【文徒】2015年(平成27)6月9日(第3巻106号・通巻551号)

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1)【記事】雑誌情況への提言 雑誌のデジタルシフトに必要な三つの条件
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】雑誌情況への提言 雑誌のデジタルシフトに必要な三つの条件

客 ちょうど昨年の今頃だったろうか。君が「雑誌はスマホを占拠せよ!」と言い出したのは?最近じゃ雑誌もデジタル戦略を真剣に考えつつあるけれど、今や君はデジタル戦略なんかじゃダメだ、デジタルシフトでなけりゃ意味がないって煽動している(笑)。
主 もちろん、紙の雑誌が絶滅することはないと思っているよ。でも時代の最前線に立つには、デジタルシフトは避けて通れないよ。確かに雑誌のデジタル化は急速に進んでいるとは思うけれど、オレに言わせりゃあ、主客転倒しているんだよね。多くの編集者は紙が主で、デジタルが従だと考えているけれど、雑誌文化が生き残るには、発想としてデジタルが主で、紙が従だというところまで行かないとダメなんじゃないかと思っている。
客 それはさすがに言い過ぎなんじゃないのかい。
主 紙の雑誌は販売収入と広告収入の両輪が揃っているから、これに慣れちゃうと、なかなかデジタルシフトに踏み切れなくなっちゃうんだけど、それでは成長も進歩もない。だいいち、販売収入も、広告収入も減るばかりじゃないか。
客 インターネットはビジネスモデルを構築するのが難しいと言われている。
主 そんなことはないよ。基本的には広告モデルかECモデルだよ。課金は難しい。ただね、雑誌と違うのは、雑誌を創刊する場合って事前に広告を集めるけれど、ネットは違う。まずユーザーに支持されることが肝要であって、収益化はそれから考えれば良い。
客 確かにネットは紙代や印刷代がかからないからな。
主 編集者一人が一つのメディアを立ち上げれば良いと思うんだ。そのうえで横串を考える。そうするなかで、新たなプラットフォームの可能性も生まれるとオレは思っている。
客 紙の編集者って発想が重厚長大になりがちなんだよな。妙な縄張り意識も抱いているしさ。
主 デジタルシフトにおいて大切にしなければならないことは三つあると思うんだ。ひとつがコンテンツの公開はデジタルファーストであることを恒常化することだ。雑誌に発表された内容をネットに流していたのでは、ダメだということだよね。
二つ目は、記事の量と更新の頻度を増やさなければならないということだ。少なくとも一日に三回、新たな記事を複数、リリースする必要があるはずだ。朝の通勤、ランチタイム、夕方の通勤というように一日三回、コンテンツなり、情報を発信しなければスマホを占拠することはできないよ。
三つめは読者に開かれたソーシャル化を進めるということだ。ネットにおいてメディアは記事を発信するだけじゃなくて、議論の広場、評価の広場をユーザーとともに形成しなければ、そもそも重心をネットに移す必要はあるまい。炎上が怖いのだろうけれど、炎上しない方法だって開発されてきているでしょ。クーロンなんかにもっと着目したほうが良いよな。

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2)【本日の一行情報】

◎朝からこいつを再読していて仕事にならない。平岡正明の「山口百恵は菩薩である」が講談社から完全版として復活した。オレは1979年に刊行された際に初版本を手にしている。そのとき、オレが言いたいけれど、口では上手く言えないことをこうも鮮やかに言ってくれる平岡の魔術的アジテーションに感服したものだ。今回再読してもその気持ちに「変更も修正も翻意もなし」である。
美空ひばりから山口百恵への転換は戦後史の転換である」
異議なし!としか言いようがないのである。
http://bookclub.kodansha.co.jp/buy?isbn=9784062193627

◎テレビドラマには殆ど顔を出さなかった。「新三匹の侍」「前略おふくろ様」「プレイガールQ」に出演していた程度だろう。
そういう意味では銀幕のスターだった。何しろ自分の過去を自分で演じてしまう俳優は、そうザラにはいまい。「やくざと抗争 実録安藤組」「実録安藤組 襲撃篇」「安藤組外伝 人斬り舎弟」「安藤昇のわが逃亡とSEXの記録」などなど。
ワイズ出版が映画文庫の一冊として「映画俳優 安藤昇」を刊行した。インタビュアーは山口猛深作欣二の「仁義の墓場」の渡哲也が演じた石川力也は実在するやくざだが、生前の石川と何度も会ったことがあるというのだ。この映画には安藤も出演しているのだが、インタビュアーが、石川はシャブ中毒になり、自滅していきましたねと安藤に迫ると、安藤はこう応じている。
「それは知らないな。大体、俺はその映画も見ていない」
http://natalie.mu/eiga/news/148134
山口猛も既にこの世にはいない。

サントリーの「〜ザ・プレミアム・モルツ〜 マスターズドリーム」、これ美味いよ。缶でなく瓶なのもオシャレだ。
http://mainichi.jp/bizbuz/news/20150605dog00m020002000c.html

◎米アマゾンは商品梱包用パッケージを広告媒体として解禁した。
http://jp.mobilenapps.com/articles/9044/20150605/amazonboxpackage20150605.htm

◎「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載され、TVアニメも放送中の「暗殺教室」が8月16日(日)に「暗殺教室スペシャルイベント“祭りの時間”」を開催する。料金(税込)は全席指定6,800円。
http://www.oricon.co.jp/news/2053875/full/

