【文徒】2017年(平成29)年6月13日(第5巻109号・通巻1038号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】 小学館「コトバDMP」が切り拓くブランドビジネスの新たな可能性
2)【本日の一行情報】

                                                                                • 2017.6.13 Shuppanjin

1)【記事】小学館「コトバDMP」が切り拓くブランドビジネスの新たな可能性(岩本太郎)

小学館の「ブランドビジネス説明会」が9日14時半より都内・神田神保町にある同社2階の講堂にて開催された。新社屋がオープンして以来、対外的な催しとしてはおそらく初公開ではないかと思われる講堂は多数の参加者によりほぼ満席の状態(そのためか、講堂とは別に同社ビル3階の別会場でビューイングも行われたそうだ)。
約2時間のプログラムのうち前半の第一部では、さる5月22日付で行われた同社女性メディア局の職制変更(編集部・室を「ブランド室」に変更。ただし『和樂』は和楽事業室、書籍は書籍コンテンツ企画室)についての説明と、各部門の担当者によるプレゼンテーションが行われた(なお、この「ブランドビジネス説明会」はライブ配信され、全編がYouTubeで公開されている)。
https://youtu.be/SiSF8b1dLOQ
第二部ではデジタル事業局の現況、および「その核となる部分」(同局の林正人ゼネラルマネージャー)として小学館がこのほど開発のうえ発表した、言語解析技術を活用した独自のデータマーケティング基盤「コトバDMP」についての説明が約1時間に渡って行われた。
小学館のデジタルメディアはサイト数では40近く、内容的にはコミックから女性誌・ファッション誌、さらには「NEWSポストセブン」のようなジャーナリズム主体のものまで幅広く、アクセス数は月間で約2億2000万PV(5000万UU)に及ぶ。
「コトバDMP」はこれら(現時点では対象サイトは「美的.com」「Oggi」「@DIME」「NEWSポストセブン」など12サイトで随時拡大中)をベースに、ユーザーが興味・関心を示した情報についてキーワード(つまりコトバ)をもとに解析・抽出。その結果と記事の閲覧傾向などから読者ごとのの「興味キーワード」を推定し、そうしたデータを集積してコンテンツマーケティングを支援しようというものだ。その範囲は広告主企業に対する提案からライツビジネス、コンテンツ制作への活用まで広域に及ぶ。
説明はデジタル事業局の山野明登氏(デジタルメディア室)によるプレゼンと、実際に「コトバDMP」を使って先に行われたテストマーケティングの事例をテーマにしたパネルディスカッションとの二部構成で行われた。まず説明に立った山野氏は、構成システムの概要(ブレインパッド、インティメート・マージャー、トレジャーデータの3社が提供)を紹介しつつ具体的な活用方法を解説。導入によりサイトへの来訪者の属性や嗜好性について従来よりも詳しく分析できるようになったことや、来訪者情報の一元管理ができるようになったことなどを挙げた。
例えば「メークアップ」という単語一つで、小学館のサイト全体にOLが何人見に来ているか……といったことが即座に把握できるようになったという。また、これらを広告主企業が持つデータとも掛け合わせることで広告配信媒体の検討、さらにはコンテンツ制作についても活用していくことができるようになったというわけだ。
ちなみに今回のテストマーケティングは2社を対象に行われたが、この日の説明会ではカネボウ化粧品のブランド「コフレドール」との間で実施された事例がテキストとされていた。「コフレドール」のオウンドサイトに「コトバDMP」のタグを設置しながら行った結果、同ブランドにはOL層の訴求が若干弱いことが判明。その結果に基づき、小学館のどのメディアとの相性が良いのか……といった情報分析が行われていったプロセスを解説。最も相性がよいメディアはやはり「美的.com」だったが、意外なとして「NEWSポストセブン」や「Menjoy!」もニュースを拡散するメディアとして有効である、との結果が導き出されたそうだ。
続いて行われたパネルディスカッションにパネラーの一人として登壇したデジタルメディア室の青木岳氏は「ネット広告の界隈では『枠から人へ』といったことがよく言われていましたが、これまで我々にはそれができていませんでした。この『コトバDMP』を活用することで、広告主企業さんには自らのオウンドメディアを通じた施策の中だけではできないことが可能になるメリットを感じていただけるのではないでしょうか」と抱負を語った。
一方、今回のテストマーケティングに参加したカネボウ化粧品の加藤義久氏(メディア企画グループマネージャー)は「弊社は従来から女性誌に対する広告やPR展開は最重点施策の一つとしてきましたが、これまでセグメントした読者のうちの、さらにどれだけの人たちが私たちのコンテンツを見てくれているのかを分析するのが非常に困難でした。
どうすればそれが可能になるかでずっと悩んでいたところに、小学館さんから今回こうしたプロジェクトのご提案をいただき、まさに『これだ!』と思いましたし、実際にやってみてオーディエンスが可視化できたというメリットを感じることができました」など、手ごたえのほどを語っていた。

