Index------------------------------------------------------
1)【記事】学術会議任命拒否事件の全貌が見えてきた!
2)【記事】日本学術会議任命拒否事件に対する抗議声明、緊急声明
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2020.10.12 Shuppanjin
1)【記事】学術会議任命拒否事件の全貌が見えてきた!
スポーツ報知は10月8日付で「『news23』星浩氏、学術会議の任命拒否問題で政府側の『総合的、俯瞰的』の答弁に『この言葉では到底、納得できない』」を掲載している。
《スタジオでアンカーの星浩氏は、政府側の答弁で「総合的、俯瞰的」との言葉が繰り返されたことに「この言葉では6人が任命を拒否された理由は到底、納得できないと思います」と指摘した。
その上で「そもそも菅総理大臣は官房長官の時からどちらかというと国民を説得するというよりは強い言葉で押さえ込むというタイプだったんですね。典型的なのは加計学園の時に、怪文書だと断じたことがありますね」などとし「ただ、官房長官と総理大臣は違うので総理大臣は自分の言葉で国民を説得する責任がありますから、それに心がけてもらいたいと思います」と提言していた。》
https://hochi.news/articles/20201008-OHT1T50030.html
毎日新聞は10月8日付で「『非情な政界の黒幕』海外科学誌、主要紙が菅首相の学術会議任命拒否を批判」(和田浩明)を掲載している。
《東京大学公共政策大学院の鈴木一人教授(科学技術政策論)は、学術の独立や学界への政治の不介入という現代社会における「約束」が、なし崩しにされる危機感は諸外国でも持たれており「今回の事例も、学術に対する政治の介入として受け止められ、海外からの視線は厳しくなるだろう」と分析。「菅政権は、世界の受け止めは十分考慮しないまま進めたのではないか」と見る。》
https://mainichi.jp/articles/20201008/k00/00m/040/141000c
毎日新聞は10月8日付で「官邸、前学術会議会長を門前払い 選出根拠の説明要望に『会う必要ない』」を掲載している。
《日本学術会議が推薦した会員候補6人を菅義偉首相が任命しなかった問題で、2018年の補充人事でも、学術会議が事前報告した候補者に官邸側が難色を示していたことが関係者への取材で判明した。官邸は理由を明かさず、学術会議は当時の山極寿一会長が直接、候補選出の根拠を説明したいと約1年にわたって再三申し入れたが、拒まれ続けたという。最終的に補充を見送った。
16年の補充人事でも、官邸が学術会議に事前報告を求め2ポストの差し替えを要求したため、学術会議は補充を断念していた。》
https://mainichi.jp/articles/20201008/k00/00m/040/273000c
朝日新聞デジタルは10月9日付で「説明しない菅政権と絶対王政の共通点 任命拒否の科学史」を掲載している。科学史家で名古屋大学大学院教授の隠岐さや香はインタビューに応じ、《とても異常な事態で、とっさにフランスのブルボン王朝を思い浮かべました。王様が権力を振るうような前近代的な振る舞いというのが、最初の印象》だとしたうえで次のように語っている。
《・・・菅政権から説明があるかないかが非常に大事です。説明がないとなると、日本学術会議法の法解釈を争う必要が出てくると思います。学術会議はまだ菅首相から十分な説明を得ていません。このような手法が今後定着するようなら深刻な事態です。私自身は学術会議の連携会員でもありますが、万が一そうなったら、一研究者として抗議の意を表すため辞めることも視野に入れています。それくらい筋を通さないといけない問題だと思っています。》
https://digital.asahi.com/articles/ASNB74K3YNB2UCVL01B.html?iref=comtop_7_01
毎日新聞は10月9日付で「#排除する政治~学術会議問題を考える『次はここなのか』 岡野八代氏と考える任命拒否 杉田水脈議員発言との共通点」を掲載している。同志社大教授の岡野八代は次のように語っている。
《影響力の大きい与党の国会議員が、科研費申請の適正な審査を通った研究に関して「公費を使うな」という趣旨から述べることは、明らかな政治介入であり、先ほども述べたように、研究者のあいだに萎縮効果をもたらします。
学術会議の任命拒否が恣意的に行われることを許せば、次に影響を受けるのはこうした科研費などの研究費だと思います。政府による科研費のピアレビュー(同業研究者による相互審査)への介入などが起こりかねません。
研究者はどのような研究テーマや内容が政府に気に入られるか、あるいは意に反するかということを、研究プロジェクトの申請書を書くときに考えなければならなくなります。そうなれば、日本の学術研究は大きく後退してしまうでしょう。》
