【文徒】2019年(令和元)11月7日(第7巻201号・通巻1621号)


Index------------------------------------------------------
1)【記事】「ところざわサクラタウン」2020年7月17日オープン
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2019.11.7 Shuppanjin

1)【記事】「ところざわサクラタウン」2020年7月17日オープン

KADOKAWA所沢市の共同プロジェクトとして進められてきた「ところざわサクラタウン」が、2020年7月17日にオープンする。
サクラタウンは、「角川武蔵野ミュージアム」「EJアニメミュージアム」「ダ・ヴィンチストア」「ショップ&レストラン」「ジャパンパビリオン」「千人テラス&中央広場」「EJアニメホテル」「武蔵野坐令和神社」「所沢キャンパス」「書籍製造・物流工場」から構成される。
隈研吾が建築設計を担当する「角川武蔵野ミュージアム」は多角形を組み合わせたデザインであり、内部は、1000平米の「グランドギャラリー」、高さ8メートルの本棚に囲まれた「本棚劇場」、荒俣宏監修の「驚異の部屋」、松岡正剛監修の図書空間「エディットタウン」などで構成され、3階には、日本のアニメを独自の切り口で紹介する「EJアニメミュージアム」が入る。
https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/20828
https://www.youtube.com/watch?v=oGGcysc_OHQ
https://tokorozawa-sakuratown.jp/
隈には「梼原町立図書館 雲の上の図書館」という作品が既に高知県に存在している。これがそうだ。
http://kumonoue-lib.jp/
http://kato-kobanashi.hatenablog.com/entry/2018/07/22/074433
東洋経済オンライン」は10月23日付で「カドカワ武蔵野線『東所沢』に拠点を置く背景」を掲載している。
《さらに興味深いのは「ところざわサクラタウン」で推進されていくのが、KADOKAWAならではの「コト」ビジネスだという点だ。「KADOKAWAのアニメ、ライトノベルラノベ)、ゲームなどのコンテンツIP(Intellectual Property=知的財産)から派生する体験を、レストラン、ホテル、イベントなどで提供し、お客さまに楽しんでいただく。それら体験を提供していくことをKADOKAWAの新事業の柱としていくのが、サクラタウンでの大きな目標です」(同氏)と言う。
https://toyokeizai.net/articles/-/309211
「同氏」とはKADOKAWA プロダクトマーケティング本部レクリエーション事業局渉外部部長の森好正である。鹿島建設株式会社関東支店ところざわサクラタウン新築工事事務所長の佐々木直也は「カドブン」で次のように語っている。
《工場、物流倉庫、オフィスとホテル、イベントホール、店舗、さらには美術館、博物館、図書館が複合した建築は、世界でも他に例がありません。》
https://kadobun.jp/feature/interview/149.html

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2)【本日の一行情報】

◎「WWD JAPAN.com」が11月7日付で発表した「編集長は先週何した? SDGs勉強会、『週刊春』編集局長取材、『ニナ リッチ』デザイナーと神楽坂、『カルティエ』展覧会へ」の「『週春』編集局長」とは新谷学のことである。新谷は相変わらずオシャレである。恐らく「ポパイ」少年であったに違いない。
その昔、私は藝春秋とマガジンハウスの合併という妄想を抱いていた。当時の藝春秋の田中健五(社長)やマガジンハウスの木滑良久(社長)も、それが理想であることは認めていた。マガジンハウスで現在、社長をつとめる片桐隆雄はその頃の話を覚えているはずだ。両社の社風は今もそうだけれど「自由」という点では似ているのである。
https://www.wwdjapan.com/articles/971535

