【文徒】2015年(平成27)7月23日(第3巻137号・通巻582号)

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1)【記事】東芝「報道」に異議あり
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】東芝「報道」に異議あり

東芝の「粉飾」決算は、かつての大本営発表と同じだと思った。例えばミッドウェーの海戦について大本営海軍部は「我が方損害(イ)航空母艦一隻喪失、同一隻大破、巡洋艦一隻大破、(ロ)未帰還飛行機三十五機」と発表したが、実際は空母四隻を喪失、重巡洋艦一隻、巡洋艦一隻、潜水艦二隻が大破していた。事実と向き合うことを避け、平気で嘘をつくことで責任を回避していたわけだ。
結局、戦争は日本を破滅に追い込んだわけだが、東芝という日本を代表する企業は、そうした経験をまるで踏まえていなかったとしか私には思えない。戦後70年談話に関する有識者会議の座長が東芝の社長経験者である西室泰三がつとめているというのは、ブラックジョークなのだろうか。金子勝が次のようにツイートしている。
「銀行の不良債権問題から福島原発事故まで、政官財の誰も責任をとらない。東芝不正会計でも新国立競技場問題でも同じ。戦争中、司令官が作戦失敗の責任をとらず、若者を特攻させ国民に竹槍持たせ、戦艦大和原発を世界一だと称して撃沈された過去とそっくり。そして日本を売り渡す」
https://twitter.com/masaru_kaneko/status/623587177134305280
毎日新聞小川一は、台湾沖海戦を思い出したらしい。
東芝不正会計は『あらゆる手段で』行われた。PCの在庫も利益として計上。製品は売れなくでも部品が売れたことに。営業利益が売上高を上回る常識ではあり得ない月もあったという。壊滅的惨敗が圧勝と報告された70余年前の台湾沖海戦を思い出した」
https://twitter.com/pinpinkiri/status/623602381918343168
今回の一件を東芝の社風の問題に矮小化してはならないはずだ。記者クラブメディアの責任は重たいはずなのだが、「ところが」なのである。新聞は右から左まで「粉飾」という言葉を使わないでいる。易々と東芝の「広報」に協力してしまっている。記者会見でも厳しい突っ込みはなかったようである。片岡剛士のツイートにもこうある。
東芝の会見をNIKKEI CHANNELで見ているのだが、厳しいツッコミには第三者委員会の報告書に記載済みなのでそれを見てほしい、という答えはさすがにありえないんではないだろうか。記者の方々もあんまり厳しく突っ込まないような気がするな。黒田総裁の記者会見の方が厳しいような気も」
https://twitter.com/goushikataoka/status/623422530297004032
ライブドア事件は「粉飾」で、東芝は「不正会計」となってしまうということは、法の下の平等を明らかに逸脱しているはずだ。ホリエモンが懲役2年6月の実刑になった連結決算の水増しは53億円であり、東芝は1518億円の水増しだ。「内閣官房情報化統括責任者補佐官」の肩書を持つ楠正憲すら、ツイートのなかで「ライブドア事件と重ね合わせると、結局のところ日本に法の下の平等なんて存在しないんだって気がするね」と指摘している。
https://twitter.com/masanork/status/623520968569262080
本来であれば東芝上場廃止ではないのか。上場廃止に持ち込みたくないから「粉飾」という二文字を極力避けようとしているのだろう。新聞もテレビも東芝に顔を向けた報道になっている。企業の広報マンであれば、誰もがそう感じているはずだ。日経出身の磯山友幸が「粉飾決算東芝』が上場廃止にならない『奇妙な理屈』を次のように結んでいる。
「果たして東証は、投資家を守る市場としての信頼維持を優先するのか。あるいは、日本を代表する企業の利益を優先するのか。東芝だけでなく、日本の資本市場全体の問題である」
http://www.huffingtonpost.jp/foresight/toshiba-tosho_b_7837308.html
アメリカの法律事務所が損害賠償を求めて東芝を提訴した。
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20150722-00000015-jnn-int

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2)【本日の一行情報】

インプレスR&Dは、楽天と連携し、インプレスR&Dが取り扱うPOD(プリント・オンデマンド)書籍を、楽天が運営する「楽天ブックス」で販売を開始した。「楽天ブックス」経由での一般書店への販売も開始。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000783.000005875.html