https://mainichi.jp/articles/20201008/k00/00m/040/197000c
政権が実現しようとしている「生政治」のアイドルが杉田水脈なのかもしれない。この科研費問題については、隠岐さや香も朝日新聞デジタルの記事の中で次のように語っている。
《技術革新と産業振興のために理系にとどまらず、文系の学問領域にも大型予算がつくようなケースも出てきました。これまでより学問と政治との関係を意識せざるを得なくなっています。今までは研究者間で配分してきた日本学術振興会の科学研究費(科研費)の評価にも外部の有識者の目を導入すべきだといった動きにならないかという不安が強まっています。専門家同士でないと判断できない領域がある、という社会的コンセンサスを維持する必要があります。》
しかし、維持するも何も、そのような社会的コンセンサスはない。首相は任命拒否をもって事態をスキャンダル化し、新たな社会的コンセンサスを作り上げようとしているのだ。首相には確かに教養はないかもしれないが、政治的には圧倒的に狡猾である。
「ABEMA TIMES」は10月8日付で「日本学術会議の任命拒否問題はアカデミズムを議論させるための菅政権の“トラップ”? 透明性・独立性を保つには…」を公開している。
《ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「菅内閣は不妊治療の保険適用や携帯電話の値下げなど、生活者目線の政策を打ち出していて、支持率も下がっていない。そういう中で関係者が騒げば騒ぐほど、左派系のアカデミズムの人たちと、“特権階級の偉い学者さんたちが騒いでいるだけ”と見てしまう一般大衆というポピュリズム的な分断が進んでしまう。
安倍政権も左派政党や左派メディアとガンガンやりあう一方、生活者が喜ぶ政策を打ってきたので、支持率はあまり下がらなかった。ひょっとしたら菅さんも策士で、特に任命拒否の理由はないが、同じような構図を狙ってやっている、いわば“トラップ”なんじゃないかという見方もある」と話す。》
https://times.abema.tv/news-article/8627643
村上陽一郎は「WirelessWireNews」に10月7日付で「学術会議問題は『学問の自由』が論点であるべきなのか?」を発表している。
《日本学術会議はもともとは、戦後、総理府の管轄で発足しましたが、戦後という状況下で総理府の管轄力は弱く、七期も連続して務めたF氏を中心に、ある政党に完全に支配された状態が続きました。特に、1956年に日本学士院を分離して、文部省に鞍替えさせた後は、あたかも学者の自主団体であるかの如く、選挙運動などにおいても、完全に政党に牛耳られる事態が続きました。》
https://wirelesswire.jp/2020/10/77680/
「F氏」とは福島要一であり、「ある政党」とは日本共産党である。日本戦略研究フォーラムのホームページに屋山太郎は「日本学術会議 首相、『6人任命せず』は当然」を発表している。
《1980年代の学術会議はまるで共産党の運動体だった。定員数は同じ210人。これを30委員会に振り分けるから一委員会7人ずつである。会員は学会に加わっている人の選挙。この中で常に選ばれる人物に福島要一という人物がいた。彼は第5部(原子力関連の委員会)に属していたが他の6人は福島の能弁に誰も反論できなかった。
その様を見て桑原武夫氏(京都大フランス文学)がある雑誌に「3人で210人を支配する方法」という皮肉な随筆を書いた。桑原氏によるとこの委員会は最初7人全員が参加していたが、福島氏が一日中喋っているから嫌気がさして、次回は3人になる。結局福島氏に2人は説得されて部会一致の採決をしてしまう。学術会議は50年と67年には「戦争に関わる学問には協力しない」と宣言した。
一連の運動は共産党の行動方針そのもので、改善策として人選のやり方を全く変えることにした。福島要一氏は農水省の出身で、共産党系学者に号令して毎回、当選してきた。この農業経済学者が日本の原発政策を主導したのである。加藤寛氏(慶大教授)の提案で投票は学会員たちだけにし、会員を選出する方法に改めた。》
http://www.jfss.gr.jp/article/1334
池田信夫は「アゴラ」に10月9日付で「学術会議は共産党の活動拠点だった」を発表している。屋山の指摘を池田は受け取って、次のように書いている。
《他方で自民党からは、学術会議を問題視する声が強まった。これを受けたのが、1983年の学会推薦制への改組である。このとき共産党は強く反対したが、中曽根首相は「内閣は推薦された会員を拒否しない」と約束して押し切った。
それでも1000以上の学会員の投票では左翼の活動家が選ばれる傾向が強く、2001年の省庁再編のときも学術会議の特殊法人化や民営化がテーマになったが、学術会議が反対し、総務省の下部機関となった。
