【文徒】2018年(平成30)12月12日(第6巻233号・通巻1407号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】ニッポン最近書店流行事情 
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2018.12.12 Shuppanjin

1)【記事】ニッポン最近書店流行事情  

東洋経済ONLINE」の「日本の書店がどんどん潰れていく本当の理由」で星野渉は次のように書いている。
「雑誌の収益によって成立してきた取次システムと書店経営は、どだい書籍の収益で支えることはできない構造になっている。
総合取次各社は、書籍の販売比率が雑誌を超えると、ほぼ一様に出版流通事業が赤字に転落している」
「書店も書籍だけで経営を維持することは不可能だ。大手取次各社が発表している取引先書店の経営指標に基づき、1坪あたりの在庫金額(雑誌を含む)や商品回転率、そして書店マージンを業界で一般的な22%として試算してみると、1坪あたりの年間粗利益額は23万7600円。仮に100坪の書店を営業すると、粗利益額は2376万円になる。
支出をみると、家賃を安く見積もって月坪1万円と設定すると1万円×100坪×12カ月で1200万円。アルバイトを5人、時給1000円で雇い毎日8時間働いてもらうとすると1年間の人件費は8時間×1000円×5人×365日=1460万円。つまり家賃と人件費で2600万円以上かかり、先の粗利益2376万円から経費2660万円を引くと、経営者の人件費や光熱費を引かない段階でマイナス284万円で赤字になる計算だ。
このままの取引構造では、日本では書籍をベースにした取次や書店は存在しえないのである」
https://toyokeizai.net/articles/-/253083
取引条件を簡単には改善できそうもないから、大も小も書店は兼業化をすすめるであろう。その場合、出版物は返品できるという利点を生かし、兼業にとっての販促物的な位置づけとなるはずだ。こうした動きは逆に、買切を条件とした粗利益率の変更をもたらすかもしれない。
青山ブックセンター六本木店の跡地にオープンした「喫 六本木」にしても、本を買わせるのではなく、入場料1,500円を徴収して本を見せる書店であると言って良いだろう。なおかつ売れれば目っけ物ということだ。ここに置かれている本は第一義的に見世物なのである。
喫 六本木」は「展示室」「選書室」「喫茶室」「閲覧室」「研究室」という5つのエリアに分かれている。利用時間は無制限で、コーヒー・煎茶がおかわり自由。
https://www.cinra.net/report/201812-bunkitsu
喫 六本木」を経営するのは日販。細かく言うと、こういうことにる。
「運営はリブロ、あゆみBOOKS、オリオン書房などを展開するリブロプラス。ブックディレクションを日本出版販売のYOURS BOOK STOREが手がけ、プロデュースは同じくYOURS BOOK STOREと、スマイルズが担当しています」
http://hon-hikidashi.jp/bookstore/70308/
水曜社のツイート。
「昨日12/10六本木・喫の内覧会に行ってきました。書店の棚というより本好きの人の書棚を見ている気分。特に人関係棚は20年位前なら中型店舗でもこういう品揃えだったのではないかな? ゆったりと本を選ぶのも、原稿草稿を練るのにも使えそう」
https://twitter.com/suiyosha/status/1072301918691708931
SNSにおける評判は良いみたいだ。
「六本木の青山ブックセンター跡地にできた喫ってとこ行きたい。本の種類、量めちゃくちゃあるみたいだし、入場料1500円で珈琲とお茶がおかわり自由だし、コンセントもロッカーもWIFIもある。お腹すいたら軽食もあるから食べれる。長くいるをコンセプトにしてるらしい。最高」
https://twitter.com/realbababa/status/1072284741066342400
千葉雅也のツイート。
「『喫』の記事に、本を買うことが非日常になってきている、とあった。そうかー。そうなのかもなあ」
https://twitter.com/masayachiba/status/1072031756734197760
本を買うことが日常の私にとって「喫 六本木」は縁のない場所となりそうだ。
JR岡山駅前に商業ゾーンとホテルからなる新しい施設が12月7日にオープンした。商業ゾーンの名称は「ICOTNICOT」(イコットニコット)。地下1階から地上5階に展開するが、キーテナントとして「TSUTAYA BOOKSTORE」が2階ワンフロアで入居するが、ここも書店専業ではない。岡山初出店のベーカリーカフェ「R Baker」(アールベイカー)や雑貨店など、さまざまなカテゴリーのショップで構成されている。
https://www.ryutsuu.biz/store/k121052.html
北海道新聞の記事なんだけど、書店の灯りが消えた池田町に三日間だけ書店が復活するというハナシだ。
「昨年末で書店の灯が消えた町内で14日から3日間、書店が復活する。管内で書店4店舗を経営するザ・本屋さん(帯広、高橋智信社長)は、利別西町の細川経営ビジネス(細川征史社長)で、絵本などの書籍を出張販売する『クリスマスの絵本カフェ』を開く。同社の出張販売は初めて。書店がないマチでの新たな事業手法として注目されそうだ」
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/255782
静岡書店大賞の創設者である戸田書店掛川西郷店の高木久直店長が産経のインタビューに応えて語っている。
「受賞作は各書店が個別発注するのではなく、県内の書店全体で必要部数を出版社から買い取ることにしました。こうすれば片田舎の小さな本屋にも受賞作が並びます」
https://www.sankei.com/region/news/181211/rgn1812110034-n1.html
しかし、書店の閉店はなくならない。これは関東に住む私にとっても衝撃的なツイートである。
「京都の個性派書店恵社(長岡京バンビオ店)が2019年2月11日で閉店するとのこと。天地がひっくり返るくらいショック。約42年の歴史に幕を閉じる。一乗寺西大路店だけになる。
長岡京は来年からもう1つの駅前本屋さんも店舗を閉じて配達専門店に移行するし、いよいよ大変なことになりました」
https://twitter.com/donadona958/status/1072011066006097921

