【文徒】2015年(平成27)8月3日(第3巻144号・通巻589号)

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1)【訃報】「週刊宝石」の森元順司編集長が亡くなってしまった
2)【記事】講談社が「ボンボンTV」をYouTubeで配信開始(田辺英彦)
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2015.8.3 Shuppanjin

1)【訃報】「週刊宝石」の森元順司編集長が亡くなってしまった

「今度、船橋で一杯やりましょうよ」
そう声をかけられたし、私からもそう声をかけていたが、結局のところ一度も実現しないまま訃報を聞くことになった。
光文社で常務取締役までつとめた森元順司さんが7月31日午前3時18分に逝去した。享年78歳。
森元さんといえば、やはり「週刊宝石」だ。「女性自身」を擁する光文社が、出版社系の週刊誌としては最後発であったものの、編集長に森元さんを据えて、1981年10月に「週刊宝石」を創刊した。
週刊宝石」は創刊当初は苦戦したが、「処女さがし」や「あなたのおっぱい見せてください」といった軟派系の企画と先行週刊誌が失いかけていたゲリラジャーナリズム的な記事がヒットし、バブル経済の時代と歩調を合わせるように部数をグングンと伸ばしていった。
森元さんも誌面に登場し、企業のお偉いさんと対談するという編集タイアップ企画など、広告的にも先駆的なアプローチを試みた。この辺のスタンスは「JJ」で創刊編集長をつとめた並河良元社長とは対照的であったと言って良いだろう。もっとも後年になってからのことだが、森元さんが強く推さない限り、並河社長が誕生しなかったのも間違いないのではないだろうか。
森元さんが編集者として育ったのは「女性自身」たが、より厳密に言えば草柳大蔵率いる「草柳グループ」で鍛えられた。「女性自身」編集長代理時代には「スター交歓図」で刑事告訴され、1980年に罰金15万円の判決が下されもした。
それだけに「週刊宝石」は、編集者として酸いも甘いも噛み分けて来た森元さんにとっては、満を持しての創刊であったに違いない。ちなみに、この創刊に際して、広告料金表を作成したのは、若き日の高嶋達佳電通会長であったと私は記憶している。
森元さんとは個人的にも本当に親しくさせていただいた。銀座の名店を指南して下さったのも森元さんであった。そういえば「るぱたき」なる結構値の張るフランス料理店に連れて行って下さったのも、講談社の関係者ではなく森元さんであった。
いずれにしても、左右の肩をアンバランスにしながら巨漢を引き摺るようにして歩く森元さんの姿を私たちは二度と見られなくなってしまった。森元さん!本当にお世話になりました。今夜は船橋献杯させてもらいます。
葬儀日程は次の通りである。
【通夜 】8月5日(水)18:00〜
【告別式】8月6日(木)11:00〜
【式場】 門前仲町 『心行寺 双葉ホール』
〒135-0033 東京都江東区深川2−16−7
tel 03(3641)5050
fax 03(3641)5056

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2)【記事】講談社が「ボンボンTV」をYouTubeで配信開始(田辺英彦)

