【文徒】2018年(平成30)4月11日(第6巻66号・通巻1240号)

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1)【記事】荒木経惟「炎上」が資生堂に飛び火した
2)【記事】「返品のない月曜日 ボクの取次日記」が東京堂限定復刊
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                                • 2018.4.11 Shuppanjin

1)【記事】荒木経惟「炎上」が資生堂に飛び火した

「KaoRi.」の「その知識、本当に正しいですか?」は長らく荒木経惟のミューズを務めて来たモデルの告発である。「KaoRi.」は荒木を激しく糾弾している。
「自分の作品イメージのために、というか、お調子者の性格だからか、ノリで大げさな作り話を雑誌の取材やテレビでされたり、勝手に次々と写真集、DVDなどの商品が作られ売られ、事前の相談もなく『KaoRi Sex Diary』というタイトルをつけられたり、たくさんの人がいる前でわざと過激なポーズをとらせて、自分の手柄にするような言動をされたり、撮影と聞いてスタジオに行くと、自分のプロモーションのための取材撮影で、勝手に部外者を入れてヌード撮影を強いられたことも何度もありました。
拒否しても『KaoRiを撮ってるんじゃない、俺を撮りに来たんだ』と言われ、やらざるを得ない状況に追い込まれました」
https://note.mu/kaori_la_danse/n/nb0b7c2a59b65
荒木は最近、木村拓哉二宮和也を撮ったことが話題となっていたが、一気に逆風が吹き荒れる羽目に陥った。
https://natalie.mu/music/news/277158
星野智幸が次のようにツイートしている。
荒木経惟の写真の現場の差別と暴力がついに現場の方から明るみにされた。写真や美術の現場について、私はこれは氷山の一角だと思っている。私が多くの私小説を嫌悪するのもこの理由」
https://twitter.com/hoshinot/status/982633677241774080
京都精華大学のレイチェル・マット・ソーンのツイート。
「私は30年ほど前に初めて見た時から私は荒木経惟の写真が大っ嫌いだった。 KaoRiさんの文章を読んで全く驚きません。むしろ、想像通りの男尊女卑カスだったなと思いました。被害者はKaoRiさんだけではないはず」
https://twitter.com/rachel_thorn_jp/status/982443559637827584
浅田彰が次のように荒木経惟を批判していたことを思い出す。
「百歩譲って言えば、『写真時代』(白夜書房)などの『エロ雑誌』で猥褻表現の限界をめぐって警察とゲリラ戦を展開し、『恥部屋』と称する狭い空間の壁から天井からすべてを女性器の写真で埋め尽くしていた頃の荒木経惟の写真は、いわば徹底して薄汚れてあることによって、逆に一種のマイノリティとしての気概を感じさせた。
いま残されているのは、希薄化されたその形骸でしかない。写真そのものはもとより、プリントやディスプレイからしてすでに、徹底してチープでもなければ、徹底してゴージャスでもない、つまりは、いかにも中途半端なのだ。それにしても、こういうウェットな感傷にまみれた薄汚い写真が日本の現代芸術の代表とみなされ、公立の美術館で大規模な展覧会が開催されるというのは、なんという倒錯だろう」
http://www.assemblylanguage.com/reviews/KusamaAraki.html
水原希子もインスタグラムで「KaoRi.」の告発に連帯している。水原は自らが経験した「撮影の無理強い」も披歴している。「BuzzFeed News」が「『モデルは物じゃない』水原希子が撮影の無理強いを告白」を掲載している。水原は「荒木さん あなたにとって女性とは一体何ですか?」と問いかけている。
