【文徒】2018年(平成30)1月18日(第6巻9号・通巻1183号)

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1)【記事】『IWJ』が「フリー記者の名前を書かない大手メディア」に激怒する理由(岩本太郎)
2)【本日の一行情報】

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1)【記事】『IWJ』が「フリー記者の名前を書かない大手メディア」に激怒する理由(岩本太郎)

岩上安身の『IWJ』が17日付で《中小メディア記者やフリーランスの名前を記事中引用しない大手メディア! 「非記者クラブ」を低く見なす傲りからか!?》と、日頃の鬱憤をぶちまけるかのような長文を載せている。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/409786
昨年秋の衆院選前、「希望の党」失速につながった東京都知事小池百合子の「排除いたします」発言を記者会見の場で引き出したフリージャーナリスト・横田一に対するマスメディアの扱いがひどい、との告発である。横田は『IWJ』常連寄稿者である。が、この件は『IWJ』以外にも多くのマスメディアでも盛んに取り上げられたにも関わらず、横田の名前はほとんど伏せられ「フリージャーナリスト」とされていた。以下、その具体例。
《フジテレビのワイドショー「直撃LIVEグッディ!」は、選挙後、小池氏が自らの「排除」発言について、「食事が喉を通らないほど後悔した」と報じた》《その際、排除発言を引き出した横田氏のことを、「フリー記者」とだけ記載しているのだ》
http://blog.fujitv.co.jp/goody/E20171025002.html
《「直撃LIVEグッディ!」で紹介された内容は、10月25日付の東京新聞の記事を引用している。引用元となった東京新聞の記事にも、横田氏のことは「フリー記者」とだけしか書かれていない》
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201710/CK2017102502000140.html
《10月27日の都知事記者会見を報じた朝日新聞も、横田氏のことを「フリーの記者」とのみ書いて報じた》
https://digital.asahi.com/articles/ASKBW5H2PKBWUTIL043.html
こうした記者会見での政治家の発言は、別に普段から「〇〇新聞の□□記者の質問に対してこう答えた」などとは明記されないのが通例だ(東京新聞・望月衣塑子も、最初から名前が売れたわけではない)。だからマスメディアが横田の名前を記事中で報じないことを、即座に「フリー記者差別だ」と批判すること自体には無理がある。
ただ、クラブ加盟社社員という身分で記者会見に参加できるテレビ局や新聞社の記者と違い、フリー記者は、普段から「フリーである」との理由で記者会見への参加が拒まれたり、名なしで報じられたりする。それを「特権を保証された社員記者が、俺が質問して引き出した回答を都合よく、しかも俺の名前も出さずに使いやがって」と思うのは自然だ。私(岩本)もフリーランスで記事を書く者として心情的に同調できる。フリー記者は「自営業」で、自分の実績だけを頼みに生きているからだ。
要は、大手の記者が「忖度」して聞かないような質問をして、スクープ発言を引き出してやったのに、逆にそんな俺を無視するのか?と。
以下は『IWJ』記事からだが、そうした「フリー無視」「フリーつぶし」の姿勢を感じたという批判なのだろう。
《囲み取材中、横田氏が質問をすると、それにかぶせるかのように他の記者が質問をする様子も見られた。悪質な「質問つぶし」であり、嫌がらせである。これはしかし、記者クラブではよくあることで、囲み取材時の空気を読んで、政治家を困らせる記者の「質問つぶし」をして、政治家をアシストする記者がしばしば出てくるのである。アイコンタクトプレーで政治家と記者の間で行われる「批判的な質問つぶし」》
もっとも、これとてフリー云々以前に、大手メディアの「番記者」どうしの「縄張り争い」の光景でも見られるのだが。
しかし、「記者会見を一般の人々にも開放しよう」という流れは確実に進んでいる。なのに、現在の政府や官庁での日常感覚は「永田町での変な常識」のままだ。世間から奇異の目で見られても仕方ない。
昨年4月、復興庁での記者会見で、今村雅弘復興相を逆上させ、退席(後に復興相を辞任)するまでに追い込む質問をしたフリージャーナリスト・西中誠一郎の名前も、例えば以下のような新聞報道では当時ほとんど伝えられることはなかった。
https://mainichi.jp/articles/20170405/k00/00m/010/089000c
とくにこのケースでは、西中の質問も、今村のリアクションも、同じ会見場にいた他の記者はほとんど報じなかった。西中は誰からも咎められずに会見場を出て、独立系ネットメディア「OurPlanet-TV」に自身の撮影映像を持ち込む。それがネットで公開されて注目を浴びたから大手メディアも後追いをしたのだ。
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2113
つまりフリー記者の名前以前に、「フリー記者がそこにいて、大手メディアの記者が聞かない質問をした結果、初めてそれがスクープとして表面化した(それがなければ事実そのものが表面化することもなかった)」ことがなかなか浮かび上がってこないという現実。そこにこそIWJや西中をはじめとするフリー記者たちの歯がゆさがあり、今の政府や官庁での記者会見のあり方が批判される部分がある。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

