【文徒】2015年(平成27)6月22日(第3巻115号・通巻560号)

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1)【記事】KADOKAWAダイエーに似ている
2)【記事】「絶歌」に書店はどう向き合ったか
3)【記事】文藝春秋から「広告」の名前が消える
4)【本日の一行情報】
5)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】KADOKAWAダイエーに似ている

角川歴彦リクルートからメディアファクトリーを買収するに際しても、競合する相手よりも良い条件を出したが、その結果はどうなったか。狙っていた「ポケモン」関連の出版物は結局、掌中に収めることはできなかった。「Business Journal」によれば「COOL JAPAN FOREST 構想」のために取得した旧所沢浄化センター跡地も「競争入札相手の何倍もの高い価格で購入した」という指摘もあるのか。
一方、KADOKAWA・DWANGO川上量生会長は記者会見で次のように語っていたという。
「本業と関係のないところに、会社のリソースを使いまくるというのが、僕が自慢にしていたこと。KADOKAWAと一緒になるに当たって、僕らは子どもの会社で、KADOKAWAは大人の会社。これからあまりむちゃはできなくなると思っていたが、今回の発表を聞いて、明らかに角川会長は僕よりもはるかにスケールが大きく、本業と関係のないところに力を入れていく人だと思い、非常に安心した。会社としても協力していきたい」
言うまでもなく「本業と関係のないところに、会社のリソースを使いまくる」とは、「COOL JAPAN FOREST 構想」を指す。川上よりも遥かに大きいスケールで本業と関係のないところに、会社のリソースを使いまくっていたならば、どうなるのか。出版という「本業」が瓦解するということだろう。
http://biz-journal.jp/2015/06/post_10427.html
KADOKAWA・DWANGOを見ていると私は中内功が率いたダイエーの崩壊過程を連想せずにはいられない。私は「KADOKAWAAmazonの直取引は書籍流通改革の狼煙となるか?」と問われれば否と答えるだろう。書籍流通改革の「狼煙」となるのではなく、逆の事態(書籍流通破壊)をもたらすに違いない。
http://zuuonline.com/archives/69363

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2)【記事】「絶歌」に書店はどう向き合ったか

潮見惣右介のブログ「無印都市の子ども」がアップした「酒鬼薔薇聖斗の手記『絶歌』が発売されることについて書店員として思うこと」については先週紹介したが、そのコメント欄が凄いことになっている。炎上!
http://shiomilp.hateblo.jp/entry/2015/06/10/232125
潮見は次のようにツイートしている。
「気づいたら多くの方にブログを読んでもらえてた。なかには作家さんや起業家さんまで。嬉しいです。ありがとうございます。コメント欄の中には僕に対する誹謗中傷もありますが、そういう人が世の中に一定数存在することは十分分かっているので、どうか反論など書かずにスルーしてください」
https://twitter.com/shiomiLP
喜久屋書店も「絶歌」を店頭から撤去。
http://www.sankei.com/west/news/150617/wst1506170088-n1.html
「伊野尾書店WEBかわら版」は次のように書いている。
「けど、太田出版が作った本を売って金儲けしているのは書店も同じです。
本の利益を分配しています。
遺族の方々からしたら広めてほしくないだろうことを広める手助けをしています。
遺族感情を無視した。
あんな事件を起こした犯人が印税を取るのはおかしい。
出版社は犯罪者で金儲けしたいのか。
そういった今あがってる声に対して、思うことは全部『そうですね』ということで。
否定できないです。
本当に、その通りなんだろうと思います。
そこに『すみません』という気持ちはあります。
ありますが、今後も私たちは売ってそれを商売にします。
それも本屋という仕事に含まれる業(ごう)のようなものだと思ってるからです」
http://inoo.cocolog-nifty.com/news/2015/06/post-8e7c.html
本屋に業があるように出版者にも業があるのは間違いあるまい。

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3)【記事】文藝春秋から「広告」の名前が消える

文藝春秋の組織から「広告」の名前が消えることになった。
文藝春秋は7月1日付で「広告局」を「メディア事業局」に改編する。
これにともない旧「第一広告部」を「メディア事業一部」に改編し、「文藝春秋」週刊文春」「オール讀物」「文學界」「文藝春秋SPECIAL」を担当する。
旧「第二広告部」、旧「第三広告部」、旧「デシタル・ビジネス室」が統合されて「メディア事業二部」に改編し、「ナンバー」「クレア」関連を担当し、部内に「デジタル・ビジネス室」を置き、web・デシタル全般を担当する。
旧「企画制作室」および旧「ブランド・ビジネス部」を「メディア事業三部」および「ブランド事業部」に改編し、「メディア事業三部」はライセンスビジネス、EC、イベント等を担当する。部内に「企画制作室」を置き、広告企画プランニング/制作/カスタム出版を担当する。
旧「広告総務部」を「メディア事業局総務部」に変更。広告会計、取引先情報等を担当する。
「企画出版編集室」を出版総局より移管。カスタム出版、自費出版等の編集制作を担当する。

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4)【本日の一行情報】

◎日販は、6月20日(土)より、全国高校野球選手権夏の甲子園大会)100周年を記念し、廣済堂出版と日販が共同で企画し、廣済堂出版が発行する「ホームラン7月号特装版」を全国の取引書店で販売する。
http://www.dreamnews.jp/press/0000114291/

フェイスブックのニューヨークオフィスの様子を写真で紹介している。
http://japan.cnet.com/news/business/35066062/

◎人民日報が「ナカシマ723氏」のイラストを無断転用していた。「無断転載スレイヤー」を使って削除依頼したところ約15時間後に削除された。
http://news.livedoor.com/article/detail/10243459/

