【文徒】2018年(平成30)10月5日(第6巻187号・通巻1361号)

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1)【記事】外山恒一全共闘以後』(イーストプレス)謎の回収
2)【本日の一行情報】
----------------------------------------2018.10.5 Shuppanjin

1)【記事】外山恒一全共闘以後』(イーストプレス)謎の回収?(岩本太郎)

外山恒一が9月16日にイースト・プレスから上梓した『全共闘後』に関連して「誤植摘発大会」を著者自らウェブ上で呼びかけ開催。そうしたところ月末になって突如同書の「回収」が決定されるという事態が発生。ここでも外山が自らTwitterで29日にこんなふうに報告していた。
《良かれと思ってやってた誤植摘発大会 https://amba.to/2CtG6d9 が版元上層部の目に留まり「こんな欠陥商品が!」とヤブヘビを招いたようだ、ってことにしておこう。…などと“謎の回収事件”ぽく云うとますます話題になるかなあ、と(笑)》
https://twitter.com/toyamakoichi/status/1045950632505438208
《おそらく字句修正を経て再刊されることになった。現時点では出荷停止状態で回収は週明けからだろうから、早く読みたい人は今日・明日じゅうに買っておくよろし》
https://twitter.com/toyamakoichi/status/1045951500508221440
この時点で未購入だった私は10月2日夜に東京堂書店で、レジカウンター背後に1冊だけ残っていた同書をゲット。もっとも、その後に紀伊国屋書店の新宿店など大手書店を訪ねたら、その時点ではまだ普通に棚差しや平積みで売られていた。回収騒ぎも販促イベント化するあたりはなかなかしたたかだ。
https://twitter.com/iwamototaro/status/1047076055822032896
https://twitter.com/iwamototaro/status/1047093152509640705
しかし、アマゾンでは買える。
https://www.amazon.co.jp/%E5%85%A8%E5%85%B1%E9%97%98%E4%BB%A5%E5%BE%8C-%E5%A4%96%E5%B1%B1%E6%81%92%E4%B8%80/dp/4781617190
版元たるイーストプレスのホームページには回収の「か」の字もない。
http://www.eastpress.co.jp/shosai.php?serial=3047
まさに「謎の回収事件」である。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎物流・流通業界専門紙の『物流ジャーナル』が10月2日付で、東京トラック協会の出版・印刷・製本・取次専門部会が8月17日に主催した第40回出版物関係輸送懇談会」で交わされた議論の内容をレポート。
日本出版取次協会から出席したトーハン・柏木祐紀輸送管理部長の《4、5年前に、明日にも雑誌の配送が止まるかもしれないと指摘したが、本当にそれが現実になろうとしている》《量に左右されない運賃制度の設定が必要》、日本雑誌協会物流委員長を務める集英社・隅野叙雄(取締役雑誌販売部部長)の《雑誌がどんどん減り続けているが、紙の出版を廃れさすつもりはない》《新たな魅力作りをし、売れる本を作り、業量を維持していく》などのコメントが紹介されている。
https://weekly-net.co.jp/news/40259/

◎ITジャーナリストの島田範正が自身のブログで「新聞が『紙』を捨てると何が起きるのか」と題し、「紙を捨ててオンラインに移行した新聞の読者はどこへ移るのか」という、よく議論されるテーマに応える海外での調査研究結果を報告していた。
イギリスの全国紙で最初にオンラインに全面移行した『The Independent』の移行前後を対象にした調査だが、紙時代の読者が忽然と消えてしまった(つまり一旦紙がなくなったら元の読者はPCでもモバイルでも『The Independent』を読まなくなった)という結果が、グラフによってあまりにもあからさまに描き出されているのであった。
https://rp.kddi-research.jp/blog/srf/2018/09/29/indy-2/

集英社『りぼん』の付録をテーマにしたムック『りぼんのふろく「カワイイ」のひみつ』と「honto」とのコラボによるカフェイベントが、市ヶ谷の「DNPプラザ」1階カフェで3日から22日まで開催中
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1810/02/news119.html#utm_term=share_pc
『コミックナタリー』がさっそくイベントレポートを掲載していた
https://natalie.mu/comic/news/302200

藝春秋校閲部が校正者を募集中。雇用形態は契約社員(社員登用の途あり)もしくはフリー校正者で、応募書類の締切は10月22日必着。筆記試験は11月25日に実施予定。
http://www.bunshun.co.jp/info/181001/index.html
時節柄あるいは新潮社から何人か受けに行ったりするんだろうか。

