【文徒】2018年(平成30)7月20日(第6巻134号・通巻1308号)

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1)【記事】落選作が話題となった芥川賞
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】落選作が話題となった芥川賞

「ヤフー!ニュース個人」に石戸諭の「流用疑惑の芥川賞候補『美しい顔』 それでも高く評価される理由とは?」が掲載された。私も類似表現を改めたうえで単行本として出版すべきだと思う。
「まず私も日比さんもこのまま出版されることを良しとはしていない。類似した表現については改めるべきだと考えている。
日比さんは『表現を引き写してそのまま書いてしまったことについては言い訳不能』として、苦労して手記にまとめたり、取材で託されたりした言葉を『横からかすめ取るようなこと』は許されないと話していた。
私も大いに同意する。北条さん自身がもっとテーマを深めれば、引き写したかのような表現を使わずとも、世界を再構築することはできたはずだ。
これは書き手の姿勢の問題であり、なにも震災に限ったことではない。戦争を舞台にしようが、あるいは犯罪被害者を主人公に据えようが同じことだ。
参考文献があることはいい。想像で描くこともいい、しかし、表現を『借りすぎ』たり、敬意を欠いた言葉は批判の対象になる。それだけの話だ」
https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidosatoru/20180718-00089809/
著作権法を盾に取る考え方は文学的に粉砕されなければなるまい。この石戸の記事は芥川賞選考会の開かれる7月18日当日に発表されているが、石戸は「美しい顔」について「この作品は芥川賞にふさわしくないと考えている」とも書いている。
芥川賞は激戦を制して高橋弘希の「送り火」に決まった。芥川賞選考会当日の報道は、いつもは受賞作のみに集中するが、今回は「美しい顔」にも注目が集まった。「NHK NEWS WEB」は「芥川賞候補作に類似表現 選考委員から『昇華の努力不足』」を掲載している。
「18日、芥川賞の選考会のあとの記者会見で、選考委員の1人の島田雅彦さんは、この作品についても言及し、『いわゆる盗用にはあたらない作品だと選考委員の間で確認した』としたうえで、『そうだとしても、参照や引用した作品への態度や誠実さは問題になると思う。事実の吟味や自分なりのフィクションとしての表現に昇華していく努力が若干足りなかったのではないかという意見があった』と話しました」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180718/k10011538941000.html
スポーツ報知は「…選考委員の会見で、これほど一つの作品に関する質問が集中したのは初めての経験。それも落選作への質問がこれほど相次ぐとは…」と書いている。
「ノンフィクション作家・石井光太さん(41)の『遺体 震災、津波の果てに』など複数のノンフィクション作品との類似表現が問題になっていた『美しい顔』。島田さんは『事実には著作権はありませんので誰もが書く自由はある』とした上で、『事実を吟味し、自分の中で換骨奪胎して、フィクションとして昇華する努力が北条さんには足りなかった』と断罪した」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180719-00000079-sph-soci
私は「盗用」とか「剽窃」という言葉が飛び交うことに違和感は全くないが、この記事のように「断罪」なとどという言葉が使われることに途方もない違和感を抱いてしまうのである。
朝日新聞デジタルは「芥川賞選考委員『美しい顔、盗用ではない』 厳しい声も」を掲載している。
https://www.asahi.com/articles/ASL7D5VM8L7DUCVL012.html
中森明夫毎日新聞に「ニッポンへの発言 キーワード 『美しい顔』と芥川賞」を掲載した。
「ともあれ『美しい顔』をめぐる一件は、いわゆる『震災文学』を終わらせたと思う。東日本大震災は決して忘れられるべきではない。被災者に対する想像力を我々は手放してはならない。しかし『震災文学』という安直なくくりは、失効したのだ。今回の騒動がもたらした功績だろう」
https://mainichi.jp/articles/20180718/dde/014/070/003000c

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2)【本日の一行情報】

共同通信が「新潮社に250万円賠償命令 小池都知事名誉毀損」を配信。
「問題となったのは2017年5月25日号の電車の中づり広告や新聞広告。週刊新潮は、都民ファーストの会代表が公金横領で告訴されたと報じたが、広告の見出しは『小池都知事は公金1100万円を横領した!』となっていた」
https://this.kiji.is/391868003959325793