◎「コミック担当者らによるコミック誌合同読書会」ってのがあるんだね。
http://togetter.com/li/850288
https://twitter.com/search?q=%23%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%82%BD%E3%83%B3

◎「女性自身」(光文社)8月4日号のタイトルも凄い。
「安保法案強行採決 日本が壊れてく!!悠仁さま世代の命守りたい−「玉音放送」原盤公開に込めた“平和への祈り”美智子さま『私は“戦争の芽”摘み続ける!』」だぞ。皇室報道のパイオニアだけのことはある。
これに加えて「寂聴『安倍首相は世界の恥です!』、赤川次郎『戦争で泣かされるのは女性と子供たち』、内田樹『安倍さんは独裁者の快感に深々と…』」とつづく。女性週刊誌からすると安倍首相は朝敵なのだろうか。
週刊女性」も負けてはいない。「"安保法制"を推進する安倍政権のやり口はまるで『悪徳商法』」ときて「戦争法案とブラック国家」だものなあ。
http://www.kobunsha.com/shelf/magazine/current?seriesid=101001
http://www.jprime.jp/tv_net/nippon/15001/
http://t.co/OWhWWtJlMy

◎薬用美白フェイスパウダー「スノービューティー II」が、9月21日に数量限定で発売されることを記念してショートムービー「Snow Beauty」をネットで公開している。二階堂ふみが雪女、星野源が雪男と人間のハーフを演じている。
http://www.shiseido.co.jp/mq/sb/2015/movie/
娘を持つ私としては、トヨタのこのCMのほうが心に沁みる。
https://www.youtube.com/watch?v=Me1GIDy-U9g

読売新聞東京本社が発行する週刊の「読売中高生新聞」が世界新聞・ニュース発行者協会(WAN-IFRA)の「世界青少年読者賞」編集部門の最高賞を受賞した。記事には「小学館も特別協力として編集参加している」とあるが、実質的には小学館のお手柄なのではないだろうか。
http://www.yomiuri.co.jp/national/20150720-OYT1T50119.html

◎不倫専門SNS「アシュレイ・マディソン」に登録している3700万人分の個人情報が流出の危機にあるんだって!日本でも180万人が登録しているようだ。
http://forbesjapan.com/translation/post_6947.html

南海電鉄サントリー高野山真言宗総本山金剛峯寺が共同で、高野山の開創1200年を記念して「参拝・乾杯 高野山2015」を開催する。
http://news.4travel.jp/12006/

◎英国の大手出版社ピアソンは傘下に持つフィナンシャル・タイムズ紙の売却を検討しているという。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NRSJXU6K50Y101.html

◎「栗田倒産が起動した『業界』解体のシナリオ」の筆者は、次のような仮説を立てている。
「第1に、『取次』を将来的に維持するスキームは存在しない
第2に、再販制は出版社に過大なコストであり、打撃となる
第3に、『返品権付売買契約』は出版社にとって最も危険である
第4に、取次会社の再建コストは破綻処理より高くつく
第5に、出版システムの連鎖的『崩壊』は現実に起こり得る」
http://www.ebook2forum.com/members/2015/07/the-beginning-of-an-end-of-japanese-publishing-distribution-chain/
しかし、出版取次が取次(agency)ではなく、販売会社(dealer)であることにより中小零細出版社の自転車操業が支えられた側面もあるはずだ。つまり、「片面的解約権(返品権)付売買契約」で、最終的に精算されるとはいえ、納品後に一定の販売代金が支払われる。それが一種の金融機能を果たしてきたのだ。

◎アマゾンが一日限定で実施した20周年記念セール「プライムデー」は開催9カ国で過去最高の累計3440万点の商品を販売し、大成功だったようである。
http://ascii.jp/elem/000/001/030/1030162/