小学館は発売前の新刊を応募者の中から先着100人に送り、読者からのレビュー投稿を募るという企画「新刊X」を始めると16日に発表した。第1弾のラインナップは『国会議員基礎テスト』(黒野伸一)『刑事の血筋』(三羽省吾)『夢探偵フロイト』(内藤了)の3冊。1月30日まで応募を受け付ける。投稿されたレビューは新刊の帯文などの宣伝に使用する可能性があるとのこと。
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1801/16/news127.html

◎『東洋経済オンライン』でITジャーナリストの本田雅一が「『MERY』が過去の栄華を取り戻すための課題」について寄稿。
《「効率は悪いが、確実に権利者との連絡を取れる手段として現段階は地道に作業を進めていく」と江端氏は話す。(略)しかし、たとえば10枚の画像が使われているとき、1枚でも権利がクリアできていなければ記事は掲載できないというルールだという。使用する画像の選択は”カワイイ”をテーマにするMERYにとって生命線であり、記事を書くライターの気持ちそのものを反映しているため、代替がきかない。このこともあって、1日の掲載記事数は旧MERYの半分以下となった》
《藤井氏は次のように言う。
「確かにMERYが果たしていた役割を、現在のインスタグラムが取って代わった部分も少なからずあります。しかし、インスタグラムはあくまでも”写真が集まる場”。ハッシュタグやフォローする相手で情報をある程度選別できるとはいえ、情報が整理されているとは言えませんし、知りたい情報へと簡単には辿り着けません。(略)もっと詳細な情報はどこにあるのか、あるいはその場所に行きたいけれど住所はどこなのか?など、わからないことが多いのでMERYの出番はあります」》
http://toyokeizai.net/articles/-/203565

集英社とモバイルマーケティング企業「AppLovin」日本法人がアプリ内広告配信に関して連携。「少年ジャンプ+」ユーザーに向けて、スマホ対応の「縦型ネイティブ広告」の配信を開始することになった。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000019867.html

◎「はれのひ」事件でせっかくの晴れ着を8日の成人式で着ることができなかった新成人の女性たちを対象に、『小悪魔ageha』が無償で参加できる衣装提供撮影イベント「振袖撮影会2018」を、2月3日に開催するそうだ。
http://kai-you.net/article/49548
https://netatopi.jp/article/1101471.html

ADKアサツー ディ・ケイ)の昨年12月度単体売上高。全社売上高は311億1600万円で対前年比95.5%、媒体別では雑誌が7億4100万円、同74.8%と約4分の3に減少。
https://www.adk.jp/wp/wp-content/uploads/2018/01/release_Billing_201712_J.pdf

丸善ジュンク堂は店頭に設置している情報端末に、ネット通販の在庫情報や電子書籍の販売情報を表示する「ハイブリッド在庫表示」機能を新たに追加した。店頭に在庫がある場合はそちらのみを表示し、在庫がない場合は「honto.jp」での通販在庫や電子書籍の情報を表示する仕組みだという。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1801/16/news100.html

