【文徒】2018年(平成30)6月6日(第6巻103号・通巻1277号)

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1)【記事】文藝春秋 木俣正剛常務による「社員の皆さんへ」全文公開
2)【記事】瀬尾傑が講談社を退社する!
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】文藝春秋 木俣正剛常務による「社員の皆さんへ」全文公開

文藝春秋の木俣正剛常務取締役が同社の役員以外の社員全員に対して「社員の皆さんへ」という文章を綴り、メールで配信した。私は、ここで論評を加えるつもりはない。ただ、その全文を公開することとしよう。
              ※
皆さんが日々の業務に勤しんでおられるなか、私たち経営陣の問題でお騒がせ、ご心配をおかけしていますことを、まずもってお詫びいたします。
まことに申し訳ございません。
このような事態を招いた責任は私にもあることを痛感しております。そこでお詫びと、わが社でいま何がおきているのかをできる限り正確にお伝えしたいと考えて、この文書の作成を思い立ちました。
周知のとおり、これまで月刊文藝春秋週刊文春は社会の木鐸として報道を重ねて参りました。とくに週刊は「ゲス不倫」「陰湿パワハラ」「お友達人事」などを厳しく報道してきた立場です。しかしながら、わが社の松井清人社長(週刊の担当役員でもあります)にも、複数のメディアから同様の問題が指摘されました。「不倫、婚外子」「労災申請をした社員に対し、申請自体に否定的な言動をしたパワハラ」「会社のガバナンスを考慮せず近視眼的に身近な役員ばかり登用する」といったものです。しかも、松井社長は当初、7月からの新体制で代表取締役会長への就任を表明しました。それに関しては、西川副社長と私など役員、執行役員数名で説得して断念していただきました。こうしたことは一部で報道されました。皆さんには真実として伝わっていないかもしれませんが、この経緯は事実です。
皆さんはこんな姿を見たことはないかもしれませんが、意に添わない社員を怒鳴りあげたり、自らの好みに合わない記事を載せた雑誌の編集長を恫喝まがいに攻め上げる。それが自由にものが言えるはずだった文春の社風をいちじるしく侵害しているのです。
かつて阿川弘之さんは本誌への寄稿で、「伝統の社風」と題して文春社員心得帖を作成されました。六項目の第一番目として「どんな上役に対しても自由にものが言へて自己主張を容易に曲げないこと」と記されました。こうした文藝春秋の良識、よき社風、伝統を失うことは作家をはじめする寄稿家の方々、長く文藝春秋を支えた広告スポンサーへの信頼を裏切ることにもつながります。同時に、文春ジャーナリズムの立ち位置、すなわち取材や批判の正当性を問われかねない事態なのです。
こうした状況に対して、良識ある部署長有志が立ち上がりました。ご承知のとおり、松井社長が意図した新経営陣案の見直し、取締役・執行役員の協議による新経営陣案を求めたものです。しかし残念ながら、松井社長や新経営陣に指名された役員は、こうした要望に「重く受け止める」と発言しながら、事実上のゼロ回答となりました。それどころか、この部署長たちに対して報復的な人事を行おうとしている疑いさえあるようです。
皆さんもご存じのとおり、要望書を出した部署長たちは、わが社の中核を担う人材ばかりです。そうした人たちの思いを理解せず、人事などを行うことは、文藝春秋は会社として成り立たないのは自明です。これでは経営のガバナンスが機能しません。本来なら、会社のガバナンスをもっと客観的かつ公正に行うための経営の強化をはかるべきなのに、このままでは会社の将来は見えてこないのではないでしょうか。
