【文徒】2016年(平成28)6月10日(第4巻107号・通巻794号)

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1)【記事】女性ファッション誌の「これから」を考えるにあたって
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】女性ファッション誌の「これから」を考えるにあたって

小学館の大西豊取締役は「DIGIDAY」で次のように語っている。
「モバイルと動画を中心としたニューメディアの領域で、レガシーメディアは何も通用するものを持っていません。女性向けのキュレーションメディアの『MERY』は、たくさんの女子大生ライター群をかかえ、普通にSEOライティングやっていて、SEO専門のチームが記事をまとめています。それに対し雑誌側サイトのほとんどは、ライターに書いてもらって、それをアップするだけ。入稿して校了したらおしまい。既存の出版社のやり方です。これでは対抗できるはずがない」
http://digiday.jp/publishers/shogakukan-onishi-pricing-digital-content/
最近、私は女性ファッション誌の衰退現象を目の当たりにして、「マス(=読者)、メディア(=雑誌)、コンテンツ(=目次)」を三種の神器とするような従来型の思考パターンから解放されたほうが良いと考えるようになった。女性ファッション誌が担って来たビジネス領域において「これまで」の破壊なしに「これから」は切り拓けないのではないだろうか。
例えば、「ニッチ、コミュニティ、サービス」をキイワードに選択して、「これまで」の立ち位置を捨てて考えてみるのであれば、ビジネスモデルは「広く、浅く」から「狭く、深く」に転換しなければならないのかもしれない。まあ、そうした思考実験を簡単に実践できるのがインターネットという新大陸なのである。石橋を叩いて渡る時代は終わったのだ。

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2)【本日の一行情報】

◎「文學界」7月号の特集は「民主主義の教科書」。言わずと知れた文藝春秋の文芸誌だが、柄谷行人のインタビューに始まり、まるで岩波書店の雑誌のような内容である。
http://www.bunshun.co.jp/mag/bungakukai/bungakukai1607.htm

電通の海外本社「電通イージス・ネットワーク」は、オーストラリアの有力デジタルマーケティング・エージェンシーである「Scorch Pty Ltd」(スコーチ社)の株式51%取得で合意した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2016071-0607.pdf

リクルート住まいカンパニーが運営する「SUUMOハウスサービス」は、6月8日(水)より、主婦の友社とウィルゲートが運営する「暮らし二スタ」に記事コンテンツの提供を開始した。
http://www.recruit-sumai.co.jp/press/2016/06/kurashinista-teikei.html

文藝春秋から「春画入門」、小学館から北斎春画を短編小説に超釈した「北斎春画かたり」、実業之日本社から古典落語を題材にしたミステリー小説「えんま寄席」と精力的に活動をつづける車浮代のトーク&サイン会が6月24日(金)午後7時から紀伊國屋書店 新宿本店8階イベントスペースで開催される。
http://www.j-n.co.jp/event/?article_id=346

◎「週刊文春」の新谷学編集長は、情報の送り手と受け手の力関係が圧倒的に変わりつつあることを理解している。
http://toyokeizai.net/articles/-/119188

町山智浩ツイッターで次のように断言している。
「自由と反逆のカウンターカルチャー雑誌だった宝島の編集者だった私は、『在日特権』などのヘイト出版に変貌した現在の宝島社に対しては一切協力しないと既に通告してあります」
https://twitter.com/TomoMachi/status/740207650906873857
「それも私や石井慎二編集長が宝島社から離れてから十年近く後の本です。石井さんは80年代に別冊宝島で日本人の差別意識を変えようと戦っていました。だから私はヘイト出版社に変わってしまったその後の宝島社に怒っているんですよ」(引用者注・文頭の「それ」は「同和利権の真相」を指す)
https://twitter.com/TomoMachi/status/740333205992005633
宝島社は町山の指摘するように「70年代80年代のカウンターカルチャーオピニオンリーダーだった」わけだが、今の若い読者はそんなことは知らないことだろう。何しろ、ここの社長さんは若いころ「早稲田のレーニン」って呼ばれていたからね。社長さんも、亡くなった石井慎二も「週刊現代」の記者出身である。

◎学研プラスは、6月9日(木)・10日(金)にインテックス大阪を会場とする「第11回 関西エクステリアフェア2016」に、日本唯一のDIY・日曜大工誌「ドゥーパ!」の特別展示&DIY体験コーナーを出展した。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000702.000002535.html

