【文徒】2018年(平成30)7月27日(第6巻139号・通巻1313号)

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1)【記事】杉田水脈騒動で稲田朋美小川榮太郎もガソリンを投下
2)【記事】「講談社デジタル広告大賞」について
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                                • 2018.7.27 Shuppanjin

1)【記事】杉田水脈騒動で稲田朋美小川榮太郎もガソリンを投下

「ハフポスト日本版」は「LGBTをめぐる議論、自民・稲田朋美氏がTwitter初期アカで急きょ参戦」で次のように書いている。
「午後8時40分の時点で、このTwitterアカウント(@iP3TqoHWEmoDFNf)は、公式マーク(認証バッジ)や顔写真、プロフィールなども登録されていない。ただ、ハフポストが稲田氏の秘書に確認したところ、確かに本人が開設したもので間違いないという」
https://www.huffingtonpost.jp/2018/07/24/inada-sugita-lgbt_a_23488393/?ncid=tweetlnkjphpmg00000001
テレビでも大々的に報じていた。
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3430311.html
しかし、7月26日、午前10時40分現在、アカウント「@iP3TqoHWEmoDFNf」は削除されてしまっている。当然、「私は多様性を認め、寛容な社会をつくることが『保守』の役割だと信じる」と書いたツイートも現在では閲覧できない。
いずれにしてもCNNなんかの報道のほうが日本の新聞、テレビに比べて丁寧である。杉田が安倍首相の出身派閥に属していることや過去にやらかしたヘイトスピーチまでも批判しているじゃん。
https://edition.cnn.com/2018/07/25/asia/japanese-politician-criticism-intl/index.html
その点、「週刊文春」はOBの花田紀凱に怒られるのを覚悟で「『保育園は洗脳施設』暴言連発杉田水脈をスカウトした安倍首相」を掲載していた。さすがである。
http://shukan.bunshun.jp/articles/-/9944
ついでに報告しておくと、スマイリーキクチの次のようなツイートも物議を醸している。
「あんな発言をすれば批判されることぐらい予見できた。注目を集めるために意図的に過激な発言をする。いたずらに人の感情を煽っておいて、次は殺害予告をされた悲劇のヒロインに変貌する。本気で脅迫に苦しんでいる人がミソクソ一緒にされてしまう。この人の遊びで犯罪者が生産されて警察官が疲弊する」
https://twitter.com/smiley_kikuchi/status/1021295628855361537
BuzzFeed News」で筋ジストロフィーの詩人である岩崎航が杉田発言について次のように喝破している。
「特に『生産性がない』から、支援の必要もないと言っている部分は、LGBTの方たちに限らず、重度の障害者にも及ぶ攻撃です。
重度の心身障害者に対して、働いていない、または税金を納めないで、税金だけ食いつぶしていると考え、だからその人たちを支援する社会保障の予算は無駄なのだと言う人は一定程度います。
杉田議員の主張はそれとほとんど同じで、障害者差別にもつながる考え方だと受け止めました。
そして、それは2年前に起きた相模原事件の植松聖被告と同質の発想です」
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/iwasaki-vs-sugitauematsu?utm_term=.lsKOxbwPBk#.waWOeqoKvM
小川榮太郎杉田水脈を擁護している。
「【杉田水脈氏の新潮45論文】が騒ぎになっているので読んだが、一字一句改める必要がない正論だ。読まずに騒いでいるか読んでも理解できずに騒いでいる人は頭を冷やした方がいい。
この内容なら私はもとより、小林秀雄福田恆存江藤淳でもほぼ同様な事を書いたであろう」
「テレビで杉田水脈氏のバッシングをしている。過去にも問題発言と出ているが、問題発言ではなく、現代の男女、性を巡る社会思想の方が狂気なのである。それを指摘すると魔女狩りされる、これは、悪質な思想戦だ。
杉田さんの発言が不用意だとか、何とかいうレベルの話に矮小化してはならない。
不用意な所があっても問題提起する方が、賢い人間が黙っているより遥かに尊い
性や男女に関する現代の社会思想は人類史上最悪の思想による破壊であり、マルクス主義よりも遥かに悪質だ」
https://www.facebook.com/eitaro.ogawa/posts/1945500978876047
https://www.facebook.com/eitaro.ogawa/posts/1946911042068374
小川が杉田を擁護するのは当然と言えば当然である。二人は青林堂から対談本の「民主主義の敵」を発売したばかりである。
https://honto.jp/netstore/pd-book_29116412.html
杉田水脈小川榮太郎はゲイ・エロティック・アーティスト・田亀源五郎の「ゲイ・カルチャーの未来へ」(Pヴァイン)を読んだことがあるのだろうか。
「・・・とにかく自分自身に関しては、自分まで自分の敵になったら本当に悲しいから、たとえ世界中や親兄弟が敵になっても、自分だけは自分の味方でいなさいよ、
とは言いたいです。それは本当に大事だと思います。そのためにも、無理にでも自分を好きになる努力をしなさいということは言いたい」
http://p-vine.jp/music/isbn-978-4907276867
杉田水脈小川榮太郎は「n個の性」(ドゥルーズガタリ)ということが全く分かっていないのである。
「ひとつの性が存在するのでもなければ、二つの性が存在するのでもない。そうではなくてn…個の性が存在する」(「アンチ・オイディプス」)
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309462806/
田亀源五郎による「弟の夫」(双葉社)の英語版が「コミック界のアカデミー賞」と呼ばれるアイズナー賞(The Will Eisner Comic Industry Award)のBest U.S. Edition of International Material?Asia(アメリカで出版された海外コミック〜アジア部門)を受賞した。「弟の夫」がアイズナー賞を受賞したことを記念して、電子書籍ストアebookjapanで、7月25日(水)〜8月14日(火)の3週間の期間限定で第1巻500円(税別)を92円(税別)に値下げする特別キャンペーンを実施する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000095.000014531.html

