【文徒】2018年(平成30)5月8日(第6巻82号・通巻1256号)

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1)【記事】青山ブックセンター六本木店が6月25日閉店を発表
2)【本日の一行情報】

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1)【記事】青山ブックセンター六本木店が6月25日閉店を発表(岩本太郎)

連休明け早々、青山ブックセンター六本木店が6月25日限りで閉店することが同社の公式サイトにて「お客様各位」あてに発表された。ネットメディアでも報じられているが、当の公式サイト自体は7日夕刻の時点でアクセスの集中によるものか(?)閲覧不能な状態になっており、周囲に与えたショックの大きさが窺える。
《この度、38年に渡りお引き立ていただきました青山ブックセンター六本木店は、6月25日(月)をもちまして六本木店としての営業を終了し、表参道の青山ブックセンター本店に統合することとなりました。
皆様の温かいご支援の中、これまで営業してこられましたことを厚くお礼申し上げます。
なお、ポイントカード(HonyaClubメンバーズカード)は引き続き青山ブックセンター本店にてご利用いただけます。
書籍ご入用の際は、表参道の青山ブックセンター本店をご利用・ご用命賜りますようよろしくお願いいたします》
http://www.aoyamabc.jp/
同じく7日夕刻の17時過ぎに六本木店の公式サイトにアクセスするとこちらは閲覧可能。ただし閉店の件については何も触れておらず、一方で《青山ブックセンターでは現在スタッフを募集しています》との採用情報が平常通りに掲載されているなど(リンク先の採用情報ページにはつながらず)少々ちぐはぐさを感じさせる様相になっていた。
http://www.aoyamabc.jp/store/roppongi/
Twitter上の同店公式アカウントでは7日16時前の時点で《現在、自社ホームページがつながりにくくなっており、申し訳ございません》と断りつつ、閉店の旨についても触れられていた。もっとも直前の6日正午時点では普段通り「ABC六本木店週間総合ランキング」についてのツイートがあった程度だ。
https://twitter.com/ABCROPPONGI/status/993384501744041985
下記のネットニュースが触れているようにABCは過去2回に渡って破産申請。さらには事業譲渡が繰り返されており、2008年からはブックオフコーポレーションが運営している。店舗はとうとうこれで表参道の本店のみに統合される。
http://kai-you.net/article/53159
http://news.nicovideo.jp/watch/nw3490111
https://www.cinra.net/news/20180507-aoyamabookcenter
その表参道の本店はといえば、以前にも紹介したが公式Twitterアカウントでこの数カ月売り上げが好調であることを強調していた。連休中の2日正午過ぎにもこんなツイートをしていた。
《出版不況といわれていますが、12月、1月、2月、3月に続き、4月も前年比109%と、5ヶ月連続で前年の売上を超えることができました。いつもご来店、応援いただき、ありがとうございます。今後も読書自体を盛り上げ、みなさまと本との出会いの場となれるような本屋を作ってまいります》
https://twitter.com/Aoyama_book/status/991513327682641921
Twitterユーザーの間でも衝撃が広がっている。場所柄からメディア業界関係者、往時を知る中高年世代が感傷を綴るものの中に「しばらく行ってなかった」「ブックオフ系列に入っていたとは」など冷めた声も目立つ。
青山ブックセンター六本木閉店。WAVEもシネヴィヴァンもすでになく、この街とぼくをつなぐ存在はサントリーホールだけになつた。そういえば昔は演奏会の帰りに、お土産のケーキをアマンドで買つて帰つた、時々だけど。》
https://twitter.com/1125_1970/status/993405374786031616
《六本木店の不思議なフロアー構成、特にコミックと映画関係の置いてあるロフト的売り場は毎回ワクワクして、店内巡りが楽しいのよねぇ。(略)私の脳みその一部は青山ブックセンター新宿店&天王洲店、池袋リブロで形成されてきているのよ・・・(涙》
https://twitter.com/_m_s_e_/status/993406037716750336
《感傷に浸るのはわからなくはないが過去の経営難も今度の閉店も利用する人間が減れば仕方のないことでしょう。この手の書店は「図書館がわり」に利用する人も多く高価な本が痛んでいるのは心苦しい。》
https://twitter.com/tokyonetwork/status/993406523438129152
《昔、森美夏先生のサイン会に行った思ひ出。ピチカートファイブの「ショッピングバッグ」はABCだよね。〈真夜中すぎまでやってる 大きな本屋で しばらくヒマをつぶしてた♪〉》
https://twitter.com/Tsukasa_mat/status/993406708729827328
《四半世紀前、テレ朝でお仕事する時よく立ち寄らせてもらいましたね〜あの頃が懐かしい》
https://twitter.com/kibomania/status/993407287111766017
《雑誌のチョイスがよくって、アート系の本探すならここだったな、謎の渡りたくなるロフトのつり橋があったり、目の前が渋谷行きのバス停だからバス逃した時寄ったし、ここで立ち読みしたちはやふるが猛烈に面白くって買った思い出の場所》
https://twitter.com/kitsutsukitsuki/status/993407600317247490
《子供の頃はバブル期で、父親がスウェーデン大使館の仕事してて、クリスマスは毎年家族で六本木で過ごしてた。スウェーデンの子供達の讃美歌聞いて、ディナー食べて、青山ブックセンターで海外の絵本買ってもらってた。
子供の私の目に映ったキラキラした六本木は今でも忘れられない。
閉店寂しいなぁ…》
https://twitter.com/a1016feet/status/993408088311873536
《閉店のニュース以上に、ブックオフ傘下になっていたことに驚いた。。。!》
https://twitter.com/HTtbn/status/993411464844034048

