【文徒】2019年(令和元)7月9日(第7巻121号・通巻1541号)


Index------------------------------------------------------
1)【記事】「花とゆめ」元編集長の石原史朗が白泉社を退社 コンパスを起業!
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2019.7.9 Shuppanjin

1)【記事】「花とゆめ」元編集長の石原史朗が白泉社を退社 コンパスを起業!

花とゆめ」と「マンガPark」の編集長経験を持つ石原史朗が白泉社を退社し、コンパスを立ち上げた。こんなツイートを投稿している。
《本日7/1より漫画家と漫画作品をプロデュース&エージェントする会社を立ち上げました。花とゆめ、マンガParkの編集長を勤めていましたが、白泉社を退職し、起業しました。漫画家さん大募集中です!》
https://twitter.com/ishihara_compas/status/1145562106810396673
このツイートが大反響。石原はコンパスについて説明を始めた。
《コンパスへのフォロー、お問い合せありがとうございます!昨晩お問い合わせいただいたものが流れてしまったようで…汗 これから毎日、覚えている範囲の質問にお答えします。1)出版社か? 出版社ではありません。ご契約の作家・作品を、内容に適した電子書店やマンガアプリなどのデジタルプラット…》
《プラットフォームへ提供・販売に動きます。しかし原稿料や印税は弊社で大手並みにご対応致します。紙の雑誌やコミックスへの展開は、掲載相手と相談して考える予定です。花とゆめ編集長をしていたご縁で、色々な出版社と連絡を取れる関係におります。また、作品提供の依頼も受けています。続きは明日》
https://twitter.com/ishihara_compas/status/1146304162138693634
https://twitter.com/ishihara_compas/status/1146304366783057922
《見返して漏れに気づきました。エージェントだけではなく、長年の経験を生かして作品の打ち合わせもさせていただきます。心に残る作品作りをお手伝いしたいのが起業のスタート地点です。》
https://twitter.com/ishihara_compas/status/1146305844708950017
《皆様、新会社コンパスへのリツイートやいいね、ありがとうございます!お問い合わせいただいていることへのお答えの二日目です。 2)自分は女性向け漫画一筋で担当活動をしてきました。その分野に力を発揮できたらと考えています。また、青年部門に関しては別に実績確かな強力なスタッフがおります。》
《ですので、女性向け・男性向けの両面で作家・作品のプロデュース&エージェント活動をできるよう努めて参ります。》
https://twitter.com/ishihara_compas/status/1146665383367102464
https://twitter.com/ishihara_compas/status/1146665525449093120
《コンパスへのリツイートやいいね、ありがとうございます。お問合せへのお返事の3回目です。 会社の特徴に関するお問い合せに対して。コンパス立ち上げに当たりマンガアプリに手慣れた会社のサポートを受けています。紙の時とは違うデータ分析、作品宣伝に取り組める専門家がいます。また、自分は…》
《自分は花とゆめオンライン~マンガPark立ち上げ責任者を勤めておりました。その2つよりネットの世界では面白い作品の見つけ方が難しいという問題の解決にチャレンジします。》
《さらに早期に海外デジタル配信にも動きます。以前は出来なかったことが新会社になったことで海外配信にも動ける立場になりました。今ではアルド・エージェンシーさんのような会社などいくつか道がありますので、弊社で取り扱える作品はセールスに動きます。
https://twitter.com/ishihara_compas/status/1147002952202084353
https://twitter.com/ishihara_compas/status/1147003124080500738
https://twitter.com/ishihara_compas/status/1147003273141817345
《本日のツイートは、紙の数字が下がっていく中で、漫画家さんが作品作りに集中できる環境を整備したいという思いからの会社の行動方針です。電子書店での巻売り話売りに止まらず、Youtubeで動画風に仕上げて収入を得るなど漫画からの収入の得方は日々新しいものが出ていると思います。》
《デジタルの専門家にチームに入ってもらうことで、新しい漫画の展開の仕方に対応できる会社にしたいと思っています。それが作家さんを支えることに繋がると考えています。》
https://twitter.com/ishihara_compas/status/1147015484497203200
https://twitter.com/ishihara_compas/status/1147015524909383680
漫画のセレクトショップ「マンガトリガー」の企画・運営・開発を手がけているナンバーナインのCXOである小禄卓也が早くもアプローチしているぞ。
《もし弊社でもご協力できそうな事があれば遠慮なくおっしゃってください!》
https://twitter.com/coroMonta/status/1147007042558631936
ナンバーナイン電子書籍のコミックエージェンシーである。
https://no9.co.jp/

