【文徒】2018年(平成30)1月23日(第6巻12号・通巻1186号)

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1)【記事】Hulu『紅白』安室奈美恵密着映像は誰が撮ったのか?NHKが秘密にしたかった安室出演の条件
2)【本日の一行情報】
3)【お知らせ】岩本太郎著『炎上!一〇〇円ライター始末記 マスコミ業界誌裏道渡世』出版を祝う会

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1)【記事】Hulu『紅白』安室奈美恵密着映像は誰が撮ったのか?NHKが秘密にしたかった安室出演の条件(岩本太郎)

晦日に放送されたNHK紅白歌合戦』での安室奈美恵出演シーンの映像提供問題で、NHK側と、安室への密着映像(リハーサルから本番まで)を独占した有料動画サービス「Hulu」側との説明が食い違っているとの指摘が浮上した。
発端は11日に行われたNHK上田良一会長の定例会見でのやり取りからだった。紅白での安室のリハーサル時の写真をNHKが5日に「本番の歌唱場面」と偽って報道各社に提供していたことが発覚。その件をめぐる質疑応答の過程で、朝日新聞記者からの《「Hulu」は安室さんに密着取材していたようだが、NHK広報の公式カメラマンが立ち入れなかったのは、なぜか》との質問に対し、NHK側の制作局担当者からは以下のような説明があったという。
NHKは本番の放送素材や特別番組の素材として、紅白の舞台裏をNHKのクルーで記録している。Huluの映像は、その素材を提供したものだ》
http://www.sankei.com/entertainments/news/180111/ent1801110015-n3.html
ところがHuluは、例えば5日付で公式サイトに掲載した番組案内でも以下のように書いていた。
《今回 Hulu の密着カメラは14 年ぶりに「第 68 回 NHK紅白歌合戦」に特別出演歌手として登場した安室奈美恵の舞台裏をNHK協力のもと密着映像の撮影に成功しました。12月29日(金)、30日(土)と行われた2日間に及ぶリハーサルと、日本中が注目した31日(日)本番当日の密着映像、さらに紅白歌合戦出演時の「Hero」の歌唱映像をフルバージョンでお届けします》
https://news.happyon.jp/hulu-contents/documentary-of-na-nys
Huluが「自分たち独自に3日間撮影しました」と言っているようにしか読めないが、これについてNHKは報道各社からの取材に対し21日付で以下のように答えたそうだ
NHKの子会社であるNHKエンタープライズが、Huluでドキュメンタリーを制作しているチームに委託して撮影した》《(定例会長会見で「私どものクルー」としたことについては)NHKの子会社を含めたNHK側のクルーという意味。説明が食い違っているものではない》
https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2018/01/22/kiji/20180121s00041000345000c.html
これについて、日本民間放送連盟出身でNHK問題に詳しい立教大学教授の砂川浩慶は朝日新聞の取材に対して以下のようにコメントしている。
《記録のために撮影するならNHKのスタッフがやるべきだ。優遇したように受け取られないための偽装としか思えない》《国民の信頼の上で成り立つのが公共放送。特に紅白のような代表的番組で、外部から納得を得られないことをすべきではない》
https://digital.asahi.com/articles/ASL1M5W9NL1MUCVL02X.html?rm=714
無論、NHKに限らず民放でも外部の社員がスタッフとして番組制作現場で映像撮影に従事するケースは一般的だ。だが問題はNHKの(それも年1回放送のあの看板番組の)現場で「クルー」により制作された映像が、対外的な説明もあやふやなまま他のメディアの番組で放送されているということだ。とりわけNHKの場合は受信料で成り立つ公共放送として制作した番組の関連素材を、例えば出版界でいえばNHK出版(NHK傘下のれっきとした民間企業だ)が番組テキスト本などにおいて当たり前のように商業出版物として使用していることの是非を問う声が従来からある。
また、NHK公式サイトに掲載されている「放送番組と著作権」にも以前からこう書かれている。
NHKが作ったテレビ番組を放送以外の目的に利用する場合には、NHKの判断だけでなく、原作者、脚本家をはじめ、出演者など、協力して頂いた多くの方々に改めて許諾を得なければならない仕組みになっています》
https://www.nhk.or.jp/toppage/nhk_info/copyright.html
視聴者側からもそのあたりを勘ぐる、例えば次のような声もネット上には上がっている。このあたりが納得いくところだ。
《公営放送である事から、Huluという特定の民間との事情を秘密にしたかったんじゃないの?Huluで放送されているという事は、権利関係上安室側は少なくとも了承しているだろうし、Huluが撮影し、その著作権を持つという事だったんじゃないの?NHKは否定しているけど、上記の事が安室が紅白歌合戦に出る条件として提示したんじゃないの?そう考えるのが普通でしょ。そして交渉の内容も明かさないというのも当然条件としてあったんだろうね。NHKとしてはどうしても出演してもらいたいという事で安室側に足元を見られた格好だね》
http://goo.gl/S9XWSi
もとより、Huluの日本法人が日本テレビ傘下にあり、一方で上記の指摘(攻撃)をしているのが朝日新聞毎日新聞系のスポニチであるという点も押さえて考えておく必要もあるだろう。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

