【文徒】2019年(令和元)10月4日(第7巻180号・通巻1600号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】化庁「あいトレ補助金不交付」独断決定に美術家らが反発
2)【本日の一行情報】
3)【人事】世界化社 10月1日付機構改革と人事異動
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1)【記事】化庁「あいトレ補助金不交付」独断決定に美術家らが反発(岩本太郎)

 朝日新聞デジタルは「トリエンナーレ補助金の審査委員が辞意『審査意味ない』」を掲載している。
化庁が「あいちトリエンナーレ2019」への補助金全額不交付を決めた問題で、補助金採択についての審査委員会の委員を務めていた、野田邦弘・鳥取大特命教授が2日、化庁に辞意を伝えたことがわかった。野田さんは「一度審査委員を入れて採択を決めたものを、後から不交付とするのでは審査の意味がない」と話している。》
https://www.asahi.com/articles/ASMB26F5FMB2UCVL01J.html
政府・自治体等の資金を原資とする公的資金助成事業に際し、助成決定の公正性・客観性・妥当性を高めることを目的に委嘱される、いわゆる「外部審査員」として審査に携わった化・芸術各分野の専門家、および助成制度運用の実務を始めとする行政の経験者、ならびに助成制度の研究者が「あいちトリエンナーレ2019不交付決定に対する声明」の「共同署名者」および「賛同者」の署名を募集している。共同署名者561名・賛同者368名の計929名に達した。
《しかし私たちの調査の結果、化庁は「採択事業への全額不交付」という重要な決定をするにあたり、本件「日本博を契機とする化資源コンテンツ創成事業(化資源活用推進事業)」の外部審査員で採択事業の選定時の審査をした任期中の6名(氏名未公表)に対し、採択後の不交付決定前の審査で意見聴取を一切行わずに、化庁内部のみで全ての審査を行ったことがわかりました。
「採択後の全額不交付決定」という事自体が異例ですが、このような重大な決定にあたり、任期中の外部審査員からの意見聴取をあえて行わなかったことはさらに異例中の異例です。これは単に化・芸術分野の公的資金助成の審査事務の通例に反しているだけではなく、すべての公的資金助成の基本原則であり外部審査員の存在意義でもある「公正決定原則」に照らして不適切です。》
http://ensuringfairness.mystrikingly.com/
「クリエイターのためのアートマネジメント 常識と法律」(八坂書房)の著者である作田 知樹が中心になって作成された。作田はフェイスブックで次のように書いている。
《萩生田部科学大臣は、「わざわざテレビカメラを呼んで」不交付発表というパフォーマンス。これは一見すると省庁決定の説明ですが、根拠も実は不明確であり(「補助金適正化法等」としか言っておらず)その内実としては、省庁決定の発表の形式をとった、
与党政治家による芸術・学術クラスタへの挑戦状であり、「萎縮しておとなしくしておかなければ、どうなるかわかっているんだろうな。化芸術学術が対象にされて予測不能なテロが発生しても、たとえそれを誘発したのがデマや政治家の発言であっても、何か法的根拠さえ見つければ、国はテロした側に肩入れすることすらあるぞ。何せ俺らが住みやすい国にするんだからな。展示再開など許さない」というメッセージです。脅迫であり、ある種の「宣戦布告」としか受け取れません。》
https://www.facebook.com/tomoki.sakuta/posts/10156288077445059
中京テレビニュースが10月3日付で「『不自由展』公開質問状の回答なく名古屋市長が知事に督促状、負担金保留も」を公開している。
《「あいちトリエンナーレ」の企画展をめぐり、名古屋市の河村たかし市長は2日、愛知県知事に出した公開質問状への正式な回答がないとして、督促状を出したことを明らかにしました。》
https://www2.ctv.co.jp/news/2019/10/03/66929/
「ヴァティカンの正体 究極のグローバル・メディア」の岩渕潤子がツイッターで連投していた。
化庁の件、審議委員会の委員を辞任して、襟を正して取材に応じると言っておられた委員、名前が出たことでまた絡むネット民が出てくるのではないかと懸念しています。そういう行為が日常化しているのが今の日本。これは表現の不自由へと繋がる話でしょう。愛トリに特化した問題ではないのです。》
