【文徒】2019年(令和1)5月16日(第7巻83号・通巻1503号)

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1)【記事】カドカワが微増収大赤字の決算を発表
2)【シリーズ】今井さんへの手紙
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】
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1)【記事】カドカワが微増収大赤字の決算を発表

カドカワの2019年3月期(18年4月~19年3月)通期連結決算は、売上高が前期比0.9%増の2086億500万円、営業利益が13.9%減の27億700万円。最終損益は40億8500万円の赤字。
出版事業は電子書籍販売が好調で増収増益だったが、低迷する子会ドワンゴ構造改革に多額の費用を投じたことが大きく響いた。
ドワンゴは位置情報ゲームアプリ「テクテクテクテク」の収益化に失敗し、動画サービス「niconico」の有料会員の減少も続き、3月末の有料会員数は180万人と、昨年12月末から8万人減った。「niconico」を中心とするウェブサービスが25億円の赤字となったのである。何としてもウェブ事業の収益化を図りたいところだ。ドワンゴ夏野剛社長は選択と集中によって再建を目指すようだが決して楽観はできまい。いずれにせよ、次のような具体的施策を打ち出している。
(1)ドワンゴ事業の収益化(夏野取締役・ドワンゴ社長) ・選択と集中によるドワンゴの再建(Webサービス事業の収益化) →収益力のある動画配信ポータル事業へ再構築
(2)グループの全部門・全事業におけるデジタルトランス フォーメーション(DX)の実践(安本常務DX戦略本部長) ・DX戦略本部を組織全体の中軸に置き、DXの全体最適を図る。 ・KADOKAWA Connectedの設立 →ITエンジニアが働き易い業務・人事環境を提供し、グループ全体のICT業務を変革、推進 (KADOKAWA40名、ドワンゴ80名、合計120名のITエンジニアで構成。早期にITエンジニ ア200名程度に組織を拡大。) ・DXを基軸に、働き方改革の推進、情報共有・業務フローの 抜本的な効率化、グループワイドのデジタルCRMの強化(ビッ グデータ、ID対応、広告媒体力の強化)により、コスト競争力 の強化、生産性の向上を図る。
(3)基礎IP創出力の強化(青柳常務IPクリエイション事業本部長) ・IPクリエイション(IPC)事業本部の設立 ・IP創出組織の最適化と更なる人材育成(新卒、中途、教育) を進める。 →プロ作家、UGCから産まれる「年間5,000点」の新刊発刊)の継続推進と KADOKAWAグループのライセンサーとしての競争優位を高める。
(4)メディアミックス展開力の強化(芳原専務IPEx事業本部長) ・IPEx事業本部の設立とメディアミックス運営組織の最適化 →ゲーム化、映像化、グッズ化、イベント、海外展開等、あらゆるメディアミックスを基礎IP ライツオリエンティッドにより効率的・高付加価値的に推進する為、事業推進組織構成を 抜本的に変革していく。 ←IPC/IPEx事業本部は、井上代表取締役副社長が統括
(5)生産・物流プラットフォームの革新(関谷専務PM本部長) ・プロダクトマーケティング本部の設立 →デジタル印刷・物流装備、DOTによる書店取引展開、出版業務フローの 完全デジタル化、版元他社との連携
(6)グループ全体の管理本部強化、シェアードの拡大 ・グループ人事・総務本部、グループ経営企画本部の設立
(7)その他経営課題:グループ会社の成長・新規事業の収益化 ・ブックウォーカーフロム・ソフトウェア、ムービーウォーカー バンタン、スパイク・チュンソフトアスキー総研、N高校他、 成長著しい子会社群・事業群の更なる成長 ・イベント、インバウンド他を中心とする新規事業の収益化
(8)コーポレートガバナンスの強化 ・事業持株会社による、事業力と内部統制の強化 ・4名の独立社外取締役の選任 ・(任意)指名・評価報酬委員会の設置
https://ssl4.eir-parts.net/doc/9468/ir_material_for_fiscal_ym1/64531/00.pdf
https://ssl4.eir-parts.net/doc/9468/tdnet/1706203/00.pdf
で、カドカワが7月1日付でKADOKAWAに社名変更することになった。現KADOKAWAから吸収分割によって出版などの全事業を承継し、更にドワンゴGzブレイン、角川アスキー総合研究所など子会社の経営管理も担う。純粋持株会社から事業持株会社へと変更されるわけである。
KADOKAWAは「KADOKAWA Future Publishing」に商号変更し、出版物の製造・物流子会社を束ねる中間子会社しての役割を果たすことになるそうだ。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/9468/tdnet/1706202/00.pdf

