【文徒】2018年(平成30)1月15日(第6巻6号・通巻1180号)

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1)【記事】「大雪で信越線立ち往生」を巡るマスコミと対照的なネット世論の「JR擁護」
2)【本日の一行情報】

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1)【記事】「大雪で信越線立ち往生」を巡るマスコミと対照的なネット世論の「JR擁護」(岩本太郎)

11日夜から日本海側を襲った大雪で、乗客約430人を載せたJR信越線の普通列車新雪に阻まれて19時前頃から線路上で運行がストップした。この件はテレビなどマスコミで大きく取り上げられた。
満員の乗客がそのまま翌朝まで車内に缶詰となり、中にはさすがに途中で具合が悪くなって駆け付けた救急車で搬送される乗客なども出たという。列車が停まった現場が最寄りの駅まで数百m程度しか離れておらず、すぐさまマスメディアの取材クルーが現場まで急行し雪の中に佇む列車の映像などを盛んに伝えたことから、ネット上では当初はJR側の対応の悪さを批判する声が沸き起こった。
《JRは、危機管理能力がゼロ。乗客のことを真摯に考えていない。国交省は、このことを問題にすべき。新潟県は、何をしている。JRが対応できないなら、こういう時こそ県が対応すべきだ》
https://twitter.com/hadakano_taiyo/status/951596870601662464
《JR信越線の豪雪による列車ストップさぁ、水差し入れたり、病人を搬送したり、家族が迎えに来たり、マスコミが現場まで来れたりしてるんだから、 大型バスは無理にしても、乗客を輸送する手段ないの? 》
https://twitter.com/uzai_ossan/status/951591089735004160
《駅まで300mであれば、人海戦術で雪を払い除け道を造り、400人ほどの乗客を帰宅させる処置を13時間以上も決断できないでいたのか?
この対応の悪さはJRの古い体質が出ていると思う!》
https://twitter.com/starplatinum13/status/951629328718032896
年末の東海道・山陽新幹線での台車亀裂事故の際もそうだったが、近年では事故が起こった列車に乗車中の一般乗客でも手持ちのスマホなどで「現場から直送」の生レポートを写真や映像で、かつSNS等を通じてリアルタイムに送れるようになっているから、こうしたケースでの展開が実に早い。実際、夜中の4時前には車内で吊革にぶら下がったまま疲労困憊の体で立ち続ける乗客の写真を添えた、こんな投稿も上がっていた。
《JRさん、後手後手だと思います。
自衛隊や消防の方、救助してあげてほしいです!
我慢強いんです・・雪国の民は・・》
https://twitter.com/kooo_chan/status/951525608885952512
大手メディアの報道もこういう時は「乗客の味方」としてもっぱら鉄道会社批判の文脈に回る。NHKも翌朝10時過ぎのニュースで、独自に車内の乗客に接触を図って集めた声を次のように伝えた。
《線路上で動けなくなった電車に乗っている高校2年生の男子生徒は、12日午前0時すぎにNHKの電話取材に対し、「電車の中は人がいっぱいで、みんなずっと立ちっぱなしで足がつらい。のどがかわいたしおなかもすいたが、食料もまだ配られていない」と話していました》
《JR信越線で動けなくなった電車に乗っていると見られる人は、車内の様子をツイッターにつづっています。(略)
午後9時2分
「車掌さん〈大変申し訳ございませんまたしても雪を抱えてしまったため動けません〉車内のお客さんたちイライラ通り越して笑い始めた」
午後9時51分
信越線、除雪が終わったので起動試験しますとのアナウンス車掌:試験の結果動かすことができませんでした」
午後10時19分
「車掌さん声が泣きそうになってきたよ」
午後11時3分
「閉じ込められて早5時間半なにやら食料の支給が始まるようです」
午後11時6分
「いいからもう降ろしてくれ」》
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180112/k10011285911000.html
ところがだ!こうしたTwitterを通じた現場レポートもまたマスメディアによってスクリーニングされた形で伝えられるものよりも、ネット民がじかに飛びついて「これは面白い!」と感じたものへ、やがて全体がなびいていくものらしい。
その意味で今回のケースで目を引いたのは、やはり同列車の中で乗客として缶詰になっていた人物の連弾ツイートが猛烈な勢いで拡散したことだろう。
同列車に乗り合わせた「猫透け野郎(@mikeyalo_0914)」は、自身のTwitterアカウントから一晩に渡り計17回、それも「JRの対応は素晴らしいと思いました」 といったスタンスから行った連弾ツイートした。このツイッターが、ネットメディア『ロケットニュース24』によると、《約6時間で1万リツイート以上を記録するなど猛烈な勢いで拡散》したという。
何とか無事に脱出のうえ帰宅した「猫透け野郎」がまとめたJR側の対応や車内の状況は、こんな感じだった。
《・応援が来るまで乗務員は、1人で乗客対応と除雪作業をしていた
・除雪作業を手伝いたかったが、真っ暗なうえ、何が通るかわからない線路に降りての作業は素人には無理
・確かに乗客も疲れていたが、乗務員の方がはるかに疲れていた
・車内放送の声からは、明らかに疲れが伝わってきた
・その声に対し、一部の乗客からは「がんばれ! がんばれ!」と励ましの声が挙がっていた
・結局、乗客は応援することしかできなかった
・JRの一生懸命さや心遣いに敬意を表し、お礼を言いたい
・ニュースでは厳しい意見が多いようだが、自分自身は素晴らしいと思った》
https://rocketnews24.com/2018/01/12/1007058/
NAVERまとめ」にも「JR信越線の立ち往生の件‥運転士の対応に感動の声ひろがる 」といったスレッドが立った。菅義偉官房長官までが記者会見で「大雪で電車立ち往生に不快感」を示した(産経新聞の報道)ことを伝える一方、全体的にネット上の論調が「JRへの責任追及」から流れが変わっていった様子が窺える。
https://matome.naver.jp/odai/2151581229037256701
http://www.sankei.com/politics/news/180112/plt1801120027-n1.html
上記で「菅義偉官房長官の不快感」を伝えた産経新聞も、そうした「ネット世論」の微妙な変化に対応せねばと考えたのかどうか、13日の朝には「運転士が一人で除雪作業、乗客から「頑張れ!」とエール…ツイッターでの現場報告が話題に」と題し、上記「猫透け野郎」のツイートや、そこから始まったネット上での共感の声を後追いしていた。
http://www.sankei.com/affairs/news/180113/afr1801130008-n1.html
列車トラブルにおける鉄道会社側の責任問題を追求しようとするマスメディアの姿勢に、災害現場からのネット発信とそれを見守るユーザーたちが疑義を投げかけて流れを変えさせたという、過去にあまりなかったケースではなかろうか。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

