【文徒】2017年(平成29)年5月2日(第5巻82号・通巻1011号)

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1)【記事】「ニコニコ超会議」はネット参加者が減少も、新星「マストドン」に熱い注目(岩本太郎)
2)【本日の一行情報】

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1)【記事】「ニコニコ超会議」はネット参加者が減少も、新星「マストドン」に熱い注目(岩本太郎)

幕張メッセで4月29・30日に開催された「ニコニコ超会議2017」には私も足を運んだが、どうやら盛況のうちに終わったようだ。2日間の会場総来場者数は15万4601人、ネット総来場者数は505万9967人にのぼったという。
ただ、リアル来場者数が年々増加して今回も過去最高記録を更新した一方、ネット来場者数は2年前をピークに減少しており、今回も約240万人減少した昨年からさらに約50万人下回る結果となったそうだ。ネットメディアの『KAI-YOU』は《次回の「ニコニコ超会議2018」については、現在のところ開催のアナウンスがされていない。例年「超会議」終了と同時に、翌年の開催が告知されていただけに、ユーザーの間でも疑問の声が上がっている》と報じている。
http://kai-you.net/article/40900
そうした中、ネットユーザーの間では、やはり4月に入って俄かにネット上で話題に上がり始めた新SNSマストドンMastodon)がひときわ多くの注目を集めていたようだ。「ニコ超」主催者のドワンゴも4月19日に「friend.nico」というインスタンス(サイト)を立ち上げたほか、単独で立ち上げた日本語でのインスタンス「mstdn.jp」が人気を博した大学院生「ぬるかる」が4月21日にドワンゴへの入社を公表。「ニコ超」にも来場するということで前景気もさらに盛り上がったようだ。
当然、場内にはドワンゴによるブースも設けられていた。「ぬるかる」共々、ドワンゴの社員として「friends.nico」に携わっているmasarakki、ezoeの2人も、前記『KAI-You』のインタビューで思いを語っている。表題は《「Twitterが死ぬ日に備えて」ドワンゴマストドン開発者インタビュー》。
http://kai-you.net/article/40884
「500文字で書けるTwitter」「運営するのがTwitterのような企業1社によるのではなく、オープンソースを使って誰でも自由に立ち上げ、互いに連携することができる」というあたりが、マストドンについての今のところ最も一般向けの説明になるらしい。とはいえ、実際にブースを訪ねると、そこはまだ草創期ゆえ平たく言えば「マニアの世界」。素人にはまだまだ敷居が高そうな雰囲気だったのだが、来場者たちに話を聞くと「パソコン通信の草創期の盛り上がりと雰囲気がよく似ている」との答えがいくつか返ってきた。
ユーザーたちの手による草の根レベルで今後育まれていく中で、やがて本当に“ポストTwitter”のような存在になるのではないか、その時期はかなり早くやってくるのではないか……といった予感はユーザーたち自身も持っているようだ。以下の手記やインタビューなどからも、そうした高揚感が伝わってくる。
https://news.yahoo.co.jp/byline/ishitanimasaki/20170428-00070364/
http://getnews.jp/archives/1720828

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎『週刊ダイヤモンド』のスクープ、JAグループ京都のコメ産地偽装疑惑(2月18日号掲載)を、『PRESIDENT Online』が批判。同記事をめぐっては既にダイヤモンド社を民事で提訴しているJA京都側の担当者や農業関係の新聞記者らに取材したほか、当のダイヤモンド社にも問い合わせたうえで《ダイヤモンド誌「面白いネタ至上主義」に重大疑惑》とのタイトルで報じている。
http://president.jp/articles/-/21989
昔からの出版業界関係者ならば、かつて『プレジデント』が1963年4月に米タイム社との提携による「ダイヤモンド・タイム社」から創刊され、同社が1977年4月に「プレジデント社」に改称した――という、現在の一ツ橋グループ傘下に移るより遥かに以前の沿革に思いを致すことだろう。

インプレスR&D代表の井芹昌信が、出身地の熊本を昨年4月14日に襲った大地震での体験を綴った書籍『熊本地震体験記 −震度7とはどういう地震なのか?』のほぼ全文が、同社によりウェブ上で無料公開された。
http://nextpublishing.jp/shinsai-document/taikenki
http://www.impressrd.jp/news/170427/NP
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/1057251.html