7月31日、六本木ヒルズYouTube Space Tokyoでキッズ向けの動画配信メディア「ボンボンTV」立ち上げの記者発表が行われ、その場で配信がスタートした。
1981年11月に創刊され、2007年12月に休刊した講談社の児童漫画雑誌『コミックボンボン』。その名を冠しているように、「ボンボンTV」は『コミックボンボン』の復活を模索する中から生まれたメディアだ。記者会見の挨拶で講談社ライツ・メディアビジネス局ライツ事業部の松下卓也部長は、「きっかけは『妖怪ウォッチ』」とぶっちゃけた。
「側で見ていて、あれだけ小学生が熱中して親も一緒になって楽しんでいるのに、『コミックボンボン』がないのは寂しい」と、講談社としてそうしたコンテンツの受け皿となる媒体がないことを悔やんだそうで、当初は『コミックボンボン』を復活できないか考えていたが、「会社の上のほうからは『紙にこだわるな』といわれ、今『ボンボン』をやるとしたら情報発信基地として何が、子供が夢中になって見てくれるかと考えたとき、出てきたのがYouTubeでした」。
子供達に人気のクリエイターが集合するマルチチャンネルネットワークのUUUMを紹介されたのが約3カ月前。そこからは「『少年マガジン』が好きだった」というUUUMの鎌田和樹社長との間で話がとんとん拍子に進み、この日の「ボンボンTV」設立発表となったようだ。
この日の会見では、「ボンボンTV」のイメージキャラクターである「戦国の世からタイムスリップした忍者、ボンドとボン太」にそれぞれ扮した講談社の安永尚人編集長と奥村元春副編集長、『進撃の巨人』の巨人くん、UUUM所属の人気YouTuberであるHIKAKIN、木下ゆうか、はじめしゃちょーが登壇し、配信する動画をプレゼンした。YouTuberたちのは、出されたお題にチャレンジして新しい一面を披露するという動画だったが、これ以外に「ボンボンニュース」「ボンボンクラフト」「ベリーショート劇場」「のりものシリーズ」「アニメとマンガ」などのメニューで動画を配信していく予定だという。
記者発表の後、講談社の松下部長に話を聞いた。
「私自身は、マンガの部分を大きくしなければならないと思っています。動画で表現するマンガ――アニメとマンガの間に位置するものは、間違いなくニーズがある。これから各玩具メーカーと話をしていきますが、『妖怪ウォッチ』的なゲームだったり、ホビーだったり、いろいろな企画のコラボを『ボンボンTV』でやっていきたい。紙の『ボンボン』も諦めたわけではなく、盛り上がってくれば『ボンボンTV』と連動する形でムックなどでの展開も図れると考えています」
現在は、YouTubeのスポットCM等が売上になるが、「鉄道おもちゃ ジオラマ貯金箱」のような動画も、当面は無料だろうが、こうした玩具メーカーとのタイアップなどのマネタイズはすでに考えられているのだろう。そのためにもまずは視聴回数、認知度を上げて「ボンボンTV」のブランディングを確立することがなにより優先されるはずだ。
しかし、正直なところ、人気YouTuberを引っ張り出してきてもつまらないコンテンツはつまらない(プレゼンで上映した、HIKAKINがオカリナを吹いたり、木下ゆうかが下手な絵を描く動画などどこが面白いのかさっぱりわからなかった)。松下部長の言う「動画で表現するマンガ」や「青い鳥文庫」を活用したコンテンツ、そしてボンドとボン太、巨人くんが「おもしろくて、ためになる」コンテンツをどれだけ提供できるかにかかってくるだろう。
記者発表から1日経ち、「ボンボンTV」を見た。視聴回数は3万回を超えている。動画の数も20を超えている。動画にもよるが、コメントを見ると厳しい意見が目につく。米味噌がウンチクを語るショートアニメなど「はぁ〜〜〜〜〜〜〜」「くそ動画にもほどがあるやろ」「なんかこのチャンネル人気出なさそうだな…」等々の酷評が並ぶ。
ただ、こうしたコメントは動画の対象である子供ではなく大人のコメントであり、一部には「ボンボン読者は“俺だけのもの”という意識も強くて、こだわりが強かった印象があります。だから、今回のようなまったく違う形での復活は、正直がっかりですよ」(「アメーバニュース」より)という、往年の『ボンボン』読者からの反発もある。
こうしたコメントが本来の視聴者である子供を遠ざけてしまう危惧もあるので、今後はサイトが荒れないような対策も必要だろう。もちろん、視聴回数の多い「ボンボンクラフト」のように「めっちゃおもしろいです」「久々のなかじぃさんとの掛け合い、おもしろすぎ!!」「毎日の楽しみがまたひとつ増えて嬉しいです♪」など好感触を得ている動画もあるので、新たなチャレンジがどういう成果をもたらすか推移を見守りたい。
https://www.youtube.com/channel/UC6VSFaHYbR-bhNer7DXxGNQ

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3)【本日の一行情報】

双葉文庫「一両列車のゆるり旅」の発売を記念して、著者の下川裕治とカメラマン中田浩資によるスライド&トークショーが8月7日(金)19時30分より西荻窪の「旅の本屋のまど」で開催される。
http://www.futabasha.co.jp/news/index.html#yururi
「のまど」は旅をキイワードにした書店だ。特徴は新刊本、古本を区別することなく同じジャンル、同じ作家の棚に並べていることだ。
http://www.nomad-books.co.jp/
エッジの効いた書店がもっと増えてもらいたいものだ。

