【文徒】2017年(平成29)年7月28日(第5巻141号・通巻1070号)

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1)【記事】「読者が選ぶ・講談社広告賞」「講談社デジタル広告大賞」について
2)【記事】電通楽天楽天データマーケティングを設立
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】「読者が選ぶ・講談社広告賞」「講談社デジタル広告大賞」について

客 講談社は、7月26日、東京・帝国ホテルにおいて第39回「読者が選ぶ・講談社広告賞」の贈賞式を開催した。大賞は、「VOCE」5月号に掲載されたシャネル「ルージュ ココ グロス」の広告が受賞した。また今年から発足した「第一回講談社デジタル広告大賞」には、「FORZA STYLE」に掲載された青山商事の「ユニバーサルランゲージ」の広告が選ばれた。
主 シャネルは部門賞でも「with」6月号、「フラウ」4月号でも入賞している。他を圧倒していた。というかヴィトンやエルメスのように雑誌から離れていってしまっては大変だから、「読者が選ぶ」とあっても、最大限に気を使ったということだろうね。全体的に言っても、今回の受賞企業は非常にバランスが取れていたもの。
客「デジタル広告大賞」が立ち上がったというのに「クーリエジャポン」とか「ミモレ」からは受賞作がなかった。
主 こっちは選考委員を立てたからね。
客 佐藤尚之に、本田哲也に、はあちゅうの三人だね。
主 佐藤は電通時代にクリエイティブ局にウェブ部門を立ち上げた人材だから、選考委員としては申し分あるまい。本田は世界最大規模のPR会社フライシュマン・ヒラードからスピンオフする形で設立された戦略PR会社ブルーカレント・ジャパンの代表取締役社長だ。で、作家の肩書にこだわる「はあちゅう」という組み合わせなんだけれど、佐藤と「はあちゅう」を同格に扱うんだね、講談社は。オレにはそんな荒業できないわな。
客 はあちゅうという作家を初めて知った。
主 ドクターエステ・コスメ専門サイト「キレナビ」の編集長だったからね。有料オンラインサロンの「ちゅうもえサロン」や「ちゅうつねカレッジ」を立ち上げているけれど、オレなんかの感覚からすると作家ではあるまい。講談社から「半径5メートルの野望」って本は出している。オレは不勉強で未だに一冊も読んだことがない。「アドガール 大手広告代理店新人日記」は主婦の友社だし、「恋愛炎上主義。」はボプラ社か。テレビにはコメンテーターとして顔をちょくちょく出しているようだから、作家というよりもタレントだね。審査員を据えるのであれば、もうちょっと誰を選ぶか真剣に考えて欲しい。例えば野間文芸賞の選考委員は奥泉光佐伯一麦高橋源一郎多和田葉子町田康という顔触れで、それなりに納得がいくじゃないの。
客 芸能人を贈賞式に呼んで翌日のスポーツ新聞の芸能面を飾らせるという手法をやめたのは好感が持てたけどね。

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2)【記事】電通楽天楽天データマーケティングを設立

楽天電通は、楽天グループのビッグデータ電通グループ保有のマスメディアなど独自のデータ・知見を融合した新たなマーケティングソリューションの提供を行う新会社「楽天データマーケティング株式会社」を設立し、10月より営業を開始する。同社の代表取締役社長には、楽天 副社長執行役員兼CRO (Chief Revenue Officer)有馬誠が就任する。有馬は「ヤフー日本法人に第1号社員として入社し、ネット広告事業を立ち上げた。グーグル日本法人の代表取締役も務めた日本のネット広告業界の第一人者」(日経)である。日経は、こう書いている。
楽天の持つ消費者の購買データと、テレビの視聴履歴を突き合わせることで、テレビCMがどの程度、購買につながったかが推定できるようになる。これまでの視聴率をベースにしたCM出稿に比べて効率を上げられる。CMに加え、ネット広告や店頭でのプロモーションと組み合わせて、総合的なマーケティング施策を提案できる」
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2017089-0726.pdf
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ26HS5_W7A720C1TJ1000/
「ネットショップ担当者フォーラム」によれば有馬は次のように語っている。
「テレビを中心としたマスメディアのデータと、楽天ビッグデータが融合するとどのようなことが可能になるのか。詳しくはこれから開発していくが、一言で言うとマーケティング業界のイノベーションが起こせるのではないか。ぜひ起こしたい」
https://netshop.impress.co.jp/node/4565
電通からすれば電通にとって弱点にほかならなかったデータ基盤をこれで補完できることになる。ただし出資比率は楽天が51%、電通が49%。電通がイニシアティブを取れなかったとも理解できる。何しろ社名に楽天の二文字はあっても、電通の二文字はない。記者会見に楽天は取締役会長兼社長の三木谷浩史も出席している。三木谷は「アドタイ」によれば、こんなことを語ったようだ。
楽天市場は中小規模の企業の方たちにも活用をいただいてきたが、大手企業に対しても価値ある提案ができると考えている。楽天が持っているデータは日本一のデータだと思っているし、このデータを使って、大手企業のマーケティング活動もサポートしていきたい」
https://www.advertimes.com/20170726/article255348/
電通で出席したのは槫谷典洋執行役員だった。槫谷は電通デジタルの代表取締役CEOである。
ちなみにカルチュア・コンビニエンス・クラブは昨年、博報堂と組んでいる。
http://www.hakuhodo.co.jp/archives/newsrelease/35058
もしアマゾンが広告業界に進出したならば…決して私の妄想には終わるまい。