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2)【本日の一行情報】

◎名古屋に「拠点」を置く「風媒社」が、創業者である稲垣喜代志の遺稿集「その時より、野とともにあり」を出版したそうだ。
https://sakae.keizai.biz/headline/2784/
社会評論社の松田健二が昨年、「追悼:出版人・稲垣喜代志とエヌ・アールのことなど」を書いている。
http://chikyuza.net/archives/79509
ブックセンタークエスト黒崎井筒屋店がツイートしている。
「名古屋で気骨ある出版を続けてきた風媒社の創業者、稲垣喜代志さんの遺稿集が出ました。『その時より、野とともにあり』。書き手が無名であることにこだわり、多くの出版物を世に送ってきました。過労や原発問題にもいち早く注目。志ある出版人の姿勢を受け継いでいきたいものです」
https://twitter.com/KurosakiQuest/status/1068770626595213312

◎日販は、日本最大級のボーイズラブ(BL)専門レビューサイト「ちるちる」を運営するサンディアスの協力のもと作成したBLコミック専門ガイドブック「B+LIBRARY vol.5」の配布を、全国約590の取引書店および、日販が運営するインターネット書店Honya Club.comで12月上旬より順次開始している。
https://www.nippan.co.jp/news/blibrary_vol-5/

◎日販はポプラ社と共同で、「おしりたんてい ププッとストア ミニ」フェアを、12月10日(月)~2019年2月28日(木)の期間中、全国74書店にて開催する。
https://www.nippan.co.jp/news/oshiritantei_store/

◎「ねとらぼ」が「米ラジオ曲がクリスマスの定番曲『Baby, It's Cold Outside』を放送中止に MeToo運動を受けて」を掲載している。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1812/09/news041.html

エムオン・エンタテインメントが運営する、働くアラサー女性向けのwebメディア「andGIRL web」の月間PV数が11月末時点で1,000万を超えた。
https://www.atpress.ne.jp/news/173080

KADOKAWAの創刊25周年を迎えた「電撃庫」で「青春ブタ野郎」シリーズ(著/鴨志田一、イラスト/溝口ケージ)は累計発行部数100万部を突破した人気作だが、これを記念した巨大交通広告が、12月10日(月)~16日(日)まで、東京・秋葉原にて掲出されている。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000005293.000007006.html