プロ野球読売巨人軍鈴木尚広の「失敗することは考えない―走る!盗塁哲学」(実業之日本社)を福島民友が紹介している。鈴木は相馬高校の出身だ。
http://www.minyu-net.com/news/topic/150729/topic1.html

◎新刊の1つ前の「バックナンバー」を「準新刊」と位置づけ、電子雑誌の原則フルコンテンツを月額500円で提供する「タブレット放題」(略称タブホ)を運営するオプティムは佐賀大学から生まれたベンチャーだそうだ。
http://dot.asahi.com/tokyo-it/2015072900024.html

◎宝島社から刊行された「モンスターストライク」攻略BOOK シリーズが、8月の重版をもって、全7冊で累計200万部を突破した。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000185.000005069.html

◎LINEの2015年4-6月期業績。売上額は前年同期比37%の278億円。ただし1〜3月期に比べると1%減である。月間アクティブユーザー数(MAU)は、グローバルで約2億1,100万人。
http://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2015/1042

◎米Facebookの第2四半期(4〜6月)の決算は、売上高は前年同期比39%増の40億4200万ドル、純利益は9%減の7億1900万ドル。日間アクティブユーザー数(DAU)は17%増の9億6800万人、月間アクティブユーザー数(MAU)は13%増の14億9000万人。全世界のネット人口の半分がFacebookを使用している計算になるそうだ。米FacebookからするとLINEは子どもだ。モバイルでの広告売上高は広告売上高全体の約76%を占めている。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1507/30/news049.html

◎オンライン送金・決済サービス「LINE Pay」は、日本円で決済するべきところを米ドルで請求するというミスがあった。
http://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2015/1045

◎「LINE GAME」の一部ゲームタイトルを7月31日(金)15:00をもって終了。より成長が加速しているタイトルへ資源を集中させることによって、グローバルゲームプラットフォームとしてのさらなる飛躍を目指すためだそうだ。未使用の前払式支払手段の残高は払い戻される。
http://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2015/1046

◎美術出版社は、蔦屋書店や TSUTAYA の企画・ FC 展開事業、Tポイントによるデータベースマーケティング事業などを行うカルチュア・コンビニエンス・ クラブのグループ会社である、カルチュア・エンタテインメ ントをスポンサーに迎え、8 月 1 日より新体制を発足させた。 「美術手帖」などアートを中心とした雑誌・書籍の出版や関連事業を扱ってきた美術出版社は、刷新にあ たり「ART の出版社から、ART で動かす会社へ」をステイトメントに掲げ、CCC グループのリソースと協 働した多角的な展開を目指すことになる。CCCにとっては良い買い物ではなかったろうか。
http://www.bijutsu.co.jp/bss/pdf/information_20150730.pdf

◎フォッグは、アイドル応援アプリ「CHEERZ」(チアーズ)で培ったノウハウを生かして、主婦と生活社の月刊誌「JUNON」と提携し、「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」と連動した若手男性俳優の応援サービスとして「CHEERZ for MEN」を9月末にリリースする。
http://realsound.jp/2015/07/post-4072.html

バンダイナムコホールディングスや官民ファンド「クールジャパン機構」が共同設立し、アサツー ディ・ケイ電通も出資している海外向けのアニメ配信会社アニメコンソーシアムジャパンKADOKAWA講談社集英社小学館グッドスマイルカンパニーブシロードが出資することになった。
http://www.animeconsortium.jp/news/file/pr07-20150731.pdf

講談社は「週刊少年マガジン」の無料マンガアプリ「マガジンポケット」のリリースを開始した。人気作のスピンオフ作品として「FAIRY TAIL外伝 剣咬の双竜」「ダイヤのB!! 青道高校吹奏楽部」が独占掲載される。
http://www.shonenmagazine.com/special/magazinepocket/

インプレスグループで音楽関連の出版事業を手がけるリットーミュージックは、小学館の「ビッグコミック」連載中の石塚真一によるジャズ漫画「BLUE GIANT」とのコラボフェアを、8 月上旬より全国の楽器店、主要書店にて開催する。出版社の垣根を越えたコラボは、もっとあっても良いと思う。
http://www.rittor-music.co.jp/news/img/RM_BGJAZZ.pdf

