【文徒】2019年(平成31)2月15日(第7巻28号・通巻1446号)

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1)【本日の一行情報】
----------------------------------------2019.2.15 Shuppanjin

1)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎先月末にアマゾンが書籍の買切り販売を開始すると発表した件について、出版協のサイトで会長の水野久(晩成書房代表)が「『本はアマゾンで』でない未来を」と題して言及。前段でアマゾンがポイントサービスのプライムスチューデント(10%割引)で出版協会員社が自社商品の除外を求めてきたにも拘わらず継続してきた件にも触れつつ、以下のように書いている。
《こうなると出版社にできることは、取次店に自社商品のアマゾンへの出荷の停止を通告することしかなくなる。実際にはその選択はハードルが高い。(略)再販契約があっても、自社のポイントサービスは影響を受けず、他の書店は再販契約を遵守する中、消費者からも値下げを求められることはないのだから、再販制度は尊重する」はずである》
《そして今回の買切り販売の発表だ。一定期間を過ぎた後は値下げ販売することを前提にした直取引は、当然、通常の再販制度の外側でのアマゾンと各出版社の個別取引であり、「協議」を謳っていても、力関係を考えれば実際の価格決定権はアマゾンが握ることになるだろう》
https://shuppankyo.wixsite.com/shuppankyo/home/honnohito-201902
「ウラゲツ」が補足しつつ紹介していた。
晩成書房緑風出版水声社がアマゾンに出荷を停止した背景が解説されています》
《アマゾン・アウトレットについての出版協さんの言及は5年前の、副会長竹内淳夫さんによるコラムに言及があるのは過日、改めて注目した通りです》
https://twitter.com/uragetsu/status/1094841906230480896
https://twitter.com/uragetsu/status/1094842641244536832
竹内淳夫(彩流社代表)も当時こう書いていた。
《契約社会のアメリカで誕生された御社ですから、契約に関することは厳密であると信じておりますから、再販制度についても公取委とそれなりの協議はされているものと思います。しかしながら、今回の値引き対象の商品から自社商品を除外せよという権限は製造者の版元にあるはずで、これが履行できないとすれば、契約上は取次店に賠償を求めることになります。また、どうしても除外しないということであれば、商品の提供を拒否しなければならなくなります
http://shuppankyo.cocolog-nifty.com/blog/2014/02/post-9ba7.html

白泉社の会長に就任した鳥嶋和彦が11日から日経(電子版)で5回連続のインタビューに登場。1回目では自身が『週刊少年ジャンプ』編集長だった1997年に『ONE PIECE』(尾田栄一郎)の連載開始に実は「反対していた」というエピソードを披露。「伝説のジャンプ編集者が見誤った傑作」という見出しで紹介されている。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40658940Q9A130C1CR8000/
白泉社に社長で移って早々「潰そうとした」という育児情報誌『kodomoe』から出た『ノラネコぐんだん』がミリオンセラーになった後も「絵本なめてて、すみませんでした!」とイベント化し、公開トークの場で謝罪。しかもその様子を今でも映像で公開していたりする。こういうのをネタにするしたたかさや度量はさすがである。
https://www.hakusensha.co.jp/news/52551/

◎累計260万部の大ベストセラーになった『君たちはどう生きるか』がTBSでドラマ化されたことに関し、原作者・吉野源三郎の長男である吉野源太郎が「ドラマ化はテレビ局と出版社の間で無断で進められ、自分は放送後に知った」などとして、版元のマガジンハウスに対して弁護士を立てて抗議したと『週刊』が最新号で報道。吉野によれば映像化の話は「全部お断りしていた」という。マガジンハウス側は取材に対し「誠意ある対応を今後もしていきます」と回答したとのこと。
http://bunshun.jp/articles/-/10730
ジブリ庫」でお馴染みの宮崎駿による新作アニメ映画『君たちはどう生きるか』については「同作が(映画の)主人公にとって大きな意味を持つということであり、原作ではない」と記事中でしっかり押えている。

DeNA社長の守安功は8日に東京都内で行われた第3四半期決算説明会(投資家・証券アナリスト向け)の席上、集英社との共同出資会社「集英社DeNAプロジェクツ(仮称)」の事業活動についても言及。とりあえずは企画会社的な形態のもと、IPを活用したゲーム、デジタルエンタテインメントサービスの共同開発などを行っていくなどの意向を語った。
http://gamebiz.jp/?p=231339

クックパッドは8日に2018年12月期の連結決算を発表。売上収益は118億円(前期比11.4%減)、営業利益16億円(同69.1%減)、最終利益4億円(同88.3%減)と大幅な減益となった。国内のクックパッドの会員事業のうち、レベニューシェアによる売上収益や広告の売上収益が減少したことに加え、人件費、業務委託費、広告宣伝費や地代家賃が増加したことが響いたという。12日に開催された決算説明会の質疑応答では、海外ではイギリスで行っているグローバルプラットフォームの開発で損失が拡大、国内では昨年4月に会社分割で子会社となったCookpadTVで投資が先行して赤字が発生した、などの説明がなされた。
https://pdf.irpocket.com/C2193/drYi/DOhh/WwD7.pdf
https://pdf.irpocket.com/C2193/drYi/KJQf/u2GZ.pdf
http://gamebiz.jp/?p=231344