2005年に学会推薦を会員推薦に改めたときも民営化が議論されたが、学術会議の反対で内閣府の直轄になった。予算も1990年代から10億円前後とほとんど変わらないが、2000億円の科研費の配分を左右する政治的影響力が強いため、政府機関としての地位を手放さないのだ。
活動家に乗っ取られた学術会議は政府の諮問機関として機能しなくなり、政府に答申したのは2007年が最後である。2017年3月には、軍事的安全保障研究に関する声明で防衛装備庁の委託研究に反対した。これが安倍政権が人事に介入したきっかけだろう。》
http://agora-web.jp/archives/2048446.html
新田哲史が次のように解説している。
《菅首相の本当の狙い。昨日からのメディアの論調みていると、佐々木俊尚さんが「外縁」を試掘し、屋山太郎さんが「中身」を掘り返しはじめ、池田が「本丸」を掘り当てた...という流れかな。》
https://twitter.com/TetsuNitta/status/1314394915707580416
「特定の党派」の学術会議に対する影響力は、かつてほど強くはあるまい。しかし、政権が進めようとしている憲法改正や防衛装備庁の委託研究に反対するような学術会議を前首相や現首相は欲していないのである。そうした反対を「共産党」なり、左派メディア、左派学者として一括りにして切り捨てることにさえ躊躇いはなかろう。気分はマッカーシズムなのかもしれない。
彼らの理想は政権の実現しようとしていることにアカデミズムの立場から協力する学術会議なのであり、それは前首相や現首相にとって学問の自由とは全く別問題なのであろう。学術会議の役割は政権に異を唱えることではなく、政権を補完することなのである。
北海道大学名誉教授・奈良林直は国家基本問題研究所のホームページに10月5日付で「学術会議こそ学問の自由を守れ」を発表し、こう書いている。
《一方、学術会議が力を入れているのが、「軍事研究の禁止」を旨とした防衛省関連研究の否定である。実例を一つ挙げる。北大は2016年度、防衛省の安全保障技術研究推進制度に応募し、微細な泡で船底を覆い船の航行の抵抗を減らすM教授(流体力学)の研究が採択された。この研究は自衛隊の艦艇のみならず、民間のタンカーや船舶の燃費が10%低減される画期的なものである。
このような優れた研究を学術会議が「軍事研究」と決めつけ、2017年3月24日付の「軍事的安全保障研究に関する声明」で批判した。学術会議幹部は北大総長室に押しかけ、ついに2018年に研究を辞退させた。
学術会議は、日本国民の生命と財産を守る防衛に異を唱え、特定の野党の主張や活動に与くみして行動している。優秀な学者の学術集団でありながら、圧力団体として学問の自由を自ら否定している。》
https://jinf.jp/weekly/archives/32608
こんなツイートも発見した。
《一連の報道で個人的に驚いたのは、全然注目されていないけど、過去に都市工学の西村幸夫先生も安倍政権で排除の対象になっていたこと。反自民の印象はないが、山口県の近代産業も入る世界遺産の推薦で難色を示したことが理由らしい。世界的に見れば、そこまで日本が凄いかは微妙なのでおかしくない意見》
https://twitter.com/taroigarashi/status/1314547532282826755
東浩紀の嗅覚は鋭い。こんなツイートを投稿している。
《日本学術会議については情報が出てきて、2016年あたりからすでに人事の調整をしていて、ついに今回学術会議が突っぱねて任命拒否となったことが明らかになってきた。学術会議はマスコミを味方につければ勝てると思ったのだろうけど、どうなるか。ぼくは政権は勝算ありで喧嘩を買ったのだと思いますね。》
https://twitter.com/hazuma/status/1314387456427347968
木村幹のツイート。木村も鋭い。
《学術会議の話は、現実にはほとんど形骸化していた組織に手を入れることで、研究者を刺激させて運動を起こさせ、この運動が世論の反発を呼ぶことを利用して、研究者を叩き潰す、という感じになってますね。》
https://twitter.com/kankimura/status/1314371427756171264
木村は静岡県知事の川勝平太が「首相の教養レベルが図らずも露見した。おかしいことをした」と発言したことについても次のようにツイートしていた。
《駄目だ、余計に普通の人たちからひんしゅくを買う。何でわからないんだ。悲しい。》
https://twitter.com/kankimura/status/1314325381642547200
逆に平井文夫のようなデマゴーグがお茶の間の喝采を浴びてしまうのである。たとえ、後で謝罪したり、撤回したりしても、学術会議に距離を置くなり、反発する空気を世間に醸成してしまえば、世論も支持すると首相やその周辺の官僚たちは踏んでいるはずだ。
