【文徒】2017年(平成29)年7月14日(第5巻132号・通巻1061号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】ソーシャル先進企業シャープの決断
2)【記事】司法の「政治」に巻き込まれた電通
3)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                                • 2017.7.14 Shuppanjin

1)【記事】ソーシャル先進企業シャープの決断

次のような「お詫び」を6月28日に発信した後、シャープ製品公式Twitterが運営を中止してしまった。
「昨日、シャープ製品公式Twitterにおいて、任天堂株式会社様の新製品に関して、不適切な発言をしてしまいました。任天堂株式会社様に多大なるご迷惑をおかけするとともに、皆様に不愉快な思いをさせてしまいましたことを、心からお詫びいたします。
企業アカウントの発言として、節度や配慮、ならびにマナーにも欠け、かつ、その後の対応についても不適切でありましたことを深く反省しております。
今後、このようなことを繰り返さぬよう取り組んでまいりますので、引き続きご支援・ご指導賜りますようお願い申し上げます」
https://twitter.com/SHARP_ProductS/status/879977820650328064
任天堂の「ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン」に関するツイートで炎上してしまったことに端を発する。「KAI−YOU」は次のように書いている。
「面白そうだけど…冷静に、私の思い出(年代的にボリュームゾーン世代より少しずれている事が大きい)を価値に換算していくと…」という文章と共に、収録タイトルそれぞれの値付けを行った価格表を画像にしてツイート(該当ツイートは削除済み)。
シャープ製品公式Twitterの中の人による、ゲームの値付け。例えば『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』が500円、『スーパーマリオカート』が300円、『ファイナルファンタジーⅣ』が0円などと書かれていた。
収録の21タイトル中、実に8タイトルが0円という辛口の値付けであることや、あまりにも私的な価値観かつゲームタイトルを貶めるような内容に受け取れること、そして企業が他社製品をSNSで公然と値踏みする行為に、批判が殺到した」
http://kai-you.net/article/43131
そして、7月11日になるとシャープ株式会社の公式アカウントがシャープ製品公式Twitterが運営を中止することを発表した。
「長らく時間をおいてしまい申し訳ありません。弊社のもうひとつの公式アカウント シャープ製品 @SHARP_ProductS が行なった問題ツイートについて、その後の状況をお伝えしたいと思います」
「別アカウントの発言とはいえ、おなじ弊社内の公式アカウントが行なった問題です。決して無関係と言えるものではありません。そのため @SHARP_ProductS になり代わり、こちらのアカウントからお伝えしますこと、お許しください」
「問題のツイートを行なったシャープ製品 @SHARP_ProductS アカウントは一切の運営を停止いたします」
「長らくシャープ製品アカウント @SHARP_ProductS をフォローくださったみなさまには、これまでの応援を心から御礼申し上げます」
https://twitter.com/SHARP_JP/status/884596137306411008
https://twitter.com/SHARP_JP/status/884597387796168705
https://twitter.com/SHARP_JP/status/884598648947920896
https://twitter.com/SHARP_JP/status/884600238668783616
このようにツイートしたうえで、シャープ株式会社の公式アカウントは「私」を主語にして次のように書いている。
「インターネット、特にツイッターは、だれかが好きなもの、思い入れのあるものを共通項に人々が繋がりあう側面があると、私は思います。だからこそ企業アカウントはどんな時も、だれかの好きや思い入れを否定することは決して許されません。ほんとうに申し訳ありませんでした」
https://twitter.com/SHARP_JP/status/884601698852851712
これ、安倍首相に読ませたい文章だなあ。