◎米投資ファンドベインキャピタルによる印刷大手・廣済堂へのTOB(株式公開買い付け)に対し、旧村上ファンド系の投資会社・レノが阻止にかかっているという。
https://maonline.jp/articles/baincapital_kosaido201802
かつて中央官庁(主に特許庁)への営業で業績を拡大し、コンピュータ印刷の導入で先駆的な存在だった廣済堂も本業の印刷や出版は思わしくない。稼ぎどころは関連会社での葬祭場運営(東京博善になって久しい。しかしそこで今後も企業価値が見込めるとレノは判断したのではないかと、上記記事では推測を述べている。

◎そのベインによるADKへのTOBの際、事前に知り得た情報によるインサイダー取引の罪に問われたADK元役員への初公判が12日に行われた。元役員は起訴内容を認め、検察側は懲役2年・罰金200万円・追徴金9612万1000円を求刑した。
http://www.news24.jp/articles/2019/02/12/07416870.html

◎都内京区小石川にある共同印刷の、築後80年を経た本社ビルの解体工事が始まった。1897年に現在の中央区銀座6丁目で創業した出版社「博館」が翌年に現在の地に移転してきて以来の建物で、かつて「東洋一の印刷のデパート」と謳われた。新しいビルは2022年3月完成予定とのこと。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201902/CK2019021102000116.html

◎昨年末に指定管理制度導入問題をめぐって図書館専門員(非常勤司書)がストライキ実施直前まで争った練馬区立図書館の問題について、図書館専門員たちが「経過報告会」を12日夜に開催した。『レイバーネット』が集会の模様を報じている。
http://www.labornetjp.org/news/2019/0213some
ライターの昼間たかしもこの集会を取材。事態の概要を紹介するとともに、根源にある民間委託制度がはらむ問題点を紹介している。当日は「NPOげんきな図書館」理事長の渡辺百合子が「民間委託した場合の見積もり」を自らの経験も踏まえつつ具体的な数字をあげて説明していた。
https://www.cyzo.com/2019/02/post_193104.html 
私(岩本)もこの集会を取材していた。昼間に先に書かれて悔しいが、近いうちにきちんとレポートするつもりだ。

◎昨年秋に亡くなった樹木希林の『一切なりゆき』(春新書)などが好調なことから、日販の1月期「店頭売上前年比調査」で新書の売り上げが5カ月ぶりに前年を上回ったと日販のウェブメディア『ほんのひきだし』が伝えている。
http://hon-hikidashi.jp/more/75665/

◎ウェブサイト制作会社出身で『Facebook集客術』『いますぐはじめるFacebookナビ』などの著書を持つフリーライターの田口和裕が2月9日夜に突然Facebookより強制ログアウトのうえアカウントも停止されたという。全く心当たりがないという田口がヘルプセンター経由で異議を申し立てたところ理由も明かさぬまま「利用資格がない」とする回答が来たそうだ。友人知人との連絡のほか、書籍の執筆でもFacebookにグループを作ったうえで版元や編集プロダクションなどともやり取りしていたために目下困り果てているのだとか。
https://note.mu/tagkaz/n/n5211f2a355ac
https://www.art-techne.com/buzz/news201902121235.html

◎同じくフリーライターで、これまで1000人ものAV女優にインタビューしてきた経験をまとめた『ハタチになったら死のうと思ってた AV女優19人の告白』(ミリオン出版・2018年7月)の著者でもある中村淳彦がウェブメディア『TOCANA』のインタビューに登場。「AV業界一嫌われているライター」と自認しつつ、この分野独特の事情について、例えば次のように語っている。
《AV業界は徹底した男尊女卑と市場主義が浸透していて、AV女優は裸やセックスを売って、その存在に利権がある人たち。立場的に営業妨害はできない。だからといって、業界が望むような宣伝を書いても誰も読まない。女優が洗脳状態みたいなこともあるし、AV女優を取材して一般読者に読ませるのは、スキルと経験が必要ではあると思う》
https://tocana.jp/2019/02/post_19628_entry.html … 

◎いわゆる「ダウンロード違法化」の対象範囲拡大に向けた著作権法改正の動きが加速してきた。この問題をテーマに先週8日、参議議員会館で行われた集会には「日本マンガ学会」会長の竹宮恵子と「マンガ図書館Z」の赤松健の漫画家2人ほかが登壇し、対象範囲拡大に向けて現在化庁で進む動きへの危機感を語っていた。この集会には私も参加のうえ、今日15日発行『メディアクリティーク』でレポートを書いているので参照されたい。
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1902/13/news104.html
そうした集会参加者の思いを逆なでするかのように、13日には化庁化審議会著作権分科会が、メモ代わりにPCやスマホでメモ代わりに行うスクリーンショットも「著作権を侵害していれば違法ダウンロードに含まれる」との方針も明らかにしたと朝日新聞が報じていた。
https://www.asahi.com/articles/ASM2D6F8NM2DUCVL03V.html
上記の赤松健が以下に「問題点」を整理のうえ解説している。
https://nijimen.net/topics/21202