【文徒】2018年(平成30)10月11日(第6巻190号・通巻1364号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】「沖縄アンダーグラウンド」と「笠原和夫傑作選 仁義なき戦い 実録映画篇」
2)【記事】士としての気骨を見せた「焔」の星野智幸
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2018.10.11 Shuppanjin

1)【記事】「沖縄アンダーグラウンド」と「笠原和夫傑作選 仁義なき戦い 実録映画篇」

ストトン節を聴いたことはあるだろうか。私が初めて聴いたストトン節は「正調」のものではなかった。こんなストトン節である。
「四つ、夜中に起こされて/五つ、いやとはいえません/ストトン、ストトン/六つ、むりやりさしこまれ/七つ、泣いたり笑ったり/八つ、やられた後からは/九つ、子供ができたのよ/ストトン、ストトン/十で、とうとうできました/男の子なら 東大へ/女の子なら 吉原へ/それで親子は楽するね/ストトン、ストトン」
NDUを率いる布川徹郎監督のドキュメンタリー映画「モトシンカランヌー 沖縄エロス外伝」で流れるストトン節である。ここで歌われる「吉原」は、東京の「吉原」ではない。沖縄の「吉原」である。映画のタイトルとなったモトシンカカランヌーとは琉球語で元手がかからないという意味であり、娼婦を指す言葉であった。布川は返還以前の沖縄に密航し、娼婦やヤクザを活写した。私がこの映画を見たの沖縄返還直後のことだったと思う。まだ10代であった。ひとりの娼婦が頭から離れなくっていた。その娼婦の名前はアケミ、Aサインバーにつとめる17歳。ミニスカートをはき、腿には刺青が刻まれていた。そんなアケミがストトン節を歌っていたのである。
この映画が公開されたのは1971年のことだから、今や半世紀近い時間が流れていることになる。藤井誠二は未だピカピカの小学一年生だ。そんな藤井の「沖縄アンダーグラウンド 売春街を生きた者たち」(講談社)は売春を通じて沖縄の戦後を描く力作だが、当然、この映画を避けては通れなかったようである。藤井は映画の存在を知り、数年を経て漸くホンペンと相見えることになるのだが、その結果はどうなったかといえば、何とアケミを探し出そうとするのだ。残念ながら、アケミに出会うことは叶わなかったものの、映画にアケミの情夫として登場するアシバーを探し出すことには成功する!アシバーとはヤクザのことだが、沖縄のヤクザは戦果アギャーに起源を持つことを忘れてはなるまい。戦果アギャーとは米軍基地から物資を盗み出し売り捌くことを言う。もともと沖縄にヤクザは存在しなかったのである。つまり、沖縄にとってヤクザは戦後そのものであったのである。
真藤順丈の傑作冒険小説「宝島」(これまた版元は講談社である)も戦果アギャーと戦後史を交錯させていたが、「宝島」のヒロインであるヤマコがアケミであったとしても少しも不思議ではない歴史と現実が沖縄には横たわっているのである。藤井の「沖縄アンダーグラウンド 売春街を生きた者たち」は沖縄の歴史と現実を活写する。その切なさの裏側に張り付いているのは日本という国家の矛盾でもあるだろう。笠原和夫の視点もそこにあったことがわかる。「笠原和夫傑作仁義なき戦い 実録映画篇」(国書刊行会)には映画化されなかった「沖縄進撃作戦」が収められているのである。
「コザの吉原 横丁で 一人さびしく なげいてる/酒飲んで くだまいているけれど おいら純情グレン隊/あああ なぜかしら せつなき わがこころ/コジャの暴力団(ぼーりょくらん)」
「モトシンカカランヌー 沖縄エロス外伝」に流れる「暴力団小唄」の一節である。
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000313338
http://www.kokusho.co.jp/np/isbn/9784336063106/
竹中労は「琉球共和国」で次のように書いている。とても激しい章だが私が大好きな一節である。
「私はむしろ『モトシンカカランヌー』という作品が、字通りモトシンカカランヌー(娼婦・やくざ)の怒りを激発し、スクリーンを切り裂かれフィルムを焼かれるという事態こそ、心中ひそやかに望んでいたのだ。そう、彼らにはその権利がある。彼らの世界に不遜に入りこんで、勝手なルポルダージュを書き、映画を撮っていく大和の糞ったれども、布川哲郎や竹中労をたっくるす(たたき殺す)理由が、彼らにはある」
藤井誠二の「沖縄アンダーグラウンド 売春街を生きた者たち」も、この竹中労の「心情」を「理会」しているはずだ。
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2)【記事】士としての気骨を見せた「焔」の星野智幸

