【文徒】2017年(平成29)年2月2日(第5巻20号・通巻949号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】「買われた記事 電通グループからの『成功報酬』」を調査報道メディア「ワセダクロニクル」が掲載(岩本太郎)
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2017.2.2 Shuppanjin

1)【記事】「買われた記事 電通グループからの『成功報酬』」を調査報道メディア「ワセダクロニクル」が掲載(岩本太郎)

「ワセダクロニクル」(早稲田大学のジャーナリズム研究所)が《買われた記事 電通グループからの「成功報酬」》という記事を2月1日付で掲載した。共同通信により全国の新聞に配信した記事が実は電通のグループ会社によって「買われて」いた――というのだ。記事はこうだ。
脳梗塞(こうそく)の予防に使う「抗凝固薬(こう・ぎょうこやく)」の記事をめぐり55万円のカネが動いていたことを示す資料を入手したのが始まりだった。資料を見ると、カネを払っていたのは、製薬会社の仕事を請け負った最大手の広告代理店、電通のグループ会社。カネをもらっていたのは、全国の地方紙に記事を配信する共同通信のグループ会社だ。》
電通側で関わっていたのは、電通と、100%子会社の電通パブリックリレーションズ。共同通信側では、記事を配信した報道機関の一般社団法人共同通信社(社団共同)と、100%子会社の株式会社共同通信社(KK共同)。》
「ワセダクロニクル」は電通の内部資料(メモ)を入手し関係者に取材もしているという。
http://www.wasedachronicle.org/articles/buying-articles/1/
共同通信は「共同通信と執筆者は対価を受け取っておらず、『買われた記事』の表記は事実を歪曲(わいきょく)している」と抗議している。
http://mainichi.jp/articles/20170202/k00/00m/040/075000c
津田大介や、朝日新聞記者の神田大介、西本秀らもさっそくTwitter上で期待を表明している。
https://twitter.com/tsuda/status/826623229850705920
https://twitter.com/kanda_daisuke/status/826636574607699969
https://twitter.com/xibenxiu/status/826712455271165955
早稲田大学のジャーナリズム研究所は、早稲田大学総合研究機構の承認のもと、一昨年の4月に設立された研究所。米国の大学に見られる大学を拠点にした非営利のジャーナリズム組織のような調査報道活動を行いつつ、そこを実践の場としてジャーナリスト志望の学生たちの育成を図ることなどを目標にしている。
http://www.hanadataz.jp/w1/01/in/in.html
「ワセダクロニクル」(早稲田調査報道プロジェクト)は同研究所のプロジェクトで、「特集・調査報道ジャーナリズム」第1シリーズ・第1回が同記事である。
http://www.wasedachronicle.org/about/
https://www.facebook.com/WasedaChronicle
https://twitter.com/WasedaChronicle
https://www.youtube.com/channel/UC_NHP59LMl5GNSUgZWBNWQQ
「ワセダクロニクル」編集長の渡辺周は1974年生まれ、早大政経学部から日本テレビ朝日新聞を経て昨年3月に朝日を退社して現職。朝日では高野山真言宗の資金運用、製薬会社から医師への資金提供、「プロメテウスの罠」(チーム取材)などを手掛けた。
http://www.wasedachronicle.org/editor-in-chief/
ジャーナリズム研究所所長の花田達朗は、1947年生まれ早大政経卒、東京大学新聞研究所助教授、社会情報研究所教授、大学院情報学環長などの後現職。近年は、「いいがかり―原発『吉田調書』記事取り消し事件と朝日新聞の迷走」(七つ森書館、2015年)の編集代表を鎌田慧森まゆみと一緒に務めている。
http://www.f.waseda.jp/hanada/sub1.html
上記の「買われた記事」は続報の発表を目指すとのことだが、「ワセダクロニクル」では現在、取材のための資金をクラウドファンディングにて募集中だ。
https://motion-gallery.net/projects/waseda-journalism

