【文徒】2018年(平成30)5月18日(第6巻90号・通巻1264号)

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1)【記事】サイトブロッキングカドカワ川上量生社長
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】サイトブロッキングカドカワ川上量生社長

「日経 xTECH」が「カドカワ川上量生社長が語る、サイトブロッキングの必要性」を掲載している。川上は当初、NTTを訴えるつもりだったと証言している。
「川上氏は2017年10月、NTTの鵜浦博夫社長に問題について相談した。ブロッキングの必要性を訴えたうえで『NTTを訴えさせてもらえないでしょうか』と持ちかけたという」
しかし、「漫画村」が問題化し、ブロッキングの議論が急展開することになる。
「川上氏はNTTの法務担当者ともブロッキングについて意見交換した。意図したのは『どうやって訴えれば、裁判官に踏み込んだ判決文を書いてもらえるか』だった。ただ話し合いの最中に、政府の知的財産戦略本部ブロッキングの議論が急展開し、訴える必要が無くなったと判断したという」
その後の展開については、私たちも最低限のことはフォローしてきたつもりだが、川上はインターネットは性善説で運用されていたが、それが通用しない局面を迎えたと認識しているようである。
「川上氏は『問題の本質はインターネットにおいて国外で実施された違法行為について、日本側に対抗手段が無いことにある』と語る。『インターネットは元々性善説で運用されている。だが悪意の者が紛れ込んでいる今、性善説に基づく運用のままではいられない』(川上氏)」
http://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00001/00469/?P=1
5月16日付で日本ペンクラブの言論表現委員会が滝田誠一郎委員長名義で出した声明には既報の通り「違法サイトを止めるために、政府が“緊急事態”と称し、法的根拠に疑念のある対策を強行することを深く憂慮する。またウエブサイトの良し悪しを政府が一方的に決めるような手法についても、表現の自由と抵触する可能性がきわめて高く、深刻な問題があると考える」とあったわけだが、これについてカドカワ川上量生のみならず、主だったマンガ出版社がどう考えるかである。
日本ペンクラブには文学・文化に関わる表現とその普及にたずさわる人々が結集し、しかも国際的な組織なればこそ、この声明の持つ重みを軽視してはなるまい。滝田誠一郎は「長靴を履いた開高健」(小学館)などで知られるノンフィクション作家だが、日本ペンクラブの言論表現委員会には他に専修大学教授の山田健太や元出版デジタル機構会長の植村八潮、講談社編集総務局長の鈴木宣幸もメンバーとして加わっていることは周知の事実である。
http://japanpen.or.jp/statementkaizokuban/
「日経 xTECH」の記事は「記者の視点」も掲載している。そこでも、こう書かれている。今回の記者は日経BPのIT記者である浅川直輝である。
海賊版サイトへのブロッキングについて『通信の秘密の侵害という違法性を阻却する『緊急避難』の要件を満たす』と政府が法的に整理したのは、やはり無理筋だったのではないか――。取材を終えて記者はそう考えている」
山本一郎が相変わらず手厳しい。「海賊版ブロッキング問題、NTTグループに訴訟含みの申し入れを行ったのはカドカワ川上量生さんで確定」は結びの部分で次のように指摘している。
「この問題は、そもそも出版社は訴え出る資格のある権利者ではなく、権利関係がはっきりしているかどうか微妙な立場であることも浮き彫りになります。海賊版問題は確かに作家や漫画家など権利者と、その権利を活用してビジネスにする出版社の立場は異なり、契約の主体も曖昧なまま事業を続けてきてデジタル時代に突入してしまったことを意味します」
https://news.yahoo.co.jp/byline/yamamotoichiro/20180516-00085277/
浅川直輝が良記事と評価しているのは「BuzzFeed News」が掲載した「『漫画村』に対して、講談社はなにをしてきたのか?」は講談社の乾智之広報室長が取材に応じている。「ブロッキングは『表現の自由』を侵害するともされている。出版界、言論界として自殺行為ではないか」という問いかけに乾は次のように答えている。
「当然、批判はあると思う。出版もメディアであり、『表現の自由』を重んじなければいけない。表現の自由ブロッキングが相反しているということは認識している。もちろん通信の秘密についても出版社として重く認識すべきことだ。
ただ出版社として生きていく中で、業界としては現時点で生き残りを懸けた最終局面に近いと感じている。そこで出てきたサイトブロッキング。この方策に全面的に依存して頼ろうということは、これまでもないし、今もない。この先もそう」
乾が言うように「目配りを何段にも拡大していかないと市場を維持することはできない」のである。ちなみに乾は、この問題についてわざわざニューヨークにまで学びに行った貴重な経験を持っている。そうした知見が今後、講談社では生かされていくことになるのだろう。
https://www.buzzfeed.com/jp/takumiharimaya/kodansha-blocking?utm_term=.ad60m9Dwv2#.xu8glzm3VY