◎6月30日(木)及び7月1日(金)に開催を予定していた「来日50周年記念 日本武道館公演 ザ・セッションズ 〜ザ・ビートルズ at アビイ・ロード・スタジオ〜」が中止となった。
http://sessions-japantour.com/
編集を稼業とする者にとって竹中労の「ザ・ビートルズレポート」は必読文献である。
http://www.wave-publishers.co.jp/np/isbn/4900528587/
(リンクは1995年WAVE出版刊の復刻版。原本は1966年8月発売の『話の特集』臨時増刊号)

◎「元新聞記者の出版社社長」という条件に該当する「ファクタ」の阿部重夫は「舛添氏と会ったこともない」そうだ。
http://facta.co.jp/blog/archives/20160608001323.html
J-CAST」は出版社20社以上に聞いてみたという。
聖教新聞記者出身で第三文明社の大島光明社長(第三文明社は否定)とか、新聞社系出版社の社長も「元新聞記者の出版社社長」という条件には該当するのだが、中央公論社讀賣新聞出身)が明言を避けた以外、メジャー系は全否定。
http://www.j-cast.com/tv/2016/06/08269027.html
まだ、経済誌を出している会社などいくつか候補が残っているが、2年連続して正月に千葉のホテルまで舛添に会いに行く出版社社長って……。

◎「東洋経済オンライン」が掲載した元CIA上級分析官ケント・ハリントンによる「トランプ旋風をあおった米テレビ局の『愚』」の次のような指摘は鋭い。
「視聴者の減少と収入の低迷に悩まされてきた既存の放送局にとって、政治広告の増加は利益の増加につながる。インターネットのニュースサイトやソーシャルメディアに押されていた従来型メディアは、トランプの異様な行動を、視聴者を引きつけて純利益を増やすのに有効活用できると、すぐに理解した」
http://toyokeizai.net/articles/-/119870

ダイヤモンド社Apple社のAppStoreで配信して来たiPhoneiPad向けの「電子書籍アプリ」、電子書店アプリ「ダイヤモンドブックス」および「中谷彰宏文庫」の配信を5月31日をもって中止した。
http://www.diamond.co.jp/information/digital/201604011454.html
これによりダイヤモンド社様の技術供与を受けて開発して来た、「有斐閣判例六法Reading」は提供を続けることができなくなったそうである。コンテンツの販売は現在販売中の平成28年版までとし、また、配信も2016年11月30日をもって終了となるそうだ。
http://www.yuhikaku.co.jp/static/hr_reading/hr_reading_info.html

サントリー缶チューハイ「ほろよい」3種が韓国で発売されることになった。
http://japanese.joins.com/article/669/216669.html

プロ野球巨人の元球団代表清武英利が執筆に関わった「会長はなぜ自殺したか」の復刊を巡り、読売新聞東京本社七つ森書館に出版差し止めなどを求めた訴訟で、最高裁は、出版社「七つ森書館」(東京)の上告を退ける決定をし、読売新聞東京本社の勝訴が確定した。
http://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2016/06/08/kiji/K20160608012744641.html

◎モデル・近藤千尋の初めての書籍「ちぴ本」(主婦の友社)の出版を記念して、近藤から直接サイン本の手渡しと、ウェディングドレスを着た近藤と一緒に写真撮影ができるイベントが7月2日(土)、SHIBUYA TSUTAYA 6F BOOK売場で実施される。
http://corporate.shufunotomo.co.jp/info/9700/

楽天はイギリス、スペイン、オーストリアのeコマース事業を閉鎖する。
http://jp.techcrunch.com/2016/06/08/20160607rakuten-to-exit-the-uk-austria-and-spain-as-global-retrenchment-continues/

BBC NEWS JAPANの「なぜ日本は難民をほとんど受け入れないのか」。
http://www.bbc.com/japanese/video-36476470

東京大学大学院情報理工学系研究科 ソーシャルICT研究センターでは、産学で連携したライフスタイル個人認証に関する5万人規模の実証実験「MITHRA Project」(ミスラ プロジェクト)を小学館およびLink-Uの漫画アプリ「マンガワン」、凸版印刷のチラシアプリ「Shufoo!」といった多数の利用者がいる商用サービスと協力して2017年1月に実施する。
http://www.paymentnavi.com/paymentnews/57931.html

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3)【深夜の誌人語録】

自己犠牲をともなうサービス精神を気配りという。