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2)【シリーズ】今井さんへの手紙

今井さんと講談社の諍いの経緯を改めて眺めて思うのは、今井さんもお書きですが、講談社はこんな偉そうな発表(宣言)などせずに、「黙って出版すればよかったものを」ということです。
編集部は、作家と共に昨年の自らの汚名を雪ぎたかったのは間違いないでしょうが、それよりやはり、このままこの小説を葬るのが「勿体なかった」んだろうと思います。 今井さんがいつも使う言葉で言えば、商業出版としての馬脚を現してしまったのでしょう。
「勿体なかった」というのは、この作品の学的価値を信じているからではもちろんなく(もしそうだとしたら ただの痴呆です)、売れるだろうという商品価値に於いてです。
だから、公に宣言することで話題にし、書評でなくまず記事にして耳目を集め、売ろうとしたわけです。つまり、転んでもただでは起きないくらいの商売根性ですね。
そして、それが逆に寝た子を起こして裏目に出たわけです。完全に想像力の欠如です。 ですから、「」の行ないは、名誉棄損ではなく、むしろ「営業妨害」と捉えたと言っていいのではないでしょうか。恥をかいたうえ、赤字を出したら、それは恐怖です。だから、幻冬舎津原泰水を排除した理屈とそんなに隔たりはないと思います。「飼い犬に手を噛まれた」という感覚も類似しているかもしれません
それにしても、「商売」は措いても、講談社がそうまでしてこの作品(つまり北条裕子)を守ろうとした理由が解せません。出版社としての責任なんて言うなら、ただのキレイゴトです。 
普通、剽窃に頬かむりして新人賞に応募してきて、それがあとで発覚したら、もう2度と付き合わないで終わりです。もしや、それが美貌(と噂される)女流作家だから、ちょっと普通でない関係が結ばれたのではと下衆の勘繰りすらしてしまいます。
まあ、これからは新人賞にしても、芥川賞にしても、ノミネート前に作者と面談して「盗用・剽窃」はないか確認する必要がありますね。まったくマンガの世界ですが、大学の学長が平気で捏造する時代ですから、その意識の低さには油断がなりません。

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3)【本日の一行情報】

富士通電通は、個人が自分のパーソナルデータを主体的に管理できるデータポータビリティ社会の到来に先駆けて、パーソナルデータを個人が自由に活用できる「マイデータ・マイライフ」と呼ぶ概念を掲げた活動として、パーソナルデータを活用したライフデザインの共同検討を開始した。
実証実験では、両社が参加者に自分自身のデータを自分の生活のために活用することを体感してもらうため、参加者が利用許諾した自身のGoogleカレンダーのデータを活用し趣味・趣向のデータをマッチングさせてライフスタイルを提案する。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2019049-0513.pdf

集英社の「週刊プレイボーイ」編集部がプロデュースした公式酒場「週プレ酒場」が5月31日をもって2年の期間限定営業を終え閉店する。
https://shinjuku.keizai.biz/headline/2796/

スポーツニッポンは5月14日付「佐藤浩市“首相揶揄発言”から…令和オヤジ場外ツイッターバトル勃発」で書いている。
「平成の時代は、故野村沙知代さんと女優浅香光代(91)の“ミッチーサッチー騒動”に代表される熟女バトルが世間を席巻した。令和が始まって早々に巻き起こったのは“昭和オヤジ”のバトル。その行方に注目が集まる」
https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2019/05/14/kiji/20190514s00041000104000c.html
マンガでしか読んでいないけれど「空母いぶき」の主役は憲法9条だよね。加藤典洋の「9条入門」(創元社)との併読をオススメしたい。
https://www.sogensha.co.jp/productlist/detail?id=3971