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

仲俣暁生が『マガジン航』の1日付「月のはじめに考える-Editor's Note」で「出版業界はブロッキング問題で岐路に立っている」と題した記事を掲載。言うまでもなく先月に急展開を見せた海賊版サイト、およびそれに対してのブロッキングの是非をめぐる議論の推移に対する論考だ。《決定までの経緯がクローズドなままなので憶測するしかないことも多く、余計に不明瞭な印象を強くした。なんのことかと言えば、出版業界の対応である》と前置きのうえ、後段でその出版社側(特に大手)による一連の対応の背景にあるものを以下のようにズバリと指摘している。
《日本の津々浦々にある1万店を超える書店は、これらの大手出版社が発行するマンガ雑誌やマンガ単行本(コミックス)の販売端末として整備されてきたといっても過言ではない。
大手出版社がここ数年、積極的に取り組んできた電子マンガ事業は、紙の雑誌やコミックスを前提としてきた従来の出版流通システムを、インターネット上に付け替えようとする一大プロジェクトだったといえる。東日本大震災後に行われた「コンテンツ緊急電子化事業」で電子化されたコンテンツの多くがマンガだったことも、こうした「付け替え」への意欲を強く感じさせるものだった(そしてここでも「緊急」という言葉が恣意的に使われた)。
つまりいま、日本の出版業界はその流通システムを、電子マンガを軸に大きく変更しようとしている最中なのだ。マンガ単行本(コミックス)における紙とデジタルの比率の逆転が示すとおり、その「付け替え」はきわめて上首尾に推移してきた。あまりにも成功しすぎたと言っていいかもしれない。
それほどまでに急いでデジタルシフトを進めている矢先に、降ってわいたように起きた「漫画村」をはじめとする海賊サイトの台頭は、大手出版社の立場からすれば、もっとも望ましくないものだった。売上減ではなく「伸び率の鈍化」であっても、彼らにとっては生死を分けるほどの出来事だったのだ》
https://magazine-k.jp/?p=23557
山本一郎がさっそくこれを評価。
仲俣暁生さん、さすがに取りまとめが上手いなあ》
https://twitter.com/kirik/status/991328215674191872
山本自身も翌日には『プレジデント・オンライン』に「出版業界は"子供はまんが無料"を検討せよ 海賊版への対抗に『遮断』は無理筋」とのタイトルで寄稿。
http://president.jp/articles/-/25075
「子供に漫画を無料で提供してはどうか」との意見は仲俣らNPO日本独立作家同盟が4月23日に開催したトークライブでも漫画家の鈴木みそが語っていた。
https://ddnavi.com/review/455516/

◎コミック配信サービス「めちゃコミック」を運営するインフォコムが4月27日に発表した2018年3月期の決算は過去最高の売り上げを記録したそうだ。折しも話題の海賊版サイトの影響については、第2四半期から出てきたものの《独占先行配信などの施策を実施したことが奏功し、売上が伸び率低下をカバーした》とのこと。
http://gamebiz.jp/?p=210112