誠文堂新光社の「月刊 天文ガイド」は6月5日発売の7月号で創刊50周年を迎えたが、電子版の配信を開始した。電子版では動画コンテンツや高解像度の天体写真を収録するそうだ。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1506/06/news013.html
小部数で専門性が強い雑誌は電子版に向いているはずだ。紙版をやめられないのは、図書館などからの購入がなくなるのが痛いからであろう。

◎ブラジルのニッケイ新聞に朝日新聞東京本社国際報道部の高野弦部長代理が電話とメールで謝罪したそうだ。しかし、記者は謝罪していない。<国際部の責任者から謝罪の電話とメールが4日にあり、紙面では来週には訂正記事が掲載され、サイト上でも修正されるようだ。誠意ある対応といえるだろう。
だが、田村記者は謝罪せず、「自分の意図とは違う。誤解を解きたい」と約1時間釈明に徹した。
「見出しをつけるのは整理部」と話し、「前文(リード)で『日本語が読める日系人口減少』と書いているので、いいと思った」という。
だとしたら、見出しは何のためにあるのか。見出しは間違っていても、記事を読めば分かるというのは詭弁だし傲慢だろう。意味が全く違うではないか><田村記者からは、このやり取りを記事にしないでくれ、と言われた。だが、しっかり書く。なぜなら「事実だから」だ>
http://www.nikkeyshimbun.jp/2015/150606-71colonia.html

◎「インターネット事業では最初に収益化とか、売り上げをそれほど考えない方がいいんです」と発言するLINEの出澤剛社長は朝日生命で営業の仕事をしていたのか。社外留学制度でオン・ザ・エッヂ(ライブドアの前身)に行き、そのまま居ついてしまったというキャリアの持ち主である。
http://mainichi.jp/premier/business/entry/index.html?id=20150602biz00m010007000c
http://mainichi.jp/premier/business/entry/index.html?id=20150602biz00m010008000c
毎日新聞経済プレミア」はコメントが書き込めるのが良い。大新聞のソーシャル化が始まった。

◎「ペヤングソースやきそば」が帰って来た。
http://mainichi.jp/select/news/20150608k0000e040140000c.html?fm=mnm

◎宝島社から3月26日に発売されたイガリシノブのメイク本「イガリメイク、しちゃう?」が、発売2ヵ月で6刷の増刷となり、6万部を突破した。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000164.000005069.html
私は「イガリ」を「イガグリ」と言ってしまい書店で失笑を買ってしまった。

◎エイ(木偏に世)出版社から刊行された「ビールのおつまみ123」と「ちょっとこだわって楽しむ!とびきりサンドイッチレシピ」は未来屋書店との共同企画商品である。
http://mibon.jp/p/ei-goodlife-pc.php

◎「cakes」は「少年ジャンプ+」連載作品の配信をスタートさせた。
http://dmm-news.com/article/974920/

大日本印刷は、書店で購入後すぐに読書できる、読書専用端末に電子書籍を収録した「honto pocket」(ホントポケット)の新タイトルに「山岡荘八歴史文庫全集」(講談社)加えた。山岡荘八作品の計100冊が収録されている。販売価格(税抜)は69,800円。
http://www.dnp.co.jp/news/10111411_2482.html

祥伝社から「『炎上』と『拡散』の考現学 なぜネット空間で情報は変容するのか」を刊行。この小峯隆生って「週刊プレイボーイ」のフリー編集者出身だった小峯隆生でしょ?「週プレ」出身の小峯がこれまで出して来たのは、「拳銃王シリーズ」とか「1968少年玩具 東京モデルガンストーリー」。そうした著作に比べるならば、今和次郎を気取っているのだろうけれど、やけに固いタイトルの本である。
http://www.s-book.net/plsql/slib_detail?isbn=9784396615291

◎「AKB48 41stシングル選抜総選挙」を中継したフジテレビに見るに耐えられないといった批判が殺到しているようだ。松井珠理奈山本彩のスピーチ中にCMが入ったり、卒業予定の高橋みなみが号泣しながらスピーチするシーンで何故か笑い声が放送されたり、そりゃあ真剣なファンは激怒するに決まっている。
http://biz-journal.jp/2015/06/post_10254.html

◎アマゾンはISISが出版した「Dabiq」という英語の雑誌を売っていたとイランラジオが報道している。
https://www.google.com/url?rct=j&sa=t&url=http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/55362-%25E3%2582%25A2%25E3%2583%259E%25E3%2582%25BE%25E3%2583%25B3%25E3%2581%25AE%25E3%2582%25B5%25E3%2582%25A4%25E3%2583%2588%25E3%2581%25A7isis%25E3%2581%25AE%25E9%259B%2591%25E8%25AA%258C%25E3%2581%258C%25E8%25B2%25A9%25E5%25A3%25B2&ct=ga&cd=CAEYACoUMTI1MzM1MDQ3NjcxODgxNzE5NDIyHDhhNWYwYWUxODc1NWM0ZTY6Y28uanA6amE6SlA&usg=AFQjCNHjyV4Je6k9kp8C1ORPwceD70dbLQ

◎「本の雑誌」の創刊者でもあり、北上次郎名義で冒険小説を後押しする熱い評論を書き続けた目黒考二が昭和前期に非合法活動で投獄された父親・亀治郎の「青春」に熱く迫るノンフィクション「昭和残影 父のこと」をKADOKAWAから刊行した。亀次郎の地下活動を支えた「A」は、戦後、経済界で成功したというが、「A」のような経済人が高度成長を支えたのである。
http://www.kadokawa.co.jp/product/321501000172/

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3)【深夜の誌人語録】

前例を踏襲するばかりでは、明日は明日の意味を失ってしまうのである。明日を昨日で塗りつぶしてしまう作業に誰が感動できようか。