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2)【記事】「講談社デジタル広告大賞」について

「読者が選ぶ・講談社広告賞2018」は「ViVi」6月号に表2見開きで掲出されたパルファン・クリスチャン・ディオール・ジャポンの「ディオールアディクト ラッカープランプ」に決まった。「講談社デジタル広告大賞」は「NET ViVi」を使ったコーセーの「ヴィセ リシェ クリスタルデュオ リップスティック」に決まった。
https://news.dwango.jp/news/30113-1807
時代のデジタルシフトによってクライアントはターゲッティングだけでは満足しなくなってしまったのだ。クライアントが求めるのはターゲットキリングなのである。ターゲッティングであれば紙のメディアのブランド構築力に依拠すれば十分であった。もちろん、紙のメディアにおいてもハガキ広告などターゲットキリングを志向する手法はないわけではなかったが、デジタルシフトによってターゲットキリングの手法と仕組が多様性を帯びることになった。そうした情況にどう対応していくかを出版社は問われることになったのである。
そのような視点で今回の「講談社デジタル広告大賞」を検証してみるならば、注目すべきは「ベストカーWeb」が掲載した三菱自動車アウトランダーPHEV」の、実際のオーナー10人が登場しその良さを語るというタイアップ広告である。
一般のメディアが三菱自動車の不手際を糾弾するなか、有名なモデルやタレントに頼るのではなく、オーディエンスと等身大のオーナーが、いや、オレたちは、それでも三菱自動車の「アウトランダーPHEV」を支持する理由を述べるというアプローチは、実は既存のジャーナリズムに最も欠如している部分も示唆している、ターゲットキリング型の広告に他ならないと私には感じられたのである。

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3)【本日の一行情報】

新潟市中央区のデジタルコンテンツ制作会社「ファンタジスタ」は大日本印刷と連携し、単独では海外展開が難しい中小出版社のマンガを電子書籍化し、海外向けにインターネットサイトで販売する事業を開始する。
http://www.niigata-nippo.co.jp/news/economics/20180724408146.html

大日本印刷2020年東京オリンピックパラリンピックにおける大会印刷部門のオフィシャルパートナーなんだね。7月24日付朝日新聞に全面広告を掲出している。「この数センチ、わずかと見るか、着実と見るか。」というコピーのもと、15種目の記録更新の歴史を紹介している。砲丸投げって5センチ伸ばすのに28年間を費やしている。
https://www.huffingtonpost.jp/2018/07/24/tokyo-olympic_a_23488202/