◎昨日も紹介した丸善立教大学池袋キャンパスに10年務めてきた書店員による退職経緯報告に関連して「はてな匿名ダイアリー」に「『ひとつの本屋で起きたこと。』はここ10年で割とよく見てきたはなし」と題したエントリが5日付で上がっていた。《自分も数年前に大学内の類似施設で似たような問題に直面して数年解決を試みた》ものの別業種に転じた人物だそうで、今回のようなケースについて「委託元としての大学」「受託企業」「受託企業からみた大学書店運営」「雇用環境」「ベテラン店員のお役立ち度」といった各ポイントごとに整理しながら、例えばこんな具合に論考している。
《大学内の図書販売や図書館サービスを受託する大手書店系や何とか流通センターは契約の獲得にあたり、独自性や高レベルなサービスではなく、低価格で何でもやります路線で契約を勝ち取り続けてきた。大学側に価格以外の評価が持ててないことが一因ではある》
《書籍の販売は再販制度があるとは言え、万引きで吹けば飛ぶような利益。
コンシュルジュやセレクトショップ形態で独自性を出したところで本の価格に上乗せはできない。必然的に一番高価な維持費である人件費を削減していく傾向は避けられない。ましてや大学の書店は生協加入者に1割引きで販売しているので尚更》
《今回のような話は「なんとかぜんゆうなんとかどう」で働いていたスタッフから類似した話をよく聞いてきました。他の大手書店系でもちらほら聞きます。それでも自分が関わっていた頃よりもクソっぷりの純度が上がっていて開いた口が塞がりませんでした。ベテラン店員の皆様は大学と企業のクソさを濃縮して飲まされているようで胸が締め付けられる思いです》
https://anond.hatelabo.jp/20180505191545

ノーベル文学賞の発表見送りでは、やはりというか連休中のターミナルの大書店などでこんな光景が展開されたらしい。
秩父の帰りに池袋のジュンク堂を冷やかしていたらNHKの手先からインタビューを受けた。「今年のノーベル文学賞受賞者発表見送りについてどう思われますか」というのである。私は「まあ……どうでもいいことですよね」と答えた》
https://twitter.com/classmate_tou/status/992334142435020800

◎ところが連休明けの株式市場では、文教堂グループホールディングスが「毎年ノーベル賞関連思惑銘柄として注目を集め」ているからなのか売りが出て急落したんだとか。
https://m.finance.yahoo.co.jp/news/detail/20180507-10000025-dzh-stocks

◎アマゾンが商品納入業者に不当な「協力金」を負担させたとされる問題で産経新聞は6日付で《炊飯器や掃除機といった家電や日用品などの直販の商品について、メーカーや卸などの納入業者に無断で値引きして販売した後、その差額分を補填するよう業者に要求していた疑いがある》と、「関係者への取材」をもとに報道した。
https://www.sankei.com/affairs/news/180506/afr1805060001-n1.html

◎先日も紹介した「NAVERまとめ」無断掲載記事をめぐる報道7社との合意の件について『BuzzFeed Japan』が取材。この件で報道7社の取材窓口を務める朝日新聞社広報部は今後の対応について次のようにコメントしている。
《いわゆる『まとめサイト』はたくさんあり、報道機関のコンテンツが数多く無断転載されているのが現状です。そうした現状は大きな問題だと認識しています。今後とも、さまざまな無断転載に対しては、事案それぞれの態様を考慮し、法的手段も含めて適切に対応してまいります》
https://www.buzzfeed.com/jp/daisukefuruta/media-and-journalism3?utm_term=.pw3l06lmp
「togetter」や他のまとめサイトに対しても「報道7社」で今後似たようなアクションが起こされるのか、あるいは既に水面下で進められているのか。

山本一郎が「なぜ#MeToo運動はジャニーズ事務所TOKIO山口達也には文句を言わないのか?」と『文春オンライン』で突っ込んでいた。
《でっかいうちわとか、火消しが振り回すまといみたいなのも動員して、ノボリ背負ってパレードでもやるのかと思って期待してみていたのに、記者会見も特になく、デモ行進するでもなく、ネットに溢れる声は「イケメン無罪」とか「憔悴している山口さん可哀想」などと話が違う》
http://bunshun.jp/articles/-/7287

◎「広告代理店のブラック労働は変わったか?電通博報堂関係者、激論2時間」と題した記事を『BUSINESS INSIDER JAPAN』が6日付で掲載。電通出身の前田将多、博報堂出身の三浦崇宏というクリエイター2人と、20代の現役社員2人の計4人による座談。
電通子会社に務める「レイナ(仮名)」は残業時間の上限近くで納期が迫ったりした場合には《休んだりして、有給休暇を使って仕事するようになります》、博報堂社員の「マヤ(同)」は《10時以降は2時間おきに電気が消えるので、いちいち点けなくちゃいけなくて。だからBizタワー(博報堂本社のある赤坂Bizタワー)を見ると、午前0時とか2時とかにパッとつきます。真っ暗になって、パッと》など、舞台裏の様子を披露。
https://www.businessinsider.jp/post-166076

