【文徒】2019年(令和元)9月10日(第7巻164号・通巻1584号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】嫌韓とジャーナリズム 
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2019.9.10 Shuppanjin

1)【記事】嫌韓とジャーナリズム  

毎日新聞は9月7日付で金平茂紀による「週刊テレビ評嫌韓ワイドショー 憎悪あおり『数字』得る愚行」を掲載している。
《テレビ報道に長年携わってきた人間の一人として、何ともやり場のない恥辱を覚えている。「今はさあ、とにかく韓国をたたこう」。在京某テレビ局のワイドショーの制作デスクが定例会議の席で言い放ったそうだ。「数字(視聴率)取れるんだよね」。他国に対する偏見・差別や憎悪をあおって数字(視聴率)を上げる。公共の放送が決してやってはならない禁じ手だ。》
https://mainichi.jp/articles/20190907/dde/018/070/004000c?fm=mnm
私は、こういう金平の書き方が嫌いである。金平は「在京某テレビ局のワイドショーの制作デスク」と書く。少なくとも、どのテレビ局の何という番組であるのかは明らかにすべきだろう。
BuzzFeed News」が9月6日付で《「今こそ『嫌韓』あおり報道と決別しよう」 韓国をめぐる報道で新聞労連が声明》を公開している。
https://www.buzzfeed.com/jp/yutochiba/shimbunroren-seimei
新聞労連の声明は中央執行委員長の南彰名義で発表されている。こう書き出され、
《他国への憎悪や差別をあおる報道をやめよう。
国籍や民族などの属性を一括りにして、「病気」や「犯罪者」といったレッテルを貼る差別主義者に手を貸すのはもうやめよう。》
こう結ばれている。
《今こそ、「嫌韓」あおり報道と決別しよう。
報道機関の中には、時流に抗い、倫理観や責任感を持って報道しようと努力している人がいる。新聞労連はそうした仲間を全力で応援する。》
http://www.shinbunroren.or.jp/seimei/20190906.html
ノンフィクション作家の門田隆将は新聞労連のこの声明に批判的である。
新聞労連が「嫌韓あおり報道はやめよう」との声明を出した。タブーを作り偽善が特徴の新聞の労組らしい。韓国の権威ある学会レポートを論評した週刊ポストの記事がヘイトだそうだ。自ら表現の自由を圧迫する新聞労連。『新聞という病』は労組にも当てはまる。ご苦労様です。》
https://twitter.com/KadotaRyusho/status/1169917664556224513
「wezzy」が9月7日付で「日本全体が『在特会』のような現在、『嫌韓報道』に埋め尽くされた社会の危険性に気づいてほしい安田浩一インタビュー」を公開している。安田は日本社会全体が在特会化していると認識しているようだ。次のように語っている。
《日本社会全体がかつての在特会在日特権を許さない市民の会と同じような方向に進んでいるような気がしてなりません。
今回の「週刊ポスト」のなかでは<「嫌韓」よりも「減韓」、「断韓」を考える>というフレーズが使われていましたけれど、「断韓」なんていうのはもともと、在特会をはじめとする差別集団がが街頭で訴えるときに使っていた言です。それを「週刊ポスト」のようなメジャーな雑誌が使うようになってしまった。
ワッペンをつけたレイシストが街頭で叫ぶよりも、テレビや週刊誌のような主要なメディアが排外主義や対立を煽るような言葉を使うほうが、この社会には遥かに大きな影響力がある。実際、いまの日本社会はメディアが煽る空気感に引っ張られていっていますよね。
https://wezz-y.com/archives/69087
Yahoo!ニュース」は花田紀凱の「『週刊ポスト』は謝るな。」を掲載している。
《センセーショナリズムだとかなんとか批判するが、センセーショナリズムが少しもないジャーナリズムなんてあり得ない。雑誌の仕事は学者の研究論とは違うのだ。
ついでだが、ジャーナリズムの反対語は何か。マンネリズムだ。ジャーナリズムは常に新しい事象を追いかけるのが仕事だ。》
https://news.yahoo.co.jp/byline/hanadakazuyoshi/20190907-00141586/
下北沢B&Bにて「編集スパルタ塾」を手がけている菅付雅信はツイートでこう主張している。今週の「週刊ポスト」のメインは「韓国の『反日』を膨らませた日本の『親韓政治家』たち」である。
東京新聞に出稿された「週刊ポスト」の広告にウンザリ。相変わらずの韓国叩きとジジイの健康ネタとエロネタ。韓国問題で謝罪コメント出しておきながら、全然反省がない。思考停止だが性欲だけある最悪の頑固ジジイ雑誌。小学館にとってかつては稼ぎ頭だったかもしれないが、今は重荷でしかないはず。》
https://twitter.com/MASAMEGURO/status/1170892357270589440
仲俣曉生が「マガジン航」9月9日付で「表現の自由を支える『小さな場所』たち」を公開している。
《今回の場合、「週刊ポスト」の記事というよりは広告の言に対して上った著作家たちの批判の声が、それを受けて拙速に雑誌廃刊を求める声を生み出した。あいちトリエンナーレの場合、ネット上で流布したかぎりの「少女像」や「天皇像」に反応して政治家が無責任な発言を行い、展示空間の自由を圧迫した。この二つの出来事は、SNSという場を媒介にしており、構造的にはまったく同じものだと私は考える。》
https://magazine-k.jp/2019/09/09/editors-note-46/?fbclid=IwAR2-2SOfICodDo5fqYDwe3PDfajuKIkxfAlGI5KE8CJRfj5IYWxTgN-8XiM