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2)【本日の一行情報】

◎ITエンジニアを120名も擁していることがKADOKAWAの強みであることに間違いはない。
KADOKAWAの組織体制を再構築し、組織全体の中軸にDX戦略本部を置き、DXの全体最適を図っていく。また、DXの遂行を加速させるべく、2019年4月にKADOKAWA及びドワンゴに在籍していたICT部門のエンジニア合計120名を集めて、新会社、(株)KADOKAWA Connectedを設立した。ITエンジニアが働きやすい業務・人事環境を新会社で提供することで、グループ全体のICT(情報通信技術)業務を変革、推進するだけでなく、業界最高水準のICTサービスを社内外に提供していく考えだ。同子会社のITエンジニアとしては、早期に200名体制まで拡大していく計画となっている。》
https://web.fisco.jp/FiscoPFApl/NewsDetailWeb?nwsId=0009350020190705031

佐々木倫子のマンガ「Heaven? ご苦楽レストラン」(小学館)が石原さとみ主演のTBS系列の火曜ドラマ枠で7月9日より放映が開始されたが、そのオリジナルスピンオフドラマが、本編放送後に動画配信サービス「Paravi」で独占配信される。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000065.000030674.html

欅坂46守屋茜のファースト写真集「潜在意識」(小学館)はオリコン週間BOOKランキング「写真集」ジャンルで1位を獲得した。公式ツイッターも立ち上がり、未公開カットを続々と公開している。
https://www.oricon.co.jp/news/2139350/full/
https://twitter.com/moriyaakane1st
https://twitter.com/moriyaakane1st/status/1147097792873025536

◎「SocialGameInfo」が「『MERY』運営会社が減資 資本金を11億円、資本準備金を4.9億円減らす 4月には電通も資本参加」を発表している。
https://gamebiz.jp/?p=242680

◎「AFPBB News」が「米メディアの人員削減、今年は過去10年で最悪の恐れ」を掲載している。
《この調査によると、映画、テレビ、出版、音楽、放送、紙媒体の報道などのメディア企業は、今年これまでに7775人の人員削減を発表。うち3600人以上を報道機関が占めた。前年(2018年)は、6月末までのメディア企業の人員削減数は6435人、通年では1万5474人で、うち報道機関は1万1878人だった。》
https://www.afpbb.com/articles/-/3233932

◎「東洋経済オンライン」は「自民党の斬新広告が若者をポカンとさせるワケ」を公開した。オジさんたちの(私たちの、か)世界では講談社女性誌「ViVi」とのタイアップ広告「#自民党2019」だけが話題になったが、この広告戦略のスケールはもっと大きく、「ViVi」の企画は、そのほんの一部分にしか過ぎなかった。安倍晋三総理と10代若者たちが共演する動画や安倍首相はじめ、7人の侍が描かれた天野喜孝によるイラストなど、こっちのほうが広告制作費も明らかにかかっているのだが、私たちのみならず若者たちもポカンとしてしまったようである。逆説的ながら一番突き刺さったのが「ViVi」とのタイアップであったのかもしれない。「原田」は若者研究家の原田曜平。「須藤」は須藤志央里で大学4年だそうだ。
《原田:僕が他でインタビューした大学生・高校生たちは、政治に親近感を持たせる試みとしてはいいけど、自分の好きな雑誌が自民党とコラボしたら「急にどうした?」と戸惑うと言っている人が多かったんだけど、もし須藤さんが愛読してる雑誌が同じことをやったらどう感じただろう?
須藤:うーん……それは残念な気持ちになるでしょうね。雑誌から心が離れると思います。
あと、私の周囲は全体的にネガティブな受け止め方でした。「『ViVi』買収されてんだな」「自民党にお金で丸め込まれてると思った」「イメージ戦略こわ」といった声が聞かれました。
原田:買収(笑)。買収ではなく、単なる広告行為なんですが、買収に見えるくらい大きなギャップがあった、って、ことなんだろうね。》
https://toyokeizai.net/articles/-/290204
渡瀬夏彦は「れいわ新選組」を支持している。ツイッターを見ればわかる。
《絶望的なこの国の状況には新しい風が必要。#山本太郎 に希望の光を見る。
#れいわ #れいわ新選組
全国誰でも、比例代表は #山本太郎 と書ける!
そして、東京選挙区は、絶対ぜったい #野原ヨシマサ !
#参院選 が面白くなってきた。》
https://twitter.com/natsuhikowatase/status/1147519210748125184
渡瀬夏彦は自民支持者に怒っている。
《全国の皆さん、辺野古新基地の是非は参院選の争点です。貴方が自民公明に票を入れるなら、それは沖縄の民意を踏みにじる意思表示です(怒)。》
https://twitter.com/natsuhikowatase/status/1147684380283826177
昨年、講談社の刊行物で売れに売れたのはケント・ギルバートの嫌韓嫌中本であり、今年は、『ViVi』が自民党とコラボ広告を出したことは周知の事実だし、やたら好戦的な絵本も話題になっている。
そんな講談社の編集部門のトップは渡瀬昌彦常務取締役であり、何度も書いているように渡瀬夏彦とは兄弟関係にある。この兄弟の「決闘」を見てみたいものである。それとも兄弟関係を既に「途絶」しているのだろうか。私などは「途絶」という言葉を使ったことはないが、万葉学者のご子息だけあって渡瀬昌彦常務は難しい言葉を使うのがお好きなようである。

