【文徒】2018年(平成30)11月30日(第6巻225号・通巻1399号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】渡辺真由子、無断転載が発覚。勁草書房は絶版・回収を表明
2)【本日の一行情報】
----------------------------------------2018.11.30 Shuppanjin

1)【記事】渡辺真由子、無断転載が発覚。勁草書房は絶版・回収を表明(岩本太郎)

ジャーナリストでメディア研究者でもある渡辺真由子が今年4月に上梓した「『創作子どもポルノ』と子どもの人権」の内容に「重大な無断転載の事実が判明」したとして、版元の勁草書房が28日付で公式サイトにて謝罪。《明らかに編集過程で原典の確認を怠ったミスであり、弁解の余地はございません》と全面的に非を認め、同書を絶版・回収することを発表した。
http://www.keisoshobo.co.jp/news/n27533.html?fbclid=IwAR0qS8bUaq85_gLG9iNueb6pfQS6AKG7gDemfD7SfyGEFT62gr2qEz-jyHs
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2018112801002018.html
さっそく書店向けにも「書籍回収のお願い」が配布されたようだ。
http://www.keisoshobo.co.jp/files/9784326451135_181128.pdf
『弁護士ドットコムNEWS』が勁草書房側の見解をもとに報じたところによると、同書については今月に入ってSNS上に「無断転載に関する指摘」があることを同社編集部が発見。確認したところ、該当箇所は同書の全7章中の第6章であり《外国の事例に関する論をかなりの量で転載し、「注」で出典を示していたが、執筆者から許諾をとっていなかった。「本の主従関係が逆転しており、(許諾のいらない)引用とすることは難しい》と、編集部では判断したという。
https://www.bengo4.com/internet/n_8920/ 
著者の渡辺は28日付の自身のブログでこの件について言及。「ご報告とお詫び」を述べつつも、「無断転載」との指摘に対しては以下のように述べている。
《本書には、出版社側との編集過程における齟齬により、一部に無断転載と受け取られる記述が存在していたことが明らかになりました。
当方と致しましては、無断転載の意図は一切ございません》
https://mayumedia.blogspot.com/2018/11/blog-post_28.html?spref=tw
https://twitter.com/mayumania/status/1067781199785947136
無論、Twitter上では渡辺のこうした謝罪についての批判のリプライが次々に寄せられている。実は上記で勁草書房SNSにそうした指摘が上がっていると認めたように、Twitter上ではしばらく前から話題になり、「渡辺真由子 ”「創作子どもポルノ」と子どもの人権 ”の剽窃」と題した検証サイトも立ちあがっていたのだ。
例えば同サイトの「1」では、「剽窃」されたのが『調査と情報』2010年6月号(681号)に掲載された「日米英における児童ポルノの定義規定」(間柴泰治)であるとして、同論と「『創作子どもポルノ』と子どもの人権」における該当箇所とを左右に並べた表で示しながら事細かく指摘している。
http://cute.sh/gero48/ahi/kipo/buecher/bue/wme.htm
間柴泰治は『調査と情報』発行元である国立国会図書館に勤務している。上記の「日米英における児童ポルノの定義規定」という間島も同図書館のサイトから存在を確認できる。
http://id.ndl.go.jp/auth/ndlna/01038616
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3050387
「CiNii」で「日米英における児童ポルノの定義規定」を探したところ、「被引用献」として渡辺が『情報通信学会誌』(2012年9月25日)に寄稿した「性的有害情報に関する実証的研究の系譜 : 従来メディアからネットまで」と題した論が出てくる。
https://ci.nii.ac.jp/naid/40017121694
https://ci.nii.ac.jp/naid/10031117954
前記検証サイトでは「渡辺は講演商売人でもある」として「聞かない・呼ばない・呼ばせない」といった提言をしている。
http://cute.sh/gero48/ahi/kipo/buecher/bue/wmtg.htm