◎米グーグルの持ち株会社アルファベットが発表した2018年4〜6月期決算。売上高は前年同期比26%増の約326億ドル。広告収入が86%を占める。広告収入は前年同期比で約24%増。日経「グーグル、広告は好調 EU制裁より怖いアマゾン」は次のように書いている。
「調査会社のスタティスタによるとデジタル広告収入で見た米国での同社のシェアは約39%で、その次にフェイスブックの約19%が続く。広告主にとっては『今やインターネットとグーグルは同義』とも呼ばれる同社サイトに広告を出す効果は大きい」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33321300U8A720C1000000/
業績は市場予想を上回ったこともあり株価が急上昇した。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-07-23/PCC7WF6K50XV01

ブルームバーグによれば「トランプ米大統領は23日、米紙ワシントン・ポスト(Wポスト)へのツイッター攻撃を再開し、アマゾン・ドット・コム創業者で富豪のジェフ・ベゾス氏が保有する同紙をアマゾンの『高価なロビイスト』だと指摘した」そうだ。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-07-23/PCBSHSSYF01S01

◎「togetter」が「日本テレビ『スッキリ』出演。幻冬舎の箕輪厚介編集者のツイート」を掲載。
https://togetter.com/li/1249661
箕輪厚介のような才能が幅を利かす時代なんだろうな。

山本一郎は死なず!「文春オンライン」に「このクソ暑い状況で夏に五輪やる馬鹿がどこにいるんだよ問題」を発表している。
http://bunshun.jp/articles/-/8258
今回のPVは跳ねるんじゃないの。山本のツイッターアカウントが凍結されたことが追い風になるに違いない。

◎当然、「りぼんのふろく『カワイイ』のひみつ」(集英社)は買わねばなるまい。
https://natalie.mu/comic/news/292318

◎アマゾンは米でキンドルに「Buy For Others」機能を加えた。「フォーブスジャパン」が「キンドルに『献本機能』が登場、電子書籍の無料配布が可能に」を掲載している。
「Buy For Othersはソーシャルメディアを通じた電子書籍の無料配布や、イベントでの活用が想定され、本を送られた側は著者から受け取ったリンクから無料で書籍を楽しめる。対象となるデバイスキンドルに対応する全ての製品となっており、リンクの有効期間は60日とされている。著者は自身で購入した書籍代金からも、通常と同額のロイヤリティが受け取れる」
https://forbesjapan.com/articles/detail/22215

◎「そんなことはもう忘れたよ 鈴木清順閑話集」は欲しいなあ。版元は音楽専門チャンネルスペースシャワーTV」を擁するスペースシャワーネットワークだ。
https://www.spaceshower.net/company/message.html
https://books.spaceshower.jp/books/isbn-909087195
8月11日(土)には紀伊国屋新宿本店で「そんなことはもう忘れたよ 鈴木清順閑話集」刊行記念トークイベントが開催される。私の好きな女優・韓英恵もやって来る。彼女は「ピストルオペラ」でデビューしたんだよね。
https://books.spaceshower.jp/news/n-event/post-13757
「ビストルオペラ」も電通出資の映画だけれど、次の「オペレッタ狸御殿」が遺作となるが、これも電通出資映画で、企画としてクレジットされているのが遠谷信幸なんだよなあ。働き方改革に正面から取り組んでいる遠谷代表取締役である。
亡くなってしまったけれど、旭通信社の摂津幸彦も鈴木清順の映画が好きだったんだよね。摂津は俳人としても知られているが、清順映画のような俳句も残している。例えば「幾千代も散るは美し明日は三越」とかね。

コスプレイヤーによるコスプレイヤーのための日本初のコスプレキュレーションメディア「emoma!」が7月23日にリリースされた。運営するのは「合同会社BrainCraft」。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000034020.html

文化出版局による第16回「装苑 presents 蚤の市」が8月4日(土)、8月5日(日)に表参道で開催される。
http://instagram.userlocal.jp/users/nominoichi
https://www.facebook.com/soennominoichi/?ref=settings