新潮社を版元とする「焔」で谷崎潤一郎賞を受賞した星野智幸が10月9日に開催された贈
呈式で「新潮45」問題に触れたようである。朝日新聞デジタル「『憎悪が雑誌を乗っ取った』星野智幸氏が新潮45を批判」を掲載している。
「優れた学作品に贈られる谷崎潤一郎賞の贈呈式が9日都内であり、『焔』(新潮社)で同賞を受けた星野智幸さんが受賞の言葉で、LGBTをめぐる企画で批判を受け休刊した『新潮45』の問題をとりあげた。『出版業界が差別の感覚に疎くなっている』『差別的な言葉が社会を動かしつつある現実を学はないがしろにしてきたのではないか』と危機感を語った。
『焔』は憎悪や差別の言葉を物語に意識的に取り入れた連作短編集。『私たちの生きる社会が憎悪に覆われていくなか、憎悪に与しない、憎悪に巻き込まれないための拒絶』という意志を込めた作品。『まさにその憎悪が新潮社の雑誌を乗っ取ってしまった』と続けた」
https://www.asahi.com/articles/ASLBB3VCYLBBUCVL00J.html
星野は、こんな発言もしたようである。
「僕も基本的に学は、世の常識や通念としての善悪にしばられないものだと考えている。けれども最近話題になる学や芸術の暴力性は、その説明では正当化できない。差別的、ヘイト的な言葉がこの社会を動かしつつあるという現実を、学は少々ないがしろにしてきたのではないか」
木村友祐が次のようにツイートしている。
「今日は、星野智幸さんの『焔』の谷崎潤一郎賞の授賞式。『焔』受賞にぼくは、すごい生意気な言い方をすれば、学界にまだ希望が持てると思った。星野さんは受賞のスピーチで、『新潮45』についてストレートな言及をされた。それは出版界全体で深く考えるべきこと、という問題意識からだと思う」
https://twitter.com/kimuneill/status/1049686793006735360
温又柔もツイートしている。
「敵か、味方か。陣営を乱暴に二分するのを煽る言説に与しないこと。憎しみに抗うとは、分断に巻き込まれることを拒むこと。星野智幸さんのスピーチは、わたし(たち)が信じる学そのものので、優しい迫力に満ちていた。涙でた。この胸の焔を見失うものか」
https://twitter.com/WenYuju/status/1049635485696413696
星野智幸は、この問題について次のようにツイートをしていた。
「私の性的少数者の友人知人たちの中には、『新潮45』の杉田水脈論が発表されてから、抑うつ状態に陥ったり、希死念慮に取り憑かれそうになっている人もいる。人を死に追い込む言論は、自由な言論ではなくて暴力であることを、言論機関は学んでほしい」
https://twitter.com/hoshinot/status/1042230863906234368
「社員や書き手や読者が恥ずかしい、関わりたくない、と思わせるような差別の宣伝媒体を、会社として野放しにするべきではないと思います。これだけの化的貢献と優れた歴史的遺産を持つ出版社が、悪意によるほころびを、まだ自分で繕えるはずなのに放置して崩壊していくとしたら、あまりに悲しいです」
https://twitter.com/hoshinot/status/1042229569745432576
星野智幸は「部落解放」10月号に「タイムカプセルとしての小説」と題されたエッセーを発表している。
「そして今のところの結論としては、破壊されつつある平等と人権の感覚を小説というタイムカプセルに埋め込んで、未来に手渡したいと思っている」
https://www.fujisan.co.jp/product/2327/b/574909/
星野にとって学とは毒の力を用いて薬とすることでもある。
http://www.tufs.ac.jp/common/fs/ics/journals/2017ics21/23.hoshino.pdf
「焔」はディストピアではなく「希望」を描いている。
https://www.shinchosha.co.jp/book/437204/
ちなみに「憎悪」にして、「暴力」の言論を行使した小川榮太郎自身のフェイスブックで「新潮」の矢野優編集長を恫喝している。
「日本で最も歴史ある藝誌新潮の今月号、矢野編集長の後書で私を基本的な誤読に基き誹謗する一を載せた上勝手に拙について掲載誌編集長でもないのに読者に御詫びをし、高橋源一郎氏「「藝評論家」小川榮太郎氏の全著作を読んでおれは泣いた」という、それこそ泣くに泣けないほど粗末な一を掲載している。
(中略)
これ程正面から喧嘩を売られたのは久しぶりだ。
 高橋氏は悪いが捨て置く。屁っ放り腰で逃げながら人をくさすに後ろから切り付けても仕方がない。
 矢野氏よ、覚悟せよ」
https://www.facebook.com/eitaro.ogawa/posts/2077755342317276