「私も20代前半の頃ある企業の広告撮影で上半身裸になって手で胸を隠して撮影をする事があったんだけど、その時だけ何故か沢山の男の人、多分上層部であろう20人ぐらいの社員の人達がスタジオに来て、裸だから撮影中は見られたくないと伝えたけれども、写真を確認しなくてはならないからと言う理由で、結局、仕事だからと拒否できないんだよと言う理由で、沢山の男性に裸を見られる環境の中で撮影を強いられた事があった」
https://www.buzzfeed.com/jp/takumiharimaya/mizuhara-kiko?bffbjapan&utm_term=.uaglWzeVpr#.cbdG196Dap
水原の言う「ある企業」とは資生堂のことだろう。「こちら、銀座資生堂センデン部」には荒木の撮った水原の手ブラ写真が掲載されている。そこで荒木はこんな発言をしている。「正直、アタシにとっては時代がどうこうというのはなくて、いい女は、いつの時代だっていい女。
でも、資生堂はずっとその時代ごとの感性を働かせながら活動してるわけでしょ。だから、文字やキャッチコピーが写真に入って……という形になることで、もしかしたらその時代に生きてる女性の写真ができあがってるのかもね。これもまた、大事な共同作業なんだよ」
http://www.shiseidogroup.jp/advertising/sp/talk/1.html
荒木のお相手をつとめるのは資生堂の宣伝・デザイン部長、エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターである澁谷克彦だ。「多分上層部であろう20人ぐらいの社員の人達」の一人であったのかもしれない。私が資生堂の広報であれば、この記事は水原のインスタがアップされたことを知った段階で即座に削除するけれど。4月10日午後3時現在、閲覧可能である。
ツイッターには資生堂を批判する投稿が溢れている。
水原希子ちゃんのストーリーでドン引きしたもう資生堂買わない。自分のお金がモデルの裸見るために撮影現場にやってくるおっさん達の給料になるの無理すぎ」
https://twitter.com/chiyo_ol/status/983355778097602561
水原希子さんが、資生堂の広告でこの撮影を行った時、現場にはたくさんの男性社員がいたらしい。
そんな中で、この笑顔を作った水原希子さん、本当に尊敬する。
資生堂の社員の方、本当に配慮が無かったと思う。
真顔を作ってこの撮影を見ていた社員、吐き気がする」
https://twitter.com/nikomi/status/983288398071840769
水原希子氏が言ってるのは、#資生堂 #SHISEIDO のことですかね。女性のための商品を開発してる会社で、性的嫌がらせ。効果もない化粧品を高く売りつける信用ならない会社な上に、女性蔑視とは。多分資生堂被害者は彼女だけじゃないだろう」
https://twitter.com/it__Akkey/status/983288026695516161
「女性の活躍とかHeForSheとか謳ってる資生堂の男社員達が、実際はこのサステナビリティ戦略と真逆の行動を取ってるとか糞すぎるでしょ。水原希子さんが声を挙げてくれなかったら資生堂のコスメ使い続けてただろうな。女性を踏みにじっておいて女性向けに商売するとか恥を知れ」
https://twitter.com/xxtorotoroxx/status/983406942537187329
水原希子ちゃん好きだから資生堂謝罪してほしいわ?
女性の味方です言ってる企業が女性裸にさせるってのは許しがたいよね」
https://twitter.com/rimapple_1023/status/983541539224748033

