【文徒】2017年(平成29)年6月27日(第5巻119号・通巻1048号)

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1)【記事】朝日&テレ朝の「共謀罪」米教授インタビュー巡る反対派と法案賛成派の誤訳バトルが面白い
2)【本日の一行情報】

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1)【記事】朝日&テレ朝の「共謀罪」米教授インタビューを巡る法案賛成派と反対派の誤訳バトルが面白い(岩本太郎)

6月15日の参議院本会議で可決・成立した、いわゆる「共謀罪」の趣旨を含む改正組織的犯罪処罰法においては、その立法根拠となった国際組織犯罪防止条約TOC条約:通称パレルモ条約)の批准をめぐって、法案反対派から「同条約はテロ対策を目的としたものではない」との主張がなされていた。
朝日新聞も5月5日付の紙面で、同条約が2000年に国連で採択された際に立法作業の指針を示した国際刑法の専門家ニコス・パッサス教授(米ノースイースタン大)にインタビューし、「条約は対テロ目的でない」との趣旨の発言があったとして掲載。テレビ朝日系『報道ステーション』も5月16日に放送した同教授へのインタビューで同じ趣旨の発言があったことを紹介した。
http://www.asahi.com/articles/DA3S12923852.html
これに異を唱えたのがジャーナリストの木坂麻衣子。自らパッサス教授にメールを送って直接やりとりした結果として、「朝日の報道内容は誤訳」との回答を得たとして、《パッサス教授からは「誤引用である」との回答を私宛に得ました。》《朝日新聞並びにTOCの目的を根拠として国会答弁をした皆様、いかがですか?》などと23日付でツイート。自らがキャスターを務める『日本文化チャンネル桜』の同日の番組でも、同教授から届いた回答のメールだという文面を示しながらほぼ同様の主張を展開。
https://twitter.com/kissaka/status/878291087135129600
木坂の夫で経済評論家の渡邊哲也も、木坂が出演した「チャンネル桜」当該番組のYouTube映像を引用(その後、非公開とされた模様)しつつ《テロ準備罪に関する国会質疑 前提条件が捏造だったという事が明らかに 朝日や東京新聞が引用し、野党が利用していたニコスバッサス教授が間違った引用であるとし、パレルモ条約はテロを物質的金銭的に制裁する道具であるとし、全面否定しました》などと同じく23日朝にツイートした。
https://twitter.com/daitojimari/status/878260032390930432
これに対して疑義を呈したのが翻訳家で、民主党参議院議員だった犬塚直史の秘書を務めた経験もある勝見貴弘だった。木坂や渡邊の主張に対して24日0時過ぎに以下の反論ツイートを行い論戦に参入。
《誤った情報を流すにしても正しい英語を使ってくれないものかな。勿論,誤った情報も流さないことに越したことはないが》
https://twitter.com/tkatsumi06j/status/878512820433805313
さらに勝見は自らも件のパッサス教授に問い合わせのメールを送り、《あの [朝日の] 記事は,私の見解を誤って伝えたものではありません》などと返信を受けたことを報告。
https://twitter.com/tkatsumi06j/status/878569647859048448
最終的に木坂は25日早朝のツイートで以下の「お詫びとご報告」をするに至った。
《この度の6/23放送のFrontJapan桜にて「報道ステーション」に関する指摘ですが、私の英語の聞き取りミスにより誤った放送をいたしました。
関係者の皆様ならびに視聴者の皆様には、大変ご迷惑をおかけいたしました》
https://twitter.com/kissaka/status/878903389974781953
なお、勝見は以上のやり取りの一部始終をまとめて以下に紹介している。渡邊からは最終的にブロックされたらしい。
https://twitter.com/i/moments/878583093736521728?utm_content=bufferb80f5&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer
共謀罪」をめぐる報道では元になった国連条約の解釈の違いも、賛成派と反対派の議論が噛み合わない要因となっているが、これもそうした落とし穴に嵌まったケースかもしれない。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

日経新聞が現場の記者たちに対して「取材先の自宅を定期的に夜訪れる”定例夜回り”はやめろ」など、事実上の夜回り制限を命じたと『週刊東洋経済』が報じている。電通過労死事件を契機にメディア界の長時間労働に厳しい目が向くようになり、新聞界でも昨年末に朝日新聞東京本社が、今年5月には日経も労基署から是正勧告を受けるなどの動きが生じたことを意識したらしい。
http://toyokeizai.net/articles/-/177791

◎暴言問題で目下やり玉に挙がっている衆議院議員豊田真由子が「新聞業界から政治献金と議員推薦を受け」てきたと、新聞業界「押し紙」問題などに詳しいジャーナリストの黒藪哲哉が自身のサイト『MEDIA KOKUSHO』で報じている。日販協(日本新聞販売協会)の政治団体「日販協政治連盟政治資金収支報告書」には豊田が2013年度と2014年度にそれぞれ6万円ずつの政治献金を受けたと記録されている。一方で豊田は「活字文化議員連盟」の総会や「税制・再販制度等に関する懇談会」で、新聞に対する軽減税率に賛成する意見を積極的に表明しているという。
http://www.kokusyo.jp/nihon_seiji/11724/