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3)【本日の一行情報】

◎「出版ニュース」が2019年3月下旬号をもって休刊するという。…決して他人事ではない。
https://twitter.com/Naovalis/status/1049911612625305600

◎「DIGDAY」が「BuzzFeed News 編集長 ベン・スミス氏:『どの企業もビジネスモデルを多角化する必要がある』」。そう、これだという特効薬は存在しないのである。多角化とは、私の言葉で言うと「落穂拾い」ということであり、「塵も積もれば山となる」ビジネスを確立することだ。
https://digiday.jp/publishers/buzzfeed-news-ben-smith-every-company-needs-diverse-business-models/

◎AFP「『グーグルプラス』終了へ、最大50万件の個人情報漏えいも認める」は、こう書く。
「米グーグル(Google)は8日、同社SNS『グーグルプラス(Google+)』の消費者版サービスを終了すると発表した。同時に、バグにより最大で50万件ものアカウントの個人情報が漏えいした恐れがあり、バグの修正を行っていたことも明らかにした」
http://www.afpbb.com/articles/-/3192537
朝日新聞によれば「米国内では、グーグルの『情報隠し』に厳しい批判が出て」いるそうだ。
https://www.asahi.com/articles/ASLB93QB2LB9UHBI019.html
いずれにしてもグーグルプラスはフェイスブックに完敗したということである。

◎「ブラッククローバー」は集英社の「週刊少年ジャンプ」に連載されているが、アニメ化され、ゲーム化され、スピンオフ作品の「ブラッククローバー外伝 カルテットナイツ」が「少年ジャンプ+」で連載を開始した。
https://shonenjumpplus.com/episode/10834108156636211659
マンガは最もビジネスの多角化が進んでいる領域である。

電通は、海外本社「電通イージス・ネットワーク」を通じて、ポルトガルの大手クリエーティブエージェンシー「MSTF Partners」(パートナーズ社)を買収することに合意した
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2018099-1009.pdf

◎「村上RADIO」の第2弾となる「村上RADIO~秋の夜長は村上ソングズで~」が10月21日(日)19時から放送される。これに先駆け10月17日(水)20時から21時30分まで「村上RADIOプレスペシャル」を、10月19日(金)20時から20時55分まで8月にオンエアした第1弾「村上RADIO~RUN&SONGS」が再放送される。提供は大日本印刷である。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001519.000004829.html

フェイスブックがビデオ通話デバイスPortal」を発表した。
https://www.businessinsider.jp/post-176968
これ、これ、これがそう。
https://portal.facebook.com/
エロには使い勝手が良さそうである。

◎「ヤフー!ニュース個人」に大元隆志の「漫画村復活か?違法海賊版サイト『漫画塔』が公開される」が掲載されたのが10月9日(火)の午前0時58分。
https://news.yahoo.co.jp/byline/ohmototakashi/20181009-00099788/
「ねとらぼ」が「『漫画村』後継サイト『漫画塔』、話題になった直後に閉鎖か 現在はアクセス不能に」を掲載したのは10月9日午後11時27分。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1810/09/news129.html

小学館の「サライ」11月号の付録は、「ランバン コレクション×サライ 2019スケジュール手帳」だ。毎日の予定を書き込める月別カレンダーのほか、慶弔の心得、手紙のマナー、俳句の季語など「暮らしのマナー備忘帖」も収録している。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000138.000013640.html

◎「週刊ヤングジャンプ」(集英社)に連載されている原泰久の「キングダム」が実写映画化される。
https://www.sanspo.com/geino/news/20181010/geo18101005040020-n1.html

◎マガジンハウスは「ターザン」のデジタルメディア「Tarzan WEB」を10月10日(水)にローンチした。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000037.000030125.html