                                                                                                                        • -

2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎『ブルータス』の次号(2月15日発売号)特集は『平凡』休刊から30周年を記念した「平凡ブルータス」。かつて文芸誌から大衆娯楽誌アイドル雑誌と変遷した歴史のアーカイブのほか、Hey! Say! JUMPAKB48などが活躍
する今の時代に『平凡』を作ったらどうなるか? といった記事も盛り込まれるらしい。

http://magazineworld.jp/brutus/brutus-next-840/
http://ro69.jp/news/detail/155470

◎吉原に昨年オープンした遊郭関連本などの専門書店「カストリ書房」は意外にも女性客が6〜7割で、それも20〜30代の若い層が中心だという。社会デザイン研究者の三浦展が、同書房店主の渡辺豪へのインタビューもまじえつつ『東洋経済ONLINE』でレポートしている。
http://toyokeizai.net/articles/-/156078

◎かつて『週刊新潮』編集部で作家・松本清張を担当した堤伸輔が、清張のチューリヒへの取材旅行に同行した際のエピソードなどを披露。取材現場ではメモをほとんどとらない代わりに、連日深夜まで克明な取材日記をつけることを常としていたそうだ。
http://gqjapan.jp/culture/bma/20170130/detailed-diary-seicho-matsumoto

◎下北沢の「本屋B&B」が銀座のソニービルで昨年11月からの5ヵ月間限定で開店している「本屋EDIT TOKYO」もまもなく終幕。夜19〜21時のトークイベントも連日開催中で、明日
3日には『Pen』編集部の佐藤俊紀をトークゲストに招いた「雑誌『Pen』はなぜ国際版を出版した? 日本のカルチャーを語るトークイベント」が開催されるそうだ。
http://www.edit-tokyo.com/
http://www.ohtabooks.com/qjkettle/news/2017/02/01074733.html

◎インターネット上の古書店「書肆吾輩堂(しょしわがはいどう)」はこの2月で開店4周年。元北九州市立美術館学芸員で福岡市在住の大久保京(みやこ)が開設したもので、現在の所蔵本は小説、写真集、絵本、動物学の専門書など約5000冊。屋号は夏目漱石の「吾輩は猫である」、猫のロゴは歌川国芳の浮世絵に由来。美術館時代には国芳展に携わっていたそうで、「HPのセンスが良くないとネット書店はやっていけない」との考えから国芳著作権切れの絵を元にデザイナーにロゴを作ってもらったところ、開店した途端に取材が殺到。3年前には出版社からの誘いで著書も出したとのこと。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/f_kitakyushu_keichiku/article/305133

佐渡島庸平の「コルク」にも今や入社志望者が大勢問い合わせてくるようになったそうだ。
《今年は1500人ぐらいの学生にぼくが会って話を聞き、学生の考えをつかんで採用をしていきたいと思っている》
http://withne.ws/2jit88i

日経広告研究所がこのほどまとめた予測によると、国内の2017年度(17年4月〜18年3月)の国内企業の広告費は対前年度比2.2%増。インターネットが14.9%増の一方で、新聞は4.2%減、雑誌は5.7%減だが、減少幅は縮小すると見込んでいる。
https://www.nikkei-koken.gr.jp/research/research.php?research=0&recno=711
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO12377730R30C17A1TI5000/

リクルートが初めて公募社債を発行した。発行予定額は今後2年間で最大2000億円。

http://www.nikkei.com/article/DGXLZO12375330R30C17A1DTB000/

◎「cakes」「note」を運営するピースオブケイク電子商取引(EC)サイト運用サービスなどを行うイードと1月30日付で資本提携
https://www.pieceofcake.co.jp/n/n120061f0254d
http://www.iid.co.jp/news/press/2017/013001.html
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO12377850R30C17A1TI5000/

                                                                                                                        • -

3)【深夜の誌人語録】(岩本太郎)

「言葉の暴力」に無自覚な者は、やがて自らを言葉でパンチドランカーにしてしまうだろう。