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2)【記事】「返品のない月曜日 ボクの取次日記」が東京堂限定復刊

「日刊まるすニュース」は倒産してしまった取次の鈴木書店が書店にFAXで送っていた手書きの情報紙であった。私は、これを読むのを楽しみにしていた。書店人でもない私が何故に読むことができたかといえば、銀座の近藤書店では、これを読者の見えるところに張っていたのである。これを見て20代の私は、どんな新刊が出るのかをチェックしていたのである。
この「日刊まるすニュース」をひとりで書いていたのが井狩春男である。そんな井狩の「返品のない月曜日 ボクの取次日記」がちくま文庫から東京堂限定で復刻された。親本が出されてから30年以上の歳月が流れている。それだけにここに描かれている「業界」は、いや懐かしいの何のって!
「書店は『商品を並べる』ことに関しては、他のどの業界よりも優れている。状況が変わってくると並べ替える。その棚の前に立つと、つい手が伸びてしまうように、ある法則にもとづいて並べるのである。もちろん、本を良く知っていないとこれは出来ない。人気のある本屋にはこれを簡単にやってのける名人が必ずいるのである」
残念ながら今や人気のある書店でも、これを簡単にやってのける名人は絶滅寸前であるのではないだろうか。昔は確かに名人がいた。私が庭場としていた近藤書店でいうと、レジを背にして、一番右奥の棚などは、その典型であったと思う。今や数少なくなってしまったが今尚真っ当な商品の並べ方をしている書店の代表格は東京堂書店に他なるまい。私を鍛えてくれたのはリニューアルする以前の一階の新刊台であった。私にそれこそ真剣勝負の緊張を強いるような凄みを持ったプロ中のプロの仕事であった。
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480022936/
そんな東京堂書店の新刊台に小社が刊行した岩本太郎の「炎上! 一〇〇円ライター始末記 マスコミ業界誌裏道渡世」が、現在、ホーム社の「『少年ジャンプ』黄金のキセキ」(後藤広喜)と並んで面陳されて売られていたのは、やはり嬉しいことである。
実は、同書、アマゾンでレビューが付いたのだが、これが良いんだなあ。オレの想いが見透かされているような内容なのである。
「現今の世の中の編集者の性癖をご存知だろうか。たいていが「統一病」に犯されている。同一語句の繰り返しや重なりを徹底して嫌い、コンピュータの検索置換を使って単純ですっきりした文章にしたがるのである。
しかし本書の編集者は正反対である。
もし評者が現役でこの本の編集を任されたなら、「第1部は3分の1に減らしてね」と著者に要求することだろう。
本書の編集者はそれをしなかった。つまり、著者から来た原稿を読まずに本にしたか、意図的にこのようにして400ページ超の本を作ってしまったか、そのどちらかなのである。
以上のような、書籍編集の外道を行く売れない本づくりをしてしまっている書物でありながら、読み始めると面白くて止まらないというのが、また困ったことである」
https://www.amazon.co.jp/dp/4908927022/ref=pdp_new_dp_review
「顔面漂流記 --アザをもつジャーナリスト」や「肉体不平等 ひとはなぜ美しくなりたいのか?」の石井政之もブログで取り上げてくれている。
「ひとりの若者がさまざまな経験を経て、中年になっていく。それでも人生は続く」
http://ishiimasa.hateblo.jp/entry/2018/04/07/201142

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3)【本日の一行情報】

◎電子コミックサービス「LINEマンガ」がサービスを開始したのが2013年4月9日。早いもので5周年を迎えた。「LINEマンガ 5th ANNIVERSARY」が開催されている。ユーザー数は2000万アカウント。売上ランキングの1位は「進撃の巨人」(講談社)で、2位「キングダム」(集英社)、3位「L・DK」(講談社)、4位「弱虫ペダル」(秋田書店)、5位「BLACK BIRD」(小学館)。
https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2018/2136

南相馬市小高区に柳美里の書店「フルハウス」が4月9日にオープンした。
「名刺には『フルハウス店長 柳美里』と印刷されていた。『フルハウス』は柳さんが初めて出版した作品名。大入り満員の意味もある。昨春、小高に開校した小高産業技術高校の生徒や、帰還した人たちがみんな憩うことができる場になることを願った店名だ」
https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/201804090000223.html?Page=1
http://www.minyu-net.com/news/news/FM20180410-259933.php

百田尚樹のPHP新書「逃げる力」が発売後10日で重版が決定し、発行部数は早くも10万部を突破したそうだ。
https://www.atpress.ne.jp/news/154083

毎日新聞紙面審査委員の山田道子は「『新潮45』が示す“多様性”を失った雑誌の息苦しさ」で、こんな風に驚いて見せる。
「『新潮45』が『Hanada』になっちゃった!──今年に入ってから新潮社の月刊誌『新潮45』が、(柔らかい表現で言うと)保守系月刊誌『Hanada』や『Will』と似てきた」
https://mainichi.jp/premier/business/articles/20180405/biz/00m/010/021000c
新潮45」が「Hanada」や「Will」に似て来たのは、何てことはない、その方が売れるからさ。雑誌は売れないことはやらない。

星海社新書は「ハリルホジッチ・プラン サッカー後進国日本 逆転の戦術論」を4月25日に刊行する予定だったが、さて、どうするか。ハリルホジッチが日本代表の監督を解任された。
http://kai-you.net/article/52275