朝日新聞デジタルが11月5日付で掲載した「『漫画村』星野容疑者を起訴 キングダムを無断公開か」によれば、著作権法違反という意味では「ワンピース」も「キングダム」も同じだが、細かく言うと「ワンピース」の場合は著者と版元に間に出版権の契約が存在することから、公衆送信権、出版権の侵害で起訴されたのに対して、「キングダム」の場合は公衆送信権の侵害のみのようである。
https://www.asahi.com/articles/ASMC37H97MC3TIPE017.html
東洋経済オンライン」が10月3日に発表した「続く無断投稿『漫画村』はなぜ繰り返されるのか 海賊版横行で日本の漫画化が破壊される」は読んでおきたい。
《なぜ違法アップロードが繰り返されるのか。自分の好きな漫画を多くの人に知ってほしいというファン心理もあるだろうが、大半は広告収入を得ることが目的とみられる。
ある出版関係者によると、海賊版動画のアップロードにより半年で2000万円以上の収入を上げたアカウントがあったという。これは、このアカウントで投稿された動画の合計再生回数が毎月コンスタントに370万回以上となり、動画視聴中に入る「インストリーム広告」などによって稼げる額だ。》
https://toyokeizai.net/articles/-/305656
星野路実容疑者と「漫画村」をテーマにしたノンフィクションを企画する出版社はないのだろうか。「時代」を切り取れるテーマだと思うんだよね。

◎「ツバキ具店」「食堂かたつむり」などの作品で知られる山形出身の小川糸にとって本屋さんといえば、「八字屋」だったそうである。「ほんのひきだし」に「八字屋とわたし」を寄稿している。私にとっては山形映画祭にお邪魔した際には必ず立ち寄る書店である。むろん、立ち寄るだけでなく本も必ず買った。
《この本店が完成したのは昭和43年で、今から思うと、八字屋はとても先駆的な本屋さんだった。何が先駆的かというと、まず、店内に喫茶店があった。2階の一部がガラス張りのカフェスペースになっていて、子どもの頃のわたしの夢は、いつかあの喫茶店で本を読みながらコーヒーが飲みたい、だった。
そして、もしかしたら今もあるのかもしれないけれど、わたしが中高生の頃は、店の裏口のところに植物を売るコーナーがあり、わたしはそこでよく、部屋に置く観葉植物を買っていた。そう、八屋は、わたしが生まれる5年も前からすでに本だけを売る店ではなく、今でいう複合型店舗として機能していたのだ。
今、全国の多くの書店で取り入れられているような試みが、すでにおよそ半世紀も前に、一地方都市にすぎない山形市で、出来上がっていたのである。八字屋に隣接する形で、プールという房具や雑貨を扱う店ができたのは、わたしが小学生の頃だった。》
https://hon-hikidashi.jp/enjoy/96735/
大手版元の営業マンに言いたいのは、地方に出張したならば、必ず店頭に立ち寄り、本を何冊か買って欲しい。

◎日本のアマゾンでも「置き配」の実証実験を岐阜県多治見市で開始した。「ITmedia」が「アマゾン『置き配』の衝撃 『お客様が神様で無くなった世界』で起こり得る“格差問題”」で次のように書いている。
《実際、使って見ると分かるのだが、置き配の効果はあまりにも絶大である。手渡しによる配達と比較すると、その効率の良さは比較にならない。荷物の配達時間を気にしながらスケジュールをやりくりしていた頃と比べると天と地ほどの差がある。ネット上で実際に利用した人の声を見ても、多くが置き配の効率の良さを絶賛している。
これは事業者にとっても同様で、基本的に再配達がなくなるので、従来とは比較にならないレベルで配達員の負荷は減ることになる。
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1911/06/news038.html
パッケージメディアは既に「置き配」だし、ファッション関連でも「置き配」のハードルは低いだろう。高額商品と食品・飲料を別にすれば「置き配」に移行するのに、それほど時間はかからないのではないだろうか。

山と溪谷社は、2020年2月下旬にライフスタイル誌「ウッディライフ」を復刊させるそうだ。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002976.000005875.html

