【文徒】2015年(平成27)7月22日(第3巻136号・通巻581号)

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1)【記事】栗田問題はどうなるのか?
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】栗田問題はどうなるのか?

「BusinessJournal」の「出版崩壊の序曲?老舗取次が破綻!出版社に“多重の苦しみ”与える再建策に業界猛反発」を読む。ここに「業界猛反発」とあるが、業界をあげて猛反発しているわけではない。栗田出版販売の再生に関して、出版社として一括りにできないことは間違いあるまい。少なくとも大手、中堅、中小零細の間に温度差がある。正味や支払条件などが大手と中小零細では違うからである。何しろ「差別正味」という言い方も存在しているくらいである。
http://biz-journal.jp/2015/07/post_10791.html
そもそも取引条件が、大手と中小零細では、まるで違う。「ウラゲツ☆ブログ」は次のように書いている。
「新提案を飲んだ場合、その後は『旧商品からの返品の買上』を了承したことになります。新刊委託を『6ヶ月間の返品受付期間、8カ月後の入金』という条件で出荷している版元は、7月5日に入金されるはずだった昨年11月分の委託精算がけし飛び、12月から今年6月にかけての委託出荷分の精算が終わっていないため、少なくとも今後半年は6月25日までに出荷した委託分からの返品買上(委託期限切の返品も含む)に悩まされることになります。もともと委託分の内払いがある恵まれた一部版元は別として、たいていの版元にとって1ヶ月程度の返品相当額還元では吸収しきれるはずもない出費と損害が今後も生じることは明白です」
http://urag.exblog.jp/21468661/
栗田出版販売帳合の書店にしても、総ての書店が同じ方向を向いているわけではあるまい。トーハン帳合を選択するグループが現われても少しもおかしくはないはずだ。
いずれにせよ、紙の出版市場が縮小するのと相俟って大阪屋が経営不振に陥り、楽天傘下に入ることで何とか生き延びようとしている矢先に栗田出版販売が倒産し、民事再生法の適用を受けるという流れの先には太洋社問題や日教販問題が起こることは容易に察することができるというものである。

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2)【本日の一行情報】

◎BookLiveの取り扱いコンテンツ数が20万タイトル・40万冊を突破。
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20150717_712290.html
BookLiveはTSUTAYAと戦略的業務提携により、「Airbook」のサービスを提供しているが、光文社の女性誌「CLASSY.」「VERY」を初めとした8誌、三栄書房の男性情報誌「OUTDOOR STYLE GO OUT」など7誌が追加され、対象誌が遂に110誌を超えた。
http://booklive.co.jp/release/2015/07/171130.html

講談社が発行する「ナニワ金融道」(青木雄二)と「はじめの一歩」(森川ジョージ)の電子版が配信を停止。作者の意向によるようだ。周知のように井上雄彦浦沢直樹も電子版での配信はない。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1507/16/news129.html

◎ハイブリンクスとボイジャーは、インターネット環境を活用した新しい電子書籍を検討して来たが、「musicbook+」(ミュージックブック・プラス)として完成させ、7 月23 日より、ボイジャー電子書籍サイト『BinB store』(http://tt2.me/16814) で閲覧できるようになる。「musicbook+」は、ハイブリンクスが制作したmusicbook( 音楽評論家やDJ たちが音楽やアーティストに関する歴史を語るオーディオブックをベースに電子書籍化したもので、ブラウザーで読むため、関連するテキストや画像、映像にリンクを貼ることが可能になる。
https://www.value-press.com/pressrelease/145454
電子書籍にしかできないことへの挑戦である。

芥川賞作家の又吉直樹が書き下ろしたエッセイ(全9作品)を、パッケージにデザインした9本セットのAGFのボトルコーヒー「『深い珈琲エッセイ』付き〈ブレンディ〉ボトルコーヒー BOOKボトル」が、全国の紀伊國屋書店で7月23日から限定発売される。ウェブストア価格は1,800円(税込)。
http://www.agf.co.jp/company/news/2015-07-17-698.html
「火花」はまた増刷し、累計発行部数を15刷124万部とした。
http://www.oricon.co.jp/news/2056339/full/

真島ヒロのマンガ「FAIRY TAIL」のコミックス50巻が講談社から発売された。真島が書き下ろしたポストカード全50枚がついてくる限定版が話題となるだろう。西武池袋線池袋駅では“駅ジャック”を実施している。
http://www.oricon.co.jp/news/2056209/full/

◎オレ、こういうの欲しくなっちゃうんだよね。学研教育出版から「ミクロモンスター LED内蔵ズーム顕微鏡&調査キット」が発売された。「倍率50〜80倍のポケットサイズの顕微鏡」「LEDライト内蔵」で 価格1800円(税別)は安い。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1507/18/news020.html
学研らしい商品だ。

◎産経によれば「通販大手のディノス・セシールは16日、同社のオンラインショップに不正アクセスがあり、IDやパスワードを悪用した注文や個人情報の改ざんなどの被害があったと発表した」。161万5423円の不正受注と14人の個人情報が改竄され、152人分の個人情報が流出した可能性があるそうだ。ディノス・セシールはフジサンゲイグループのメンバー企業である。
http://www.sankei.com/economy/news/150716/ecn1507160034-n1.html
http://www.dinos-cecile.co.jp/pdf/topics_20150716.pdf

