【文徒】2019年(平成31)4月12日(第7巻67号・通巻1485号)

Index------------------------------------------------------
1)【社告】講談社広報室からの抗議にこたえる
2)【記事】アマゾン、ポイントプログララム変更を異例の撤回
3)【本日の一行情報】
4)【人事】KADOKAWA 4月1日付
----------------------------------------2019.4.12 Shuppanjin

1)【社告】講談社広報室からの抗議にこたえる

4月9日付「」1482号は「【記事】 東北学院大学教授の金菱清が講談社に「お知らせ」の撤回訂正を求める」を掲載いたしました。
これに対し同日、講談社広報室長より、電話にて《正式に抗議する》旨の連絡を受けました。
ただ、電話の向こうから聞こえたのは名誉棄損云々といった話であり、最後は口頭での「抗議をする」と言って電話を切るという対応であり、記事の何が問題であったかが判然としません。
そこで広報担当常務にメールで《御社の広報室長から、今朝のの記事で正式に抗議すると電話がありましたが、ただただ驚くばかりです。あまり弱い者イジメはなさらぬようお願い申し上げます》と連絡したところ、広報担当常務から《金菱氏の言説は事実と異なるものであり、大変遺憾です。抗議は、社としてのものです。そう受け取ってください》、との返事がありました。
私が《事実と違うという情報発信をされるのですよね》と問うたところ、《この件に関して現時点で公式リリースはいまのところ流していません。金菱氏の出方によります》との返事でした。
それに対し私は《しっかりと背景を踏まえて、出来る限り丁寧な決着を期待しております。でも書きましたが質が問われているかと思います》と返答しました。
翌10日、何度か講談社広報室より電話がありましたが、終日、外出して作業をしていたため電話には気がつきませんでした。そうしたところ次のような内容のメールが講談社の広報室長から届きました。

-----------------------(以下、引用)------------------------------
今井様

お世話さまです。

何度かお電話いたしましたが
ご不在のようでしたのでメールにて失礼いたします。

昨日、
御社のメールマガジン・4月9日付「出版人・」記事、
【3)【記事】 東北学院大学教授の金菱清が講談社に「お知らせ」の撤回訂正を求める】
について弊社として正式に抗議をいたしました。

現在までに、
本件について特段のご返答はいただいておりません。

そのような状況ですので、
つきましては、
あす4月11日の吉川賞贈賞式につきまして
ご来場をお控えいただきますようお願いいたします。
このことは
わたし個人の判断ではありません。

もう一点、
役員会での判断事項がございますが、
別途書面にてお知らせ申し上げます。

よろしくお願いいたします。
-------------------------(引用ここまで)---------------------------

上記のような流れを以て、「」は以下の社告を宣します。

」は、いかなる企業であってもその信用を毀損するといった意図での情報発信はいたしません。つねに業界の共栄・発展・健全化に資することを基本方針としています。
『美しい顔』についての一連の件に「」は当初から注目しております。これからの出版界・壇にとって重要なケースだと認識しているからです。ゆえに、金菱氏のツイートならびに付随する件も紹介いたしました。

4月9日付記事の主旨は「講談社はこの件について説明すべき」であり、記事自体に誹謗や捏造など、抗議を受ける性格の部分はありません。あくまでも、金菱氏のツイートと講談社の発表が食い違っている、この件の反響を紹介したものです。

今後とも透明性を極力大切にした情報発信に全力を尽くす所存です

2019年4月11日
株式会社 出版人 今井照容

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2)【記事】アマゾン、ポイントプログラム変更を異例の撤回(岩本太郎)