毎日新聞出身の石戸諭が「Yahoo!ニュース」に「毎日新聞『リストラ』報道から考える、新聞記者の未来像」を発表している
《物は考えようで、毎日新聞がリストラしたところで、ネットメディアに比べても、雑誌に比べても圧倒的に多い記者と読者を抱えているのは紛れもない事実である。今までのルーティンワークを見直し、新しい紙面づくりを模索してみたらメディアとしての可能性はまだまだ広げることはできる。
記者個人にとっても今という時代は決して悪くはない。インターネットは記者を自由にし、記者という仕事が持つ可能性を拡張する。字数も自由、写真の枚数も自由、動画を組み合わせることもでき、読者に届けられるツールは格段に増えた。その自由さを生かせるかは考え方次第だ。》
新聞記者のみならず、出版の編集者にしても安易な悲観は戒めるべきなのである。むろん、同時に安易な楽観も戒めなければなるまい。
《現状、インターネットしか持たないメディアは経営規模的にも、取材網も新聞の代替にはなりえない。身の丈にあった経営ができているのはほんの一握りで、経済的に盤石なメディアはとても少ない。仮にネットメディアへの転職がうまくいっても、その先の保証は新聞社以上にないというところがほとんどだ。》
https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidosatoru/20190706-00133045/
「Abema TIMES」が「”200人規模の早期退職”報道に毎日新聞元常務『大間違いの判断。紙を止め、”通信社”を目指すべき』」を掲載している。若新雄純・慶應義塾大学特任准教授の「新聞社は"新聞を発行する会社"ではなく、"ジャーナリストがいる会社"になれば生き残れると思う」という発言が印象に残った。
https://abematimes.com/posts/7009415
あらゆるメディアが新聞社に「記事」を依頼できるようになれば面白いんだけれど…。

朝日新聞が7月6日付の書評欄で中島京子の「夢見る帝国図書館」(藝春秋)を取り上げている。評者は諸田玲子こう書いている。
《あいだにひんぱんに差しはさまれる帝国図書館の歴史は、著者の独擅場とでも言いたい。博学と奇想と融通無碍な愉しさに満ちている。なにしろ図書館が樋口一葉に恋をしたり、書架に収容された発禁本たちが学談議をしたり、上野動物園で脱走事件を起こした黒豹や、象の花子が語り合ったりするのだから。そしてそこには時代の波に翻弄された図書館をとりまく怒りや怨み、悲嘆が驚きが希望が絶望が創意工夫あふれるショートストーリーとして語られる。まるで手品だ。》
https://book.asahi.com/article/12515055
産経新聞で書評を担当したのは関口苑生
《図書館は、過去を知り未来を探る「知」の集積場でもある。そんな場を愛した人間と図書館の物語がやがて交差するとき、驚きの結末と感動が訪れる。》
https://www.sankei.com/life/news/190623/lif1906230021-n1.html
「ALL REVIEW」の書評は鴻巣友季子によって、こう書き出されている。
《明治に誕生した図書館と、江戸時代から続く上野の町と、昭和生まれの女性ふたりの歩みを綴った傑作小説だ。
本書中に「真理がわれらを自由にする」とある。本作は一つに、明治期に福沢諭吉の一声で誕生した「ビブリオテーキ」(図書館)が苦難の道を歩み、この一に辿り着くまでの歴史ロマンでもある。このパートは「夢見る帝国図書館」という作中作として、メインストーリーの間に挟まれていく。人々を見守る図書館を見守るような体だ。
二つに、本作は「書く人」たちの物語でもある。語り手は小説家志望の女性であり、プロとしてデビューし、成功していく。しかし「書く人」は彼女ひとりではない。帝国図書館をめぐるストーリーを書き重ねる人たちがたくさんいる。
三つめに、これは、図書館や古本屋につどう「読む人」たちの、「読む」ことで生まれ変わる物語でもある。》
https://allreviews.jp/review/3409
樋口一葉吉屋信子宮本百合子林芙美子ベアテ・シロタを登場させるセンスがステキだ。骨太にして繊細な小説なのである。来年の本屋大賞の有力候補だろう。4刷が決まったそうである。まだまだ売れて欲しい一冊である。
https://twitter.com/BunshunBungei/status/1145565508353134592
書店員の円香も感動している。
《今日、往復の新幹線で「夢見る帝国図書館」読んでたんだけど、なんで積んでたんだろうって後悔するくらい面白い。少し厚いけど、一気に読んでほしい。》
https://twitter.com/blueroseblues/status/1147491483605331968
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163910208

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3)【深夜の誌人語録】

目立つ必要はないが、信頼される必要はある。