日経新聞の販売部数が昨年11月のABC調査で前月より23万8000部も減少。『FACTA』がこれについて同紙が同月に実施した23年ぶりの購読料値上げが原因ではないかとの見方と、12月に本社で起きた元日経新聞売店経営者の焼身自殺についても絡めながらレポートしている。
https://facta.co.jp/article/201802035.html

◎公益財団法人「新聞通信調査会」が実施した2017年度の全国世論調査ではニュースを読む媒体としてインターネット(71.4%)が新聞の朝刊(68.5%)を初めて上回ったそうだ。
https://mainichi.jp/articles/20180120/k00/00e/040/204000c

◎『現代ビジネス』が、電通が寝具メーカー「エアウィーヴ」に送っていた「謝罪文」と、その舞台裏をスクープ。エアウィーヴが2016年夏のリオ五輪に合わせて電通と組み、約30億円を投じて全米で展開しようとした広告キャンペーンが、電通側のウェブサイトの設計ミスによる開設の遅れなどから大失敗。おかげで売り上げが計画の半分にも届かず、昨年2月期には約20億円の赤字決算に追い込まれてしまったという顛末について、エアウィーヴ 会長兼社長の高岡本州への直撃取材のうえまとめている。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54169

竹書房WEBコミックサイト『まんがライフWIN』で人気を博し、今月からテレビアニメ化された「ポプテピピック」について、21日の15時からアニメイト秋葉原店で開かれる予定だったキャラクター「ポプ子」の「お面配布イベント」が急遽中止となった。テレビアニメのTwitter公式アカウントによれば《沢山の方が集まり過ぎてしまったため、危険な状況と判断させていただ》いたとのこと。歩行者天国に人が溢れ、警官が出動する騒ぎになったらしい。
https://twitter.com/hoshiiro_anime/status/954965322049585152
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1801/21/news029.html
https://music.oricon.co.jp/php/news/NewsInfo.php?news=2104401

◎人気ゲーム「イナズマイレブン」の新作『イナズマイレブン アレスの天秤』のマンガ版が『コロコロコミック』「サンデーうぇぶり」「マンガワン」という小学館の3媒体で並行して連載されることになった。
https://mainichi.jp/articles/20180121/dyo/00m/200/002000c

◎『Sankei Biz』が小学館の女性メディア総合サイト「しごとなでしこ」と提携。21日から同サイト掲載記事の配信を受けることを発表した。
https://www.sankeibiz.jp/econome/news/180119/ecd1801191202003-n1.htm
https://shigotonadeshiko.jp/

集英社ジャンプスクエア』の増刊『ジャンプSQ.CROWN』は19日発売の冬号で刊行が終了。4月には新たな増刊として『ジャンプSQ.RISE』がスタートする。
https://natalie.mu/comic/news/265858
http://jumpsq.shueisha.co.jp/sqcrown/2018winter/

◎『サイゾーpremium』によれば、現役マンガ家たちの間から“描きたいマンガ雑誌”として名前が挙がったのはやはり、『少年ジャンプ』。一方で「『少年ジャンプ』で描いていても売れるわけじゃない」「小学館は編集者が非協力的すぎ」(?)といった声も挙がったらしい。
http://www.premiumcyzo.com/modules/member/2018/01/post_8142/