出版協の副会長で合同出版代表の上野良治が「『すごいルール』は出版界を持続させ得るのか」と題した論考を、3日付で出版協の公式サイトに寄稿していた。
《いま、出版界の最大の問題が、「書籍の適正流通を目指して」(2018年3月、日販)で公表された取次の構造的赤字状況と、アマゾンによる「再販制浸食」「直取引勧誘」であるだろう》との前振りのもと、アマゾン・ジャパン立ち上げメンバーである佐藤将が昨年4月に上梓した『アマゾンのすごいルール』より要所を引用しつつ、現在の出版業界が抱える「3つの論点」(再販制の維持・取次書店システムの維持・版元の財務内容の改善)に言及。当然、例のアマゾン「買い切り制」導入の件に触れている。
《例えば、初版3000部の内2000部を買い切ったアマゾンは、彼らのもう一方のビジネスルールである「ベストコストパフォーマンス」の期間内で完売できるだろうか?
売れ残りが発生した状況では、値引き販売か、返品買い戻し要請か、取引停止か、買上げ資金の行き詰まりによるシステム崩壊のいずれかであろう》
《お客様の中に、アマゾンの都合で出版社(取引業者)が含まれたり、外されたりしないだろうか。データ判断で正味の切り下げ、翌月全額支払い条件を変更、取引をしないと通告されないだろうか
アマゾンは、お客様に喜んでもらうために、ポイント制を拡充するという。ポイントを増額するとたしかにお客様はアマゾンから購入する便宜性が増す。アマゾンが他の競争相手に、ダメージを与えるには効果的だろう。
ただし、実際の要求は、ポイント増額の原資を取引先が提供せよというものである》
https://shuppankyo.wixsite.com/shuppankyo/home/honnohitokoto-190403
が、その「すごいルール」にそろそろメスが入りつつあるのかもしれない。上記の上野による投稿からちょうど1週間後の10日、アマゾンは来月より導入の予定だった、利用者に購入額の1%以上をポイントで還元する取り組みについて、撤回することを明らかにした。承知の通りアマゾンに対しては公取が先頃より実態調査に入っており、出品者からの商品に関して出品者の費用負担でポイント付与を強制させる内容が「優越的地位の乱用」に当たるのではないかとの懸念が生じたことが、撤回の背景にあるのではないかと報じられている。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019041001368&g=eco
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1904/10/news119.html
https://www.asahi.com/articles/ASM4B7KPDM4BULFA03H.html
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20190410-OYT1T50277/
アマゾン自身は日経の報道において《お客様にとってより価値のあるプログラムとなるよう、今後もアマゾンポイントのイノベーションを進める》とコメントしている。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO43597420Q9A410C1EA2000/
実際にこのポイントプログラム変更が2月にユーザーに伝えられてからは疑問の声がネット上でも多々上がっていた。例えば「amazon services」にも2月の発表直後にユーザーによるとみられるこんな書き込みが上がっていた。
《今回の強制参加のポイントプログラムは、アマゾンジャパンだけなのでしょうか?(略)「米国ベースの企業のため、日本向けにカスタマイズしたシステムができずに(遅れて)おり、申し訳ございません。」と言われた経験が何度もあります》
《ポイント強要のシステムは日本独自なの? ったら、今までのアマゾン側の問題に対する弁明って何だったんだろ。。過去の全てが矛盾する結果になりませんか?》
https://sellercentral-japan.amazon.com/forums/t/topic/11752
「実質の手数料値上げ」だとするエントリもあった。
《今までは大口出品者しか使えないプログラムであり、出品者独自の販売戦略だったわけです。他の出品者との差別化を図る為の手段の一つだったんですが、皆さんポイント付与を強制されるので差別化にならなくなります》
Amazonさん、キャッシュレス決済の覇権争いにでも乗り出すつもりなのか?んなわきゃない?》
https://sidejob-support.jp/2019/02/24/amazon-point-program/
ECプラットフォーム「ネクストエンジン」の開発・提供を行う「Hamee」は、このポイントプログラム導入により楽天や「Yahoo!ショッピング」などのポイント好きユーザーがアマゾンに移行する可能性も高いとしつつ、次のように指摘していた。
《ポイントの負担に関しては出店者側でとのことで、Amazonのポイント強化により中長期的には売上が増加する可能性はあるものの、一時的には利益率が減少することは避けられないと考えられます》
《ポイントの義務化は利益率が一時的に減るために困る店舗さんも多く存在するのではないでしょうか》
https://hamee-consulting.co.jp/amazon%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E3%83%9D%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%A0%E3%81%AE%E5%A4%89%E6%9B%B4%E3%81%A8%E5%AF%BE%E7%AD%96
公取の動き以前に批判が多かったわけだ。撤回の報道を受けて「ウラゲツ」も《そりゃそうでしょうよ》とツイート。
https://twitter.com/uragetsu/status/1116015617759277056
Twitter上では他も概ね「撤回は当然」とする見方が目立つ。ただし一方では「他もやっている」といった指摘も見られる。
https://twitter.com/iphono/status/1116171439021772800
そんな中で同じ10日には「楽天トラベル」を運営する楽天と、「ブッキングドットコム」「エクスペディア」の日本法人に関して、関係先へ公取の立ち入り調査が入った。宿泊施設に“最安値”の宿泊料金を掲載するよう求める契約を結んでいたことに独禁法違反の疑いがある、というものだ。
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1904/10/news084.html
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019041000564 
アマゾンも含め、圧倒的なシェアと「利用者の利益」をタテに自分たちの要求を押し付けてきたネット通販業者に対して「NO」を突きつける動きが今年あたりそろそろ本格化しつつあるということかもしれない。