◎「TECHABLE」は「Googleが挑むニュースメディア改革!ジャーナリストのためのAIプロジェクトを発表」を掲載している。
https://techable.jp/archives/89095

◎「ForbsJAPAN」の「米最大の書店チェーン『格安タブレット』でアマゾンに反撃」は次のように書いている。
「B&Nはこのデバイスによって、電子書籍を楽しむ顧客をアマゾンから奪おうとしている。最大の注目ポイントはその価格で、49.99ドルという安値に設定されている。これは、今秋に発売された大型タブレットのNOOK 10.1を80ドルも下回る値段であり、価格に敏感な消費者に大きくアピールすることは確実だ。
また、NOOK 7のストレージ容量は16ギガで、以前のモデルから2倍の容量になっている。アマゾンのFire 7の廉価版の価格はNOOK 7と同じ49.99ドルだが、その容量は8ギガであり、ここでもNOOK 7に軍配があがることになる。Fire 7の16ギガ版は69.99ドルで販売されている」
https://forbesjapan.com/articles/detail/24292#

◎「韓国学翻訳賞」に大村益夫早稲田大名誉教授が日本語に翻訳した李箕永(イ・ギヨン)の「故郷」が選ばれた。
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2018/12/10/2018121080086.html
「故郷」の日本語版は「朝鮮近代学選集」シリーズの最後の作品だ。
http://www.heibonsha.co.jp/book/b298054.html

◎「LEON.JP」の前田陽一郎が、12月10日付で同職を退任し、年内に主婦と生活社を退職するとフェイスブックで報告している。
「さて、私事で大変恐縮ではありますが、この度、本日付にてLEON.JP編集長を退任いたしました。
また、一身上の都合により、年内をもって(株)主婦と生活社を退職することになりました。
2006年以来12年半に渡る在職期間において、皆様には常に暖かく、時に厳しく、ご支援とご指導を頂戴いたしましたこと、心より感謝申し上げます。
誠にありがとうございました」
https://www.facebook.com/yoichiro.maeda.3/posts/2210109845718291

◎ブログ「藤原家の毎日家ごはん。」が1日平均120万アクセスを誇り、レシピ本は累計180万部を突破している、愛称は「みきママ」のおうち料理研究家・藤原美樹さん初のおやつ本「世界一親切な大好き!家おやつ」が4回目の重版となった。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000871.000002372.html

◎LINEは「LINE NEWS」が独自の基準で選出・表彰する「NEWS AWARDS 2018」において、今年1年間でユーザーに最も支持されたメディアを発表した。
「ニュース報道」部門では「朝日新聞デジタル」が選ばれた。次点は「ブルームバーグ」、3位「BBC News」、4位「時事通信ニュース」、5位「NHK NEWS」。
「ビジネス・テック」部門では「アスキー」が選ばれた。次点は「ハフポスト日本版」、3位「ギズモードジャパン」、4位「ニューズウィーク日本版」、5位「PRESIDENT」。
「芸能・社会」部門では「NEWSポストセブン」が選ばれた。次点は「テックインサイト」、3位「デイリースポーツ」、4位「週刊女性PRIME」、5位「週刊新潮×デイリー新潮」。
「スポーツ」部門では「Football ZONE web」が選ばれた。次点は「AUTOSPRTweb」、3位「GDOゴルフニュース」、4位「サッカーダイジェストweb」、5位「サッカーキング」。
女性部門では、「ananweb」が選ばれた。次点は「LEEニュース」、3位「Marisol ONLINE」、4位「BAILA News」、5位「Domani」。
https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2018/2532

◎宝島社の「このマンガがすごい!2019」オトコ編において第1位にランクインしたのは「アフタヌーン」(講談社)に連載されている石黒正数の「天国大魔境」であった。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001977.000001719.html

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3)【深夜の誌人語録】

他人の涙に騙されるな。