【文徒】2020年(令和2)10月20日(第8巻194号・通巻1851号)


Index------------------------------------------------------
1)【記事】河崎秋子が「徳間書店」から待望の新作「鳩護」を刊
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2020.10.19 Shuppanjin

1)【記事】河崎秋子が「徳間書店」から待望の新作「鳩護」を刊

河崎秋子は、これまで出版された三作品すべてで学賞を受賞している。2014年に「颶風の王」で三浦綾子学賞を受賞し翌年デビュー、2019年「肉弾」(KADOKAWA大藪春彦賞を受賞し、2020年「土に贖う」(集英社新田次郎学賞を受賞している。
宮沢賢治学会理事の佐藤竜一は「颶風の王」について次のようにツイートしている。
《最近よく雑誌で名前を見ることが多い河崎秋子のデビュー作『颶風(ぐふう)の王』(角川書店)一気に読了。明治から平成にかけ北海道で馬と共に歩んだ家族の物語。三浦綾子学賞受賞作。読後しばらく感動の余韻に浸った。この著者は本物。他の小説も読んでみたい。》
https://twitter.com/12842987/status/1197430353641623552
朝日新聞デジタルは2019年3月20日付で「羊飼いの日々、作家への礎 大藪賞受賞・河崎秋子さん『肉弾』」を掲載している。河崎は羊飼い出身の小説家だが、朝日新聞の宮田裕介は「肉弾」について次のように書いている。
《物語は人間、熊、犬、それぞれの視点で同等に描く。「人間の視点のみで書くと、人間のエゴだけの話になってしまう」。熊や鹿が生息する森が身近にある。大自然を前に、人間がいかに無力で小さい存在か、幼い頃から知り抜いている。
複雑な感情を持つ動物を描写できるのは、小中学生の時、星新一新井素子さんらのSF小説を好んで読んだから、と分析する。「SFのおかげで、世界設定の閾値が広がったのかも」。留学中に何度も読んだ中島敦を尊敬している。》
https://digital.asahi.com/articles/DA3S13942364.html
原武史は「土に贖う」についてツイッターでこう書いている。
《河崎秋子『土に贖う』(集英社)は、ラッコやハッカなど、北海道でかつて繁殖したり多く栽培されたりしながらいまや廃れてしまった動植物に関わる人々を主人公とする短編小説集。この方法を応用して、北海道の炭鉱労働者や蒸気機関車の機関士を主人公とする小説も書けるような気がした。》
https://twitter.com/haratetchan/status/1175965657118040064
昨年末、朝日新聞斎藤美奈子は書評委員が選ぶ「今年の3点」で「土に贖う」を選び「廃れてしまった産業と働く人たちへの敬意が身に染みる」と書いている。
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14310826.html
河崎秋子が新作が注目されている作家のひとりであることは間違いあるまい。そんな河崎秋子が大藪春彦賞徳間書店から「鳩護」を上梓した。今度は鳩か!さよう、今度は鳩である。鳩を護る宿命を突然背負わされた女性の奮闘を描いているというのだ。興味津々というものである。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000296.000016935.html
鳩とは渋い動物に目をつけたものである。