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3)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎上記の論考「『すごいルール』は出版界を持続させ得るのか」の冒頭で上野良治が紹介していた日販の書「書籍の適正流通を目指して」について、「ウラゲツ」がツイートで補足説明していた。
《気になる方もいらっしゃるかと想像しますが、切実な内容のためかネット公開はされていないようです。》
《「仕入窓口などで配布されていた」と仰る版元さんもいますが、少なくとも私の周辺では初耳でした。直観で言えば広く配布されているものではなく、知人友人のツテを辿るのが手っ取り早いかと。残念ながらこの手の「重要なのに配布されない資料」って色々ありますね。内部資料に準じるためなのか…》 
https://twitter.com/uragetsu/status/1115629534332706817
https://twitter.com/uragetsu/status/1115803354909687809
同名の書は、例えば1990年にも日販から当時の流対協に対して発行されている。この時の内容は湯浅俊彦が『日本の出版流通における書誌情報・物流情報のデジタル化とその歴史的意義』で報告している。
https://books.google.co.jp/books?id=ZVZxDgAAQBAJ&pg=PA2005-IA32&lpg=PA2005-IA32&dq=%E6%9B%B8%E7%B1%8D%E3%81%AE%E9%81%A9%E6%AD%A3%E6%B5%81%E9%80%9A%E3%82%92%E7%9B%AE%E6%8C%87%E3%81%97%E3%81%A6%E3%80%80%E6%97%A5%E8%B2%A9&source=bl&ots=J_d0ndsoV_&sig=ACfU3U1Cj5MsIv_W4-GToBms6P6iBTpEHQ&hl=ja&sa=X&ved=2ahUKEwiI8KKgocfhAhWyCqYKHdOKCWgQ6AEwBXoECAkQAQ#v=onepage&q=%E6%9B%B8%E7%B1%8D%E3%81%AE%E9%81%A9%E6%AD%A3%E6%B5%81%E9%80%9A%E3%82%92%E7%9B%AE%E6%8C%87%E3%81%97%E3%81%A6%E3%80%80%E6%97%A5%E8%B2%A9&f=false

◎『netgeek』に対するブロガーらの集団訴訟については先日も報じたが、この裁判での原告らの訴訟費用はクラウドファンディングで賄われるのだそうだ。原告の1人である永江一石が、社会問題系のクラウドファンディングプラットフォーム「GoodMorning」に開設したページでその趣旨を語っている。8日に東京地裁に提訴して以降、11日の夕刻までの段階で既に約200万円が集まっている。
https://www.bengo4.com/c_23/n_9480/
https://camp-fire.jp/projects/view/147138

小学館は10日付で公式サイトの「お知らせ」欄に「ウェブサイト『BizLady』『VenusTap』の運営について」を掲載
《2017年まで小学館で運営をしていたウェブサイト「BizLady」「VenusTap」は、現在小学館とは関係のない第三者によって運営されています。  
現在の「BizLady」「VenusTap」は、当社のドメイン放棄後に作成されたサイトであるため、当社とは一切関係ありません。》
https://www.shogakukan.co.jp/news/209584

◎警視庁葛西署は10日、ひき逃げ事故を起こしたとして都内江戸川区のフリーライターの男性(37歳)を自動車運転死傷行為処罰法違反と道路交通法違反の容疑で逮捕した。同日午前6時25分頃、同区南葛西の都道交差点を乗用車で右折する際、反対車線から直進してきた同区の男性会社員のオートバイと衝突して重傷を負わせ、逃走した疑い。容疑を認めているという。男性は『女性自身』の契約フリー記者で、光社は《逮捕という事態は誠に遺憾です。事実関係を把握次第、厳正に対処します》と報道にコメント。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20190410-OYT1T50279/

KADOKAWAが2020の東京オリンピック・パラリンピックの組織委員会との間で「オフィシャル出版サービスサポーター」として契約を結んだ。
https://www.kadokawa.co.jp/topics/3174

博報堂・大広・読売広告社の3月度売上高。対前年同月比では3社とも新聞がマイナス。雑誌は博報堂が微増だった一方で読広では約6割のダウン。大広ではマス4媒体全てが対前年同月比割れとなった。他方、テレビ、ラジオは博報堂読広でプラスを記録している。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/2433/tdnet/1690693/00.pdf