そんな情報を入手した朝日新聞出版の「アエラ」が最初に取材に来ました。ほぼ同時に朝日新聞からも取材が入りました。私の自宅には三度にわたって、厳しい事実を突きつける取材がきました。他の複数の役員や社長本人にも。彼らは驚くほど詳細な情報をもっており、そこで事実確認の意味でも、真っ正面から取材を受ける覚悟を決めました。取材に応じなければ、観測記事や歪曲された記事が書かれてしまう恐れもありました。私が懸念したのは、労働組合、部署長会のやむにやまれぬ行為が「内紛」や「反乱」などとして書かれることでした。実際のところ、そのような記事も既に書かれております。しかし、私はこの動きが単なる内紛や反乱と異なり、会社の将来を憂える者たちの真摯な闘いであると理解しています。そのため、流れを変えるには、事実経過を説明し真実を語るしかないと判断しました。各方面、社内外からのお叱り、ご批判を受けることを承知のうえ、朝日新聞の取材を受けました。それが27日(日曜日)朝刊の記事です。
しかしながら、私の未整理な心境や言葉足らずのせいでわかりにくい記事になってしまったことも事実です。そこでこの文書を書くことにいたしました。
これまでの経緯のなかで松井社長や新経営陣案に指名された取締役の対応が理に適っているのか、あるいは組合や部署長たちの要望が正しいのか。それは、フォア・ザ・カンパニーに照らしてみれば、その是非は自ずと明らかではないかと思います。
いうまでもなく出版不況はさらにこれから厳しさを増すでしょう。そのなかで生き残るのに問われるのは、なぜ文藝春秋という会社がこの国に必要なのか、文藝春秋が日本人のために何ができるのかを常に自戒することだと思います。私は文藝春秋という会社は日本にとって大切な会社だとずっと思ってきました。ただ、数字的に生き延びればいい、という会社ではあってはならないと思いますし、これからもそうであってほしい。
どうか社員の皆さんにおかれましては、お一人おひとりが何が文藝春秋にとって重要なのかをぜひ考えていただきたいと思います。
本来なら、私も責任上、会社のために身を粉にして働くべきなのでしょうが、個人的利益のためと邪推されたくないと思います。また、松井社長やその考えに反対しなかった経営陣を説得しきれなかった責任は経営陣の一員として負うべきであると思いますので、今期末で社を去ることにいたしました。
みなさんには申し訳なく思います。文春は自由闊達、全員野球の本当に愉しい会社でした。みなさんの手で一刻も早く、文春に笑顔が戻ることを期待しています。
なお、このメールを直接みて傷つく人がいる可能性も考え、社員全員メールという形ではお送りしていません。部署ごとに私が自分でアドレスを登録してお送りしました。
bccメールとしたのも、誰に届いたのか、届かなかったのかお互いが疑心暗鬼にならないようにで、基本的に社内配属表にしたがって役員以外の全員にお送りしています。
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木俣正剛の編集者としての口癖は「取材は丁寧であればあるほど、原稿は短ければ短いほどおもしろい」であったという。私にとって木俣は「文藝春秋」2011年5月号の編集長である。
https://1000ya.isis.ne.jp/1410.html
「かくすればかくなるものと知りながらやむにやまれぬ大和魂
この一首は吉田松陰が失敗に終わった米国密航計画を念頭に獄中で詠んだものである。何故か思い出してしまった。「身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも留め置かまし大和魂」は辞世。むろん、松陰に「親思う心に勝る親心今日のおとずれなんと聞くらん」という一首があることも忘れてはなるまい。