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4)【深夜の誌人語録】

諦めるのではなく別の方法を考えるのだ。

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【Mail Magazin 
株式会社
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1)【記事】「沖縄アンダーグラウンド」と「笠原和夫傑作選 仁義なき戦い 実録映画篇」
2)【記事】士としての気骨を見せた「焔」の星野智幸
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2018.10.11 Shuppanjin

1)【記事】「沖縄アンダーグラウンド」と「笠原和夫傑作選 仁義なき戦い 実録映画篇」

ストトン節を聴いたことはあるだろうか。私が初めて聴いたストトン節は「正調」のものではなかった。こんなストトン節である。
「四つ、夜中に起こされて/五つ、いやとはいえません/ストトン、ストトン/六つ、むりやりさしこまれ/七つ、泣いたり笑ったり/八つ、やられた後からは/九つ、子供ができたのよ/ストトン、ストトン/十で、とうとうできました/男の子なら 東大へ/女の子なら 吉原へ/それで親子は楽するね/ストトン、ストトン」
NDUを率いる布川徹郎監督のドキュメンタリー映画「モトシンカランヌー 沖縄エロス外伝」で流れるストトン節である。ここで歌われる「吉原」は、東京の「吉原」ではない。沖縄の「吉原」である。映画のタイトルとなったモトシンカカランヌーとは琉球語で元手がかからないという意味であり、娼婦を指す言葉であった。布川は返還以前の沖縄に密航し、娼婦やヤクザを活写した。私がこの映画を見たの沖縄返還直後のことだったと思う。まだ10代であった。ひとりの娼婦が頭から離れなくっていた。その娼婦の名前はアケミ、Aサインバーにつとめる17歳。ミニスカートをはき、腿には刺青が刻まれていた。そんなアケミがストトン節を歌っていたのである。
この映画が公開されたのは1971年のことだから、今や半世紀近い時間が流れていることになる。藤井誠二は未だピカピカの小学一年生だ。そんな藤井の「沖縄アンダーグラウンド 売春街を生きた者たち」(講談社)は売春を通じて沖縄の戦後を描く力作だが、当然、この映画を避けては通れなかったようである。藤井は映画の存在を知り、数年を経て漸くホンペンと相見えることになるのだが、その結果はどうなったかといえば、何とアケミを探し出そうとするのだ。残念ながら、アケミに出会うことは叶わなかったものの、映画にアケミの情夫として登場するアシバーを探し出すことには成功する!アシバーとはヤクザのことだが、沖縄のヤクザは戦果アギャーに起源を持つことを忘れてはなるまい。戦果アギャーとは米軍基地から物資を盗み出し売り捌くことを言う。もともと沖縄にヤクザは存在しなかったのである。つまり、沖縄にとってヤクザは戦後そのものであったのである。
真藤順丈の傑作冒険小説「宝島」(これまた版元は講談社である)も戦果アギャーと戦後史を交錯させていたが、「宝島」のヒロインであるヤマコがアケミであったとしても少しも不思議ではない歴史と現実が沖縄には横たわっているのである。藤井の「沖縄アンダーグラウンド 売春街を生きた者たち」は沖縄の歴史と現実を活写する。その切なさの裏側に張り付いているのは日本という国家の矛盾でもあるだろう。笠原和夫の視点もそこにあったことがわかる。「笠原和夫傑作仁義なき戦い 実録映画篇」(国書刊行会)には映画化されなかった「沖縄進撃作戦」が収められているのである。
「コザの吉原 横丁で 一人さびしく なげいてる/酒飲んで くだまいているけれど おいら純情グレン隊/あああ なぜかしら せつなき わがこころ/コジャの暴力団(ぼーりょくらん)」
「モトシンカカランヌー 沖縄エロス外伝」に流れる「暴力団小唄」の一節である。
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000313338
http://www.kokusho.co.jp/np/isbn/9784336063106/
竹中労は「琉球共和国」で次のように書いている。とても激しい章だが私が大好きな一節である。
「私はむしろ『モトシンカカランヌー』という作品が、字通りモトシンカカランヌー(娼婦・やくざ)の怒りを激発し、スクリーンを切り裂かれフィルムを焼かれるという事態こそ、心中ひそやかに望んでいたのだ。そう、彼らにはその権利がある。彼らの世界に不遜に入りこんで、勝手なルポルダージュを書き、映画を撮っていく大和の糞ったれども、布川哲郎や竹中労をたっくるす(たたき殺す)理由が、彼らにはある」
藤井誠二の「沖縄アンダーグラウンド 売春街を生きた者たち」も、この竹中労の「心情」を「理会」しているはずだ。
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2)【記事】士としての気骨を見せた「焔」の星野智幸