◎4月末の「Digital e-hon」終了により今回も購入した電子書籍が閲覧不能となるケースが出てきていることに関連して、『ねとらぼ』が過去の同様の事例をおさらいしている。今回のほか、ローソンの「エルパカBOOKS」(2014年終了)やダイヤモンド社「ダイヤモンドブックス」(2016年終了)など、大手も含めて10近くのケースが紹介されている。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1805/01/news073.html 

集英社は漫画投稿サイト「ジャンプルーキー!」(「少年ジャンプルーキー!」より改題)に投稿された4万話以上の作品を閲覧できるアプリの配信を7日より開始した。作品の広告収入は100%投稿者に還元することで作者の利益につなげる仕組みが採られている。
https://rookie.shonenjump.com/
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1805/07/news024.html

◎さる5月4日は「田中角栄生誕100年」。『デイリー新潮』が「5人の元担当記者が語る“知られざる素顔”」と題した対談記事をアップ。もっとも5年前に『週刊新潮』に掲載された記事の再録で、その時点で63歳から83歳までのいわば“最後に残った田中番記者”たち5人による回想だ。
https://www.dailyshincho.jp/article/2018/05040740/
既に「角栄生誕100年」で週刊誌が特に動くことはないとはいえ『週刊新潮』あたりのこうした発掘モノはさすがに読ませる。

新宿ゴールデン街で“日本一敷居の低い文壇バー”を謳う「月に吠える」を経営するジャーナリストの肥沼和之が、敬愛する萩原朔太郎の出身地・群馬県前橋市にブックカフェバー「月に開く」を12日にオープンする。場所は同市中心部「弁天通り商店街」の一角で前橋文学館から約200mという立地。朔太郎の孫に手紙を出して交流が始まり、前橋を訪ねるうち意欲が湧くようになったとのこと。田中小実昌の孫で田中理恵の長男である、同じく新宿ゴールデン街のバー「The OPEN BOOK」店主でもある田中開との共同経営だという。
https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/society/50068

◎都内墨田区千歳にある活版印刷所「RHYTHM AND BETTERPRESS」は夜になるとバーとしても営業しているそうだ。店内には1970年代製の活版印刷機が2台、その脇の作業台が酒などを置くテーブルに変わるとのこと。
https://mainichi.jp/articles/20180504/k00/00e/040/202000c

◎鹿児島県南さつま市加世田にあるしょうゆ醸造会社の石蔵では月に1回、古書を販売して飲み物などを提供するブックカフェが開かれている。鹿児島市古書店「つばめ文庫」を経営する小村勇一が古書販売を、南さつま市で農業を営む窪壮一朗・菜つみ夫妻がコーヒーやお菓子を出しているという。
http://www.yomiuri.co.jp/local/kagoshima/news/20180504-OYTNT50009.html?from=tw

熊本県の南阿蘇村を通る第三セクター鉄道南阿蘇鉄道」の「南阿蘇水の生まれる里白水高原駅」(日本一長い駅名とのこと)には、国鉄時代から残る古い駅舎(現在は無人駅)の中に週末だけオープンする「ひなた文庫」という古書店があるそうだ。岡山県出身、出版社の広告営業や書店員を経て熊本に転居し、2015年から同店を経営している中尾恵美が『コロカル』で開店に至る経緯を報告している。
https://colocal.jp/topics/lifestyle/hinata/20180502_112993.html

奈良県東吉野村では唯一の図書館である「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」は尊王攘夷派の武装集団として知られる「天誅組」の記念碑から徒歩30秒の立地にあり、地中海史からプロレス本まで豊富な蔵書を誇るほか、ラジオ配信や研究会の開催なども行っている。古代地中海史研究者の青木真兵と妻の海青子が2年前に兵庫県西宮市から移住のうえ開館。
ちなみに館名は「ルチャ・リブレ」(メキシコのプロレスのことをスペイン語でこう呼ぶ)にあやかったものだろう。やはりプロレス好きには活字好きが多い。
https://lucha-libro.net/
https://www.sankei.com/west/news/180506/wst1805060026-n1.html

◎“ツタヤ図書館”としてリニューアルしてから2年半を経た海老名市立中央図書館についての初の「第三者評価」が3月にまとまったそうだ。5段階評価で大半の項目が4点台となる高評価だったが、「日々の図書館業務については構成団体個々に行われており、共同事業体としてのメリットが希薄」「司書有資格者率(49%)がやや安定性に欠ける」「海老名市に精通したスタッフが在席していない」などの指摘もあったとのこと。
http://www.kanaloco.jp/article/329329