小学館から「ビッグコミックオリジナル戦後70周年増刊号」が刊行された。これは買いだ。
https://gunosy.com/articles/RIwCw

◎「NEWS23」のメーンキャスター膳場貴子が再々婚。三度の結婚ともお相手は東大の同級生。
http://www.tokyo-sports.co.jp/entame/entertainment/428010/

◎DoCLASSEのカタログ会員40代〜60代(ミドルエイジ)の女性419名を 対象にネット調査を行ったが、そのなかでファッションの教本である「ファッション誌」を読んでいるかを質問したところ、夫の91.4%が「ファッション誌」を読んでいないと回答している。
http://www.doclasse.com/images/pr/pdf/2015_0728.pdf
別に驚くに値する調査結果ではあるまい。10万部の男性ファッション誌なんて存在しないのだから。50代にもなってファッション誌にうつつを抜かしている奴は、端的に言ってバカかマヌケでしょ?50代と言やあ「文藝春秋」程度は読んでしかるべき年代なんじゃないの。

◎次のような博報堂ケトルの嶋浩一郎の見解には同意できる。
Amazon村上春樹の本が見つかっても、『ありがとう! Amazon』とは思わないじゃないですか。だから、そういう意味において、マーケティングしすぎる雑誌は、既存の欲望にしか応えていないわけです。本来、雑誌という媒体は、既存の欲望に対して応えるよりも、人々に新しい欲望を発見させるということで機能すべきものだと思いますね」
http://top.tsite.jp/news/magazine/i/24772608/

集英社は、毎月5日・20日発売の少女マンガ誌「マーガレット」の2号分を1冊にまとめた電子雑誌「にこいちマーガレット」のリリースを開始した。価格は556円(税別)。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1508/01/news017.html

◎新感覚のアイドル雑誌「UPDATE girls」が創刊されたが、これはカルチャー/ライフスタイル誌「EYESCREAM」を発行するスペースシャワーネットワークとぴあの協業による。
http://tokyopopline.com/archives/46100

文藝春秋プロモーション部若手社員による「火花」製作中のツイート。
https://twitter.com/bunshun_senden/status/623786585360719872
https://twitter.com/bunshun_senden/status/623705242723483649
https://twitter.com/bunshun_senden/status/623702529851789312
https://twitter.com/bunshun_senden/status/623700774980227072

中川淳一郎が「NEWSポストセブン」で「東京五輪のエンブレムにおける『パクリ騒動』」でデザイナーの佐野研二郎が炎上した一件を取りあげている。
「今回、業界人は佐野さんをネット上で優しく擁護するものの、押し寄せるアンチとはケンカをしない、というスタンスで情報発信をしました。そして傷ついたら身内に慰めてもらう。このあまりに紳士的振る舞いが普段のネットの風景とは異なり、私の目からは『広告人と一般社会の乖離』を感じる結果となりました」
マスコミという村社会でメシを喰っていると、私の言い方からすれば「垂直軸のコミュニケーション」が常態化してしまうのである。中川は、こうも書いている。
「私も博報堂出身ですが、『生活者発想を持て』と常に言われていました。でも、タクシーに乗るのは当たり前。新入社員の頃から山手線内のオートロック付きマンションに住むのもフツーのこと、といった感覚を味わっていただけに、『生活者』のことなんて分かっていなかったんだな、としみじみ今回の騒動を見て思うのでした」
http://www.news-postseven.com/archives/20150801_339957.html

又吉直樹芥川賞受賞後初となるエッセー原稿が掲載されるというだけで、8月7日に発売する「文學界」9月号の増刷を文藝春秋は発売前に決定した。初版で通常号の2倍となる2万部を発行する予定だったが、さらに1万部を増刷する。
又吉が受賞の記者会見に向かうタクシーの中で担当の浅井茉莉子が「注文が殺到すると思いますけど、第一作のエッセイは文學界にお願いします」というのを密着映像で見たが、自然で嫌みがなく好感が持てたものだ。
http://www.daily.co.jp/society/culture/2015/08/02/0008267554.shtml

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4)【深夜の誌人語録】

言い訳とは責任転嫁であり、責任転嫁とは卑怯であり、卑怯の本質は怯懦にほかならない。