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎『ビッグコミックスピリッツ』連載の「闇金ウシジマくん」の画像や字情報をYouTubeにアップロードした行為が著作権害にあたるとして東京地裁が27日、米国カリフォルニア州のYouTube本社に対し、投稿者の発信者情報の開示を命じる仮処分を決定。小学館が翌28日付でこれを発表した。同作中の画面をページ送りで動画に仕立てたり、吹き出しのセリフなどを使ってストーリーを紹介するなどの「ネタバレ動画」が横行していたことについて、小学館および著者の真鍋昌平が10月4日付で東京地裁著作権侵害を申し立てていた。
https://www.oricon.co.jp/news/2124346/
https://www.sankei.com/affairs/news/181128/afr1811280016-n1.html 
今回の決定に関し、小学館の法務・契約室は同日付プレスリリースにおいて《YouTubeのみならず、ネット上に氾濫するいわゆる“ネタバレサイト”を厳しく戒めるものといえます》《今後当社は、開示された情報を基に発信者を突きとめ、民事、刑事両面から投稿者の責任追及を行う所存です》とコメントしている。

◎『』や『メディアクリティーク』で追い続けてきた印税・原稿料「未払い」問題が再び話題になり始めた。『GG』休刊をめぐ西和彦の存在について、先の『週刊春』に続いて『BusinessJournal』も昨29日付で報道。こちらはアスペクト、および同社社長の高比良公成の名前も出しながら報じている。
https://biz-journal.jp/2018/11/post_25702.html

◎ジャーナリストの黒藪哲哉はなおも新聞の「押し紙」問題を追及し続けている。22日付のネットメディア『MyNewsJapan』への寄稿では新聞がABC部数を「改ざん」する手口に言及。毎日新聞の元販売店主が、新聞折込チラシの丁合機メーカー社員からその「一部始終」についての聞き出したという音声による証言記録などをもとに、毎日新聞日本ABC協会にも当てながら報じている。
http://www.mynewsjapan.com/reports/2430

竹書房の4コママンガ誌『まんがライフMOMO』が11月28日発売の1月号を最後に休刊。アニメ化された「森田さんは無口が『まんがくらぶ』ほかに移るなど、連載作品の多くは同社発行の他の漫画誌に移行する。
https://mantan-web.jp/article/20181127dog00m200038000c.html 

◎8月に亡くなったさくらももこの未発表エッセーが集英社『Marisol』で12月7日発売号(1月号)から4号に渡って掲載されることになったそうだ。また『BAILA』1月号にも「ちびまる子ちゃん」の“神5話”などを収録した別冊「ちびまる子ちゃんFOREVER BOOK」が付くという。
https://mantan-web.jp/article/20181127dog00m200057000c.html 

◎『Player』『YOUNG GUITAR』『Guitar Magazine』という老舗ギター雑誌3誌の編集長が集まって互いに“ほめちぎり”&“ねたむ”というトークイベント「編集長サミット」が12月14日に渋谷の「東京カルチャーカルチャーで開催される。『Player』は今年で、『YOUNG GUITAR』は来年で創刊50周年。一番若い『Guitar Magazine』でも再来年で創刊40周年を迎える。
http://sma-event.com/hensyucyo/
https://www.excite.co.jp/news/article/E1543289684823/

杉原千畝に関する「研究三部作」の版元として知られる一方、『都電の消えた街』など鉄道関係書籍を多数発行してきたことでも知られる大正出版が「社長が高齢になった」との理由で後者の鉄道書の出版からは撤退することを表明。6階に鉄道書専門のコーナーがある神田神保町書泉グランデでは今月10日から大晦日まで「大正出版ありがとうフェア」を開催中だ。なお書泉公式サイトによると同社は《今後は社業としてライフワークでもある杉原千畝関係書に専念する》とのことだ。
https://www.shosen.co.jp/fair/87610/ 

◎入院中の渡辺恒雄読売新聞グループ本社主筆に関して今月中旬ネット上で「死亡説」が流れたことについて、巨人軍オーナーの山口寿一が朝日新聞の取材に対し「うちの新聞社(読売)にも、取材が殺到しました」とこれを否定。渡辺本人は先週22日には「会社にも出てきた」とのこと。
https://www.asahi.com/articles/ASLCX5FF0LCXUTQP00X.html