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3)【本日の一行情報】

◎ダイヤモンド・オンラインが「電通違法残業が正式裁判に、『ブラック企業は刑事法廷』の時代」を掲載した。
「裁判の被告は、法人としての電通だが、法廷には法人の代表者として山本敏博社長が出廷する見通しだ。
山本社長は公訴事実を全面的に認めるとみられ、公判は即日結審する可能性が高い。期待するほどの真相解明がなされないかもしれない。
しかし、もし裁判所が世論の声を受け止めているのなら、日本を代表する企業の違法残業の実態を解明する場として、この公判の場を活用してほしい」
http://diamond.jp/articles/-/136268

小学館の美容誌「美的」9月号の付録はファンデーションブラシだそうだ。「ハウコレ」は「結論から言うと、付録なのに超使える!!」と評価している。
http://howcollect.jp/article/27072

◎CCC傘下のトーンモバイルは、夜間に使えなくなるスマートフォンを小学生向けに発売する。光文社の女性誌「VERY」とコラボすることで、徹底したママ目線で開発された。
「『VERY』が独自に行った読者調査により浮き彫りになった、『安心・安全のため子どもにスマートフォンを持たせたいけど、スマートフォンによるトラブルが不安』『親のリテラシーが足りず、子どもとスマートフォンをどう向き合わせればいいかわからない』というママたちの声、その根底にある『とにかく子どもを守りたい』という想いに応えるサービスを、技術で実現しました」
http://tone.ne.jp/press/20170725.html
http://tone.ne.jp/press/20170221_very.html

◎「LDK」の木村大介の発言。
「読者が雑誌に求めてるものって、完全に『共感』なんですよね。知りたかったことが載っていて、この雑誌に共感できるなっていう企画があれば買ってもらえる」
https://ddnavi.com/news/389702/a/
良くも悪くも出版社には啓蒙主義に毒された編集者が多い。本などロクに読んでもいないのに自分は読者よりも偉いと思っているような奴、あなたの回りにいませんか?その手合いの最大の特徴は口では読者、読者って言うんですよ。

◎ベネッセとユニバーサル ミュージックは、ベネッセの「進研ゼミ」の会員向けサービス「電子図書館まなびライブラリー」の小学生向けに「音楽室」を開き、ユニバーサル ミュージックの楽曲やミュージックビデオを配信する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000590.000000120.html

TSUTAYAは、7月28日(金)、8月25日(金)に実施されるプレミアムフライデーにあわせ、3月より一部店舗で実施していた、サントリービールの「ザ・プレミアム・モルツ」プレゼントキャンペーンを全国約1200店舗へ拡大する。
http://www.ccc.co.jp/news/2017/20170726_005255.html

みすず書房から刊行された山岡由美訳による橋本明子「日本の長い戦後――敗戦の記憶・トラウマはどう語り継がれているか」にこんな記述がある。
「この(註 敗戦の)文化の根っこには、三つ敗戦の記憶があります。『美しい国の記憶』『悲劇の国の記憶』『やましい国の記憶』です。それらは、英雄、被害者、加害者という人々にそれぞれ光を当て、多様な戦争の語りとして共生しています。同じ過去でも、ある人たちにとっては誇るべき功業であり、別の人たちにとっては忌まわしい惨禍であり、さらに別の人たちにとっては恥ずべき蛮行を意味するからです。『戦後』の意味づけに合意がないと言われるのは、まさしく敗戦に対する異なった意味づけが混在し、相容れず、それでいて、それぞれの敗戦の記憶に深く刻み込まれているからではないでしょうか」
http://www.msz.co.jp/book/detail/08621.html