                                                                                                                      • -

2)【記事】司法の「政治」に巻き込まれた電通

電通の残業問題に関して東京簡裁が正式な裁判を開くことを決めたことについて新聞は大きく扱っている。
「違法残業事件では、企業が略式起訴されると、簡裁が書面で審理し、罰金刑を科すのが通例。電通事件で、検察が認定した違法残業の時間数や被害者数は、過去の事例と比べて多いとは言えず、検察関係者も『当然、罰金刑の略式命令が出ると考えていた』と話す」(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017071390070238.html
「労働事件で公判が開かれる例は少なく、日本を代表する大企業の刑事責任が正式な裁判で審理されることは極めて異例。労働事件の捜査や企業の労務管理、経営者の意識に今後、大きな影響を与えそうだ」(朝日新聞)
http://www.asahi.com/articles/ASK7D6QBHK7DULFA03H.html
「東京簡裁は今回の判断理由を明らかにしていないが、社会に与えた影響や事案の複雑さなどから、電通の経営幹部らが出廷する公開の法廷で審理すべきだと判断したとみられる」(日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG12H70_S7A710C1EA2000/
電通の事件では、東京簡裁が今後、初公判の期日を指定する。大阪のケースではいずれも社長が出廷しており、今回は、電通の代表者として山本敏博社長(59)が出廷する可能性がある」(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/20170712-OYT1T50067.html
「異例の判断に、略式起訴した検察からは驚きの声が漏れ、労働問題の専門家からは『社会へのメッセージになる』と評価する声が上がった」(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20170713/k00/00m/040/109000c
「ただ、法務省幹部は『争いがない以上、公判はすぐに終わる。あまり意味があるとは思えない』と指摘する。検察幹部の一人は『世間の注目を集めた事件だけに、裁判官のパフォーマンスなのではないか』と語る。争点がない以上、証拠調べで新たな事実が明らかになる可能性は低いという」(産経)
http://www.sankei.com/affairs/news/170713/afr1707130002-n1.html
読売新聞は山本社長出廷の可能性を示唆しているが、ダイレクトマーケティング・ビジネス局に配属された新入社員が過労自殺した際に同局を担当していた執行役員は現在、電通デジタルの大山俊哉代表取締役であるし、ダイレクトマーケティング・ビジネス局長をつとめていた砂子一雄局長とか、デジタル・アカウント部の佐々弘弥部長(当時)あたりは出廷することになるのかもしれない。
いずれにせよ、三権の一角を占める司法もまた時代の空気や雰囲気、気分に「忖度」をするということか…司法の「政治性」ということになるのだろう。

                                                                                                                      • -

3)【本日の一行情報】

エイチ・アイ・エスH.I.S.)は、日経BP社の生活情報誌「日経おとなのOFF」と連携し、林家たい平TRFのSAMが特別ゲストとして参加する「エンジョイライフサミット2017」を長崎・ハウステンボスで9月8日(金)〜9日(土)に開催する。これに伴いH.I.S.は、7月11日(火)よりイベントに参加できるツアーの販売を開始する。パナソニック養命酒酒造が協賛する。
http://www.his.co.jp/material/pdf/n_ev_20170711.pdf
http://www.his-j.com/kanto/corp/group/inspection/nikkeibp_domestic/index.html

◎米タイムが社名変更も含めたブランド再構築を模索しているようだ。
http://jp.wsj.com/articles/SB11455871250446534260804583262324204503736
ニュースの生態系はデジタルシフトで、ここまで激変することになるのか!

◎これは「カーゴニュース」に掲載された記事だ。タイトルは「本が店頭に並ばない!? 危機を迎える出版流通 相次ぐ運送会社の撤退に、急がれる業界横断的な流通改革」。
「宅配業界などでは営業所やロッカーなどへ消費者が荷物を引き取りに来る仕組みが広がりつつあるが、出版物物流においても輸配送に関する根本的な思考転換が求められているのかもしれない。
たとえば、長距離ドライバー不足から出版物でも幹線便の運行が難しくなっているが『現在、首都圏に一極集中している印刷機能を各地に持たせることで長距離輸送を減らすことができるのではないか』と赤澤社長は示唆する」
赤澤社長とは、1985年から宮城県全域の書店およびコンビニエンスストア配送を担当している中央運輸の赤澤善博社長である。
http://diamond.jp/articles/-/134332

講談社は、絵本「にじいろのさかな」シリーズの8作目にあたる新刊「まけるのもだいじだよ にじいろのさかな」を刊行したが、作者のマーカス・フィスターが来日し、ジェイアール名古屋タカシマヤ10階特設会場で原画展を開催したり、8月11日(金)には、三省堂書店池袋本店、紀伊國屋書店新宿本店で、サイン会を開催する。翻訳は谷川俊太郎
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001370.000001719.html
発売から25周年となるロングセラーにして、ベストセラーである。

◎「週刊ポスト」における大前研一の次のような指摘に耳を傾けてみよう。
「結果的にこれほど日本でアマゾンを強くしたのは、日販やトーハンなどの取次と出版社や新聞社などが守ってきた『再販売価格維持制度(再販制度)』である。本がディスカウントできるアメリカでは、アマゾンは割引販売で爪に火を灯しながらシェアを獲得してきた。一方、再販制度によって本が定価でしか売れない日本では送料をタダにしても儲かるため、最強の物流網を構築できたのである」
https://www.news-postseven.com/archives/20170712_584776.html
便利さというものは、一度、獲得してしまったならば、そう簡単に手放せないということも肝に銘じておこう。