西日本新聞が5月14日付で「大牟田出身、早世の漫画家短編集 異例の9年ぶり重版 遺族奔走 映画も契機」を掲載している。
「福岡県大牟田市に生まれ、2008年に34歳で亡くなった漫画家三隅健さんの短編集『ムルチ』が、異例の重版を果たした。10年に初版本が発行されて以降、独特の作品世界に引き込まれるファンが徐々に増え、発行元の小学館が復刊を決めた。当初はヒットしたわけではない単発の小品が、同じ体裁で増刷されるのは極めて珍しいという」
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/509832/
「ムルチは人がさわると一週間で死んでしまうんで、あみで捕らなくちゃいけないんだ」
まあ、読んでみて下さい。
https://csbs.shogakukan.co.jp/book?book_group_id=11193

はてなは、講談社が5月13日に大型バージョンアップを実施したマンガサービス「コミックDAYS」アプリ版(iOS/Android)の開発を担当した。また「チケット機能」の導入により、アプリ版のさらなる収益向上を目指す。はてなでは、今回のバージョンアップ以降、「コミックDAYS」Web版に加えて、アプリ版の開発およびマネタイズ支援に取り組む。
https://hatenacorp.jp/press/release/entry/2019/05/13/180000

◎アップルは5月14日、「Apple TV」のアプリの提供を開始した。アプリ内から「Apple TVチャンネル」を購読可能で、直接オンデマンド視聴ができる。
https://ascii.jp/elem/000/001/858/1858182/
「TechCrunch Japan」が「日本版Apple TVアプリは映像検索ツールとして少し優秀」を発表している。
「早速、日本版をダウンロードしてみたが、結論を先に言うといまのところ日本ではAmazon Primeなどに勝てる要素はほとんどない。独自制作のコンテンツを多数揃え、年会費を払えばいつでも見られるAmazon Primeと比べるのは少々酷な話だが」
https://jp.techcrunch.com/2019/05/14/apple-tv-app/
真価が問われるのは有料サービスが始まってからのことだろう。

朝日新聞デジタルは5月14日付で「ユニクロとGU、顧客情報46万件に不正アクセス被害」を公開した。
「不正なログインが確認できた客のアカウント数は46万1091件。住所やメールアドレスのほか、クレジットカード情報の一部も流出した可能性があるという」
https://www.asahi.com/articles/ASM5G4D7VM5GULFA015.html

◎「アサジョ」が掲載した「羽生結弦が表紙の雑誌が“爆売れ”で完売書店続出!」によれば「婦人画報」6月号が売れているそうだ。ネットオークションでも、定価1200円の発売中の雑誌に1500円、2000円という価格がついているという。
https://asajo.jp/excerpt/72202

◎日販が発表した2019年のゴールデンウィークの書店売上動向は、前年比で雑誌が99.1%、書籍が100.7%、コミックが108.1%、開発品が121.5%、期間合計が102.4%となった。ゴールデンウィークの書店売上が前年を超えたのは、2016年以来である。
https://www.nippan.co.jp/wp-content/uploads/2019/05/GW20190509.pdf
トーハンも前年比2.3%増で、やはり2016年以来のことだ。
https://www.tohan.jp/news/20190509_1400.html

コンデナスト・ジャパンは、米国アカデミー賞公認・アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2019」のオフィシャルメディアパートナーに決定した。開催期間は5月29日~6月16日。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000567.000000930.html

◎「日経ビジネス電子版」に公開された「有名企業も買われる時代――新生ADKの理想と現実」は次のように書いている。
「ベイン傘下で数値管理を厳格化するADKの経営陣の姿勢からは、利幅の小さい仕事を積み上げてきたこれまでのビジネスを変えなければならないという危機感が透けて見える。しかし現場を強く締め付けすぎれば、同社の競争力の源泉である優秀な人材の流出につながるおそれもある」
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00039/050900004/?P=1
若手社員の「電通博報堂に対抗するため、利益率を下げてでもとにかく仕事を取り、受注後にどうすべきか考えるという働き方がADKには染みついている」という発言がすべてを物語っている。