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2)本日の一行情報

集英社が運営する漫画投稿・公開サービス「ジャンプルーキー!」は、「黒子のバスケ」「ニセコイ」「ぼくたちは勉強ができない」などの立ち上げを担当した「週刊少年ジャンプの元ヒットメーカー編集者であり、現在はキャラクタービジネス室副室長をつとめる齊藤優による漫画技術講座ブログ「元週刊少年ジャンプ編集者が漫画家から学んだことを書いていく」を開設した。
https://www.oricon.co.jp/news/2143849/full/
第1回は「『こち亀』のスゴさは『一致』の技術にあった!1秒で漫画が読みやすくなる方法」。
《自分の経験で言いますと、描いた漫画が「わかりにくい」と言われている場合、多くは「絵とセリフが一致していない」のが原因です。》
https://www.shonenjump.com/p/sp/2019/saito_blog/blog/001.html

◎「J-CASTニュース」が9月5日付で公開した「錦戸退所、『発表』から2時間後に相次ぎ報道 主要メディアの配信時刻を振り返る」は、こう書いている。
《確認できる範囲の主要メディアで「退所」をいち早く報じたのは朝日新聞で、配信時間は16時31分だった。この記事はほどなく、ヤフー(Yahoo!)ニュースのトピックス(ヤフトピ)に載った。
以降、「18時前」組をみると、17時4分(産経新聞)、17時15分(ハフポスト日本版)が続いた。J-CASTニュースは、ファンクラブ公式サイトでの発表内容に加え、ファンのネット上の反応も交え、17時21分に伝えた。この間、ツイッターなどネット上では錦戸さんの退所関係の情報や話題が多数飛び交っていた。
https://www.j-cast.com/2019/09/05366839.html

講談社OBの大村彦次郎が8月30日に亡くなっていた。下咽頭がんだったそうだ。昨年だったか、その前年だったか、大衆学研究会神奈川支部の講演会に出ていただき、その後、横浜で飲んだことを思い出す。大村は「時代小説盛衰史」で大衆学研究賞を受賞している。
https://www.asahi.com/articles/ASM9556NJM95UCVL01S.html

毎日新聞が9月5日付で「返品枠付き『買い切り』方式 需給バランスみて適正配本 徳間書店・平野健一社長に聞く」を掲載した。
《書店から出版社への書籍の返品率が約40%と高止まりするなか、書店が出版社から書籍を購入し販売する「買い切り」方式が注目されている。カルチュア・コンビニエンス・クラブCCC)傘下の大手書店TSUTAYA(東京都渋谷区)が進める返品枠付きの買い切り方式に参加中の同グループの徳間書店品川区)、また、雑貨店など書店以外の業態に本の「買い切り」を仲介するラクーンコマース(中央区)を取材した。》
https://mainichi.jp/articles/20190905/dde/014/040/001000c

宣伝会議は、書籍「雑誌広告2.0」を発売した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000236.000002888.html

◎日刊スポーツが9月6日付で「矢野未希子『VERY』表紙モデルに タキマキ後継」を掲載した。
《…「タキマキ」ことモデル滝沢真規子(41)が、11月7日発売の12月号を最後に、10年間務めた同誌カバーモデルと専属モデルを卒業することをインスタグラムで発表。矢野は後を受け継ぐ形で、12月7日発売の1月号から、年間を通して表紙に登場する。》
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/201909060000454.html

◎ぴあMOOK関西「神戸の本当」が発売された。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001330.000011710.html

◎「CNET Japan」は9月6日付で「Facebookの出会い機能、米国でも提供開始--2020年には欧州へ」を公開している。
Facebookは米国時間9月5日、出会い機能「Facebook Dating」を米国で提供開始し、2020年初頭までに欧州に拡大すると発表した。2018年5月に同社の開発者会議で発表されたこの機能は、カナダ、メキシコ、シンガポールなど19カ国で提供されている。Facebook、最終的には同サービスを世界中で提供する計画だ。》
https://japan.cnet.com/article/35142287/