小林麻央の訃報が報じられた23日、夫の市川海老蔵の会見が行われる前に何者かが〈私の姪の小林麻央、先ほど亡くなられたとの第一報。初めて出会ったよく泣く元気な赤ちゃんのときが昨日のよう〉などと、実在する弁護士の名前を騙ったアカウントでツイートし拡散。当の弁護士が《「このアカウントは『なりすまし』であり、小林麻央さんが私の親族という事実も一切ない。」などと釈明を余儀なくされる事態に発展した。本物だと騙された人たちからこの弁護士に批判が殺到し、複数のメディアがこれを報じるまでに至ったらしい。
https://www.bengo4.com/internet/n_6277/

日本テレビ系「金曜ロードSHOW!」で23日に放送予定だった映画『バトルシップ』が伊豆半島沖での米海軍イージス駆逐艦衝突事故を連想させるとの理由で放送中止(別の映画に差し替え)になったことを受け、ネットユーザーたちが放送予定だった時刻にDVDなどで『バトルシップ』を鑑賞しながらつぶやく「祭り」が行われた。同作に準主役として出演した浅野忠信も参加して盛り上がったらしい。
https://www.j-cast.com/2017/06/24301519.html

集英社ライトノベルレーベル「JUMP j BOOKS」が「ジャンプ恋愛小説大賞」を新設し、募集を開始した。選考はJUMP j BOOKS編集長及び編集部が行い、応募締め切りは来年2月末。選考結果は同6月末に発表の予定。
http://j-books.shueisha.co.jp/prize/renai/
https://mainichi.jp/articles/20170625/dyo/00m/200/020000c

◎『&Premium』編集長の芝崎信明とデザイナーの山縣良和(レーベル「writtenafterwards」代表)によるトークディスカッション「ファッションの伝え方」が7月2日14時より、山縣が運営する日本橋横山町のデザイン学校「ここのがっこう」で開催される。
http://magazineworld.jp/premium/premium-info-20170702/

◎ジャーナリストの津田大介と日本近代文学研究者の日比嘉高名古屋大学大学院准教授)の共著『「ポスト真実」の時代  「信じたいウソ」が「事実」に勝る世界をどう生き抜くか』(祥伝社より7月2日刊)の発売を記念し、上記2人をゲストに招いてのトークショーポスト真実の時代をどう生き抜くか」が28日19時より六本木のネオローグで開催される。司会は中川淳一郎だそうだ。
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/01cvpkyz1jgc.html

百田尚樹『今こそ、韓国に謝ろう』のサイン会が7月4日18時半より三省堂書店有楽町店で開催の予定。既に同店の公式サイトや百田自身のTwitterアカウントでも告知されている。
https://www.books-sanseido.co.jp/events/140700
https://twitter.com/yrakch_sanseido/status/875183913592684544
https://twitter.com/hyakutanaoki/status/879201951979720705

◎8日に発売された『WIRED』日本版の第2特集「ポスト・トゥルースとメディアの死」は読ませる。デジタルシフトを絡めた再建策に取り組む「ニューヨーク・タイムズ創業家出身の次期社長への取材レポート「報道の『貴婦人』を守る一族」のほか、ソーシャルメディア上でフェイクニュースが拡散されていく現状を分析した「ニュースは『怒り』で拡散される:分断を生み出すメディアのビジネスモデル」、「世界を動かす嘘の町・マケドニアの『フェイクニュース工場』など、ウェブ版は計7本の論考を掲載。
http://wired.jp/2017/06/25/news-in-crisis/

◎その「ニューヨーク・タイムズ」が25日付の紙面に「トランプ大統領が就任以降についた100の嘘」を掲載した。ネット上に掲載された記事を紙面用にデザインしたもので、同大統領が就任以来これまでに述べてきた「真実ではないこと」を列挙している。
http://www.huffingtonpost.jp/2017/06/25/trumps-lies_n_17294390.html
https://www.nytimes.com/interactive/2017/06/23/opinion/trumps-lies.html

◎学研グループの「ブックビヨンド」が運営する電子出版プラットフォーム「Beyond Publishing」が、全国各地における郷土出版物やガイドブックなどの電子出版を支援する「郷土出版支援サービス」を20日より開始した。第1弾は沖縄県南風原町の印刷会社「近代美術」による電子書籍ポータルサイト「沖縄ebooks」。
https://bpub.jp/okinawa-ebook/top
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000339.000009949.html

高知県立図書館では現在、県内の高松工業高等専門学校の学生が開発したスマホ向け図書館アプリの実証実験が行われているそうだ。館内マップで本の位置を図示したり、図書検索や貸し出し予約、感想メモなどの機能が盛り込まれているとのこと。
http://www.kochinews.co.jp/article/107727