【文徒】2018年(平成30)1月16日(第6巻7号・通巻1181号)

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1)【記事】記者が1人もいない「JX」、謎のTwitterユーザー「岡三マン」が暗示する?「機械化された通信社の未来」
2)【本日の一行情報】
3)【訃報】井家上隆幸さん

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1)【記事】記者が1人もいない「JX」、謎のTwitterユーザー「岡三マン」が暗示する?「機械化された通信社の未来」(岩本太郎)

2008年に設立されたJX通信社は、ネット上に流れる事件や事故などの情報を機械的に収集、自動的に判別のうえ提供するという、いわばバーチャル通信社だ。記者は1人もおかず、社員の7割はエンジニアだという。何やら冗談のようにも聞こえるが、公式サイトの会社案内に掲載された「主要株主」には共同通信社や日経の「QUICK」、サイバーエージェントベンチャーズ三菱UFJキャピタル……。「主要取引先」には産経デジタルNHK日本テレビテレビ朝日、TBS、テレビ東京TSUTAYA……といったところがずらりと名前を連ねる。
https://jxpress.net/about/info/
このJX通信社の代表で現在29歳の米重克洋がネットメディア『BUSINESS INSIDER JAPAN』のインタビューに応えている。会社を設立したのがちょうど10年前になるから、当時なんと19歳での起業。きっかけは、当時「インターネット新聞」として、既存マスメディアの記者や編集者たちが鳴り物入りで始めたものの最終的にあえなく頓挫した『JanJan』(日本インターネット新聞)や『オーマイニュース日本版』の失敗からだったと言う。
《中学3年のときから、興味のあった航空業界のニュースサイトを始めて、ニュースメディアのビジネスにも関心があった。同じ時期に、オーマイニュースJanJanなど、市民ジャーナリズムと呼ばれる新しいオンラインニュースメディアが華々しく誕生したが、3、4年で全て潰れ、ビジネスとジャーナリズムを両立させるのは難しいんだなと感じた。だったら、自分はそこをやりたい。大学に入ったらすぐに作ろうと思ったんです》
目指すはAI技術を導入した「報道の機械化」だそうだ。TwitterなどSNSを通じてたちまち事件や事故の現場から写真や映像を含めた情報が流れてくる現在では、従来型マスメディアが人海戦術的に行っていた取材などによる情報の収集・分析の大半はゆだねることが可能となり、そのぶん《人間にしかできない作業に時間を割くことができるようになる》というわけだ。
一昨年9月にはSNS上に流れる事件・事故などの投稿を自動で収集・判別して報道機関向けに配信する「FASTALERT」のサービスを開始。同様に一般読者向けて発信するアプリ「NewsDigest」の提供も行っている。昨年7月の都議選では、報道各社の情勢調査が自民党都民ファーストの会が「互角」もしくは「自民が辛勝」としていた中で「都民ファが第一党になる」と予測を的中させるほどの情報分析力を見せつけるまでになった。
《大袈裟に言えばニュースの産業革命。ロイター通信が"電信"を生み出したように、記事作成のプロセスにイノベーションを起こしていきたい》と米重は記事の末尾で語っている。
https://www.businessinsider.jp/post-160129
そんな米重が現在《彼に勝る人はソーシャルメディア上にはいない》と、そのニュースの選択眼に脱帽する存在が「岡三マン」という謎のTwitterユーザーであるそうだ。
https://twitter.com/okasanman
「岡三」とは岡三証券のことであるらしく、プロフィール欄には《IT関連、投資家、デイトレーダー》などとあるが(岡三証券側は「当社とは一切関係がない」と外部からの問い合わせに答えているとか)、その守備範囲は最新のビットコイン関連の話題からテロや災害まで極めて広範囲に及び、フォロワー数は現時点で15万人を超えている。その存在に注目した『Bloomberg』記者の小田翔子がレポートしたところによれば、こんな人であるそうだ。
《午前10時10分の日銀オペ、午前10時15分の人民元の対ドルレートを毎日欠かさないことや、週末や夜中もつぶやき続けることで、何らかの自動運転プログラムが使われていると憶測する声も多い。(略)少々エピソードは古いが、日本銀行が初のマイナス金利導入を決めた16年1月29日。発表をめぐって日経平均株価が1000円弱、ドル・円相場が3円弱の乱高下となった。発表15分前に日本経済新聞のホームページに掲載された「マイナス金利導入を議論」のヘッドライン画像を岡三マンがツイートした際には「この投稿のおかげで命拾いしました」といったコメントが残されていて、フォロワーの間では取引する上で必要なツールとなっていたことがわかる。
マーケットに影響力のあるニュースの転伝が速いことで、短期売買を繰り返す「イナゴ投資家」の間で岡三マンは重宝されているという。デイトレーダーになって12年という村上直樹氏は「いまやトレーダー業界では必須の存在」と話す》
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-01-14/P16SKY6JTSEC01
「記者が要らない通信社」が当たり前になる時代は、本当にそう遠からずやってくるのかもしれない。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