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2)【記事】瀬尾傑が講談社を退社する!

昨日、講談社の6月1日付人事で私たちは次のように書いた。
瀬尾傑
新:第一事業局担当部長(部長待遇)
旧:第一事業局コミュニケーション事業第一部長兼IT戦略企画室担当部長
しかし、今日になって瀬尾は講談社を退職することをフェイスブックで報告している。
「えー、ご報告です。
このたび講談社を退職することにしました。
7月いっぱい有給休暇をいただき、
8月より新スタートです。
おかげさまで、講談社のデジタル戦略は順調に進んでいます。それを支える若い人材が、続々と育っています。
変化に対応するため、できるだけ意思決定を若い人に任せたいという個人的な思いと、自分自身、新しいことをやってみたいという「いちびり精神」が抑えきれず、
今回、会社にはわがままを聞いてもらいました。
敬愛する岡本太郎にならい、
「人生の選択は面白いほうを選ぶ」という、ぼくの鉄則に今回も従いました。
ジャーナリズムは、信頼面もビジネス面もまだまだ危機的な状況にあります。
未来のためにジャーナリストを育てる仕組みをつくりたい、
という思いはますます強く、
今度は新たなかたちで挑戦をしたいと企んでいます。
在職中、お世話になった方には、あらためて感謝を申し上げます。
ひきつづきこれからもよろしくご指導をお願いいたします。
7月は充電期間中なので、ひまにしています。この機会に、いろいろ教えていたただけると幸いです。
それにしても、
恵まれた環境で働けた講談社にはとても感謝しています。
素晴らしい後輩たちには、先日の送別会でシンゴジラよりこの言葉を贈らせてもらいました。
私は好きにした。
君らも好きにしろ。
講談社同様、これからもよろしくお願い申し上げます」
https://www.facebook.com/masaru.seo?hc_ref=ARR-MxwGVt8aXKZJ8tJdTdxH0AAvV7KKrAqc-QqBUug-yaOoXKgV-6FDwgprxwXNLvk&fref=nf
こんな時代もあったんだよね。
https://www.youtube.com/watch?v=G96sD8evqv4
瀬尾は「日経ビジネス」の出身。講談社に入社したのは1993年のこと。「現代ビジネス」を牽引して来たのだけれど。
http://www.jiaa.org/dbps_data/_material_/common/nativead/jiaa_nativeads_141209_2_kodansha.pdf

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3)【本日の一行情報】

◎この「アエラ」の記事は版元を間違えている。「月刊モトーラ世理奈・夏 写真 二階堂ふみ」は、講談社ではなく小学館の刊行である。二階堂のカメラマンとしての実力が遺憾なく発揮されているのは間違いない。「西郷どん」で共演する鈴木亮平二階堂ふみを「感性のバケモノ」と評したそうである。
https://dot.asahi.com/dot/2018053000066.html?page=1
https://www.shogakukan.co.jp/books/09682268
確かに二階堂の女優としての実力はもちろんのこと、「小説新潮」では「只今 文筆修行中」を連載するなど、その文章力も注目に値する。「波」で北方謙三は「只今 文筆修行中」について次のように語っている。
「実は、何度か読んだことがあるんだけど、連載し始めのころは言葉づかいがユニークで、『どうしてここで、この言葉を選ぶんだ?』って気になって仕方がなかった。でも最近は、文章が滑らかになってしまって不満だな(笑)。とんがったものは、とんがったままにしておいた方がいいと思うよ。『修業中』なんだから。そのとんがったものの中から、二階堂さんだけの“小説の言葉”を見つけていくといい」
http://www.shincho-live.jp/ebook/nami/2015/07/201507_01.php
「ポパイ」では「二階堂ふみのインタビュアー道。」を連載し、マガジンハウスで「アダルト  二階堂ふみがきいた大人の話。」として一冊にまとめられている。
https://magazineworld.jp/books/paper/2794/
https://magazineworld.jp/books/paper/2842/
こうの史代の「この世界の片隅に」(双葉社)がTBSでテレビドラマ化されるが、二階堂ふみはこれにも遊女役で出演する。
https://natalie.mu/comic/news/284995

◎「STANDBY」が「女性漫画雑誌の休刊ラッシュに悲鳴 要因分析あれこれ」を掲載している。確かに、このところ「ARIA」別冊花とゆめ」「月刊 YOU」が休刊を発表している。
http://www.standby-media.jp/case-file/173424

◎光文社から刊行された集英社の「non−no」専属モデルを務める松川菜々花のデジタル写真集「シンモグラストーリー」の記念イベントが紀伊國屋書店新宿本店で開かれた。
http://www.sanspo.com/geino/news/20180603/geo18060314190020-n1.html

◎「青春が終わる。18歳が始まる。」とか、「新聞広告のセクシーが待っている。」はAIが創造したコピーである。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1806/04/news022.html
AIが記事も書けるようになるのは間違いのないところである。

◎「週刊少年ジャンプ」(集英社)が連載している吾峠呼世晴鬼滅の刃」がテレビアニメ化されることになった。
http://kai-you.net/article/54130