《あいちトリエンナーレの検証は、単に表現の自由の問題ではないだろうと感じ、最初の検証委員会に出かける日の朝、うちの弁護士さんに「もし私が意識不明の事態に陥った場合」についての申し送りをしてから出かけました。一部のネット上の反応から、相手にしているのはそういう人たちだと確信しました。》
《彼らは保守などではなく、ましてや右翼ではない。だとしたら彼らはいったいどういう存在なのか? 多くは今のこの日本の社会の中で深く傷ついた人たちであることに間違いはない。そういう人たちが怒りのやり場を毎日探している。その攻撃対象としての朝日新聞がある。でも、それは幻影の砦に過ぎない。》
《彼らが昭和天皇や彼らが考えるところの「日本的価値観」に殊更固執する理由は、そう考えると理解できます。それだけ凋落していく日本と共に運命を共にする以外選択肢がないことに危機感を持っているのでしょう。彼らにしてみると、朝日新聞の記者たちは多くの選択肢を持つエリートに見えるんでしょう。》
https://twitter.com/tawarayasotatsu/status/1179523296150245376
https://twitter.com/tawarayasotatsu/status/1179524995921281024
https://twitter.com/tawarayasotatsu/status/1179527881346568192
https://twitter.com/tawarayasotatsu/status/1179529530131668993
「WIRED」日本版は9月30日付で「検閲は、アートから何も奪えない:『あいちトリエンナーレ』を巡る議論と、ふたつの“自由”の衝突」を掲載している。
《・・・アーティストはヤワではないのだ。たとえこれから日本に管理の行き届いたサファリパークのようなアート展が続出したとしても、アーティストらは、より一層反抗し、創造し、皮肉をぶちまけるだろう。彼ら彼女らは決して囲って“飼う”ことのできない、野生の創造主なのだ。「あいトリ」は、日本のアートにスティグマを焼き付けたと同時に、アーティストに契機をもたらしてもいるはずだ。》
https://wired.jp/2019/09/30/art-and-censorship/
ウェブ版「美術手帖」が10月1日付で『化庁アートプラットフォーム事業』メンバーからも撤回求める声。化庁の補助金不交付決定で」、10月3日付で「化庁長官の古巣・東京藝大からも反対の声。教員有志が抗議を掲載している。
https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/20652
https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/20664
東京大学の教員有志も3日付で声明を発表。同庁に対し《展覧会を妨害する脅迫行為に実質的に加担し,再開に向けた愛知県の動きに不当に干渉しています》と批判している。
https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/20666
メディア・アーティストで東京藝術大学教授の藤幡正樹は、自らのサイトで「表現の不自由展・その後」中止に端を発した一連の問題についての論点を整理。末尾では補助金不交付問題に関し《森友学園や加計学園問題に連なる省庁をまたがるパワーゲームに発展したことを意味する。いったい誰が不交付を決めたのかをめぐって与野党の戦いが展開されるであろう》と予測。さらに次のような懸念を述べた。
《あいちトリエンナーレへの補助金は、「日本博を契機とする資源コンテンツ創成事業(化庁化資源活用推進事業)」という枠組みの中にあるものだが、この事業そのものにも問題があるように見える。今後ここにも批判が飛び火するのではないだろうか?と深く危惧する》
《ちなみに早くも、あいちトリエンナーレのページは、日本博の公式ページから削除されている》
http://www.fujihata.jp/aichi_issue/index.html
これは「レッド」山本直樹のツイートだ。
《私は芸術に関しては素人ですが、支持する人の多い少ないで判断するのは馬鹿だと言うことぐらいはわかります。
誰のためでもない、なんのためでもない、「ため」とか言った時点で終了でしょう。「ため」の外にある何ものか。
理解に苦しむなら勉強しな。そのあとになんか言って。》
https://twitter.com/tsugeju/status/1179415747451375617