◎動画ファッション雑誌「C CHANNEL」は、ニューヨーク・ソウル・台北バンコクシンガポールといった海外5拠点からの動画の配信を開始した。英語版も近々、配信を開始するという。
http://shopping-tribe.com/news/19750/

DeNAは累計ダウンロード数800万を超える「マンガボックス」で電子書籍を販売する「コミックストア」の取り扱い数を計5万冊以上に拡充する。
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/release/20150618_707696.html

◎「週刊文春」は6月25日号に、日本経済新聞と喜多恒雄社長(現会長)らを取り上げた2012年7月19日号の記事「日経新聞社長と美人デスクのただならぬ関係」の主要部分が誤報だったとする3分の1ページの謝罪広告を掲載した。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG18H3D_Y5A610C1CR8000/

トヨタ自動車初の女性アメリカ人常務のジュリー・ハンプ容疑者が麻薬取締法違反の疑いで逮捕されたにもかかわらず、「広報部門のトップが不在となり、広報担当者は『記者会見の場所も時間も全く決まっていない。そもそも会見を開くのかも未定です』と混乱した様子だった」(産経ニュース)そうだ。
http://www.sankei.com/affairs/news/150619/afr1506190006-n1.html

彩流社の「朝日新聞『吉田調書報道』は誤報ではない」が重版となった。
http://www.sairyusha.co.jp/oshirase/%e3%80%90%e3%81%8a%e7%9f%a5%e3%82%89%e3%81%9b%e3%80%91%e9%87%8d%e7%89%88%e3%80%8e%e6%9c%9d%e6%97%a5%e6%96%b0%e8%81%9e%e3%80%8c%e5%90%89%e7%94%b0%e8%aa%bf%e6%9b%b8%e3%80%8d%e5%a0%b1%e9%81%93%e3%81%af.html

集英社文庫「ナツイチ2015」キャンペーンのメインキャラクターは三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEパフォーマー山下健二郎
http://natsuichi.shueisha.co.jp/natsuichi/

◎オプティムは「タブレット使い放題・スマホ使い放題」(タブホ)に対する電子雑誌コンテンツ供給で、新たに実業之日本社と業務提携を行い、「ガルヴィ」「ネイルヴィーナス」の2タイトルを読み放題ラインアップに追加する。また、ぶんか社との業務提携を拡大し、「ザ・マイカー」「LET’S GO 4WD」「アメ車マガジン」「GERMAN CARS」「VIBES」の5タイトルを読み放題ラインアップに追加。これらにより、「タブホ」で読み放題となる雑誌は計189誌となる。
http://www.optim.co.jp/news-detail/16545

◎日販の5月の雑誌・書籍・コミック売上動向。雑誌・書籍・コミック合計売上は前年同月比6.6%減。雑誌は7.8%減。書籍は2.9%減。コミックは11.9%減。
http://ryutsuu.biz/sales/h061806.html

ダイヤモンド社の「書籍編集部では、毎月個人の売上データが配布され」、「単品ごとの収益がわかるデータも配られ」、「返品も含めてすべて数字が分かる」というように「編集者の目標を主に売上金額で管理している」が、「刊行点数のノルマがなく」、「時間管理も個人に任され」ているというように「規制や禁止事項が少な」く、「原価管理も現場の各部署に任され」、「本づくりの自由度がとても高い」という。
そんなダイヤモンド社が書籍編集者を募集している。この座談会を読んでいると、私でも応募してみたくなるから不思議だ。
http://diamond.jp/articles/-/73462

◎ブックビヨンド、学研教育出版学研パブリッシングは、7月1日(水)〜3日(金)に東京ビッグサイトにて開催される「第1回コンテンツマーケティングEXPO」に学研グループとして出展する。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000499.000002535.html

芥川賞直木賞の候補作が発表された。
芥川賞は内村薫風「MとΣ」(「新潮」3月号)、島本理生「夏の裁断」(「文學界」6月号)、高橋弘希朝顔の日」(「新潮」6月号)、滝口悠生ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス」(「新潮」5月号)、羽田圭介「スクラップ・アンド・ビルド」(「文學界」3月号)、又吉直樹「火花」(「文學界」2月号)。
文春、新潮の一騎打ちである。本命が島本、対抗が又吉、大穴が滝口、内村なんじゃないの。私は滝口、内村を強く推す。私は1990年2月11日が、ネルソン・マンデラが釈放され、ドラゴンクエスト4の発売日であり、マイク・タイソンは東京ドームでKO負けした一日であったことを「MとΣ」に教えられた。
直木賞は 門井慶喜「東京帝大叡古教授」(小学館)、澤田瞳子若冲」(文藝春秋)、 西川美和永い言い訳」(文藝春秋)、馳星周アンタッチャブル」(毎日新聞出版)、東山彰良「流」(講談社)、柚木麻子「ナイルパーチの女子会」(文藝春秋)。
個人的には「流」と「東京帝大叡古教授」を推す。
https://gunosy.com/articles/ag6N1

◎ブックビヨンドは、企業のブランディングやPR、CSR向上を目的としたデジタルコミックマーケティング事業を開始した。第1弾コンテンツとして、化粧品ブランド「シュウ ウエムラ」のアトリエ開設50周年記念プロジェクトの一環としてオリジナルデジタルコミック「rebirth 〜キレイの魔法〜」を制作し、コミックシーモアとmusic.jpで先行無料連続配信。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1506/20/news018.html

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5)【深夜の誌人語録】

慎重さゆえに責任やリスクを回避するのではない。臆病で卑怯だから責任やリスクから逃避しようとするのだ。