中日新聞社前社長で現主筆小出宣昭が、13日に愛知県名古屋市で開かれたシンポジウム(パネリストは立憲民主・希望・民進の3党幹部)の席上、同県の三河地方が出身の大村秀章知事について語る中で「三河に行くと時々、大村さんのような保守かリベラルか、性同一性障害ぐらいの知事が出ます」と発言。終了後「言葉が滑った」と記者団に述べ、発言を撤回。
https://www.asahi.com/articles/ASL1F5JF6L1FOIPE00K.html
愛知県の場合、信長・秀吉の出身地で今も県都名古屋市を擁する尾張地方と、家康の出身地でトヨタの御膝元でもある三河地方との間では昔から互いに何かと複雑な感情がある。

電通の昨年12月度単体売上高。全社では1510億5100万円(対前年比95.3%)、雑誌は18億5800万円(同88.7%)
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2018002-0112.pdf

博報堂DYホールディングス3社(博報堂、大広、読売広告社)の昨年12月度単体売上高。博報堂は全社では741億4300万円(対前年比111.2%)、雑誌は10億5300万円(同85.6%)。
http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1544684

◎絵本作家・真珠まりこによる絵本で累計100万部を超える人気シリーズ(講談社刊)となっている「もったいないばあさん」のヒンディ語&英語版がこのほどインドで刊行され、13日より全土の書店で発売が始まった。なおも経済成長が続く中、ゴミの不法投棄や屋外排泄などによる環境悪化がますます深刻化しているインドで子供たちを中心に環境改善に向けた啓蒙活動を促進することが狙い。インドでの出版元は政府系出版社のナショナル・ブック・トラスト(NBT)社。以後、タミール語やベンガル語など他の11言語での出版も予定しているとのこと。
http://www.kodansha.co.jp/upload/pr.kodansha.co.jp/files/pdf/2018/20180115mottainai-india.pdf
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180114/k10011288481000.html
https://mainichi.jp/articles/20180115/ddm/041/040/100000c

長野市に本拠を置くプロレス団体「信州プロレスリング」が児童養護施設への寄付を募るための自社サイト「信州☆総タイガーマスク計画」において、「タイガーマスク」(劇画原作は梶原一騎)の名称を当初に講談社の許可を得ずに使用していた問題で、同団体は外部から指摘を受けて一時停止していた名称の使用と前記サイトの公開を今月から再開した。先月下旬、同サイトについて信州プロレス代表のグレート☆無茶、協力する長野県知事阿部守一が共同記者会見を行った後に県民からの指摘を受けたことから発覚したもので、講談社からの許可が得られたことから同県も4日から出先機関などでのポスター掲出を再開。講談社広報室は毎日新聞の取材に「先月下旬、著作権者に連絡を取り了解の意思をいただいております。弊社としても一連の活動に賛同しております」とコメント。
http://s-tigermask.com/
https://mainichi.jp/articles/20180112/ddl/k20/040/299000c