産経新聞の阿比留瑠比も「世間」という言葉を使ってツイートしている。
《それにしても、日本学術会議の会員に選ばれなかった人がメディアで恨み言や政権批判をすればするほど、学者って何でこんなに偉そうなのかと思われるのが分からないのでしょうか。自分たちだけの狭い世界で優劣を競って自信をもたれても、世間には関係ないのに。》
https://twitter.com/YzypC4F02Tq5lo0/status/1314943156782133250
朝日新聞デジタルは10月9日付で「増幅する『学者への反発』 フジ解説委員や議員ら誤情報」(大野択生、宮田裕介 赤田康和、杉浦幹治)を掲載している。
《だが、平井氏の発言を紹介する投稿は5千回以上リツイートされ、「(学術会議の会員は)優遇されすぎじゃないか」といった反応が起きている。
NPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」理事長の瀬川至朗・早稲田大教授は、誤った情報の流布は「人々の学術会議についての認識を惑わせ、この問題に対する適切な判断ができなくなってしまう」と懸念。フジテレビは放送でのみ訂正、謝罪するのではなく、誤情報が拡散したネット上にも訂正が伝わるよう、SNSやホームページなどに投稿する必要があると指摘する。「SNSで情報の真偽を問わず拡散される時代だ。メディアがチェック機能を発揮しなければならない」》
《学術会議に関する同様の誤った情報は国会議員も発信していた。
自民党の長島昭久衆院議員は番組2日前の3日、「(日本学術会議の)OBが所属する日本学士院へ年間6億円も支出」「その3分の2を財源に終身年金が給付されている」とツイッターに投稿。のちに「学術会議と学士院を混同させ、学士院会員の終身年金にまで言及し、批判の矛先を逸らす結果を招いたことを反省し改めてお詫びします」と謝罪の投稿をした。
細野豪志衆院議員はこの投稿を引用して「日本学術会議OBの年金のことは知らなかった。国会議員年金はかなり前に廃止されたが、『学者の国会』の年金は残っていたのか」とツイートした。後に削除し、「日本学術会議OBと日本学士院の会員は構成が異なるため、先ほどのツイートは削除致します。確認せずに発信致しましたこと、お詫び致します」と謝罪した。》
https://digital.asahi.com/articles/ASNB96DFZNB9UTIL04N.html
詩人の河津聖恵がツイートで指摘している。
《あの上席解説委員は、視聴者のルサンチマンをよく知って体現しているんだなあ。ああいう扇動が、憎悪や差別を燎原の火のように拡げていくのだ。》
https://twitter.com/kiyoekawazu/status/1314860110825418754
朝日新聞デジタルは10月9日付で社説「学術会議問題 論点すり替え 目に余る」を掲載し、こう書いている。
《政府は、「学術会議から推薦された者は拒否しない」という過去の国会答弁に明らかに反することをしながら、理由を説明せず、答弁と齟齬(そご)はないと言い張ってきた。だがそれでは分が悪いとみて、学術会議の側に非があるという「印象操作」に走っているように見える。
しかも菅首相らの発言内容には誇張や歪曲(わいきょく)が多い。
たとえば首相は「会員が自分の後任を指名することも可能な仕組みだ」と、仲間内でポストを回し合っているように言う。だが実際は、新会員を推薦する際には性別や年齢、地域性などに配慮するようにしており、政府の有識者会議も5年前の報告書で「構成に大幅な改善が見られた」と評価している。
下村氏は「会議は07年以降、答申を出していない」と批判する。これも、政府が諮問していないのだから、答申が出ないのは当たり前だ。》
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14651912.html
「BuzzFeed News」は10月9日付で「日本学術会議が『中国の軍事研究に参加』『千人計画に協力』は根拠不明。『反日組織』と拡散したが…」(籏智広太)を公開している。
《任命問題で注目されている日本学術会議が「日本の防衛研究は認めないが、中国の軍事研究には参加する」という情報が広がっている。
これは、軍事転用への懸念などがアメリカで示されている中国政府による「千人計画」に対して、学術会議が協力している、という根拠のはっきりしない話が拡大解釈されたものだ。
自民党の甘利明・元経済再生担当相も同様の趣旨の指摘をしているが、学術会議は「軍事研究」への参加も、「千人計画」への協力を否定している。》
https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/thousand-talents-plan