◎大広は4月9日~14日にイタリア・ミラノで開催される「ミラノデザインウィーク2019」の期間中、昨年に続いてWebサイトの情報プラットフォーム『MILANO 360°』を運営する。
http://milano360.jp/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000042292.html

◎誠堂新光社発行のオーディオ雑誌『MJ無線と実験』が10日発売の5月号で創刊95周年。同号の特集は「95年の時を旅する『無線と實驗』1924」で、第二次世界大戦終結した直後に発売された『無線と實驗 昭和20年7・8月号』の復刻版を別冊付録でつけている。
http://www.seibundo-shinkosha.net/mj/?backnumber=mj%E7%84%A1%E7%B7%9A%E3%81%A8%E5%AE%9F%E9%A8%932019%E5%B9%B45%E6%9C%88%E5%8F%B7
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000740.000012109.html

JTBパブリッシング発行の『JTB時刻表』は、他にも『JR時刻表』などの競合誌やネットの台頭がある中で、現在発売中の4月号(通算1119号)でも6万部を発行しているそうだ。もともとこちらが「国鉄監修」の老舗で、かつては表紙にもそう謳われていたが、1987年の国鉄分割民営化の際にJRと離れた経緯がある。
https://www.asahi.com/articles/ASM443DCDM44ULZU008.html

◎町内に書店のなかった福井県池田町に移住した女性が、当地で出張型の本屋カフェを開業したそうだ。同県小浜市出身で京都大学学院を卒業した柴田智加(32歳)がSNSで自身が読んだ本の書評を投稿し、反響を得る中で昨年7月、「本屋 とにもかくにも。」の題号でオープン。主に古書を取り扱いつつ、紀行や料理の研究書、短歌集などを取りそろえつつ、スイーツや豚の角煮などのオリジナルメニューを提供しているという。
https://www.facebook.com/hontonikaku/
https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/831661

◎宮崎県宮崎市郊外のイオンモール宮崎にある未来屋書店宮崎店と、同市の中心街にあるミニシアター「宮崎キネマ館」がコラボを始めた。未来屋書店の入口脇の本棚に宮崎キネマ館の上映作や上映予定の映画の原作書籍を並べ、購入者には同映画館の当日一般料金が1800円が200円引きされるという。
https://www.asahi.com/articles/ASM443TR6M44TNAB009.html

◎札幌市厚別区コミュニティFM局「RADIO TxT(FMドラマシティ)」で、旧ソ連によるシベリア抑留を経験した人々の声を伝えるラジオ番組「シベリア物語」が2月から放送中。同市の歯科衛生士・建部奈津子が抑留体験者に話を聞いたことから関心を持ち、4年前から「シベリア抑留体験を語る会札幌」を立ち上げ、約50回の講演会を開いてきた。賛同者は増える中でラジオ各局から番組などに呼ばれるようになり、ついに自分の番組を始めることになったという。同番組はネット上の無料配信サービス「リスラジ」でも聴ける。
http://776.fm/program/%E3%82%B7%E3%83%99%E3%83%AA%E3%82%A2%E7%89%A9%E8%AA%9E
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43460360Y9A400C1CR0000/

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4)【人事】KADOKAWA 4月1日付

井上 伸一郎
新:代表取締役 副社長執行役員 グループIP事業統括
旧:代表取締役専務執行役員  IP戦略局、アニメ事業局、デジタルBPR局、イベント事業推進室 総管掌 芸局、ビジネス・生活化・地域局、エンタテインメントノベル局、コミック&キャラクター局、映像事業局、コンテンツ事業企画室 管掌 

関谷 幸一
新:取締役 専務執行役員 プロダクトマーケティング本部長
旧:取締役 専務執行役員

芳原 世幸
新:取締役 専務執行役員 IPEx 事業本部長
旧:取締役 専務執行役員

山下 直久
新:常務執行役員 グループ人事・総務本部長
旧:常務執行役員

青柳 昌行
新:常務執行役員 IPクリエイション事業本部長
旧:常務執行役員

安本 洋一
新:常務執行役員 DX戦略本部長
旧:執行役員 メディアインキュベーション局 局長 兼 デジタル戦略推進局 局長 

沖野 総司
新:執行役員 グループ経営企画本部長
旧:執行役員

郡司 聡
新:執行役員 IPクリエイション事業本部 副本部長
旧:執行役員

堀内 大示
新:執行役員 IPEx 事業本部 副本部長
旧:執行役員

村川 忍
新:執行役員 プロダクトマーケティング本部 副本部長
旧:執行役員