◎ぴあは、コンサートのチケット購入者延べ約1万4千人の個人情報が含まれたノートパソコン1台を紛失したと発表した。紛失したノートパソコンは、複数のパスワードが設定されており、現時点において、第三者へ の情報漏洩及び不正使用、社内サーバーへの不正アクセスなどの事実は確認されていないそうだ。
http://corporate.pia.jp/news/%E3%80%90%E3%81%B4%E3%81%82%E3%80%91PC%E7%B4%9B%E5%A4%B1%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%8A%E8%A9%AB%E3%81%B3%E3%81%A8%E3%81%94%E5%A0%B1%E5%91%8A_20150717.pdf

オレンジページクックパッドがコラボしたレシピ本の第2弾となる「cookpad×オレンジページ 忙しい日の 速攻!晩ごはん献立」が発売された。
http://cookpad.com/articles/8401/

◎表参道に、ミュージック・ファッション・カルチャーの発信拠点を目指してクラブ「ARC」 がオープン。
http://mdpr.jp/music/detail/1503739

◎そのものズバリのタイトルだなあ。実業之日本社から刊行された「お金持ち入門 資産1億円を築く教科書」。
http://www.sankei.com/life/news/150718/lif1507180017-n1.html

白泉社は「花とゆめ」「別冊花とゆめ」「LaLa」「メロディ」の4誌合同で開催する「第3回 少女まんが新人大賞」の作品募集を7月16日から開始している。ニコニコ静画でも募集している。
http://info.nicovideo.jp/seiga/haku-shojomanga03/?track=seigatop_bn

総務省は、情報通信審議会(会長:西田厚聰 東芝 相談役)から、「放送システムに関する技術的条件」のうち「ラジオネットワークの強靭化に関する技術的条件」について一部答申を受けた。
http://www.soumu.go.jp/main_content/000368656.pdf
粉飾決算」で揺れる東芝の西田が会長である。7月22日付毎日新聞によれば「組織的に利益を水増ししていた不正会計問題の責任をとり田中久雄社長、佐々木則夫副会長、西田厚聡(あつとし)相談役の歴代3社長が同日付で辞任したと発表した」そうだ。
http://mainichi.jp/select/news/20150722k0000m020081000c.html
東芝はノンフィクションのテーマになると思うなあ。

◎グーグルが2015年4〜6月期決算を発表。広告収入は11%増の160億2000万ドル(約2兆円)。連結売上高は前年同期に比べ11%増の177億3000万ドル(約2.2兆円)。純利益は39億3000万ドル(4881億円)。
http://forbesjapan.com/translation/post_6862.html

主婦の友社のファッション誌「mina」9月号は、石原さとみで勝負。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000416.000002372.html

双葉社が「双葉社ジュニア文庫」を立ち上げた。第一弾のラインナップは高野苺「orange」のノベライズ、映画「クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん」のノベライズ、「王様ゲーム」の三点だ。
http://natalie.mu/comic/news/154342

◎次のような子会社による穴埋め広告は、別に朝日新聞に限ってのことではないし、親会社による穴埋め広告もあるだろう。
「昨年、朝日新聞問題が起きた時、穴埋めと思われる子会社の広告が急増した。これは広告主が企業イメージの悪化を恐れ、広告出稿を取りやめたことに起因するものと思われる。また、このような子会社の広告にはもうひとつの問題も存在する。いくら子会社とはいえ、別法人である以上、広告費を払っているはずであり、これが朝日新聞の売り上げとして計上されているものと思われる。
これを悪用すれば、一種の売り上げの粉飾も可能なのである。100%の連結対象であれば、最終的に親会社子会社の間で利益と経費が相殺されるため、最終的には調整されるが、見た目の売り上げをよく見せることが出来るわけである」
http://www.sankei.com/economy/news/150719/ecn1507190006-n1.html

NHKが国会での安保法制の委員会審議を中継せず、NHKに抗議が殺到するなか「いただいたご意見は私の方から担当に必ず伝えます」とツイートしたNHKの広報マンが異動となったようである。
http://news.livedoor.com/article/detail/10367488/
NHKシマゲジの時代が最も自由だったなんていう発言も最近では聞かれるようになった。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の保健局長をつとめる清田明宏医師は、ポプラ社から写真絵本「ガザ 戦争しか知らないこどもたち」を出版した。
http://mainichi.jp/select/news/20150720k0000m040061000c.html

◎これは他誌の追随を許さない「週刊実話」ならではの記事だ。「『週刊実話』が現役100人に聞きました!ヤクザ討論『安保法制』」。この記事は必読だ。次のような関西系組織幹部(50代)の発言を読めるぞ。
「今の閣僚を集めて、ドツキ合いをさせたらええ。殴ったら痛いし、血が出る。引き際も考えなあかん。そういうのがまったくできひんくせに、いきなり『戦争』って、冗談も大概にしとけと思う。日本がなくなってしまうど」
http://wjn.jp/backnumber/detail/275/

◎安保法制の正統性を訴えるべく7月20日、フジテレビの「みんなのニュース」に生出演した安倍晋三総理だったが、どうも逆効果であったような気がする。
http://www.huffingtonpost.jp/2015/07/20/abe-shinzo-fuji-tv_n_7830532.html
内田樹が次のようにツイートしている。
「安倍首相のテレビ出演がぼこぼこにされてます。人前に出て話せば話すほど安保法制の非論理性・非現実性が国民に周知されるのですから、首相には毎日テレビに出て欲しいです。官邸もぜひ首相には夏休みなしでびしっとスケジュール組んでください。あの『生肉』模型も使い回しで」
https://twitter.com/levinassien/status/623241669257773056
アメリカの新聞からも民主政治のリーダーとしては稚拙だと指摘されている。
http://www.nytimes.com/2015/07/20/opinion/japan-wrestles-with-its-pacifism.html?smid=tw-share&_r=0

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3)【深夜の誌人語録】

約束したことを約束した通りに実行することが信頼関係を育む。