◎『BuzzFeed News』が先日その運営者への直撃取材を試み、なおも続報を画策中であるらしい保守系サイト『netgeek』に対して「被害者」らによる集団訴訟の動きが持ち上がっているという。ITコンサルタントの永江一石が中心となり、現在はブログやSNS「被害者の会」への参加を呼びかけている。
https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=43346
https://liberalnewsletter.hatenablog.com/entry/2018/11/29/071129
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1811/19/news083.html 

フリーライターで『ルポ中国「潜入バイト」日記』(小学館新書)などの著書を持つ西谷格が、同業の大先輩である小田嶋隆に「フリーランスとはどういう生き方なのか」を問うた長尺インタビューの3回目。読みどころ満載だが、かつて原稿締切に遅れた際、編集者からこんなことを言われたとのエピソードも紹介されていた。
《「猪瀬さんが『おれが最後だろう』って言うから、いや、実はもう一人いるんですってことを返したら、『誰だ名前言ってみろ』と。私が『小田嶋さんっていう人です』って言うと、猪瀬さんが『おれはそんなやつ知らないぞ。その小田嶋っていうやつに言っておけ。自分が締め切りを延ばすようになったのは、大宅ノンフィクション賞を取ってからだ。若いころは全部締め切り前に出していたんだ。おれが名前も知らないようなライターが、おれよりあとに出すとはなにごとだ、説教しておけ』と言われたので、一応お伝えしておきます」》
猪瀬直樹っていう人は、締め切りを延ばせるか延ばせないかをライターの格で考えているやつなんだなと思いましたよ》
https://bizspa.jp/post-87511/

語学書専門出版社「語研」の取締役営業部長で「版元ドットコム」にも組合員として参加している高島利行が、《Facebookで、「出版社の営業による書店店頭の「場所取り」に意味がなくなってきているのでは」という意見を見かけて、感じたことを書こうと思ったら長くなったのでこちらに上げます。場所取りが有効に思えないのは、書店という流通チャネルでの売上が足りなくなってきたということなのではないかと思うのです。》と題した長の論考を「note」に23日付でアップしていた。全部で5項目挙げているが、とりあえずそのうちの「1」だけを以下に紹介する。
《広い範囲で売れるアイテムを扱ってきた大手出版社は、書店減少の影響をもろに受けていますが、場所取り(店頭での露出のための充分な施策)をしっかりと行ったところで、それで確保できる売上では足りないという状態になりつつあるはずです。矛盾するようですが、「店頭での露出を確保し続けるための継続的なアイテムの供給」のために、一点あたりの刷部数が減り、「会社としての露出は確保できているが、アイテム毎の露出はむしろ減っている」という現状も(このあたり、ネット作家の「大手から出したのに売れなかった」的な怨嗟の声とも絡んできている問題かもしれません)》
https://note.mu/tosh1965/n/nc53554b6ac48

月蝕歌劇団主宰・高取英が26日に虚血性心疾患で死亡。66歳。29日頃から友人や知人・関係者らがネット上でつぶやいていたが、同日夕方6時に月蝕歌劇団の公式Twitterアカウントに訃報が掲載された。葬儀は本人の希望により親近者のみにて営まれたという。
https://twitter.com/gessyokukageki/status/1068067091876474880
高取英は70年代半ばから海潮社で『エロジェニカ』を編集していた。同社では、唐十郎責任編集・桑原茂夫編集人『月下の一群』、府川充男『音楽全書』、村田一『ジャズランド』などが発行されていた。『ジャズランド』で村上春樹は初めて商業誌に章を書いたともいわれる。
高取英が『音楽全書』で森田童子論を書いて、それがきっかけで彼女(今年4月没)と交流があったという。
高取英天井桟敷のメンバーで、寺山修二の座付きライターみたいな感じで多数の原稿を編集(代筆も)していた。双葉社週刊大衆』の競馬エッセイも高取が担当していた。市ヶ谷の大日本印刷の出張校正室に入稿しに来て廊下をふらふら歩いていたものだ
『出版人・広告人』伊達政保との対談(2015年6月号と7月号)では、大阪から上京してからの高取の歩みを率直に語っていた。