講談社は、「講談社デジタル本棚 codigi(コデジ)」サービスを利用して「ViVi」9月号(7月23日発売)と「with」9月号(7月28日発売)2誌同時に、“デジタル版付録”を実施する。第二事業戦略部 部長 WOMAN'S LABOの神保純子は次のように語っている。
「ViVi」9月号の“デジタル版付録”は「裏ViVi」と称して、「本誌では見られない『はだかのマギー』見せちゃうよ〜」で、大人気専属モデル・マギーの本誌企画の続編と「デジタル版だけの特別カットをお届け!GENERATIONS from EXILE TRIBE」で、ロンドンツアーの本誌未公開カットが楽しめる。
「with」9月号の“デジタル版付録”は、「オトナ女子のための夏ディズニーガイド(全45P)」だ。
「今回の『codigiによる電子版オリジナル付録』は、紙の雑誌と電子版の新しい共存の形を提案する試みです。1冊毎につけられたユニークコードで読み込むcodigiは、本誌購入者だけの特典のため、書店にとっては"本誌の販促"手段に。出版社にとっては、配信期間と受け手が限られたコンテンツであることから、通常では不可能な企画を実現するチャンネルに。
読者にとっては、外出先でいつでも雑誌情報を呼び出し、手元で参照できる便利なツールに……と、紙と電子の組み合わせによって、三者三様のメリットを享受できる時代の到来です。講談社は今後とも、こうしたデジタルでの新しい企画に挑戦してまいります」
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000703.000001719.html
まあ、お得感を演出することはできるだろうし、紙よりも安い製作費で済むには違いない。

大日本印刷は、オウンドメディアの会員のうち、特定のテーマや商品・サービスに関心が高い人などが参加するクローズドで小規模なコミュテニィを構築するサービス「DNPオンラインコミュニティASPサービス MARCO(マルコ)」を開始した。
http://www.dnp.co.jp/news/10113061_2482.html
「共創マーケティング」という言い方もあるように生活者をマーケティングにいかに参加させるかが多くの企業にとって課題になり始めているようだ。雑誌において「共創マーケティング」を模索するということは、私が繰り返し主張しているように読者に編集力を解放することなしにはあり得まい。
コンテンツのデジタル化をもって雑誌のデジタルシフトだと私は考えていない。編集者と読者の関係を垂直軸で捉えるのはやめにして、一般の企業同様に少しは「共創」に向き合ってみたらどうだろうか。
女性ファッション誌が生き残るには、読者=ユーザーとの間に、いかにして水平軸のコミュニケーションを成立させるかにかかっているはずだ。一方通行の垂直軸のコミュニケーションを総括しない限り、紙だろうとデジタルだろうと待っている結果は敗北である。

◎東京都の職員のパソコン9台が朝日新聞や読売新聞のニュースサイトに表示されたバナー広告のほか、厚生労働省の外郭団体「安全衛生技術試験協会」のホームページを介してウイルスに感染し、都税の還付を受けた人の住所や口座番号など約2700人分の個人情報が流出した可能性があるという。
http://www.sankei.com/affairs/news/150722/afr1507220004-n1.html
ウイルス感染を防ぐには、ユーザーは新聞のニュースサイトを読む際にバナー広告に触れてはならないということになるのだろうが、それではニュースサイト運営を広告が支えられなくなってしまう。ネットメディアにとって深刻な問題だ。

KADOKAWAの「第二次世界大戦映画DVDコレクション」。創刊号は「トラ・トラ・トラ!」で、これは幻の日本公開版だそうだ。買っちゃおうかな。
http://sensoueiga.jp/

イオングループ未来屋書店ダイエーの完全子会社で書店事業を運営するアシーネは7月8日、両社臨時取締役会において未来屋書店を存続会社とする合併を行うことを決議し、同日付で合併契約を締結した。売上規模599億円、店舗数340店(2015年2月期)超の書店グループが誕生することになる。
http://www.miraiyashoten.co.jp/news/%e6%9c%aa%e6%9d%a5%e5%b1%8b%e6%9b%b8%e5%ba%97%e3%80%81%e3%82%a2%e3%82%b7%e3%83%bc%e3%83%8d%e3%81%a8%e3%81%ae%e5%90%88%e4%bd%b5%e5%a5%91%e7%b4%84%e3%82%92%e7%b7%a0%e7%b5%90%e3%80%82%e5%ba%97%e8%88%97/

◎もうオープンしちゃうんだ。7月20日「リブロ池袋本店」が閉店したと思ったら、同じ場所に三省堂書店池袋本店が7月29日にプレオープンする。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1507/21/news143.html

キングオブコメディ高橋が、「コロコロコミック」(小学館)編集部に潜入した模様が「エキレビ!」で7月24日からレポートされる。
http://natalie.mu/owarai/news/154575

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3)【深夜の誌人語録】

決断が早いのは、諦めが悪いからなのかもしれない。