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

 ◎プチ鹿島に「異議なし!」だ。新聞はタバコや酒と同じ嗜好品である。雑誌もそうだし、書物も嗜好品。だから止められないわけよ。「春オンライン」が掲載したプチ鹿島の「各紙は『新聞の軽減税率』をどう論じてきたか? 自信とプライドの『読売』、歯切れの悪い『朝日』、電子版はまさかの10%」に抱腹絶倒した。
《まず自身が軽減税率の対象となることに、まったく照れがなかったのが「読売新聞」だった。》
《一方、読売に比べてどこかモジモジしていたのが「朝日新聞」であった。》
《さて、新聞の軽減税率についてはもっと「なぞなぞ」がある。同じ新聞でも「電子版」は10%なのだ。》
https://bunshun.jp/articles/-/14390
これはインターネットらしい無料記事だ。「芸人式新聞の読み方」幻冬舎庫)からの一部抜粋なのである。

フリーランスジャーナリストの黒藪哲哉は「『押し紙』問題を放置して、 新聞に対する軽減税率の適用は異常」と自身のサイト『MEDIA KOKUSHO』で主張。《ビジュアルに広義の「押し紙」問題の実態を知らせる》として、ここぞとばかりにこれまで新聞販売店現場取材で記録してきた「押し紙」写真の数々を一気に掲載。
http://kokusyo.jp/oshigami/14336/
昨3日付の記事では、東京都江戸川区の広報紙の配布を請け負った同区の新聞販売同業組合が、区に対して新聞折込に必要な分量として発注していた広報紙の枚数データを情報公開請求で入手。同時期のABCデータと対比させることで水増しの実態を明らかにしている。
http://kokusyo.jp/oshigami/14351/

◎『現代ビジネス』にジャーナリストの松岡久蔵が「全国紙でも進む『リストラ・支局統廃合』新聞記者の苦悩と見えぬ未来」を寄稿。ただ、内容的には今や産経が合理化などで業界内の「最先端」を行く存在になったと皮肉も込めつつ、地域密着で「黒字化」した地方紙の実例として和歌山市で唯一の日刊地方紙「わかやま新報」のケースを紹介している。7年前に先代経営者だった父親のあとを継ぎ、35歳で社長に就任したという同紙の津村周はこんな取り組みを紹介している。
《以前の紙面は地域の出来事や事件といったストレートニュースメインだったんですが、新聞社最大の経営資源である『記者の記事制作能力』をもっと活かせないかと思い、オーダーメイドで結婚式や同窓会、新生児の誕生などに合わせた『プライベート新聞』を作る事業を拡大していきました。地道な事業に思われるかもしれませんが、それまで赤字続きだった弊社は、私が社長に就任してから3年で黒字化に成功しました》
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/67524

朝日新聞デジタルが10月2日付で「月5500円、地方紙電子版の勝算は 部数減り活路探る」を掲載している。香川県四国新聞の電子版「ビジネスライブ」は月額5500円だという。
《主にビジネスマンに営業ツールとして使ってもらうことを想定し、個人より法人の契約が多い。新聞記事を転載するだけでなく、県内企業の決算や新商品の発表、景気指標や倒産情報などを細かく報じる。
豊富な人事情報も売り物だ。県内の企業や行政の幹部ら約900人のデータベースを記事と連動させて提供し、記者が取材のたびにデータを更新。訃報(ふほう)記事も紙面に先駆けて載せる。》
https://www.asahi.com/articles/ASM8Z4QBJM8ZUTIL00W.html

ピースオブケイクは「note」の月間アクティブユーザーが2000万人を突破したと発表。特に1000万人突破を発表した今年1月末以降、たった8カ月間でほぼ倍増という勢いだ。
https://www.pieceofcake.co.jp/n/n5d13178ee40a

