【文徒】2017年(平成29)年6月1日(第5巻101号・通巻1030号)

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1)【記事】フジテレビ情報バラエティー番組「ワイドナショー」が宮崎駿の引退宣言を捏造
2)【記事】加藤哲郎「『飽食した悪魔』の戦後」(花伝社)について
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】フジテレビ情報バラエティー番組「ワイドナショー」が宮崎駿の引退宣言を捏造

フジテレビは、情報バラエティー番組「ワイドナショー」の番組サイトで「お詫び」を発表した。
〈2017年5月28日(日)10:00〜11:15放送の「ワイドナショー」において「宮崎駿『引退撤回』新作長編アニメ始動!」という内容を放送いたしました。
その中で宮崎駿氏の過去の引退に関わる発言としてフリップで紹介した内容が、実際には宮崎駿氏の発言ではなかったことが分かりました。
真偽を確認しないまま放送に至り、宮崎駿氏並びに関係者の皆様、視聴者の皆様にご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます〉
http://www.fujitv.co.jp/widna-show/
読売新聞によれば、フジテレビは「コメントの引用元など問題が起きた経緯を明らかにしていない」。フジテレビは報道番組ではないにせよ、宮崎駿の発言をでっち上げ(=捏造)してしまったのである。
http://www.yomiuri.co.jp/national/20170529-OYT1T50096.html
「ハフポス」は次のように書いている。
「発言がでっち上げられたのは、28日に放送された回。宮崎監督がこれまでに度々『引退宣言』をしたことがあると紹介し、作品ごとに7つ、監督の言葉をフリップで示した。
ところが放送終了後、番組で紹介された発言について『ぼくのネタツイート(当然ながら宮崎駿が言ったセリフではない)がテレビで使われてるんですが』などとあるユーザーがTwitterで指摘。そのツイートが拡散していた」
http://www.huffingtonpost.jp/2017/05/29/wai-do-na-shou_n_16863524.html
「バズフィード日本版」によれば拡散したツイートは「Twitterユーザーのあれっくすさんが、2013年9月に宮崎駿さんが「風立ちぬ」をもって引退することが発表されたときに投稿したもの」であることがわかる。
https://www.buzzfeed.com/jp/takumiharimaya/widna-show-miyazaki?utm_term=.tn5PnBPqn#.vfD49K4o9
視聴率低迷ももちろんそうだが、こうした不祥事が起きるのも、その根っこは同じなのではないか。フジテレビには「手抜き」が横行しているのではないかと疑いたくなるのである。

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2)【記事】加藤哲郎「『飽食した悪魔』の戦後」(花伝社)について

その出版社は新橋にあったと記憶している。私が働いていた業界誌の経営者は「あそこは『政界ジープ』の生き残りだからな」と言った。そのとき、私は初めて「政界ジープ」という暴露雑誌が敗戦直後の日本に存在していたことを知った。
「政界ジープ」を擁する出版社の社長の名は私の記憶によれば、久保俊広であった。久保は企業のスキャンダルをネタに書くぞと脅してはカネを稼いでいたが、結局、逮捕された…そんな話も社長から聞いたと思う。そう私はジャパンポスト時代の久保と名刺交換をしている。
しかし、「政界ジープ」を創刊したのは久保ではなく、二木秀雄であることを加藤哲郎の「『飽食した悪魔』の戦後」(花伝社)で知った。しかも、この二木は医師であり、実は731部隊結核・梅毒の人体実験を企画・実行していた人物であるというのだ。更に、驚くべきことに、二木が「政界ジープ」経営の一線から退いていたのは、薬害エイズ事件でお馴染みのミドリ十字の創業に関わっていたからなのである。ともかく本書は驚かされることの連続なのである。例えば、二木は「毒婦」として有名な高橋お伝の局部をコレクションしていたそうだし、晩年はイスラム教に入信している!こうした人物をノンフィクション作家が見逃しておいて良いはずないのだけれど。
http://kadensha.net/books/2017/201705housyokusitaakuma.html
高橋お伝について知りたければ朝倉喬司の「毒婦伝」(中公文庫)がオススメである。
https://honto.jp/netstore/pd-book.html?prdid=26008770
加藤の「モスクワで粛清された日本人――30年代共産党と国崎定洞・山本懸蔵の悲劇」も読み応えがある力作であったことを思い出す。
http://rr2.aokishoten.co.jp/products/4-250-94016-0