テレビ朝日はインターネット広告配信の共同出資会社を設立する。同社が54%、KDDI子会社のスーパーシップホールディングスが20%、サイバーエージェントが10%、電通が8%、博報堂DYメディアパートナーズ(MP)が8%出資する。5月14日付日経「テレ朝、ネット動画広告の新会社 KDDI系などと」は次のように書いている。
「新会社はネット動画広告の買い付けと配信を手掛ける。電通と博報堂DYMPが広告主企業の獲得を担い、スーパーシップHDは消費者データを広告配信に生かしやすい形で蓄積するDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)を提供。広告はテレビ朝日の『テレ朝キャッチアップ』や、テレビ朝日やサイバーエージェントが共同運営するネットテレビ「アベマTV」などの広告枠で配信する」
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO4478604014052019X30000?s=0

新宿高島屋では7月18日(木)より28日(日)まで「特別展 りぼん 250万りぼんっ子 大増刊号」を開催する。
https://www.takashimaya.co.jp/store/special/event/ribbon_ten.html

ソニー・ミュージックエンタテインメントが運営する電子書籍トア「Reader Store」が、さだまさしオフィシャル「デジタルさだ書店」を5月15日(水)にオープンした。グレープ解散直後に刊行された伝説的なデビュー作「本 人の縁とは不思議なもので…」、映像化されたベストセラー「精霊流し」ほか、化放送「さだまさしのセイ・ヤング」から生まれたラジオ小説「ラストレター」など約30タイトルを揃えている。
https://www.rbbtoday.com/release/prtimes2-today/20190515/364115.html

◎これ小学6年生だって。
「何のために人は働くのかという答えは、夢を実現させるためと言っていましたが、ぼくはその仕事が楽しいからだと思います。自分が好きな仕事を楽しくすれば、いつかその仕事をすることが生きがいになっていくと思います。楽しい仕事は一つだけではなく、いくつもあると思うので、むりやり仕事を辞めさせられても、また、違った好きな仕事に就けると思います。ぼくはそれで良いと思います」
実業之日本社編集本部の鏡悠斗によれば、「いつのまにか忘れてしまった34の大切なこと」のなかで「なぜ働くのか」というテーマに対して小学6年生が言った感想だそうだ。
https://www.mag2.com/p/money/677684
http://www.j-n.co.jp/books/?goods_code=978-4-408-33748-7

◎「週刊春」では5月15日(水)16時、合成音声によるコンテンツ「聴くスクープ」の配信を開始した。「聴くスクープ」には、凸版印刷が提供するテキスト音声読み上げサービス「おまかせアナウンス 」を採用し、正確で流ちょうなナレーション音声でスクープを読み上げる。「おまかせアナウンス 」の日本語の合成技術には、エーアイが提供する音声合成ソフト「AITalk」(えーあいとーく)が採用されている。「春オンライン」のみならず、「週刊春」の公式ツイッターやYouTubeのチャンネルでも配信する。
第1弾は「10年で3回目 交通事故で高田純次(72)が被害者とトラブル」の速報。
https://bunshun.jp/articles/-/11928
できることは何でもやるという姿勢だよね、「週刊春」は。それこそ週刊誌らしい胃袋の強さだと私は思っている。

ダイヤモンド・ビッグ社の「地球の歩き方御朱印シリーズ」は累計35万部を突破している。「御朱印でめぐる九州の神社~週末開運さんぽ~」が5月15日に発売された。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000104.000010017.html

東急エージェンシーソフトバンク、シナラシステムズジャパンマイクロアドデジタルサイネージおよび Legolissは、交通広告の新しい価値を生み出すために、Wi-Fi アクセスポイントなどのデータを活用する実証実験を 2019 年 5 月下旬から実施する。
http://www.tokyu-agc.co.jp/news/2019/release20190513.pdf

◎TOKYO FMは、村上春樹のデビュー40年を記念した特別番組の収録に、150人を無料で招待する。村上春樹がDJを務める「村上RADIO」の関連イベント「村上JAM」として、6月26日夜に東京都内で実施するそうだ。
https://www.nikkansports.com/general/news/201905150000273.html

◎LINEショッピングは、連載50周年を迎えた「ゴルゴ13とコラボして、抽選で「ゴルゴ13」のオリジナルコラボグッズやLINEポイントが当たるキャンペーンを5月15日(水)から期間限定で開催する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001608.000001594.html

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4)【深夜の誌人語録】

迷ったならば中止せよ!