◎マガジンハウスでは経理部員を募集中。雇用形態は正社員または無期雇用の職種限定社員。応募書類の締切は10月23日必着。
https://magazineworld.jp/news/recruitment-201809/

◎マガジンハウスのウェブマガジン『コロカル』が、地域の魅力を発信したい自治体などのサイト制作を代行する事業を博報堂DYールディングスとの共同で開始することになった。外国人旅行客を視野に、海外への発信も行うなど年間100億円程度の売り上げを目指しているそうだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36076740T01C18A0TJ3000/

鎌倉市内の元書店を改装のうえ2015年にブックカフェスタルでオープンしていた「ブックスペース栄和堂」も、貸主より建物の建て替えを通告され10月25日で閉店することになった。蔵書は年内は店側で保管。店内の書棚は大船のコワーキングスペース、椅子は鎌倉駅前の私設図書室が引き継ぎたいと申し出ているとのこと。
https://kamakura.keizai.biz/headline/287/

神田神保町の猫専門書店「にゃんこ堂」が「再生プロジェクト」を手掛けている岩手県奥州市立胆沢図書館で11月4日にトークベントを開催する。テーマは「『客の来ない本屋』と『ヒマな図書館』が猫の手を借りて再生」で参加費は無料。定員50名。
https://nyanmaga.com/nyankodo2018-1003/

◎下平尾直(共和国代表)、小林浩(月曜社取締役)、大矢靖之(ブクログ通信)によるトークライブ「出版メディアの最前線〈もっと多様で、もっと雑な〉」が10月20日墨田区向島のバー「NINE LIVES」で開催される。同店と彩流社との共催イベントだ。
http://ptix.at/twWPIq

◎ライターの昼間たかしが『日刊サイゾー』で、例の『新潮45が図書館で閲覧できなくなるのではないかとの懸念を表明していた。今のところ「閲覧禁止」を求める組織だった動きはないようだが
http://www.cyzo.com/2018/10/post_177384_entry.html
1997年の神戸児童殺傷事件で容疑者となった中学生の写真を掲載した『FOCUS』『週刊新潮』に関しては当時日本図書館協会が《「図書館の自由に関する宣言」に照らして各図書館で対応を決めるべきことであるが、日図協ではこの事態を全く放置するわけにもゆかず》としつつ「少年法第61条に係わる記事の取り扱い」について見解を表明。各図書館の対応に委ねていた。
https://www.jla.or.jp/portals/0/html/jiyu/focus.html
公共図書館ではないが、当時大宅壮一庫をよく利用していた私が『FOCUS』の当該号を閲覧請求したところ、該当ページをわざわざモノクロコピー(顔写真部分は塗りつぶし)に差し替えた一冊が出てきたのを覚えている。

◎『Business Journal』のツタヤ図書館問題レポート。和歌山市駅前に開館予定の新しい市民図書館における指定管理業者はコンペ前にとっくにCCCに決まっていたのではないかとの疑惑をなおも追い続けている。市側には関連の会議資料などが十分に保管されておらず、一部開示請求した結果出てきたものも全て黒塗りという状況下で悪戦苦闘の取材が続いている。
https://biz-journal.jp/2018/10/post_24966.html
佐賀県武雄市のツタヤ図書館をめぐって「違法な支出があった」として住民が市長らを相手に賠償請求を求めて佐賀地裁に訴えていた裁判では、先月28日に請求棄却の判決が下った。
https://mainichi.jp/articles/20180930/ddl/k41/040/199000c

オウム真理教の元信者で、1995年の地下鉄サリン事件直後に東京都庁で起こった郵便物爆発事件に関与したとして殺人未遂幇助罪に問われながらも無罪が確定した菊地直子が、記事で名誉を傷つけられたとして産経新聞社を相手に165万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求める訴えを、9月26日付で東京地裁に起こした。
https://www.sankei.com/affairs/news/181002/afr1810020025-n1.html
同じく元信者で、97年に脱会後は教団を批判する側に転じた沢木晃も、この件に関連して「オウムに対しては何でもあり」的な当時の報道を疑問視するツイートを行っていた。
《これ勝訴したら芋づる式に現役、元問わず訴訟おこせるぞ、それぐらい酷い報道もあった》
https://twitter.com/a_sawaki/status/1047111072610578433
蛇足ながら一昨日(3日)には『レイバーネットTV』にてオウム問題をテーマに、森達也と私による公開トーク番組が生中継された。ライブラリー映像は既にYouTubeで公開中されている。ここでも当時のマスメディアの報道の在り方についての話題がかなり多くを占めた。
http://www.labornetjp.org/news/2018/1003tv
https://youtu.be/DpiaA1WIi-o