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3)【本日の一行情報】

日本新聞協会が「改正個人情報保護法の全面施行にあたっての声明」を発表した。
日本新聞協会は、個人情報を適正に保護し、国民の権利利益を守ることの重要性は十分に理解している。しかし、懸念されるのは、2005年4月に個人情報保護法が施行されて以降、社会全体に個人情報を流通させることへの萎縮が広がり、個人情報の保護を理由に社会のあらゆる分野で匿名化が進んでいることである。自治会の名簿や学校の連絡網が作れないなど、緊急時に必要な情報の流通が阻害されているばかりか、自治体が災害時に行方不明者等の氏名を公表しなかったり、行政当局が懲戒処分を受けた公務員の実名を隠したり、警察当局が重大事件の被害者を匿名で発表したりすることが常態化しつつある。
2015年9月、記録的な豪雨で鬼怒川が決壊し、洪水被害に見舞われた茨城県常総市が、行方不明者の氏名を公表しなかったことから、安否確認が進まず、救助作業の現場は混乱した。同市が発表した連絡がとれない人の数は変遷し、その後、ほとんどの人と連絡がとれたものの、氏名を公表してさえいれば、情報が集まり、本当に災害に巻き込まれた人の人定が進み、効率的な救助作業や身近な人の安否を気遣う人の安心につながったはずである」
http://www.pressnet.or.jp/news/33ce2018b367a4d937608855fc624a0b3eb633ea.pdf
民放連が「改正個人情報保護法の全面施行にあたっての報道委員長声明」を発表した。
「われわれは、個人情報保護の法制化の議論が始まって以来、同法が『国民の知る権利』と『個人情報の保護』との微妙なバランスの上に成り立つものであることを一貫して指摘し、『表現の自由』や『報道の自由』が不当に制約されることがないよう求めてきました。
しかしながら、法施行以来、法の趣旨や内容に対する誤解や、プライバシー意識の過度の高まりによって、個人情報に対する『過剰反応』や『萎縮効果』が生じたり、行政機関等による恣意的な情報の不開示が起こっています」
https://www.j-ba.or.jp/category/topics/jba102254

◎第70回「広告電通賞」が決まった。総合広告電通賞は2年連続で大塚製薬が選ばれた。「新聞広告電通賞」は岩手日報社、「雑誌広告電通賞」は帝国ホテル、「ラジオ広告電通賞」は大日本除虫菊、「OOHメディア広告電通賞」はヤフー、「デジタルメディア広告電通賞」は江崎グリコ、「アクティベーション・プランニング電通賞」は森永製菓、「イノベーティブ・アプローチ電通賞」は資生堂
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2017069-0530.pdf

電通は、ヤフーが今年5月に発表した、新たな広告取引プラットフォーム「Yahoo!アドエクスチェンジ」の利用を7月より開始する。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2017070-0530.pdf

ブルームバーグ・メディア・グループはヤフーと、動画コンテンツ提供のパートナーシップ契約を締結した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000026.000012467.html
デジタル領域において「日本的特殊性」を象徴するのが9,000万人の日次ユニーク・ブラウザ数を誇るヤフーの存在なのではないだろうか。ちなみに私は「ヤフー」を全く使っていない。

日本経済社ジーニーは、ジーニーのマーケティングオートメーションツール(=MAツール)の「MAJIN」)とLINEを連携させた新たなMAツールを共同開発し、6月1日より提供を開始した。
https://geniee.co.jp/news/20170529/40

講談社女性誌「with」が「結婚できるSEX」を大特集。「codigi」版スペシャルコンテンツでは、「with」本誌では過激すぎて自主規制した「もっと結婚に近づくSEX」を120ページに及んで掲載している。
https://www.j-cast.com/trend/2017/05/30299206.html?p=all
http://withonline.jp/entertainment/5759
http://www.joseishi.net/codigi/
日本人は男も女も、老いも若きもセックスが好きなんだなあ、たぶん…恐らく。