「ネット右派の歴史社会学」(青弓社)の成蹊大学文学部教授・伊藤昌亮はこの「BuzzFeed News」の記事を引用ツイートしている。
《政府の横暴を支えているのは、知識人が気に食わないと漠然と思っている右派ポピュリズムで、彼らは知に対抗するために、陰謀論やフェイクなど、反知性主義的な手法を総動員してくる。上下に挟撃される知識人という構図は、不自由展のときと同じだが、今回はついに知そのものが賭け金とされている。》
https://twitter.com/maito1212/status/1314607860274270208
早川タダノリがリプライしている。
《まさに伊藤先生が『ネット右派の歴史社会学』で剔出された〈権威主義と反権威主義の結合〉〈権威主義的でありながら反権威主義的でもあるというスタンス〉が、政治権力の中枢まで侵蝕した果ての光景のようにも見ていました。》
https://twitter.com/hayakawa2600/status/1314627469236817921
毎日新聞は10月10日付で「ファクトチェック ツイッターで拡散『任命拒否6人、ツールで低評価だから学者と言えない』は誤り」(牧野宏美)を掲載している。
《日本学術会議の新会員候補6人を菅義偉首相が任命しなかった問題に関し、「6人を学術評価ツール『スコーパス』で調べたら全員低評価で、国際的にはとても学者とは言えない」とする内容の投稿がツイッターで広がった。このツイートは削除されたが、ネット番組でも同じ内容が紹介され、拡散している。しかし、スコーパス(Scopus)は英語中心の文献データベースで日本語の論文はほとんど収録しておらず、これを基に日本の人文社会系の研究者を評価するのは適切でなく、誤りだ。》
https://mainichi.jp/articles/20201010/k00/00m/040/006000c
たとえそれが虚妄であったとしても戦後民主主義の価値を嫌悪し、戦後民主主義の精神を一切認めようとしない右(=反革命)からの、まさに悪夢のようなアンタゴニズムスに私たちは直面しているのである。現首相にしても、前首相にしても、政権に耳の痛いことは聞きたくないのではなく、聞く必要が全くないと考えているのである。彼らの求めているのは彼らの実践する生政治に従属し、国防にも貢献する「学問の自由」なのである。
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2)【記事】日本学術会議任命拒否事件に対する抗議声明、緊急声明
日本出版者協議会は10月8日付で声明「政府による日本学術会議新会員候補の任命拒否に抗議する」を発表した。
《このほど、菅義偉首相は、日本学術会議が推薦した新会員候補6人の任命を拒否した。この6人に共通していることは、安保法制や共謀罪など政府の施策に批判的な言動をこれまでとってきたことである。そのため、これが任命拒否の本当の理由ではないかとみられている。
日本学術会議は、10月2日、この任命拒否について、内閣に対して①推薦した会員候補者が任命されない理由の説明、②2020年8月31日付で推薦した会員候補者のうち、任命されていない者の速やかな任命の2点を要望した。
日本出版者協議会(出版協)は、この任命拒否は憲法が保障する学問の自由や表現の自由を侵害する重大な権力濫用行為と考え、日本学術会議の要望に賛同するとともに、政府に対して速やかに回答し任命拒否を撤回すべきであると強く訴える。
菅首相は10月5日の記者会見で、任命拒否理由について質問を受けて、「個別人事に関するコメントは控えたい。総合的、俯瞰的活動を確保する観点から判断」したと述べるだけで、なんら具体的理由を示さなかった。任命拒否の説明責任を果たしたといえない。
政府は、10月6日、公務員選定罷免権に関する憲法の条文を根拠として、「推薦の通り任命すべき義務があるとまで言えないと考えられる」とする内部文書(2018年11月)を公開した。
これまでの「形だけの推薦制であって、推薦していただいた者は拒否しない。形だけの任命をしていく」という政府見解(1983年)の明らかな変更である。さらに重大なことは、国会や国民に説明しないままなし崩し的に法解釈の変更を行ったことである。
出版協は、こうした政府による憲法違反の行為の積み重ねは、立憲主義を蔑ろにするものであるとして、断固抗議する。
日本学術会議は、これまで、①科学の振興及び技術の発達、②科学に関する研究成果の活用、③科学研究者の養成などに関する方策について、政府にたびたび勧告してきたが、2017年、「軍事的安全保障研究に関する声明」を発表している。 これは、「安全保障技術研究推進制度」(2015年度発足)に対して、政府による研究への介入が著しいこと、その成果が時に科学者の意図を離れて軍事目的に転用されることなどを理由に、その危険性に警鐘を鳴らしたものである。
