【文徒】2015年(平成27)3月27日(第3巻58号・通巻503号)

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1)【記事】マンガボックス」樹林伸の公式声明と「本音」ツイートについて
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】マンガボックス」樹林伸の公式声明と「本音」ツイートについて

「マンガボックス」の樹林伸は「境界のないセカイ」連載中止について声明を発表した。味も素っ気もない文章である。
「いつもマンガボックスをご愛読いただき、ありがとうございます。
この度、本アプリ掲載作品『境界のないセカイ』を連載中止させていただくことになりました。
本作品を楽しみに読んでいただいていた読者の皆様には大変申し訳ありません。
幾夜先生には、連載の中止をご理解いただき、大変感謝しております。
また、今後、マンガボックスでの新作連載を目指していただけるともおっしゃってくださり、編集部としてはそれがなによりありがたい言葉でした。
幾夜先生の次回作および今後のマンガボックスにご期待ください」
https://www.mangabox.me/reader/231/
これが「建前」の文章だとすれば、樹林が声明を発表後にツイッターに投稿した一連の文章には「本音」が滲み出ている。樹林はツイッターで「声明」にはボツになった部分があったことをまずは告白する。
「僕の書いた公式コメ、そのまま載っけるわけにはいかなかったのだろうか? 事実関係をきちんと明らかにしつつ、いちおう、各方面に配慮して書いたつもりだったんだが、そういう部分はほぼ全ボツ・・・。 ただ、それをまた世間が騒いでくれたら、僕が何かいうよりよっぽど理不尽の予防にはなるでしょう」
https://twitter.com/agitadashi/status/580654150456733696
次に樹林は、ことの経緯に関して幾夜大黒堂がブログに書いた通りであったことを明らかにする。
「僕の公式コメントがそのまま出せなかったというのは、それによって会社組織で働いている誰かが困るということでしょう。それは好ましくない。また、守るべき作者の方に一番の迷惑が及ぶことにもなります。不足している『経緯』は既に書いたように作者ブログにあった通りです」
https://twitter.com/agitadashi/status/580658846282055681
次の樹林の文章は良いぞ。
「大出版社にはある程度の自主規制はやむを得ない部分がありますが、慎重に検討したうえで、本当にやむを得ないケースに留めるべきであるという自戒を、この件で関係した全員が学ぶべきでしょう。僕やマンガボックス編集部は、幾夜大黒堂さんには、本当に力不足で申し訳なかったと思っております」
https://twitter.com/agitadashi/status/580660242557509632
表現について慎重に検討するとは、その表現が妥当かどうか、このケースで言えば性的マイノリティ(LGBT)に対する「差別」に当たるのかどうか、作者と編集者が二人三脚で、考えて、考えて、考え抜いたのかが問われている。「差別」を克服するには寝た子を起こす必要もまたあるのだ。発表すべきは、このツイートだけで良かったように思うのだが、まだツイートはつづく。
「『境界のないセカイ』につきまして、マンガボックス内でいささか『みっともない』編集長公式コメントが出たタイミングを見計らって、『このTwitterは個人のものである』という僕の中のルールを曲げて、多少の補足をさせていただきました。 以後この問題についてはコメントいたしません」
https://twitter.com/agitadashi/status/580661102872174592
講談社の圧倒的な協力に支えられ、DeNAが運営しているのがマンガボックスです。その両者に配慮しなくてはならない『編集長』の立場としては、ツイッターに書けるのもこのくらいです。読者と作家の皆さん、理解してください。 作家の立場で自分の身に起きたことならもう少し大胆になれるんですが」
https://twitter.com/agitadashi/status/580665194021396480
私は樹林の気持ちを理解できる。ただ、ツイッターで発表するのは、繰り返すが、三番目のツイートだけで良かったのではないだろうか。何故って?それが編集長というものだと考えるからだ。飲み込むべきは飲み込むのが、編集長の仕事なのだから。

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2)【本日の一行情報】

電通のMCプランニング局 統合プロデュース推進部前田淳子部長がここで紹介する事例は四つ。マガジンハウスが二つ、集英社と光文社がひとつ。前田は、「Context(文脈)」「Contents(内容)」「Contact point(接点)」という3つのCをプランニングに際して念頭に置いているそうだ。
http://dentsu-ho.com/articles/2340

東京大学大学院法学政治学研究科附属近代日本法政史料センター明治新聞雑誌文庫は、所蔵するすべての資料を検索できるデータベース「明探」を公開した。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1503/25/news023.html
http://www.meitan.j.u-tokyo.ac.jp/

◎俳優・高嶋政伸との離婚訴訟に関する「週刊女性」の記事で、元妻を「粘着妻」などと表現してことに対して東京地裁は名誉棄損を認めて主婦と生活社に賠償命令。主婦と生活社は裁判を好まないから、編集現場は大変だろうなあ。私は同情する。
http://mainichi.jp/select/news/20150325k0000m040081000c.html