◎今年6月に脳卒中で倒れたノンフィクション作家の藤井誠二が無事回復した旨をロフトプロジェクトのウェブメディア『DANRO』で報告。救急入院した都内の病院からは当初1カ月に及ぶとされたところを8日間で退院。杖を突きながら大学での集中指導やトークライブにも通い、8月にようやく現住所の沖縄に帰ることができたそうだ。
https://danro.asahi.com/article/12746417

◎書評家・インタビュアーの吉田豪ちばてつや寺沢武一、魔夜峰央、小林まこと弘兼憲史といった漫画家たちを相手に雑誌『BUBUKA』で連載してきたインタビューシリーズが『吉田豪BUBKA流スーパースター列伝 レジェンド漫画家編』のタイトルで1日に白夜書房から刊行された
https://natalie.mu/comic/news/349777

吾妻ひでおが「失踪中」の野宿生活などでの体験をノンフィクションマンガとして描き、2005年にベストセラーとなった『失踪日記』、続編『アル中病棟』などがイースト・プレスから初め電子書籍化された。
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1910/02/news030.html

◎広告クリエイターの箭内道彦博報堂出身。後に独立して「風とロック」を設立)らが2015年に立ち上げた「渋谷のラジオで、東京コピーライターズクラブ(TCC)会員のコピーライターやCMプランナーが週替わりで登場する新番組『渋谷のコピーライター』が2日からスタートした。東京・渋谷周辺をエリアとするコミュニティFMで週1回(毎週水曜朝8時から)の放送だが、専用アプリでどこからでも聴取が可能だ。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000036.000003505.html

◎かつて『週刊現代』が元気だった1970年代に同誌記者の1人として活躍した平林猛が、関西生コン委員長の武建一を追った評伝『棘男』が展望社より10月15日に発売されることになった。
https://twitter.com/iwamototaro/status/1178180836790681600
また、平林のプロデュースで、相棒の杉浦弘子が同じく武建一を撮影取材し制作したドキュメンタリー映画『棘』もこのほど完成。10月17日に大阪でプレミアム公開の後、東京や奄美群島の徳之島、静岡、名古屋などで公開予定だ。語りは大久保鷹エンディング曲はPANTA頭脳警察)が担当。
https://twitter.com/iwamototaro/status/1178180836790681600

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3)【人事】世界化社 10月1日付機構改革と人事異動

〈機構改革〉

家庭画報、Begin、ワンダー・PriPri、e-BeginMEN’S EX-ONLINEの各ブランドに統括編集長を新設。

〈人事異動〉

秋山 和輝
新:取締役 専務執行役員 家庭画報ブランド事業本部 本部長(兼)家庭画報統括編集長
旧:取締役 専務執行役員 家庭画報ブランド事業本部 本部長

波多 和久
新:上席執行役員 マガジンブランド事業本部 本部長(兼)LaLa Begin編集部 編集長(兼)Begin統括編集長
旧:上席執行役員 マガジンブランド事業本部 本部長(兼)LaLa Begin編集部 編集長

大内 隆史
新:Beginブランド事業本部 Begin編集部 課長代理 副編集長
旧:Beginブランド事業本部 Begin編集部 課長代理

新井 紀一
新:広告本部 広告営業部 部長(兼)地方創生部 部長
旧:広告本部 広告営業部 部長

須藤 久美子
新:広告本部地方創生部 部長(兼)家庭画報グローバルビジネス部 部長(兼)広告本部 広告営業部 部長
旧:広告本部 地方創生部 部長(兼)家庭画報グローバルビジネス部 部長

平澤 香苗
新:デジタル事業本部 ネットビジネス部 課長代理 MEN’S EX ONLINE編集長(兼)e-Begin・MEN’S EX ONLINE統括編集長
旧:デジタル事業本部 ネットビジネス部 課長代理 MEN’S EX ONLINE編集長

飯塚 友紀子
新:ワンダーCS事業本部 副本部長(兼)ワンダー編集部 編集長(兼)ワンダー・PriPri 統括編集長
旧:ワンダーCS事業本部 副本部長(兼)ワンダー編集部 編集長