出版協は、日本学術会議が、今後もその設立目的である「科学が文化国家の基礎であるという確信に立って、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命とする」を堅持し、活動することを期待する。》
https://www.shuppankyo.or.jp/post/seimei201008
日本ペンクラブは10月8日付で日本ペンクラブ会長・吉岡忍名義の声明「全員を任命すべきである――政府の日本学術会議会員任命拒否をめぐって」を発表した。
《今般、菅義偉首相が日本学術会議の一部会員の任命を拒否したことは、学問の自由の侵害であり、言論表現の自由、思想信条の自由を揺るがす暴挙であることは明らかである。このような決定の背後に何があるのか、日本学術会議とアカデミズムがこれにどう対処するのか、私たちは当初から注視してきた。
この間、安倍首相、菅官房長時代の2016年、官邸は学術会議が提起した会員補充を認めず、2017年には、交代定数105名を超える名簿の提出を求めていたことが判明した。さらに2018年、「首相による任命は形式的にすぎない」としてきた従来の政府見解を、首相の公務員に対する指揮監督権を根拠に、「推薦のとおりに任命すべき義務があるとまでは言えない」として、根本的にくつがえしていたことも明らかになった。
国会審議も社会的議論もないまま進められたこれらの動きは、水面下での恣意的な法の解釈と人事によって政治をねじ曲げる手法そのものであり、すでに前政権の安保法制や検事長定年延長問題等でも世論の強い批判を浴びてきたところである。発足したばかりの菅政権のほぼ最初の仕事がこのような陰険なものであることに、私たちは暗澹とする。
私たち日本ペンクラブは菅首相に、今回任命しなかった6名について、その理由を具体的に開示することとともに、それができないのであれば、ただちに任命するよう強く求める。
また、今般の出来事は、政府に学問が従属し、多大な犠牲をもたらした戦前戦中の反省から出発した日本学術会議の存立に関わり、ひいては日本のアカデミズム全体の自由と独立性と使命にも影響する問題と言わなければならない。任期中の会員は広い意味での公務員として働くことがあるが、何より公務員は「全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」(憲法第15条2)。
私たちは日本学術会議の関係者および個々の会員がこの原則に立ち、さらに同会議法が掲げる「科学が文化国家の基礎であるという確信」に基づいて、この問題に毅然と対応することを期待したい。》
http://japanpen.or.jp/statement20201008/
出版労連(日本出版労働組合連合会)は10月7日付で「政府による日本学術会議会員の任命除外に抗議し、撤回を求める声明」を発表した。
《菅義偉首相は、2020年9月28日、日本学術会議第25期の発足にあたり、同会議が推薦した新会員候補105名のうち、6名を除外し、任命しませんでした。また政府は、その根拠と理由、および経緯を適切に説明していません。日本学術会議法を恣意的に解釈した任命除外は、同法に規定された同会議の独立性を脅かし、さらには日本国憲法の保障する「学問の自由」(第23条)を侵害するものであり、法治国家において当然遵守・履行されなければならない既存の法や民主的手続きすら無視し、「政権の都合」を優先した暴挙といわざるをえません。
日本学術会議は、1949年、第二次世界大戦での反省をふまえ、科学が文化国家の基礎であるという確信の下、行政、産業及び国民生活に科学を反映、浸透させることを目的として、政府から独立して職務を行う「特別の機関」として設立されました。会員選任については、長らく研究者による投票によっていましたが、1984年に学術団体による推薦制、2005年に同会議が「優れた研究または業績がある科学者のうちから会員候補者を選考し、首相に推薦するものとする」と変更されました。
1983年、同会議会員の選出制度が投票から推薦制度に変更となった際、政府は、国会で「推薦された者をそのまま任命する」と答弁しています。今回の任命除外は、この国会答弁と食い違うものであり、同会議の職務の独立性をふみにじるものです。「学問の自由」は、研究と教育の自由というだけではありません。この基盤となる大学やそれに準ずる学術研究団体の運営は、国家から干渉を受けないという制度的自律性をも意味します。
だからこそ、同会議は政府から独立して職務を行う「特別の機関」なのであり、今回の政府の任命除外は、「学問の自由」の侵害となるのです。
今回、推薦した候補者のうち任命が除外された6名の中には、「戦争法」(安全保障関連法)や「共謀罪」法(組織的犯罪処罰法)の問題点を指摘し、批判してきた研究者が複数名含まれていました。政府は、その理由を明らかにしていませんが、「政権批判をすればこのようなことになるのだ」という菅政権の強権的なメッセージと受け止めざるをえません。