◎4月20日創刊される「少年マガジンR」は、新装刊号の表紙を三つのデザイン案から読者投票で決めるそうだ。
http://www.magazine-r.co/top.html
雑誌は読者が関われる「余地」を積極的に創出しなければならない。読者に対して「読者との絆」を可視化することが、広告媒体としての価値を高めることになるはずだ。

◎「キャプテン翼」と「ビックリマン」のコラボによるチョコレート菓子「キャプ翼マンチョコ」がセブン‐イレブンで発売された。
http://natalie.mu/comic/news/141937

◎3月15日〜3月21日の「honto 総合ストア」ランキングで三浦しをんの「舟を編む」がトップに立つ。光文社は嬉しいだろうなあ。
http://honto.jp/ranking
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000050.000011577.html
その昔、光文社は小説でもベストセラーに名を連ねる常連だった。光文社の場合、雑誌の力を活用すれば、小説の光文社を復権できるはずなんだけれど。この「舟を編む」にしても、女性ファッション誌「CLASSY.」に2009年11月号から2011年7月号まで連載された小説である。女性ファッション誌はチャラチャラしていることは、そりゃあ大切だろうが、それだけじゃダメ。今の「VERY」を見れば、そんなこと分かるよね。

Gunosyは、4月28日、東証マザーズに上場する。
http://gamebiz.jp/?p=141727

小学館集英社プロダクションが名刺情報の有効活用を目的に、クラウド名刺管理サービス「Sansan」を導入した。すべからく情報は共有したほうが良いに決まっている。今や「共有の時代」。「共産」じゃなくて「共有」なんだよね。
http://jp.sansan.com/casestudy/iid/12_life_service/cid/6322/

原田泳幸はベネッセホールディテングスの社長に就任する前から、顧客の個人情報漏洩を知っていた可能性があると「Business Journal」は指摘している。
http://biz-journal.jp/2015/03/post_9353.html

ソフトバンクモバイルとヤフーは、カルチュア・コンビニエンス・クラブ傘下のTポイント・ジャパンの第三者割当増資を引き受け、ソフトバンクモバイルは資本参加、ヤフーは追加出資した。
http://pr.yahoo.co.jp/release/2015/03/25a/

◎「月刊コミックゼノン」5月号(徳間書店)は、新久千映の「ワカコ酒」がテレビアニメ化されると発表している。居酒屋でひとり酒を飲む女性ってステキだなあ。
http://natalie.mu/comic/news/141833

講談社の女性ファッション誌「ViVi」は、LINE公式アカウント開設を記念して、3月23日より、友だち登録しているユーザーに「スーパー豪華なプレゼント」を用意した「LINE公式アカウント開設記念BIGプレゼントキャンペーン」を展開している。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000604.000001719.html

◎米国調査会社eMarketerは、2015年の米国モバイル広告支出額は前年成長率+50%で287億2000万ドルと推測。米国デジタル広告支出全体に占める構成比の49%になる。
http://www.exchangewire.jp/2015/03/25/news-emarketer-us-mobile/
日本でもモバイル広告は増え続けるだろう。出版社は、この領域に関与できる能力があるはずだ。

◎この本、発売前から物凄く話題になっている。7月に集英社から刊行される「りぼんの付録 全部カタログ」。「りぼん」は今年、創刊60周年を迎える。
http://matome.naver.jp/odai/2142701005435747301

◎CCCは昨年12月1日に、各事業の成長の加速化と顧客価値創造の最大化を目的とした分社化を行い、CCCはグループの知的資本を管理する事業持ち株会社となったが、4月1日付けの新経営体制を発表した。取締役CIOにフリービットの石田宏樹代表取締役会長、また取締役CFO野村證券出身の丹羽良治がそれぞれ新任した。
http://www.ccc.co.jp/20150325_ccc_jinji.pdf
http://www.ccc.co.jp/news/2014/20140325_004723.html

千趣会が運営する通販事業ベルメゾンは、新たにアクティブな50代からのファッションカタログ「Vialamo」(ヴィアラモ)を5月に創刊する。
http://prw.kyodonews.jp/opn/release/201503258846/

ヨドバシカメラは3月25日、ECサイト「ヨドバシ・ドット・コム」に電子書籍専門ストアをオープンし、電子書籍リーダーアプリ「Doly」(ドリー)の提供を開始した。
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20150325_694618.html
http://doly.jp/

◎「暮しの手帖」の松浦弥太郎編集長が第75号をもって退任する。
http://www.nikkansports.com/general/news/1452145.html

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3)【深夜の誌人語録】

酒場で大言壮語するよりも、毎日の小さな積み重ねを大切にしなければならない。