NHKは16日に発表した次期経営計画(2018−2020年度)において、インターネットなどを活用した次世代の「公共メディア」への進化を目標に掲げつつ、3年間で総額170億円程度に及ぶ受信料の減免措置(テレビ設置月は無料化、奨学金を受給する学生には免除するなど)を実施する方針を明らかにした。ただし受信料の一律値下げについては見送っている。
http://www.nhk.or.jp/pr/keiei/plan/plan2018-2020/index.html
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25777670W8A110C1EA2000/
http://www.sankei.com/entertainments/news/180117/ent1801170006-n1.html

◎同じ16日、NHKは同局の公式ニュースサイトなどで18時55分ごろに「北朝鮮ミサイル発射の模様 Jアラート 政府“建物の中や地下に避難を”」と誤って伝える速報を配信したと発表。報道局の担当者による誤操作が原因とされ、送信から数分後の19時のニュースで訂正・謝罪。
http://www.sankei.com/life/news/180116/lif1801160035-n1.html
https://www.minpo.jp/globalnews/detail/2018011601002232

◎ハワイでも去る13日の朝8時、同地の緊急事態庁が「弾道ミサイルがハワイに向けて飛来中。直ちに安全な場所に避難してください。これは訓練ではありません」との誤った一斉メールを発信して大パニックが発生。同庁の職員が、交代時に間違って警告ボタンを押したことが原因らしい。
『Smart FLASH』などがその舞台裏をレポートしている。
https://smart-flash.jp/sociopolitics/32144
https://www.technologyreview.jp/nl/the-tech-troubles-behind-hawaiis-false-missile-alert/

◎長野県佐久穂町の「佐久高原ケーブルビジョン」が15日夕刻に放送を取りやめ、地元の最大1000世帯でNHKや民放のテレビ番組が見られなくなる事態が発生した。同社はケーブルテレビ事業から撤退したいとの意向を以前から表明しており、これに対して佐久穂町がサービスを継続するよう説得していたという。ほぼ全域が山間部でテレビの難視聴地域が広範囲に及ぶ長野県にあっては、ケーブルテレビ局の改廃が視聴者に与える影響は極めて大きい。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180116/k10011290581000.html

◎昨17日で阪神・淡路大震災の発生から23年。神戸市東灘区のNPO「よろず相談室」理事長・牧秀一(67歳)は、今も復興住宅に暮らす被災者22人に2年がかりでビデオインタビューを行い、約40時間の証言映像を収録。今後は1人10分程度に編集し、震災から25年にあたる2020年までに証言集として多くの人に見られるようにしたいと考えているそうだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25749490W8A110C1AC1000/
http://npo-yorozu.com/

◎第158回芥川賞直木賞の受賞作が16日に発表。『おらおらでひとりいぐも』で受賞した若竹千佐子は「岩手県遠野市出身」というところまでは大きく報じられているが、実は私(岩本)と同じ岩手大学の出身(学部は私と違う教育学部)だとの記述は地元の岩手日報に載った第一報にすら見当たらず(毎日新聞の「ひと」欄などには書かれていた)、たまたま同窓会の公式Twitterアカウントを見ていて初めて知った。こういう時、早稲田大学とか中央大学とかの出身者だと訊ねなくてもすぐに情報が入ってくるのになと思う。
http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20180116_13
https://mainichi.jp/articles/20180117/ddm/008/070/111000c
https://twitter.com/shichiyukai_net/status/953224274810056704
ちなみにWikipediaの「岩手大学の人物一覧」にはOBとして、あの宮沢賢治のほかに私の名前ですら出てくるのに若竹の名前はまだ載っていない。

岩手県一関市でダンボール原紙や新聞用紙などの製造・販売を行ってきた「北上製紙」が今年7月末で全事業を停止し閉鎖すると16日に発表。関連会社を含む全従業員130人は解雇されることになった。世界的な古紙の価格高騰に伴う事業環境の悪化が原因だという。
https://www.iwanichi.co.jp/2018/01/17/138021/
http://goo.gl/wbsDW7

◎医療や健康についての情報発信に関心のあるライターなどを対象にした「メディカルジャーナリズム勉強会 第1回伝え方サミット」が2月18日午後に都内千代田区紀尾井町の「Yahoo!LODGE」にて開催されるそうだ。
https://medit.tech/event/amj-event-20180218/