岩波書店が昨年12月1日付で、本社から車道を隔てた南隣の「岩波書店一ツ橋別館」(千代田区一ツ橋2-4-4)を小学館に売却(金額は非公開)していたことが明らかになった。「東京商工リサーチ」のレポートに よると、岩波書店の担当者は「テナントビルとして運用していたが、将来性などを考え経営判断した」、小学館側は「本社の隣地で、収益物件として折り合った」と、それぞれコメントしている。場所的には一ツ橋センタービルの西隣、飛鳥新社などが入る光文恒産ビルの北隣でもある。
http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20180112_02.html
http://www.sankei.com/economy/news/180112/ecn1801120026-n1.html
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1801/12/news109.html

BS11(日本BS放送)が、理論社(都内中央区)と国土社(同千代田区)という、児童書・教育書では老舗の版元として知られる2つの中堅出版社の全株式を取得のうえ子会社化したと11日付で発表。理論社は2010年に、国土社は2015年にそれぞれ民事再生法の適用を申請し、どちらも再建の途上にあった。
http://file.swcms.net/file/bs11/ir/irnews/auto_20180110448306/pdfFile.pdf
https://maonline.jp/news/20180111a
https://ma-times.jp/56369.html
日本BS放送の親会社は設立以来ビックカメラ。もともとは2000年のBSデジタル放送の開始時よりデータ放送を行う事業者として、毎日新聞系の「メガポート放送」など、他のデータ放送専門の局などとともに前年までに開局した。その後、メガポート放送と合併し、毎日新聞とも協力関係を持ちつつ一時は竹橋の毎日新聞本社ビルにスタジオを置いていたが、2008年には神田駿河台の旧文化学院校舎跡に建てられたビルに移転。2007年からはBSデジタルハイビジョン本放送も開始。既に累損も解消するなど近年の実績は好調だ。

◎「ラーメン店を買収するから融資してくれ」などと嘘をつき、都内の会社社長から現金2000万円を騙し取ったとして、元電通社員の井手智容疑者(37歳)ら2人が警視庁に逮捕された。
https://www.asahi.com/articles/ASL1D3CHJL1DUTIL00G.html
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018011200634&g=soc
井手は2015年7月にもRIZAPから現金3億円を脅し取ろうとした恐喝容疑で逮捕され、電通を懲戒解雇されている。朝日や日経、時事、日本テレビテレビ朝日など多くのマスメディアはRIZAPの社名は伏せていたが、TBSは社名を出して報道。
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3262181.html
日刊ゲンダイ』は2年前のRIZAPへの恐喝事件まで遡ってレポート。
《井手容疑者は、都内のジムに通っていた20代の女性が男性インストラクターから、『痩せないのなら薬を飲むしかない』と言われたとイチャモンをつけ、その上で『(やりとりを録音した)USBデータを手に入れた。買い取ってくれないか』と、3回脅迫した。笹川らと3人で同社に押し掛け、応接室で役員2人に『3億円払え。データを雑誌や世の中にバラまくぞ。会社として誠意を見せろ』と、現金を脅し取ろうとしたのです。あらかじめ通報を受けた捜査員が応接室の外で張っていて、現行犯で逮捕した。ただし金を取れなかったため、起訴猶予になったのです」(捜査事情通)
当時は井手容疑者の勤務先が電通だったことは公表されなかったが、今回は一部報道で明らかになった》
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/newsx/221210

