry/2015/03/20/000637

◎しかし、百田尚樹は次から次に話題を提供してくれる。
「僕の若い頃、ビジネスホテルには100円入れるとエロビデオが見れる機械があった。その100円を入れる穴に針金を突っ込んで上手く操作すると、タダで見れた。だから出張に行くときは針金は必需品だった」
https://twitter.com/hyakutanaoki/status/577846215208890368
「30数年前ビジネスホテルの100円エロビデオを針金を使ってタダで見ていたと呟いたら、『犯罪者!』『最低!』『クズ!』『おぞましさに寒気がする!』『倫理観の欠如した男!』『今すぐ筆を折れ!』というリプを大量にもらった。『人殺し』か『強姦魔』のような非難を受け、罪の重さに深く反省…」
https://twitter.com/hyakutanaoki/status/579180086852612096
いくら退任したとはいえ、百田はNHKの経営委員であったことを忘れてしまっているのだろうか。

◎知英がモデルを務めるファッション誌「non-no」と映画「暗殺教室」がコラボしたショートムービーが公開された。
http://www.oricon.co.jp/news/2050285/full/

KADOKAWAは「セカンドキャリア支援プログラム」という名で実施しようとしているリストラの締め切りを3月20日から4月10日に延長した。「当該支援プログラムの利用機会を拡充するため」としているが、集まりが悪いのだろう。
http://pdf.irpocket.com/C9468/QPg3/yQxl/ShDY.pdf
KADOKAWAの「歴史読本」が、4月から季刊に移行するが、この雑誌はもともと新人物往来社を版元としていたが、季刊化によって新人物往来社に在籍していた社員は誰もいなくなるそうだ。
http://www.chukei.co.jp/rekidoku/
KADOKAWAは「賃金の高い労働力」たる古参の社員のリストラを進める一方で、賃金の安い新卒の労働力を募集しているし、DWANGOKADOKAWAとのシナジーを発揮すべく「読書メーター」にかかわる年収300〜400万円の非正規労働力たる契約社員を募集している。
http://info.kadokawadwango.co.jp/recruit/index.html
http://www.r-agent.com/kensaku/kyujin/20140930-082-01-081.html?vos=nragindeed00084
リストラ対象者のKADOKAWAの社員は、経営陣にここまで軽く見られて何も思わないのだろうか。私には不思議でならない。

◎ALOOK(アルク)は、徳間書店の女性ファッション誌 「LARME」(ラルム)とコラボしたメガネを発売している。
http://www.alook.jp/feature/larme20150317/

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3)【深夜の誌人語録】

正しいことだけが世界を覆い尽くしたならば、世界から笑いが消えることだろう。