エムオン・エンタテインメントは、「andGIRL」「mamagirl」ブランドを中心とした中国市場向けインバウンド施策メニューを新たに販売することを決定した。
https://www.atpress.ne.jp/news/192833

◎国立映画アーカイブ7階展示室で、「映画雑誌の秘かな愉しみ」が、9月7日より開催中(12月1日まで)。この展覧会のタイトルはルイス・ブニュエルの傑作「ブルジョワジーの秘かな愉しみを踏まえてのことだろう。「出版人 広告人」でお馴染み、高崎俊夫トークイベント「戦後、映画雑誌の黄金時代をめぐって」(with佐藤忠男)は10月19日!
https://mainichi.jp/articles/20190906/mog/00m/040/009000c

産経新聞は9月5日付で「経営危機の『大宅壮一庫』 “パトロン”に大物続々」を掲載している。
《…デヴィ夫人は8月、大宅庫を支援する「パトロネージュ」代表に就任した。パトロネージュとは英語、フランス語で「支援」「激励」を意味し、協力者は1回500円の入館料が免除になったり、研究員の肩書が贈られたりする。呼びかけ人には作家の阿川佐和子さん、元都知事猪瀬直樹さん、ジャーナリストの田原総一朗んらが名を連ねる。》
https://www.sankei.com/premium/news/190905/prm1909050002-n1.html

◎「プレジデント・オンライン」が9月6日付で「部数減でも日本の新聞社に『危機感がない』ワケ」(マーティン・ファクラー 元ニューヨーク・タイムズ 東京支局長)を掲載している。
《毎年1月に日本新聞協会が発表する新聞発行部数を見て、さまざまな意味で驚きを覚えずにはいられない。2018年10月時点の総発行部数は、前年同月比で約5.3%、222万6613部減の3990万1576部。14年連続で減少を続けてきた結果として、初めて4000万部の大台を割り込んだ。このままならばアメリカと同じ状況、経営危機や倒産ラッシュという事態を迎えても何ら不思議ではない。
それでも日本の新聞社からはなぜか深刻さが伝わってこない。なぜなら不動産事業が、いまや新聞出版事業を上回って収益の柱になっているからだ。》
https://president.jp/articles/-/29765
日本の新聞社であっても、不動産事業に依存できない新聞社は深刻な経営危機なのである。

◎高研は「琉球新報が挑んだファクトチェック・フェイク監視」琉球新報編集局編著)を刊行する。
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-985003.html

◎「BLOGOS」が9月6日付で池本孝慈の「映画と広告と寅政権」を公開している。
《僕は韓国は広告国家だと思っている。韓国は国際的な広告・広報戦略に長けているという意味だ。さらに言えば、軍事力と同じように広告・広報という手段を使いこなしているということだ。その成功体験も数多くある。直近ではWTOでの福島県産海産物の輸入規制についての日本からの訴えによる審議の勝訴だろう。その点では日本は遅れをとっている。それはやはり敗戦国としての自制が働いているのだろうとも思う。自著でも第三章「倫理なき広告とプロパガンダで論じたが、国家から見れば広告は軍事力の一部でもある。その行使に自制的になるのは仕方がなかったことなのかもしれないが、今後はそうも言ってはいられないだろう。》
https://blogos.com/article/402566/?p=1
池本孝慈は財界展望社から「超広告批評」を刊行したばかりである
https://www.facebook.com/254202131294661/photos/a.305379219510285/2432582260123293/?type=3&theater

主婦の友社は「たのしい傭兵団」シリーズは、これまでヒーロー庫として配信していなかった1~4巻に加え、書きおろし新刊第5巻も9月5日に同時配信した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000954.000002372.html

◎日経は9月6日付で「ウエルシア、宝島社と共同開発のエコバッグ」を掲載している。
《ウエルシアホールディングス(HD)は宝島社(東京・千代田)と共同で開発したエコバッグの販売を始めた。北欧をイメージした柄が特長。ウエルシアHDは2025年までにプラ製のレジ袋を全廃すると宣言、レジ袋を持参した人にポイントを付与する優遇策に取り組む。宝島社のプロデュースするブランドを生かし、エコバッグの定着を目指す。》
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49494250W9A900C1000000/
宝島社は良いところに目をつけたものである。

小学館の「美的」と「DIME」の両誌による男性向け美容プロジェクト「メンズ美的」は10月26日に日の出ふ頭に誕生したばかりの新施設「Hi-NODE(ハイノード)」を会場にして秋の美容フェスを開催する予定だ。
https://dime.jp/genre/768025/

トランスコスモスは、9月7日(土) ~ 21日(土)に開催している「第41回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」に協賛している。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000862.000000183.html

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3)【深夜の誌人語録】

按配と忖度は違う。