◎マガジンハウスで『Olive』や『Hanako』などの編集長を務めた椎根和のプロデュースで、立木義浩・桑原史成・ムトー清次・与田弘志という現代写真家4人の作品を集めた「現代写真の4つの源流展 ーその珠玉の12枚ー」が、今日2日から27日まで西麻布の「ギャラリー イー・エム」で開催される。
http://www.takeuchi-studio.jp/gallery_em/schedule.html
http://www.fashionsnap.com/news/2017-04-28/4tsunogenryuu-ten/

◎関西の出版社などが結成し、がん患者支援イベントへの参加や募金活動を5年前から続けているという「チーム闘病記」が、自費出版を中心に一般の人々の闘病記を約400冊展示する「闘病記フェス」を、明日3日から5日まで大阪・近鉄百貨店上本町店の文化サロンで開催する。
http://sksp.biz/mae.html
http://www.asahi.com/articles/ASK4X454HK4XUBQU00K.html

◎「自己責任」に続き、先月25日の「東北でよかった」発言で遂に復興相辞任に追い込まれた今村雅弘が、実は同日に岩手県が出資する第三セクター三陸鉄道」より、ふるさと納税への感謝の証である「三鉄オーナー証」を同社社長より復興庁で授与されていた。これについて共同通信PRワイヤーより配信された記事は、不測の事態を受けて即座に削除された模様。
https://nomatome.info/articles/QXJ0aWNsZTpodHRwOi8vcHJ3Lmt5b2RvbmV3cy5qcC9vcG4vcmVsZWFzZS8yMDE3MDQyNDExNjQv
https://www.j-cast.com/2017/04/26296622.html?p=all

島根県議会議員で民進党島根県連代表でもある和田章一郎が架空の領収書で政務活動費140万円を受け取っていたことをNHKが4月17日にスクープ。その4日後、NHK松江放送局の取材チームがスクープに至るプロセスを公表した長文記事「僕らはこうして“不正”を見つけた 180日の調査報道」がネット上で反響を呼んでいるそうだ。確かにこうした通常ニュースでのスクープの舞台裏をNHKが公表するのは珍しい。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170421/k10010956921000.html
https://news.yahoo.co.jp/byline/yanaihitofumi/20170429-00070430/

◎神奈川県大和市に昨年11月、図書館のほか芸術文化ホールやこども広場などを併設してオープンした公共施設「シリウス」は利用者を規則で縛らない方針らしい。館内のスターバックスで買ったコーヒーや持ち込みの飲料を飲みながら館内のどこでも図書館の本が読めるとか。開館までの経緯や、そうした運営方針を採った理由について日経BPのサイト『新・公民連携最前線』でライターの茂木俊輔が、指定管理者「やまとみらい」の担当者などに取材のうえレポートしている。
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/tk/PPP/report/030600037/

◎ビデオリサーチによる視聴率調査のサンプル数が関東地区では昨年10月以降、従来の600から900へと拡大。今年10月からは関西・名古屋地区でも変更されるという。それでもなお、世帯視聴率が10%という結果の場合に±2%(本当の視聴率は8〜12%)の“誤差”が出る。
http://biz-journal.jp/2017/05/post_18910.html
こうした実態は既に大昔から変わることはないが、それでも誤差のある視聴率が民放テレビ業界では広告取引における、いわば“通貨”として今も使われている。ようするに「視聴率本位制」だ。

Wikipediaの生みの親でもあるジミー・ウェールズが先月25日に新たなオンラインメディア「WikiTribune」を開設。ジャーナリスト10名を雇用するべくクラウドファンディングを目下実施中で、資金や人員などの体制が整い次第、英語でのニュース配信からスタートさせていくそうだ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/Wikitribune
http://techable.jp/archives/56965
https://japan.cnet.com/article/35100274/

◎米タイム社は複数の買収提案を検討した結果、身売りしないことを決めたと発表した。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGN29H17_Z20C17A4000000/

ブックファーストが渋谷文化村通り店を6月4日をもって閉店すると発表。跡地には、近隣の渋谷宇田川店がビル取り壊しのため3月に閉店していたヴィレッジヴァンガードが入り、7月14日にオープンする予定。
http://www.book1st.net/topics/page1.html#a_818
http://www.village-v.co.jp/news/vvshibuya-honten0714/
http://kai-you.net/article/40917
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1705/01/news074.html
ブックファーストのなかでも、マシな書店として知られていた。マシな書店ほど経営が厳しくなっていく局面を迎えているのかもしれない。