新潮社を版元とする「焔」で谷崎潤一郎賞を受賞した星野智幸が10月9日に開催された贈
呈式で「新潮45」問題に触れたようである。朝日新聞デジタル「『憎悪が雑誌を乗っ取った』星野智幸氏が新潮45を批判」を掲載している。
「優れた学作品に贈られる谷崎潤一郎賞の贈呈式が9日都内であり、『焔』(新潮社)で同賞を受けた星野智幸さんが受賞の言葉で、LGBTをめぐる企画で批判を受け休刊した『新潮45』の問題をとりあげた。『出版業界が差別の感覚に疎くなっている』『差別的な言葉が社会を動かしつつある現実を学はないがしろにしてきたのではないか』と危機感を語った。
『焔』は憎悪や差別の言葉を物語に意識的に取り入れた連作短編集。『私たちの生きる社会が憎悪に覆われていくなか、憎悪に与しない、憎悪に巻き込まれないための拒絶』という意志を込めた作品。『まさにその憎悪が新潮社の雑誌を乗っ取ってしまった』と続けた」
https://www.asahi.com/articles/ASLBB3VCYLBBUCVL00J.html
星野は、こんな発言もしたようである。
「僕も基本的に学は、世の常識や通念としての善悪にしばられないものだと考えている。けれども最近話題になる学や芸術の暴力性は、その説明では正当化できない。差別的、ヘイト的な言葉がこの社会を動かしつつあるという現実を、学は少々ないがしろにしてきたのではないか」
木村友祐が次のようにツイートしている。
「今日は、星野智幸さんの『焔』の谷崎潤一郎賞の授賞式。『焔』受賞にぼくは、すごい生意気な言い方をすれば、学界にまだ希望が持てると思った。星野さんは受賞のスピーチで、『新潮45』についてストレートな言及をされた。それは出版界全体で深く考えるべきこと、という問題意識からだと思う」
https://twitter.com/kimuneill/status/1049686793006735360
温又柔もツイートしている。
「敵か、味方か。陣営を乱暴に二分するのを煽る言説に与しないこと。憎しみに抗うとは、分断に巻き込まれることを拒むこと。星野智幸さんのスピーチは、わたし(たち)が信じる学そのものので、優しい迫力に満ちていた。涙でた。この胸の焔を見失うものか」
https://twitter.com/WenYuju/status/1049635485696413696
星野智幸は、この問題について次のようにツイートをしていた。
「私の性的少数者の友人知人たちの中には、『新潮45』の杉田水脈論が発表されてから、抑うつ状態に陥ったり、希死念慮に取り憑かれそうになっている人もいる。人を死に追い込む言論は、自由な言論ではなくて暴力であることを、言論機関は学んでほしい」
https://twitter.com/hoshinot/status/1042230863906234368
「社員や書き手や読者が恥ずかしい、関わりたくない、と思わせるような差別の宣伝媒体を、会社として野放しにするべきではないと思います。これだけの化的貢献と優れた歴史的遺産を持つ出版社が、悪意によるほころびを、まだ自分で繕えるはずなのに放置して崩壊していくとしたら、あまりに悲しいです」
https://twitter.com/hoshinot/status/1042229569745432576
星野智幸は「部落解放」10月号に「タイムカプセルとしての小説」と題されたエッセーを発表している。
「そして今のところの結論としては、破壊されつつある平等と人権の感覚を小説というタイムカプセルに埋め込んで、未来に手渡したいと思っている」
https://www.fujisan.co.jp/product/2327/b/574909/
星野にとって学とは毒の力を用いて薬とすることでもある。
http://www.tufs.ac.jp/common/fs/ics/journals/2017ics21/23.hoshino.pdf
「焔」はディストピアではなく「希望」を描いている。
https://www.shinchosha.co.jp/book/437204/
ちなみに「憎悪」にして、「暴力」の言論を行使した小川榮太郎自身のフェイスブックで「新潮」の矢野優編集長を恫喝している。
「日本で最も歴史ある藝誌新潮の今月号、矢野編集長の後書で私を基本的な誤読に基き誹謗する一を載せた上勝手に拙について掲載誌編集長でもないのに読者に御詫びをし、高橋源一郎氏「「藝評論家」小川榮太郎氏の全著作を読んでおれは泣いた」という、それこそ泣くに泣けないほど粗末な一を掲載している。
(中略)
これ程正面から喧嘩を売られたのは久しぶりだ。
 高橋氏は悪いが捨て置く。屁っ放り腰で逃げながら人をくさすに後ろから切り付けても仕方がない。
 矢野氏よ、覚悟せよ」
https://www.facebook.com/eitaro.ogawa/posts/2077755342317276