公権力による、政府と異なる意見を表明する一部の研究者に対する選別や排除は、研究者全体の発言や研究テーマの選択に萎縮をもたらすだけでなく、社会全体をも萎縮させかねません。さらに、今回の任命除外は、「学問の自由」だけでなく、「法の下の平等」(第14条)、「思想及び良心の自由」(第19条)、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由」(第21条)の侵害にもつながりかねません。このままでは、公権力による抑圧と統制が、研究者の自律した研究活動だけでなく、社会全体の言論・出版・表現活動にもたらされることが懸念されます。
言論・出版・表現の自由は、民主主義社会の根幹であり、私たち出版関連産業に働くものにとって欠くことのできない産業基盤です。なによりも、研究者は、新たな学問的、文化的な価値、最新の科学的知見を読者に提供し、社会に議論を提起、醸成していくための大切なパートナーです。私たちの仕事を守り、発展させていくためにも、今回の任命除外を許すことはできません。
出版労連は、今回の任命除外について抗議し撤回を求めるとともに、首相が同会議の推薦通り、研究者の任命を行うことを強く求めます。》
https://syuppan.net/?p=2829
日本マス・コミュニケーション学会は10月9日付で「第25期日本学術会議新規会員任命拒否に対する声明」を発表した。
《内閣総理大臣は、第25期日本学術会議新規会員任命に際し、日本学術会議が推薦した会員候補者105名のうち6名を任命せず、その理由も公にしていない。この不透明な決定は、きわめて政治的、恣意的な判断のもとで研究者の選別が行われる状況を招き、人類社会のための学問研究の自由闊達な発展を妨げるものである。
日本マス・コミュニケーション学会は、内閣総理大臣による任命拒否とその理由開示拒否という異例の決定が学問の自由と言論表現の自由を侵すものであると考え、6名の会員候補者の任命拒否理由のすみやかな開示とともに、6名の会員への任命を求める。》
https://www.jmscom.org/20201009-statement/
自然史学会連合、日本数学会、生物科学学会連合、日本地球惑星科学連合、日本物理学会、他 90 学協会は10 月 9 日付で「日本学術会議第25期推薦会員任命拒否に関する緊急声明」を発表した。
《自然史学会連合、日本数学会、生物科学学会連合、日本地球惑星科学連合、日本物理学会、他 90 学協会は、第25期日本学術会議会員候補者の一部について、政府により理由を付さずに任命が行われなかったことに関して憂慮しています。従来の運営をベースとして対話による早期の解決が図られることを希望いたします。》
93学会の内訳は、こうなる。
《形の科学会、
個体群生態学会、
種生物学会、
植生学会、
水文・水資源学会、
生態工学会、
生命の起原および進化学会、
染色体学会、
地衣類研究会、
地学団体研究会、
地球環境史学会、
地理科学学会、
地理情報システム学会、
東京地学協会、
東北地理学会、
特定非営利活動法人日本火山学会、
日本サンゴ礁学会、
日本プランクトン学会、
日本ベントス学会、
日本リモートセンシング学会、
日本遺伝学会、
日本宇宙生物科学会、
日本衛生動物学会、
日本温泉科学会、
日本花粉学会、
日本解剖学会、
日本海洋学会、
日本貝類学会、
日本活断層学会、
日本気象学会、
日本魚類学会、
日本古生物学会、
日本昆虫学会、
日本昆虫分類学会、
日本細胞生物学会、
日本時間生物学会、
日本実験動物学会、
日本植生史学会、
日本植物学会、
日本植物形態学会、
日本植物生理学会、
日本植物分類学会、
日本神経化学会、
日本神経科学学会、
日本進化学会、
日本人類学会、
日本水文科学会、
日本生化学会、
日本生態学会、
日本生物教育学会、
日本生物地理学会、
日本生物物理学会、
日本生理学会、
日本雪氷学会、
日本藻類学会、
日本測地学会、
日本大気化学会、
日本第四紀学会、
日本蛋白質科学会、
日本地衣学会、
日本地学教育学会、
日本地球化学会、
日本地形学連合、
日本地質学会、
日本地震学会、
日本地図学会、
日本地理学会、
日本蜘蛛学会、
日本鳥学会、
日本動物学会、
日本動物分類学会、
日本農業気象学会、
日本農芸化学会、
日本発生生物学会、
日本比較生理生化学会、
日本比較内分泌学会、
日本微生物生態学会、
日本分子生物学会、
日本分類学会連合、
日本味と匂学会、
日本免疫学会、
日本薬理学会、
日本有機地球化学会、
日本陸水物理学会、
日本鱗翅学会、
日本霊長類学会、
日本惑星科学会、
日本哺乳類学会、
日本蘚苔類学会、
物理探査学会》
https://www.jps.or.jp/information/docs/seimei_scj202010091300.pdf