語学書専門出版社「語研」の営業担当役員で、アマゾンの取引をめぐる問題など出版流通への提言活動にも熱心な高島利行が《2018年の出版業界の動向などを、かなりざっくりと適当に予想してみますね》と、以下の「7大予想」。
《1.出版社がデジタルメディアを飲み込む例が増える
2.電子は中抜き、紙はババ抜き
3.出版物とのタッチポイントのさらなる減少
4.個性派書店の没個性化
5.出版物とのタッチポイントを確保するための新しいアフィリエイトの仕組み
6.事業承継の失敗により消滅する出版社
7.A社が、しれっとバックオーダー発注を復活させる》
https://note.mu/tosh1965/n/n3dca22a56a90

リクルート系の電子書籍サイト「ポンパレeブックストア」が2月でサービスを終了。保有eブックコインや購入履歴、リクルートでのIDは3月1日からメディアドゥの「スマートブックストア」へと引き継がれる。
http://ponpare-ebook.jp/sd/page/00001efc/
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1801/12/news122.html

◎かつて走っていた特急列車や急行列車、およびそこに使われていた人気車両が老朽化で引退した際の映像や写真などを収録したDVD付き隔週刊鉄道雑誌『鉄道 ザ・ラストラン』をディアゴスティーニ・ジャパンが2月13日(火)に創刊する。
https://deagostini.jp/trd/?utm_source=google&utm_medium=cpc&utm_campaign=trd&gclid=EAIaIQobChMIy9uVvt7Z2AIV2DUrCh3g8gUOEAAYASAAEgKr_fD_BwE
https://trafficnews.jp/post/79429
物好きのようでもあるが、この種の「引退車両」追っかけは1970年代のSL廃止ブームのころから連綿と続くファンや鉄道関連書読者の流れがある。

◎1970年代後半、若干17歳で高校生としてフジテレビにアルバイトで入り、82年に放送が始まった『笑っていいとも!』では20代前半のAD(アシスタントディレクター)でありながら番組制作現場の全体をコントロールしていたという「伝説のテレビマン」星野淳一郎について、盟友だった吉田正樹(元フジテレビ・現ワタナベエンターテインメント会長)がインタビューに応え述懐している。星野は昨年12月1日に57歳の若さで死去。葬儀にはタモリのほかダウンタウンウッチャンナンチャン清水ミチコ野沢直子勝俣州和今田耕司東野幸治……と、縁のある人々がずらりと顔をそろえたという。
https://news.mynavi.jp/article/20180113-570068/

鹿島灘に面した茨城県神栖市の「TSUTAYA OUTLET」は中古本販売店として国内有数の規模を有していると言われる。2016年に店頭販売から撤退した同県つくば市の友朋堂書店で店員を務めていた徳永直良(現在は「ビル管理見習い」とか)が訪店した際の様子を10日に写真入りでTwitterにアップしていた。
《広かった。雑誌の新刊以外は、ほぼ中古本での品揃え。文庫新書棚で約8段?10列が24面以上。月一で来ようと密かに決意》
https://twitter.com/naox_toku/status/950967410454028288

◎一方で、都内にはこんな古書店があるそうだ。「全品55円(税別)」で販売するという「BOOK55」。
https://twitter.com/book55kinuta
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=1573452369377146&set=a.250088228380240.83270.100001371945470&type=3&theater

◎昨年12月1日に「アドミュージアム東京」が華々しくリニューアルオープンした電通本社ビル地下1階フロアだが、それから1ヵ月も経たない12月末にすぐ隣の文教堂書店カレッタ汐留店が閉店。現状では同店跡にはシャッターが下りたままでまた寂しくなってしまった。2月下旬には代わってスーパーブックスがオープンの予定。
https://www.instagram.com/p/Bd9W1UdF4Jb/?taken-by=taroimo0424

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3)【訃報】井家上隆幸さん

文芸評論家でコラムニストの井家上隆幸さんが15日に逝去された。享年84歳。腎臓の病気で入院中だったが、肺炎をこじらせあっという間のことだったという。本人の遺志で葬儀は執り行わず家族で密葬するという。
当社の月刊『出版人・広告人』でお願いしてきた連載が未完となってしまったのもつくづく残念である。