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3)【本日の一行情報】

◎「出版ニュース」が2019年3月下旬号をもって休刊するという。…決して他人事ではない。
https://twitter.com/Naovalis/status/1049911612625305600

◎「DIGDAY」が「BuzzFeed News 編集長 ベン・スミス氏:『どの企業もビジネスモデルを多角化する必要がある』」。そう、これだという特効薬は存在しないのである。多角化とは、私の言葉で言うと「落穂拾い」ということであり、「塵も積もれば山となる」ビジネスを確立することだ。
https://digiday.jp/publishers/buzzfeed-news-ben-smith-every-company-needs-diverse-business-models/

◎AFP「『グーグルプラス』終了へ、最大50万件の個人情報漏えいも認める」は、こう書く。
「米グーグル(Google)は8日、同社SNS『グーグルプラス(Google+)』の消費者版サービスを終了すると発表した。同時に、バグにより最大で50万件ものアカウントの個人情報が漏えいした恐れがあり、バグの修正を行っていたことも明らかにした」
http://www.afpbb.com/articles/-/3192537
朝日新聞によれば「米国内では、グーグルの『情報隠し』に厳しい批判が出て」いるそうだ。
https://www.asahi.com/articles/ASLB93QB2LB9UHBI019.html
いずれにしてもグーグルプラスはフェイスブックに完敗したということである。

◎「ブラッククローバー」は集英社の「週刊少年ジャンプ」に連載されているが、アニメ化され、ゲーム化され、スピンオフ作品の「ブラッククローバー外伝 カルテットナイツ」が「少年ジャンプ+」で連載を開始した。
https://shonenjumpplus.com/episode/10834108156636211659
マンガは最もビジネスの多角化が進んでいる領域である。

電通は、海外本社「電通イージス・ネットワーク」を通じて、ポルトガルの大手クリエーティブエージェンシー「MSTF Partners」(パートナーズ社)を買収することに合意した
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2018099-1009.pdf

◎「村上RADIO」の第2弾となる「村上RADIO~秋の夜長は村上ソングズで~」が10月21日(日)19時から放送される。これに先駆け10月17日(水)20時から21時30分まで「村上RADIOプレスペシャル」を、10月19日(金)20時から20時55分まで8月にオンエアした第1弾「村上RADIO~RUN&SONGS」が再放送される。提供は大日本印刷である。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001519.000004829.html

フェイスブックがビデオ通話デバイスPortal」を発表した。
https://www.businessinsider.jp/post-176968
これ、これ、これがそう。
https://portal.facebook.com/
エロには使い勝手が良さそうである。

◎「ヤフー!ニュース個人」に大元隆志の「漫画村復活か?違法海賊版サイト『漫画塔』が公開される」が掲載されたのが10月9日(火)の午前0時58分。
https://news.yahoo.co.jp/byline/ohmototakashi/20181009-00099788/
「ねとらぼ」が「『漫画村』後継サイト『漫画塔』、話題になった直後に閉鎖か 現在はアクセス不能に」を掲載したのは10月9日午後11時27分。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1810/09/news129.html

小学館の「サライ」11月号の付録は、「ランバン コレクション×サライ 2019スケジュール手帳」だ。毎日の予定を書き込める月別カレンダーのほか、慶弔の心得、手紙のマナー、俳句の季語など「暮らしのマナー備忘帖」も収録している。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000138.000013640.html

◎「週刊ヤングジャンプ」(集英社)に連載されている原泰久の「キングダム」が実写映画化される。
https://www.sanspo.com/geino/news/20181010/geo18101005040020-n1.html

◎マガジンハウスは「ターザン」のデジタルメディア「Tarzan WEB」を10月10日(水)にローンチした。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000037.000030125.html

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4)【深夜の誌人語録】

諦めるのではなく別の方法を考えるのだ。

 
 





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