朝日新聞デジタルは10月9日付で「6人任命拒否を『憂慮』 自然科学系93学会が緊急声明」を掲載している。
《オンライン会見した自然史学会連合の大路樹生代表は「今回の任命拒否は学問の自由を脅かす。学術会議は多様性があり、独立しているからこそ必要な提言を出せる。政府に再考を願いたい」と述べた。地球惑星科学連合の田近英一会長は「学術会議と政府だけの問題ではなく、研究者全体にかかわる。(6人は人文・社会科学系だが)理工系からも声を上げたいと思って参加した」と話した。》
https://digital.asahi.com/articles/ASNB96QWZNB9ULBJ003.html
日本平和学会は10月10日付で「日本学術会議会員任命拒否に関する緊急声明」を発表した。
《日本学術会議の推薦した6名の会員候補が日本国政府によって任命を拒まれた件につき、2020年10月3日時点で、日本学術会議会長は幹事会の決定を経て、菅義偉首相に対して理由の説明と6人の任命をあらためて求める要望書を送付したと報道されています。平和をめぐる科学的研究を行い、学問的な発展に資し、国内外の学会やその他の関連諸機関とともに市民社会における知的交流を担うべき学術団体として、迅速かつ適切な事態の解明を望み、日本国憲法の謳う学問の自由と言論の自由が保障されるべきことを訴えます。》
https://www.psaj.org/%E8%AB%96%E8%AA%AC-%E5%A3%B0%E6%98%8E/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%AD%A6%E8%A1%93%E4%BC%9A%E8%AD%B0%E7%B7%8A%E6%80%A5%E5%A3%B0%E6%98%8E/
カルチュラル・スタディーズ学会は10月9日付で「第25期日本学術会議新規会員任命拒否に対する声明」を発表した。
《2020年10月1日の日本学術会議総会で明らかにされたとおり、菅義偉内閣総理大臣は、第25期日本学術会議新会員任命に際し、日本学術会議が推薦した105名の新会員候補者のうち6名の任命を、理由を一切明らかにすることなく拒否しました。政府から独立した科学者の「特別な機関」に対する、時の政権による恣意的な干渉は、多様な議論を排し、研究活動を萎縮させ、将来の学問の発展を阻害するものです。
カルチュラル・スタディーズ学会は、6名の会員候補者の任命拒否理由を速やかに開示するとともに、この6人を含む推薦された会員候補者全員の任命を内閣総理大臣及び政府に強く求めます。》
http://cultural-typhoon.com/act/jp/2020/10/statement-scj/
全国憲法研究会は10月9日付で日本学術会議の会員候補者6名の任命拒否問題について、声明を発表した。
《「日本学術会議の協力学術研究団体」である全国憲法研究会の運営委員会は、2020年10月2日付の日本学術会議総会の要望書を支持し、6名の会員候補者の具体的な任命拒否理由のすみやかな開示および6名の会員への任命を求める。》
https://twitter.com/zenkokuken/status/1314544246494392320
日本中国学会は10月9日付で「第25期日本学術会議新規会員任命見送りについての声明」を発表した。
《去る10月1日に発足した第25期日本学術会議において、同会議が推薦していた会員候補105名のうち6名が、菅義偉内閣総理大臣により任命を見送られた。この6名が任命されなかった理由、および他の99名と異なる評価をした基準について、政府が国民に向けて具体的な説明を早急に行うことを強く求める。》
http://nippon-chugoku-gakkai.org/
こうした声明は世間に届かない。ところで、日本学術会議 協力学術研究団体を謳っている日本出版学会は声明を出さないのだろうか。
http://www.shuppan.jp/
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3)【本日の一行情報】
◎哲学者・森岡正博のツイート。
《哲学など税金使わずに自費でやれという声を聞くが私はそう思わないね。私は反出生主義とその克服について税金を使って研究しているし成果の一部は出たが、もしこの研究が説得力あるものになったら将来この問題で悩む人たちの思考のツールのひとつとなる。公共的な知となるのだよ。道路みたいなものだ。》
《もちろん研究者は成果を他人が使えるとかを考えずに自分の問題意識だけで突き進むべきだという意見は正しい面があり私は賛成する。しかしそれとさっき述べたことは矛盾しない。》
https://twitter.com/Sukuitohananika/status/1314631118365237250
https://twitter.com/Sukuitohananika/status/1314631119313137664