◎こういう発言をする文藝春秋の新谷学編集局長は信用できる。
「基本、編集者は”黒子“で作り手が前面に出るのは格好悪いとされていました。でも、時代が大きく変わって、作る上でのプロセスを丁寧に説明しないと、記事のよさがリアルに伝わりづらくなりました」
作る上でのプロセスを丁寧に説明することは、今後、ますます重要になって来るはずだ。TOKYO FM松任谷正隆のおでかけラジオ」の今夜と8月3日(金)の2回にわたって登場する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001464.000004829.html
延江浩の「愛国とノーサイド 松任谷家と頭山家」によれば松任谷正隆は血脈を辿ると頭山満に行きつく。
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000189434
頭山について知りたければ松本健一の「雲に立つ 頭山満の『場所』」(文藝春秋)をオススメする。
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163520506
この「グリルはせ川」はユーミンの親戚が経営する。ハンバーグは絶品である。
https://tabelog.com/chiba/A1202/A120201/12018907/

紀伊國屋書店では、店舗に設置した在庫検索端末「KINOナビ」で書籍を検索した際に店舗に在庫がなくても、出版取次会社のトーハンが運用する倉庫に在庫があれば、会員情報が登録済みの「Kinokuniya Point Card」をスキャンすることにより、そのまま取り寄せることができるようになった。
https://www.kinokuniya.co.jp/c/company/pressrelease/20180725120000.html
これまでできなかったことがヘンなんだよ、この業界は!

コンデナスト・ジャパンが運営するWEBマガジン「VOGUE GIRL」(https://voguegirl.jp/)は、7月24日に「モバイルリッチメディア」としてリニューアルされた。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000485.000000930.html

電通は、海外本社「電通イージス・ネットワーク」を通じて、英国の大手クリエーティブエージェンシー「Whitespace (Scotland) Limited」(ホワイトスペース社)の株式100%を取得することになった。1997 年に設立されたホワイトスペース社は、デジタルとブランドデザインに注力して、英国スコットランドの有力クリエーティブエージェンシーとして成長を遂げてきたそうだ。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2018075-0725.pdf

Jリーグ電通との契約が4年延長された。
https://www.nikkansports.com/soccer/news/201807240000998.html

木村拓哉工藤静香夫妻の次女であるKoki,のインスタグラムのフォロワー数が100万人を突破した。
http://wezz-y.com/archives/56766
表紙を飾った「ELLE ジャポン」(ハースト婦人画報社)の仕事しかしていない。

主婦の友社の「mina 」9月号の表紙を飾っているのは竹内涼真。「mina 」の表紙モデルで男性が単独で起用されるのは、2001年の創刊以来初の出来事。竹内の芸能界デビューのきっかけとなったのは2013年に行われた「mina」の男性キャラクターを募集する「minaカレオーディション」でのグランプリ受賞だ。
https://corporate.shufunotomo.co.jp/newsrelease/12027/

朝日新聞が創刊50周年を迎えた「週刊少年ジャンプ」(集英社)の中野博之編集長をインタビューしている。中野は「ライバルはやはり『マガジン』『サンデー』ですか?」という問いに対して、こう答えている。
「両誌に面白い作品が掲載されるともちろん嫉妬し、編集部員にハッパもかけます。でもライバルというよりも、雑誌が厳しい時代の中で共に面白い漫画を生み出す仲間だと思っています。むしろライバルは『YouTube』です」
「週刊少年漫画誌は、かつては一番安く、一番スピード感のあるエンタメコンテンツでした。でもより安くより早いネット時代の今、子供たちは雑誌の発売日を待つ、アニメの放送時間を待つといった習慣がなくなりつつあります。これまでの週刊誌の強さにあぐらをかいていた部分がなかったとは言い切れません。毎日更新のWEB漫画誌『ジャンプ+』を2014年から始めるなど、試行錯誤を続けています」
https://www.asahi.com/articles/ASL7R74C5L7RUCVL050.html
オーディエンスが自分の時間を最優先する「待たない時代」が到来しているということなのだろう。

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4)【深夜の誌人語録】

自分にとって面白いことが他人にとって面白いとは限らないが、自分にとってつまらないことは、やはり他人にとってもつまらないのである。

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