◎「ハーパーズ・バザー」日本版9月号(ハースト婦人画報社)にベッキー姉妹が初登場!妹ジェシカはダンサー・振付師だ。
https://www.hochi.co.jp/entertainment/20180717-OHT1T50294.html

文藝春秋は、日本文学振興会とともに、「人生に、文学を。」プロジェクトの第3期をスタートさせた。
https://www.jinsei-bungaku.jp/

芥川賞が決定。八戸ブックセンターのツイート。
十和田市出身・高橋弘希さんの『送り火』が芥川賞に!!おめでとうございます!!!受賞作掲載の『文学界』ほか、八戸ブックセンターでも高橋さんの著作を販売しておりますので、ぜひご覧ください。(お取りおき不可となっておりますのでご注意ください)」
https://twitter.com/hachibookcenter/status/1019530106224631808

◎町屋良平は「しき」(河出書房新社)が初めての候補作となった。河出書房新社のツイート。
朝日新聞さんが芥川賞直木賞受賞の連絡を待つ所謂「待ち会」をレポート。河出書房新社の会議室で行われた町屋良平さんの待ち会に密着されました。
河出会議室の乱雑さには目をつぶってください…」
https://twitter.com/Kawade_shobo/status/1019764963575910400
朝日新聞デジタルが7月19日付で掲載した「芥川賞候補者の一番長い日密着 そのときスマホが鳴った」。
「人生を変えるほど影響力のある賞に候補作を送り出した作家は、どんな思いで選考の結果を待っているのか。今回、『しき』が初めての候補作になった町屋良平さん(34)の『一番長い日』を追った」
https://www.asahi.com/articles/ASL7L7CZFL7LUEHF010.html

直木賞島本理生の「ファーストラブ」(文藝春秋)。松井玲奈オフィシャルインフォメーションのツイートである。
島本理生さん!各編集部の皆様!直木賞受賞、本当に本当におめでとうございます!感涙感動感激です!
『ファーストラブ』は今、読んでおくべき作品だと思います。
皆様益々お忙しくなるかと思いますが、まずは美酒を!そして、お身体にお気をつけて!
松井玲奈をこれからも支えてください」
https://twitter.com/rena_info/status/1019552855147941888
島本の発言。
「正直ほっとしました。デビュー18年目。芥川賞候補に4回、直木賞に2回、おりにふれて待った18年間、ほっとしたのが実感」
https://www.sankei.com/life/news/180718/lif1807180056-n1.html

◎リブロのツイート。
芥川賞受賞の高橋弘希は1979年生。『指の骨』で新潮新人賞、『日曜日の人々(サンデー・ピープル)』で野間文芸新人賞を受賞。直木賞受賞の島本理生は1983年生。『シルエット』で群像新人文学賞優秀賞、『リトル・バイ・リトル』で野間文芸新人賞を受賞。ともに『野間文芸新人賞』作家です」
https://twitter.com/libro_jp/status/1019536870093422592
今回は芥川賞直木賞も、版元は文藝春秋である。

◎「ビッグコミックオリジナル」(小学館)で連載中の弘兼憲史のマンガ「黄昏流星群」がフジテレビでテレビドラマ化される。
http://mainichi.jp/articles/20180718/dyo/00m/200/044000c
TBS系連続ドラマ「下町ロケット」の続編が10月期(日曜午後9時)に放送される。7月20日に発売された池井戸潤のシリーズの第3弾「下町ロケット ゴースト」が原作となる。
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/201807180000971.html

サイバーエージェントは、競技麻雀の普及と発展を目的として、7月17日(火)に一般社団法人Mリーグ機構が発足させたプロ麻雀リーグ「Mリーグ」に加盟し、チーム「渋谷ABEMAS」として10月に開幕するリーグに参加する。Mリーグ機構の顔ぶれが凄い!
最高顧問 川淵三郎
代表理事 サイバーエージェント 代表取締役社長 藤田晋
理事 コナミアミューズメント 代表取締役社長 沖田勝典
理事 セガ・インタラクティブ 代表取締役副会長 山下滋
理事 テレビ朝日 代表取締役社長 角南源五
理事 電通 執行役員 石川豊
理事 博報堂DYメディアパートナーズ 取締役常務執行役員 五十嵐真人
理事 U-NEXT 代表取締役社長 堤天心
https://www.cyberagent.co.jp/news/detail/id=21863