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2)【本日の一行情報】

講談社の「まんが学術文庫」。「資本論」の内容そのもののマンガ化だと思えば腹も立つのだろうけれど、「資本論」に着想のヒントを得たマンガとして評価すれば良い。「超訳」のさらなる進化形ということだ。そういう意味で言えば荻生徂徠の「政談」の舞台をAI(人工知能)に統治されることになった2055年の東京に設定するなんざ、なかなかのセンスである。
https://www.sankei.com/life/news/180516/lif1805160011-n1.html

◎5月23日に発売される講談社の女性ファッション誌「ViVi」7月号は創刊35周年記念特別付録として、Lily Brown とコラボしたPVC素材のクリアショルダーバッグである。720円(税込)。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001705.000001719.html

◎光文社の女性ファッション誌「STORY」で専属モデルを務める秋本祐希が、都内で開催された「FANCL×STORYコラーゲン リスタート 宣言イベント」にタレントのGENKINGとともに登場した。
https://mainichikirei.jp/article/20180515dog00m100004000c.html

小泉進次郎が4月4日の衆院厚生労働委員会の審議中に三谷太一郎の岩波新書「日本の近代とは何であったか」を読んでいたという記事は「FLASH」4月24日号に掲載された。この掲載から一カ月後の5月16日にネットメディアの「SmartFLASH」に掲載されるや、グンと拡散され、バズることになった。
https://smart-flash.jp/sociopolitics/40668

ブックウォーカーは、KADOKAWAの運営するWEB小説サイト「カクヨム」に投稿された小説を電子書籍ストア「BOOK☆WALKER」ですぐに配信・販売できるサービスを5月16日(水)より開始した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000908.000001227.html
こんなサービスは、とっくにやっているものと思っていたけれど、やっと始めたのか。

サイバーエージェントが運営するオンラインビデオ総研は、全国2万人、10代から60代を対象にテレビ接触頻度調査を実施した。これによれば、10代後半から20代の6人に1人の割合で、テレビを保有しない、または1か月以内にテレビ視聴なしの「ノンテレ(Non TV)」であることがわかった。
https://www.cyberagent.co.jp/news/detail/id=21648

大日本印刷は、東芝テック日立物流と共同で、ICタグRFID)を用いた次世代物流サービスの実用化に向けて、協業を開始。
http://www.dnp.co.jp/news/10146193_2482.html
人手不足と労務コスト上昇は出版においても課題なんだけどね。

ロエベLOEWE)は5月28日まで、「パウラズ イビザ」のポップアップストアを代官山 蔦屋書店で開催している。
https://www.vogue.co.jp/fashion/news/2018-5/16/loewe

◎「週刊文春」が「中日新聞記者・ドラゴンズ応援団長・暴力団“危険な三角関係”」を掲載している。元暴力団員二人が中日ドラゴンズの応援団長と事務局長に対し、ナゴヤドームに不正入場したと因縁をつけ、脅して辞めさせたとされる強要事件で逮捕、起訴されたが、中日新聞記者は元組員に呼び出され、現場の飲食店内にいたそうだ。

その場にいた中日新聞記者は県警の報道発表資料を元暴力団組員(55)に複数回渡していたことがわかった。
http://bunshun.jp/articles/-/7404
何と、この中日新聞記者は県警の報道発表資料を撮影しLINEで元組員に複数回、送っていたというから呆れる。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30612780X10C18A5CN0000/
ところで文藝春秋では部署長あての一斉メールが流れているらしい。社員によれば「要望書」の提案を呼びかけているようだ。文藝春秋は、さすが自由闊達で風通しのよい社風である。

◎「磯野家の謎」シリーズの「東京サザエさん学会」が四半世紀ぶりとなる新刊「磯野家の危機」を宝島社から刊行した。版元が飛鳥新社ではないことに注目したい。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000677.000005069.html

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3)【深夜の誌人語録】

他人の意見に耳を傾けるとは、自分に対する批判を理解するということでなくては意味などないのである。