VRバーチャルリアリティ)ソフトウェアの開発を行うDVERSE Inc. (ディヴァース)と凸版印刷は、5月31日に資本業務提携に関する契約を締結した。
http://dverse.me/ja/2017/07/toppan/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000014483.html

アサツー ディ・ケイの6月単体売上高。雑誌は前期比93.7%。
https://www.adk.jp/wp/wp-content/uploads/2017/07/release_Billing_201706j1.pdf

◎日販は、ディズニー/ピクサー最新作「カーズ/クロスロード」公開を記念し、日販オリジナル企画として7月13日(木)より、ぬりえキャンペーンを開始している。また同日より、同映画関連書籍の書店店頭フェアを全国700店舗にて展開している。関連書籍は次の通り。
ディズニーアニメ小説版「カーズ/クロスロード」(偕成社
「カーズのひみつ100」(ポプラ社
「カーズ ビクトリーブック」(学研プラス)
「カーズ クロスロード」(講談社
「まるごと カーズ ファンブック」(KADOKAWA
「Disney・PIXAR カーズ シール&ぬりえBOOK」(宝島社)
http://www.nippan.co.jp/news/fair_cars3/
トーハンも「カーズ/クロスロード」に連動して全国約400書店で関連書籍の店頭フェアを開催しているが、学研プラスと宝島社の商品は対象となっていない。
http://www.tohan.jp/news/20170707_1022.html

◎日販は、ピクシブと協同で企画する「WEBマンガ総選挙」と連動した、日販オリジナルの「WEBマンガ総選挙ノミネートフェア」を、7月14日(金)より全国約500書店ならびに日販が運営するインターネット書店Honya Club.comで実施する。
http://www.nippan.co.jp/news/webmanga_nominated-fair/

◎これは編集者の知恵なのだろう。論創社から「吉本隆明質疑応答集①宗教」が刊行された。
http://ronso.co.jp/book/%e5%90%89%e6%9c%ac%e9%9a%86%e6%98%8e%e8%b3%aa%e7%96%91%e5%bf%9c%e7%ad%94%e9%9b%86%e2%91%a0/

◎「経営革新にITを活かす」をテーマに創刊された「日経情報ストラテジー」が2017年8月号をもって休刊となった。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/watcher/14/334361/070300875/

◎フジテレビに明日はない。
週刊文春では、7月3日に行われたフジテレビの『全体会議』での、嘉納修治新会長(67)の所信表明演説の音声テープを入手。そこには、嘉納氏が日枝氏の功績を礼賛するとともに、日枝氏を『代表』と呼ぶことを自ら提案、賛成多数で承認されるという“院政”を示唆する内容がおさめられている」
http://bunshun.jp/articles/-/3293

日本海新聞は次のように書いている。
今井書店グループ(鳥取県米子市錦町3丁目、田江泰彦社長)は12日までに小売り、卸、製造(印刷)のグループ各社が垣根を越えて商品や事業を企画・開発する拠点『R&Dセンター』を松江市北陵町のソフトビジネスパーク島根に完成させた。約50人体制で24日から業務を開始する」
https://www.nnn.co.jp/news/170713/20170713058.html
電子書籍やデジタル教材、雑貨ショップ「青杏(せいあん)+」で販売するオリジナル商品の開発などを手がけるそうだ。

◎LINEは、電子コミックサービス「LINEマンガ」において、集英社の「マーガレット」「別冊マーガレット」とコラボして、オリジナルマンガ作品を公募するマンガ賞「集英社少女マンガグランプリPowered by LINEマンガインディーズ」を7月26日(水)より開催する。
https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2017/1803
https://manga.line.me/indies/gp_shueisha/201707

集英社荒木飛呂彦のマンガ「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズの人気キャラクター岸辺露伴を主人公とした「岸辺露伴は動かない」の新作「エピソード#9D・N・A」を8月12日発売の少女マンガ誌「別冊マーガレット」(集英社)9月号に掲載する。
https://mainichi.jp/articles/20170712/dyo/00m/200/021000c

                                                                                                                      • -

4)【深夜の誌人語録】

余裕が生まれるかどうかは力量の問題ではない。あくまでもスケジュール管理の問題にしか過ぎないのだ。