◎KADOKAWA、マーベラスアイディアファクトリーの3社は、共同企画「『戦ブラ』プロジェクト」の第一弾としてスマホ向けゲームアプリ「戦刻ナイトブラッド」を5月29日より正式にサービスを開始した。
http://ir.kadokawa.co.jp/topics/20170529_s6b5w.pdf

リクルートが2020年東京五輪パラリンピックのオフィシャルパートナー契約を締結した。
https://dentsu-ho.com/articles/5188

◎日販が決算を発表。連結売上高は6,244億円で、前年に対し2.4%減、154億円の減収となった。
原価率は、利益率の高い商材の取り扱い拡大で改善したものの、販売費が、輸配送効率の悪化や下請費の高騰などで増加し、利益構造の悪化を招いた。グループ全体で固定費を圧縮し、利益回復に努めたが、営業利益は22億円、5.2億円の減益となり、経常利益は24億円、8.8億円の減益となった。
日販単体では営業増益だったが、子会社の利益が積みあがらず、連結ベースでは営業減益に転じた。グループ書店の不採算店舗や3月31日で事業終了した日販図書館サービス(NTS)、業務移管により減収となったOKCなどが利益を押し下げた。 ちなみにグループ書店の売上高は671億円と3.2億円の減収となった。既存店は総じて店頭販売が不振で、不採算に陥る店舗も少なくなかった。新規出店は10店舗、廃業店は25店舗だった。
http://www.nippan.co.jp/wp-content/uploads/2017/05/kessan_2016.pdf
日経は次のように書いている。
「配送会社に支払う費用などを含む販売費は3.4%増の262億円に増加。トラックに出版物をどれだけ詰められたかを示す『積載率』は徐々に下がり続けており、採算割れに近い『4〜5割に低下している』(安西浩和専務)と打ち明ける」
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ30HXG_Q7A530C1000000/

◎2016年11月に米シアトルにオープンしたアマゾンの37階建ての新しい本社ビル「Day 1」が紹介されている。「Day 1」という名前の由来は、アマゾンのCEOジェフ・ベゾスのモットー「it's always day 1」(毎日が1日目)にちなんでいる。「毎日が1日目」とは初心忘るべからず、だよな。
https://www.businessinsider.jp/post-33669

◎柚木麻子の「伊藤くん A to E」(幻冬舎)が岡田将生木村文乃主演で映画化される。
http://www.gentosha.jp/articles/-/7978

◎アイドルやアーティストとインターネット上でコミュニケーションが楽しめるライブ配信プラットフォーム「SHOWROOM」は、光文社の新雑誌「bis」のモデルを募集する「【SHOWROOM枠 予選A】雑誌『bis』モデルオーディション」を開催する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000026205.html

◎ナビプラスは、同社が開発・提供するパーソナライズド・レコメンドサービス「NaviPlusレコメンド」のABテスト機能を提供開始したが、集英社の公式ファッション通販サイト「FLAG SHOP」のレコメンドロジックの改善に「NaviPlusレコメンド」のABテスト機能が採用された。
http://www.naviplus.co.jp/news/2017/05/30/8416.html

◎「日刊サイゾー」が掲載した「渋谷から、またひとつ書店が消える……『ブックファースト』消滅と“渋谷カルチャー”終焉への嘆き」は次のように書く。
「書籍や雑誌の売り上げが減少するとともに、ここ10年ほどで次々と姿を消すこととなった渋谷駅周辺の書店。現在営業している渋谷の大型書店といえば、東急百貨店本店7階のMARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店や、前述した渋谷西武1階の紀伊國屋書店渋谷店、渋谷マークシティ1階・地下1階の啓文堂書店渋谷店くらいだ。しかも、かつての大盛堂書店渋谷本店やブックファースト渋谷店のように新刊以外の専門書や学術書が手に入るほどの品揃えではなく、欲しい本がなんでも手に入るとはいい難い状況なのだ」
http://www.cyzo.com/2017/05/post_32935_entry.html

◎グーグルは、子供向けのコンテンツをまとめ、保護者向けの管理機能を搭載したアプリ「YouTube Kids」の提供を開始した。
http://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1062642.html

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4)【深夜の誌人語録】

忘れたいことほど記憶しておこうと思っている。