集英社が『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』の商標を出願していたことが分かり、ファンの間では「ついに5部アニメ化か?」と話題になっているらしい。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1801/12/news110.html

◎ユーチューバーのマネジメント業務も行い、講談社『ボンボンTV』とも協力関係にあるUUUMの昨年6〜11月期決算を発表。売上高は対前年同期76%増の48億円、営業利益は同10%増の2億5800万円、純利益は同2%増の1億5900万円。所属するユーチューバーの動画の再生回数が伸びて広告収入も増加し、社員数の増加などによる人件費増加を補ったようだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25568290R10C18A1DTA000/

TwitterFacebookが台頭する以前の2000年代に隆盛を誇ったSNSmixi」が閉鎖されるのではないかとも噂が去る12日以降に広まった。傘下のチケット転売サイト「チケットキャンプ」をmixiが今年5月に閉鎖すると報じた新聞記事を、あるTwitterユーザーが誤認して「mixiも閉鎖」などと投稿したことがきっかけらしい。mixiは同日夕刻までにTwitter上の公式アカウントなどで《一部でSNS mixiが閉鎖されるとの噂が流れておりますが、閉鎖の予定はございませんのでご安心ください。引き続きmixiでお楽しみいただければ幸いです》などと表明して噂を否定。
https://twitter.com/mixi_official/status/951754120511148032
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1801/13/news019.html

◎出版市場の縮小で本の売上は激減している一方、コンビニの増加などにより配送先が激増して作業員の人手不足が深刻化しているという出版流通の実態について朝日新聞が12日付で現場ルポを掲載。神奈川県綾瀬市運送業者「出版輸送」相模営業所のトラックが一晩で同市および大和市内にある書店2店、コンビニ53店への配達に出て行くのに記者が同乗しながら、現場の雰囲気を伝えている。
https://www.asahi.com/articles/ASKD551YBKD5UCVL00H.html
ルポとしての臨場感で読ませてくれるのは良いとして、「出版取り次ぎ」「取次会社」と記事中で表記統一されていないが、こうした粗雑さはきちんと直してほしかった。

◎米国でベストセラーになっている「トランプ暴露本」の日本語版出版権は早川書房が獲得した。ジャーナリストのマイケル・ウォルフがトランプ政権の前首席戦略官ら関係者200人以上への取材をもとに同政権の内情を綴ったノンフィクション『炎と怒り:トランプ政権の内幕』(原題Fire and Fury: Inside the Trump White House)を2月下旬に発売すると、12日に同社が発表。
http://www.hayakawa-online.co.jp/new/2018-01-12-152531.html
http://www.sankei.com/life/news/180112/lif1801120044-n1.html

◎往年の長井勝一『ガロ』版元としてのイメージはどこかに吹っ飛び、代わって”ネトウヨ出版社”といった評が今や定着して久しい青林堂だが、相変らず書店の店頭ではイベントなどを通じて何かと話題を呼び起こす版元であり続けている。先日までJR飯田橋駅ビルの芳進堂で行われていたフェアもすんなりとは終わらなかったらしく、公式アカウントで次のように呟いていた。
飯田橋の芳進堂ラムラ店での当社フェアは好評につき延長の予定でしたが、パヨク勢の嫌がらせのためやむなく終了となりました。書店内で勝手に書籍を移動させるなどの行為や、書店の入居する施設、他テナントに対してのクレームがあったようです。同書店の応援宜しくお願いします!》
https://twitter.com/seirindo_book/status/951406513993609217

◎2000年代にゲームやアニメなどのサブカル雑誌として名を馳せた太田出版の雑誌『CONTINUE』が23日刊行の通巻51号より正式に復活。第1号目のテーマは『DEVILMAN crybaby』と『ポプテピピック』。永井豪へのロングインタビューなども収録しているという。
http://www.ohtabooks.com/qjkettle/news/2018/01/13135055.html

◎『東京スポーツ』が13日付でスクープして話題になった新日本プロレス看板レスラーのオカダ・カズチカと人気声優の三森すずこの「熱愛」は、実は『週刊文春』が同日夜にネット番組の「文春砲LIVE」で「アニメ界をゆるがす大スクープ!」 を配信すると事前に告知していたネタを『東スポ』が土壇場で先にかっさらってしまったものだったようだ。
https://www.j-cast.com/2018/01/13318598.html

大阪府警の庁舎内で11日にボヤが発生。火元は庁舎2階の記者クラブ室内で、読売テレビのブース内に置かれていた記者のパソコンから発火した模様。
https://mainichi.jp/articles/20180112/k00/00m/040/063000c