電通シンクタンク電通メディアイノベーションラボ」は、ビデオリサーチとの共同で、時間帯ごとの接触メディア・接触場所・行動状況など生活者のメディア視・聴・読習慣を可視化し、30のメディアライフスタイル(=メディア接触習慣)に分類した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2018074-0718.pdf

紀伊國屋書店は、教保文庫(韓国)と相互に協力し、両国の書店業界・出版業界における各種事業を強化するための業務提携を行う覚書を締結した。
https://www.kinokuniya.co.jp/c/company/pressrelease/20180718170000.html

講談社の「ヤングマガジン」「週刊少年マガジン」が主催する「ミスマガジン」グランプリが決定。
https://abematimes.com/posts/4570499

◎「弁護士ドットコムNEWS」の「川上氏『海賊版対策を邪魔している』『無責任だ』、森弁護士や村井教授に噛み付く」を読む限り、川上量生委員(カドカワ社長)って横柄な野郎だな。横柄だということは、私の評価軸からいえば「無責任」と同義である。横柄であったり、居丈高であったりするような言論が飛び交う場所で果たして「自由な表現」を育むことができるのだろうかはなはだ疑問である。
知的財産戦略本部の『インターネット上の海賊版対策に関する検討会議』(タスクフォース)の第3回会合が7月18日、東京都内で開かれた。ブロッキング反対派の森亮二委員(弁護士)が『もはや緊急措置をとるべきでないということを、この検討会の決議で示すべきだ』と提案したところ、ブロッキング賛成派の川上量生委員(カドカワ社長)が「海賊版サイト対策を邪魔することしかやっていない」と批判するなど、議論が紛糾した」
「この日の会議ではほかにも、川上委員が、『日本のインターネットの父』と呼ばれる村井純共同座長(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科委員長)に対して、『非常に無責任だ』と噛み付くシーンなどがあった」
https://www.bengo4.com/internet/n_8228/
山本一郎のツイート。
海賊版対策はみんな必要だって思ってるから立法措置で対応しようとしてんだろ。川上の言うブロッキングは法的にも技術的にも問題だからやめろって言ってるだけなのに。自滅するのはニコニコだけにしてくれないかな」
https://twitter.com/kirik/status/1019516018027200512
産経ニュースによれば川上は2020年東京五輪パラリンピックの機運醸成のため大会期間前後に東京都が行う文化事業「Tokyo Tokyo FESTIVAL」(TTF)を中心となって企画する東京文化プログラム統括プロデューサーを辞任していた。これは「無責任」ではないのだろうか。
https://www.sankei.com/politics/news/180718/plt1807180003-n1.html

講談社は、西日本豪雨の影響で一部の被災地に届けられなくなっている状況を踏まえ、「週刊少年マガジン」7月11日発売32号を、20日から31日までの期間限定でインターネット上で無料公開する。
https://www.oricon.co.jp/news/2115866/full/

トーハンは、早川書房の「HAYAKAWA FACTORY」オリジナルTシャツをトーハンのMVPブランドとして、7月下旬より書店で販売を開始する。第1弾は、9種類。レイ・ブラッドベリ華氏451度」(2種類)、「火星年代記」(2種類)、〈宇宙英雄ペリー・ローダン〉シリーズ(2種類)、スタニスワフ・レムソラリス」、ジョージ・オーウェル「一九八四年」、ウィリアム・ギブスンニューロマンサー」。
3,500円と高いけれど、オレは「華氏451度」を買う!三省堂書店池袋本店、三省堂書店神保町本店、明屋書店中野ブロードウェイ店、MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店、八重洲ブックセンター本店、愛知・三省堂書店名古屋本店、大阪・紀伊國屋書店梅田本店、紀伊國屋書店グランフロント大阪店、ジュンク堂書店大阪本店の9書店で取り扱う。
http://www.tohan.jp/news/20180719_1242.html

トーハンは、夏休み向けの店頭活性化プロジェクト企画として、「書店ウォーキングラリー! デジタル昆虫採集キャンペーン」を全国1,218書店にて9月2日まで実施している。これは、マピオンの協力で、同社提供のウォーキングアプリ「aruku&(あるくと)」内にあらわれる昆虫キャラクターを集めると抽選で図書カードが当たるというもの。
http://www.tohan.jp/news/20180717_1240.html

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3)【深夜の誌人語録】

謝るにもチャンスがあるものだ。