◎メドピアは、5月28日に発表したリクルートメディカルキャリアとの業務提携に伴う共同事業として、医師専用コミュニティサイト「MedPeer」の医師会員向けにスポット(単発アルバイト)求人サイト「MedPeerスポット×リクルートメディカルキャリア」の提供を開始した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000216.000010134.html
https://medpeer.co.jp/press/6476.html
https://spot-rmc.medpeer.jp/

凸版印刷株式会社のグループ会社である総合電子書籍ストア「BookLive!」は、秋田書店の青年マンガ誌「ヤングチャンピオン」とタイアップした特設ページ「ヤンチャンLive!」 を11/5(火)から開始した。
「ヤンチャンLive!」では、11/5(火)発売の「別冊ヤングチャンピオン」で連載開始予定の「ばくおん!!」新シリーズ「ばくおん!! 台湾編」(おりもとみまな/太田ぐいや)、11/19(火)発売の「ヤングチャンピオン烈」で連載開始予定の「センセ」スピンオフ「初めてのセンセ。」(春輝)、「落日のパトス」スピンオフ「黄昏のエトス」(艶々)の3作品を、雑誌連載よりも先に1話早く読むことができるそうだ。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000072.000022823.html

朝日新聞デジタルは11月5日付で「来春のNHK朝ドラ、異例の脚本家交代『制作上の都合』」を掲載している。
《NHKは5日、来春放送開始の連続テレビ小説「エール」について、脚本家を当初予定していた林宏司さんから、清水友佳子さん、嶋田うれ葉さんと、演出担当の番組スタッフに交代すると発表した。》
https://www.asahi.com/articles/ASMC55D0GMC5UCVL018.html
体調が原因での降板ではないようである。とすればNHK林宏司の間に埋め難い「対立」が生じてしまったと考えるのが自然だろう。スポーツ報知は11月6日付で「NHK朝ドラ『エール』脚本家途中交代…林宏司氏と演出担当スタッフが関係修復不可能で」を掲載している。
《テレビ関係者によると、クランクインしてからほどなく、林氏と同局の演出担当スタッフが方針の違いで対立。その後は早い段階で、同スタッフが脚本を執筆していたという。2人の関係は修復不可能な状態まで悪化。他の番組スタッフや出演者も2人の不仲を知るまでになり降板に至った。》
https://hochi.news/articles/20191106-OHT1T50086.html

◎大広と日本インフォメーションは、18才前後の若者世代に注目したそれぞれの取り組みを発展させ、共同調査を実施した。その結果、次のようなことがわかった。
・ 「こづかい」の総額・使い道は、3年前と比べて中学生・高校生ともに減少。
・ 生活の中心は、スマホを見る時間。非日常は、友人との外出や買い物。
・ 顔の見える“人を介した情報”こそが、消費に影響を与える。
・ 身近な人物を手本としつつ、ロングテールにより多様化の一面も。
https://www.daiko.co.jp/dwp/wp-content/uploads/2019/11/191105_Release.pdf

白泉社が刊行している絵本「つまんない つまんない」の英語版(The Boring Book)が、2019年ニューヨーク・タイムズ最優秀絵本賞(New York Times Best Illustrated Children’s Book of 2019)に選ばれた!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000067.000046848.html

◎5周年を迎えた集英社の漫画アプリ「少年ジャンプ+」は、人気作品を集めた無料デジタル雑誌「ジャンプ+デジタル雑誌版」を11月5日に週刊で創刊した。創刊号は赤と青の2バージョンあり、それぞれ掲載作品が異なる(2号からは1冊に集約される)。「赤」が379ページ、「青」が347ページ。
https://www.oricon.co.jp/news/2147977/full/

◎2019年度グッドデザイン賞の「グッドデザイン・ベスト100」を受賞した“入場料のある本屋”「喫」が、受賞作の中から選出される「グッドフォーカス賞[新ビジネスデザイン]」を受賞した。
https://hon-hikidashi.jp/enjoy/97111/