ニッポン放送グループでウェブメディア「grape」を運営するグレイプは、ラグジュアリー誌「HORLOGERIE」(オルロジュリー)を展開する弘洋、日本経済広告社とコンテンツ供給体制を締結し、新たにラグジュアリー情報メディア「Chardonnay」(シャルドネ)をローンチした。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000026680.html

◎「出版状況クロニクル121(2018年5月1日〜5月31日)」は次のように書いている。
「前回の本クロニクルで、その後の大阪屋栗田の動向を伝えられていないことに疑念を表明しておいたが、月末になってようやくこの『ニュースリリース』が出された。その代わりのように、本クロニクルに向けられた『当社に関する虚偽情報の発信に関して』という『ニュースリリース』は削除されている」
http://odamitsuo.hatenablog.com/
ニュースリリースを削除するということは、「歴史」を削除してしまうことでもある。

本屋大賞で、「翻訳小説部門」第1位となった「カラヴァル 深紅色の少女」(キノブックス)は、初版3500部で刊行されたものの実売900部に過ぎなかったが、第1位となって以降、部数を伸ばし、現在、約7200部となっているという。
https://www.sankei.com/life/news/180604/lif1806040014-n1.html
これは良い話だ。

講談社の女性ファッション誌「ViVi」(講談社)による「’18年上半期 ViVi国宝級イケメンランキング」で、「サニー千葉」の長男である新田真剣佑が「NOW国宝級編」の1位に選ばれた。「NEXT国宝級編」の1位は「アンアン」の表紙を飾った「King&Prince」(キンプリ)の平野紫耀が選ばれた。
https://mainichikirei.jp/article/20180601dog00m100012000c.html

◎米国の13〜17歳のティーネイジャーにとってFacebookはSnapchat、InstagramYouTubeの後塵を拝するソーシャルメディアであるようだ。
http://thebridge.jp/2018/06/acebook-edged-out-of-top-3-social-networks-by-u-s-teens

ツイッターから生まれたマンガ「俺、つしま」(小学館)が8万部を突破した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000049.000013640.html
「や。というわけで見えちゃいけないとこはかくして再アプしましたよ。大変ご迷惑をおかけしました(俺はなにもわるくないけど)
本のCMは6月4にちの月よう日の朝からフジテレビの『めざましテレビ』のなかで1か月間ぐらい放映されるよ。だいたい7じ20ぷんぐらいだって。おたのしみにね」
https://twitter.com/tsushimacat/status/1002069426722623490
と書くのはツイッターの「俺、つしま」。

◎産経に連載されている「美しき勁き国へ」で櫻井よし子が訂正を発表した。
https://www.sankei.com/world/news/180604/wor1806040015-n4.html
朝日新聞デジタルが「櫻井氏コラムで産経新聞が訂正 慰安婦問題 訴状めぐり」を掲載している。
https://www.asahi.com/articles/ASL6255X7L62UTIL00T.html

MERYで広告ビジネス部部長兼編集部副部長をつとめる青木秀樹が「マーケジン」のインタビューに応じている。現在のMAUは約200万だそうだ。
MERYユーザーの最大の特徴は、アクセス頻度の高さにあります。たとえば、1週間に3回以上アプリを開くユーザーが6割以上いるのに加え、1日の平均滞在時間は約13.9分となっています。平均滞在時間は、他のメディアと比較しても、非常に長いのではないかと思います。また、年齢のボリュームゾーンは、18〜29歳です」
https://markezine.jp/article/detail/28398

小学館の「週刊ビッグコミックスピリッツ」で連載されている柏木ハルコの「健康で文化的な最低限度の生活」がテレビドラマ化されることになった。生活保護を題材としたマンガである。7月17日よりカンテレ・フジテレビ系で放映される。
https://natalie.mu/comic/news/285227

小学館の「ビッグコミックスペリオール」に連載中の柳本光晴響〜小説家になる方法〜」は映画化され、9月14日公開。欅坂46の平手友梨奈が初主演。
http://www.chunichi.co.jp/chuspo/article/entertainment/news/CK2018060502000191.html

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4)【深夜の誌人語録】

ほんとうのことが正しいとは限らないのである。