◎『あしたのジョー』連載50周年記念展覧会がGW中の4月28日〜5月6日に東京ソラマチスカイツリータウン)にて開催される。
https://ddnavi.com/news/430089/

誠文堂新光社発行の雑誌『アイデア』から日本のグラフィック史を概観する『グラフィズム断章』展が23日から銀座のクリエイションギャラリーG8で開かれる。会場には『アイデア』の全バックナンバーも展示されるらしい。
https://www.cinra.net/news/20180121-graphismdanshou
ちなみに誠文堂新光社の創業は1912(明治45)年で既に創業100年を超えているが、現在ある会社は1998(平成10)年に旧誠文堂新光社が経営難に陥った際、朋文社が出版営業権と社名を引き継いだものである。この時、旧社が発行していた広告専門誌『ブレーン』は宣伝会議に譲渡された。

◎創業者の川村治が大学生だった1976年に「学園祭でのミスコンを成功させたことをきっかけに」立ち上げたイベント企画会社テー・オー・ダブリューを、実質的な2代目として引き継いだ現社長の江草康二は電通出身。立教大卒後に電通に入社し24年務めた後に退職。オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパンの取締役を経て、10年テー・オー・ダブリューの取締役執行役員となった。『日経ビジネスONLINE』のインタビューに応え、波乱に満ちた広告マン人生について語っている。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/269473/011200122/
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/269473/011900124/
https://www.nikkei.com/article/DGXNZO42646060V10C12A6TJ1000/

信濃毎日新聞社富士通と共同でAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」を活用した記事要約システムの実証実験を15日に実施。記事1件あたり人手で最大約5分かかった要約作業を瞬時に自動実行できるなど、様々なメディア配信へと活用できる自動記事要約システムが実現できたという。今年4月から信毎発のケーブルテレビ向けのニュース配信サービスに導入し、本格的な運用を開始する予定。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/011602955/

IKEAが「おしっこをかけると妊娠検査ができる」雑誌広告を作成したそうだ。
https://gigazine.net/news/20180118-ikea-pee-magazine/

テレビ東京の関連制作会社「テレビ東京制作」とオズマピーアールが共同制作するネット番組『バズらせ 人気者になる方法教えます!』の配信が19日からスタートした。ネット上で影響力を持つインフルエンサーたちが、「インターネット老人会」vs「若者」の両陣営に分かれたバトルを通じ、人気者になりたい企業やアイドル、役者などを指導するという内容。
http://www.ozma.co.jp/buzz/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000726.000002734.html

◎オンデマンド出版を手掛ける虹色社(なないろしゃ)が、昨年末に発見された「史上最大の素数」を書籍化。電話帳サイズの総計719ページに2324万9425ケタの文字がびっしりと掲載され、値段は税込み1944円。『ハフポスト日本版』が都内・早稲田にある虹色社に代表の山口和男を訪ね、インタビューを行っている。
http://www.huffingtonpost.jp/2018/01/20/amazing-book_a_23338997/
http://nanairosha.jp/
https://www.amazon.co.jp/2017%E5%B9%B4%E6%9C%80%E5%A4%A7%E3%81%AE%E7%B4%A0%E6%95%B0-%E8%99%B9%E8%89%B2%E7%A4%BE/dp/4909045074

◎次の開催を危ぶむ声もあった「ニコニコ超会議」だが、今年も4月28・29日に幕張メッセで開かれることになった。
http://chokaigi.jp/
https://www.famitsu.com/news/201801/18150073.html

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【お知らせ】

本メルマガ『文徒』発行元の「出版人」より来月、岩本太郎著『炎上!一〇〇円ライター始末記 マスコミ業界誌裏道渡世』が発売されます。刊行に際し「出版を祝う会」を開催することになりました。
【日時】2月18日(日)14時より都内杉並区のトークライブハウス「阿佐ヶ谷ロフトA」にて
【会費】 6,000円(飲み放題、FOOD付き、本代込み←当日会場でできたての本をお渡しします)
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/82009