ボイジャーからダグラス・ラシュコフの「ネット社会を生きる十か条──このままだと餌食になるだけ──」が来春刊行される。ラシュコフはフェイスブックの目的は友だち作りを助けてくれるのではなく、人間関係の収益化だと喝破する。
私たちはフェイスブックの顧客ではなく製品なのである。こうした事実がプログラムの向こう側に隠蔽されてしまっているのだ。目的を知らずにソフトウェアを使うことはソフトウェアに使われていることと同じなのである。発売が待ち遠しい!
https://www.youtube.com/watch?v=cdXxyJgDfJQ&feature=youtu.be
ダグラス・ラシュコフといえば「サイベリア―デジタル・アンダーグラウンドの現在形」(アスキー)だ。刊行されたのは今から四半世紀も前になるのか。翻訳は大森望だった。ニューヨーク市立大学クイーンズ校のデジタル経済学教授である。

主婦の友社は「ぐっすり眠れる、美人になれる!読むお風呂の魔法」を発売2週間で重版した。私も大の風呂好きである。
https://books.j-cast.com/topics/2019/11/05010145.html

小学館のWebメディア「和樂web」は、創業120周年を迎えた吉野家とのコラボ企画として、史上最高の牛丼用どんぶりの開発をスタートした。これに先立ち雑誌「和樂」12・1月号では、吉野家のどんぶりに込められた想いを公開する。開発したどんぶりは、吉野家公式通販ショップで2019年12月発売予定。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000428.000013640.html

ラグビーワールドカップ(W杯)で、11月2日に日本テレビで放送されたイングランド南アフリカの決勝戦の平均視聴率が、関東地区は20・5%だった。
https://www.sankei.com/sports/news/191105/spo1911050019-n1.html

共同通信は11月6日付で「ウィーン芸術展、公認撤回 原発事故や政権批判を問題視か」を配信した。
《日本とオーストリア国交150年の記念事業として同国の首都ウィーンで日本の芸術家らの作品を展示していた「ジャパン・アンリミテッド」について、在オーストリア日本大使館は5日までに公認を取り消した。東京電力福島第1原発事故や安倍政権を批判的に扱った作品などが問題視されたとみられる。》
https://this.kiji.is/564554631884637281
佐々木敦がツイートしている。
《これを世界の恥さらしと思わない政治家によって日本の芸術は衰亡に向かう。このままいくと公的助成は今後当てにならないかもしれない。だがニッポンはメセナも少ないしメディアも企業も規制や許認可や税制で縛られているからなあ、、ドネーションにしか希望はないのか。》
https://twitter.com/sasakiatsushi/status/1191977870656253953
千葉雅也のツイート。
現代アートの左派的メッセージは、これまでは十分注目されずに放置されてきた。いまや現代アートは隠れ蓑を失った。ではどうするか……》
https://twitter.com/masayachiba/status/1191877056952356864
流山児祥はフェイスブックにこう投稿している。
《おいおい、次々と「世界」に恥さらしているよこの低國は。》
https://www.facebook.com/show.ryuzanji/posts/1436002439882681
演劇人では鴻上尚史も呟いている。
《税金は国のお金ではなく、国民が出したお金です。国民は多様な人がいます。政権批判が認められないとしたら、政府を支持する人のみから税金を取るべきです》
https://twitter.com/KOKAMIShoji/status/1191922614752514049
会田誠は今回の件で傷を負ったのは日本という国だと明言している
《僕やチンポムのような民間で活動してるアーチストも、イタリア人のフリーのキュレーターも無傷。傷を負ったのは「日本」という国ですよ。そのキュレーターは今日、ヨーロッパの大手新聞2社のインタビューを受けたそうです。ヨーロッパの多くの人々がどのような記事を近々読むか、想像できますよね?》
https://twitter.com/makotoaida/status/1191965573644783618

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3)【深夜の誌人語録】

悩むのであれば諦めろ。諦めるのであれば忘れろ。忘れるのであればやり直せ。