神戸新聞の反応は早かった。「神戸市議、政活費で今井絵理子氏“応援” 自民市議団返還へ」を配信したのは7月26日の午後9時59分。
「神戸市会自民党市議団の橋本健市議(37)が、今井絵理子参院議員(33)との対談を掲載した市政報告を政務活動費(政活費)で制作し、昨夏の参院選公示前日に配布していたことが26日、分かった」
「27日発売の『週刊新潮』で、今井議員と橋本市議の不倫疑惑が報じられることが分かり、事務局が政活費の支出を再確認する中で判明した」
https://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201707/0010407327.shtml

オレンジページ初の常設店舗「コトラボ阿佐ヶ谷」が7月25日に開店した。
「『知らない日常(コト)にわざわざ会いに行く』をコンセプトに、ふだんの何気ない毎日の暮らしのなかに、ちょっとした興味をつくり出し、『よし、行ってみよう』と思っていただける講座を数多く取り揃えています。目で見て、じかに触れて、香りや味を実際に楽しめる、そんな体験をいっぱいしていただける空間、それが『コトラボ』です。『また次も来ますね』とおっしゃっていただけることをめざしてスタッフ一同皆さまのお越しを心よりお待ち申し上げております」(和田俊文代表取締役社長)
http://www.orangepage.net/blogs/10/posts/1070

学研ホールディングス傘下の学研イノベーションはリゾート観光業を営む池の平ホテル&リゾーツと組み、1泊2日で夏休みの自由研究が完成する自然体験ツアーを共同開発し試験販売を開始した。
http://sotoiko.net/pickup/2017su_ikenotaira/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001214.000002535.html

日経BP社の「日経デジタルマーケティング」が実施した第1回「デジタルマーケティング100」で第1位となったのは無印良品だった。2位はマクドナルド、3位はユニクロ、4位はミスタードーナッツ、5位はスターバックスコーヒー、6位はドトールコーヒー、7位はサントリー、8位はセブン・イレブン。
http://www.sbbit.jp/article/cont1/33844

◎LINEは、全国14,000店舗のフードメニューをLINEアプリ上から手軽に検索・注文することができるデリバリーサービス「LINEデリマ」を7月26日より公開した。
https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2017/1822

◎グッチの動画広告。センス良いよなあ。
https://www.youtube.com/watch?time_continue=3&v=I0KWX7ncUBA

産経抄が横田弘の「障害者殺しの思想」(現代書館)に言及している。
「リーダーの横田弘さんは仲間とともに街頭で訴えた。まもなく横田さんが発表した行動宣言は、全国の障害者に衝撃を与えた。『われらは愛と正義を否定する』。かわいそうだから、障害児を殺した方がいい。そんな『愛』と『正義』はまっぴら、というのだ」
http://www.sankei.com/column/news/170727/clm1707270003-n1.html
http://www.gendaishokan.co.jp/goods/ISBN978-4-7684-3542-7.htm
原一男ドキュメンタリー映画「さようならCP」の主演は横田弘にほかならない。
http://tsutaya.tsite.jp/item/movie/PTA00008M7KC

◎「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)と「週刊実話」(日本ジャーナル出版)の二誌の北海道・九州地区における発売日は金曜日だったが、取次会社の発送作業見直しにより木曜日発売が実現することになった。
http://www.torikyo.jp/topics/news-release/20170726.php

インプレス総合研究所の「電子書籍ビジネス調査報告書2017」によれば、2016年度の電子書籍市場規模 は1,976億円(対前年比24.7%増)と推計される。電子雑誌市場規模は302億円(対前年比24.8%増)と推計され、電子書籍と電子雑誌を合わせた電子出版市場は2,278億円。
2016年度の電子書籍市場規模のうち、コミックが前年度から340億円増加の1,617億円(市場シェア82%)、文字もの等(文芸・実用書・写真集等)が同51億円増加の359億円(同18%)となっている。
https://www.impress.co.jp/newsrelease/2017/07/20170727-01.html

文藝春秋は、デビュー作にして芥川賞を受賞した沼田真佑の「影裏」を紙の単行本の発売に併せて、7月28日より電子書籍で配信する。販売価格は900円(税込)。紙版の定価は「本体1,000円+税」。電子版のほうが180円ほど安くなる。
https://www.atpress.ne.jp/news/134291

JR東日本の駅構内に立地する書店「BOOK EXPRESS」の書店員が選ぶ「エキナカ書店大賞」は阿川大樹「終電の神様」(実業之日本社文庫)に決まった。
http://www.j-n.co.jp/columns/?article_id=415

住野よる「君の膵臓をたべたい」(双葉社)の実写映画が、7月28日(金)から全国ロードショーされるのを記念して、コミック版の一部が特別配信されている。
https://taishu.jp/detail/28704/

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4)【深夜の誌人語録】

理想に逃げてはならないし、理想を避けてはなるまい。