◎こんな言い方をしては失礼かもしれないが学研プラスの商品にしてはタイトルの付け方がなかなか上手だよね。「宇宙兄弟 『完璧なリーダー』は、もういらない。」と。ビジネス書の場合、いかにすればリーダーになれるかに重心を置いて企画するのが、まあ、常識だと思うけれど、「『完璧なリーダー』は、もういらない。」と常識を覆す。しかも、「いらない」ではなく「もういらない」というところがミソ。
https://www.nishinippon.co.jp/nlp/book_new/article/407188/
著者は長尾彰。WHO?ナガオ考務店の代表である。
http://team-building.jp/
ファシリテーターだそうだ。
https://an-life.jp/article/694
もっとも私は、こういうタイプは苦手だけどね。ビジネス書が苦手なのは、そういうことなのよ。
https://stafes.co.jp/life/9873.html

◎結局、買ってしまった。「あしたのジョー COMPLETE DVD BOOK 創刊号 vol.1」(ぴあ)。私は「自分の傷は自分でなめろ」と力石徹に教わった。
http://piabook.com/shop/g/g9784835638553/
私は「あしたのジョー」で寺山修司を知った。連載開始50周年を記念しての企画だ。版元がぴあなんだね。

ジュピターテレコムによる「ミレニアル世代のテレビ視聴・スマホ利用実態に関する調査2018」。
テレビを観る際には、「専念して観ることが多い」が31.1%、「何かをしながら観ることが多い」が68.9%となり、「ながら視聴派」が約7割を占める。
テレビ視聴時のSNS利用に関する調査では、テレビの内容について「SNSでつぶやくことがある」が29.6%、「SNSでつぶやくことはないが、SNSを観ることはある」が43.7%、この2つを合わせた、「SNSを使う(計)」は73.3%にも及ぶ。男女別にみると、「SNSを使う(計)」は男性では66.4%、女性では80.2%。
https://markezine.jp/article/detail/28200

◎マガジンハウスは「西郷どん」の鈴木亮平が「アンアン」で約3年にわたり続いている連載を「鈴木亮平の中学英語で世界一周!feat.スティーブ・ソレイシィ」として書籍化した。鈴木は東京外国語大学英語専攻を卒業し、英検1級だそうである。
https://www.atpress.ne.jp/news/153918

◎私が梶芽衣子ファンであることを恥ずかしげもなく告白したら、何と文藝春秋のプロモーション部から梶芽衣子の「真実」をご恵贈いただいた。帯の惹句が良い。「媚びない めげない 挫けない」だぜ。
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163908090
渡哲也との共演作「やくざの墓場 くちなしの花」は深作欣二監督で東映なんだよね。この作品をもって脚本家の笠原和夫東映を去ることになる。

◎高文研から刊行された「妻を看取る 老コミュニストの介護体験記」の著者である有田光雄は有田芳生の親父である。「芳生」という名前はヨシフ・スターリンから取ったんだろうね。
http://www.koubunken.co.jp/book/b356946.html

◎松本麗華は光文社に対して「WEB女性自身」に2015年6月6日に掲載された「『三女の本は嘘ばかり』麻原彰晃四女が語る“一家”のいま」とする記事に対する削除と謝罪を求める通知書を送付したそうだ。
http://blogos.com/article/289345/

集英社は、「週刊少年ジャンプ」創刊50周年を記念し、「週刊少年ジャンプ」と「音楽」の融合イベント「JUMP MUSIC FESTA」(ジャンプミュージックフェスタ)を7月7日(土)、8日(日)の2日間、横浜アリーナにて開催する。
KANA-BOON氣志團、BiSH、Little Glee Monsterの出演が決定した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000032934.html

パピレスは、4月10日(火)第1回「Renta! タテコミ大賞」を発表した。タテコミとは縦スクロール形式で閲覧するスマホに最適化されたコミックの名称だそうだ。
https://renta.papy.co.jp/renta/sc/frm/page/topics/c_tatekomibosyu.htm

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4)【深夜の誌人語録】

酒精に酔っても知識に酔うな。