                                                                                                                      • -

2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎女子高生との飲酒・淫行問題が発覚した俳優の小出恵介へのインタビュー記事を載せた朝日新聞10日付の別刷りテレビ番組特集ページ「beテレビ」が“ドタキャン”。事件を受けて小出への収録済みインタビューは取り消され、「beテレビ」は急遽本紙内の掲載とされたが、その時点で既に「beテレビ」は印刷を終えて販売所に発送されていたことから、一部の地域では配達されてしまったらしい。
朝日新聞は10日付紙面に載せた「読者のみなさまに、おわびします」と題した記事で《各販売所には弊社より事前の抜き取りをお願いしましたが、一部の販売所で作業が間に合いませんでした》《今回のbeテレビは本紙内に掲載しました。このため、ふだんの別刷りと比べて読みづらい点があることをおわびします》などと謝罪。
http://www.asahi.com/articles/DA3S12981357.html
http://www.hochi.co.jp/entertainment/20170610-OHT1T50066.html
https://www.j-cast.com/2017/06/10300292.html

◎5月23日付で産経新聞社の社長に飯塚博彦が専務から昇格する形で就任したことについて、現場記者たちの間から不満の声が上がっているらしい。2011年7月に産経新聞が電子版号外で発した世紀の大誤報江沢民氏が死去」の際に東京本社の編集局長だった。
https://www.news-postseven.com/archives/20170607_561300.html

◎『文藝春秋』7月号にフジテレビ会長の日枝久が登場。森功によるインタビューに応えて、亀山千広が降板するに至った先の社長人事の“内幕”について語っている。それにしてもフジテレビ全盛期に『オレたちひょうきん族』の「ひょうきん懺悔室」で頭から水を浴びせられていた編成局長が今なおトップに君臨していること自体、放送業界にあっても異常なことではある。
http://bunshun.jp/articles/-/2865

◎なおも続く『ビジネスジャーナル』のツタヤ図書館問題追及シリーズ。宮城県多賀城市立図書館をめぐる問題で、かつてCCCの関連会社だった中古本販売サイト「ネットオフ」のデータをもとにした選書で中古本が大量に「新刊」に混入したのではないかとの疑いについて報じている。
http://biz-journal.jp/2017/06/post_19413.html

◎同じく『ビジネスジャーナル』から。東北博報堂の49歳の執行役員が自宅で妻に暴行を働いた容疑で5月に逮捕され、宮城県警からも発表されたものの地元メディアは黙殺、あるいは社名を伏せて短く報じただけだったらしい。
http://biz-journal.jp/2017/06/post_19416.html

◎都内・江戸川区立篠崎図書館の吉井潤館長が『仕事に役立つ専門紙・業界紙』を5月26日に青弓社より上梓。『かまぼこ新聞』『アイスクリーム流通新聞』『接着剤新聞』等々、400紙についての詳細なリストも掲載。図書館のレファレンスやビジネス・就活ニーズにも役立つよう、専門用語を避けてわかりやすく解説しているそうだ。
http://www.seikyusha.co.jp/wp/books/isbn978-4-7872-0064-8
https://mainichi.jp/articles/20170611/ddl/k13/040/074000c

◎紙地図の売上は最盛期の1981年(約910万枚)に比べて今や約20分の1に落ちているそうだ。主要なユーザーだった登山者がスマホ利用へとシフトしてしまったことが大きいようだ。今年2月には地図取次の大手だった日本地図共販も倒産に追い込まれ、もはやスペースをとる紙地図の販売をやめてしまった書店も多い。
http://www.asahi.com/articles/ASK587DH9K58UOOB012.html

神田神保町の老舗古書店「澤口書店」が古本などの買い取りを通じて寄付や募金ができるサービス「ものこころ」を10日から始めた。
http://ganshodo.com/fund/
https://www.atpress.ne.jp/news/129739

電子書籍投稿サイトの『upppi』が全面リニューアル。スマホに最適化した縦スクロール型コミック「タテコミ」とイラストを中心とした女性向けサイトに生まれ変わった。リニューアル第1弾企画として「upppiオトナ乙女漫画コンテスト」を8日より開始。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000026.000022475.html
http://upppi.com/ug/sc/page/201706_otonaotome.html

NHKクローズアップ現代+」が7日夜、「2兆円↑アニメ産業 加速する“ブラック労働”」と題して、依然として深刻なアニメーターの重労働・低賃金ぶりをレポート。もっとも、内容に対してはアニメ業界の関係者などから《論点が混線してしまっている》《広告に頼らないNHKだからこその切り口――広告代理店がどんな役割を果たしているのか、TV局でアニメを放送するために、製作委員会がどれぐらい支払い、あるいは放映権料を受け取っているのか? といったところに突っ込んでほしかった》などの批判が上がっているようだ。
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3987/index.html
https://news.yahoo.co.jp/byline/matsumotoatsushi/20170609-00071888/
http://news.nicovideo.jp/watch/nw2824044