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2)【本日の一行情報】

Amazonは、Amazonプライム会員を対象にした年に一度のビッグセールとなる「プライムデー」を、8月にインドにて開催し、その後日本を含め、アメリカ、アラブ首長国連邦、イギリス、イタリア、オーストリアオーストラリア、オランダ、カナダ、シンガポール、スペイン、中国、ドイツ、トルコ、ブラジル、フランス、ベルギー、メキシコ、ルクセンブルグという19か国において、10月13日0時から14日23時59分まで、48時間にわたって開催した。
日本では中小企業が大半を占める販売事業者の販売個数は約800万個となり、過去最大の売上となったと発表した。
また、日本での期間中には全ての商品カテゴリーにおいてセールが開催され、日本のプライム会員のユーザーは、総額約100億円節約したことになる。
最も売り上げの多かった商品カテゴリーは日用品・ヘルスケア用品、食品・飲料、ヘッドホン、ベビー用品、PCアクセサリーとなった。具体的に売れ筋商品を記すならば「【まとめ買い】ワイドハイターEXパワー 大 詰替え用880ml×2個」「Echo Show 5 (エコーショー5) スクリーン付きスマートスピーカー with Alexa、チャコール 」「【パンツ Lサイズ】パンパース オムツ 肌へのいちばん (9~14kg) 156枚(52枚×3パック) [ケース品]」「コカ・コーラ い・ろ・は・す天然水ラベルレス 560ml×24本 」などだ。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001204.000004612.html

コンデナスト・ジャパンとエクスペリサスは、コンシューマーに直接販売を行う「国内旅行事業」の「BtoC向け旅行プランの販売」と、広告クライアントに向けて提案する「BtoB向けイベント開発」の2つの分野にて、業務提携を行うことを発表した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000733.000000930.html

毎日新聞は10月17日付で「#排除する政治~学術会議問題を考える『甘い汁を吸えるような組織ではまったくない』学術会議前会員の本田由紀教授」を掲載している。
《菅さんは学術会議の年間10億円の予算についても会見で触れていますが、その過半は事務経費などで、会員は実際は交通費の実費や少額の会議出席の謝金で活動しています。多数の委員会や分科会が設置されているので、年度の後半には費用が足りなくなり会議の開催もままならなくなることもあります。お金がかかるような印象を与えて学術会議への不信感を作り出そうとしているのでしょうか。任命拒否の問題から、学術会議のあり方に国民の目をそらそうと、意図的に誤解を広げていると思います。》
https://mainichi.jp/articles/20201016/k00/00m/010/165000c
日本経済新聞電子版は10月18日付で大島三緒の「出口見えぬ学術会議問題 『知』への反発が増幅」を掲載している。
《デマやフェイクの混じった言説が飛びかい、学術会議が諸悪の根源であるかのような騒ぎぶりである。ふだんは気にも留めなかった組織への、異様な視線というほかない。
政治と社会それぞれの、こうした動きの背景にあるメンタリティーは何か。それこそ総合的、俯瞰的に言えば、学術や知性、教養といったものへのリスペクトの欠如、さらには反発や嫌悪だろう。》
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65108270W0A011C2SHB000/
早速、田中康夫がこんなツイートを発表していた。確かに大島は新聞業界屈指の知性と言ってもよいだろう。
《日経の良心 1面「春秋」担当 大島三緒論説委員が看破!
デマやフェイクの混じった言説が飛び交うが 6人の学者を何故どんな経緯で任命しなかったのか!? 不透明さを拭い 行き過ぎがあったら正さないと話は益々深刻になる 必要な改革も進まない 任命問題の局面は変わっていない》
https://twitter.com/loveyassy/status/1317993811927203841
学者の「政治」ではなく、首相の「知性」が問われているのである

毎日新聞は10月18日付で「#排除する政治~学術会議問題を考える『反対する人が中にいる方が健全』 有馬朗人元東大学長・元相」を掲載している。
《賛成派も必要だし、批判する人も必要。多少反対派がいたってよろしい。というか、むしろ健全だよね。そうしないと本当の意味で研究者の意見が学術会議の中に入らないと思うよ。思想的に右の人も左の人も中立な人もみんなの意見を反映しながら公平に運営することが大事だ。だから、そのことを少し、総理大臣もお考えになっていただけませんかね、というのが私の要望だね。今は黙っている人だって、政府の言う通りの人ばかりだと思わない方がいいよ。》
https://mainichi.jp/articles/20201018/k00/00m/010/043000c
有馬朗人は物理学者だが、東大総長や部大臣をつとめるなど学問にも政治にも関わって来たキャリアを持つが、俳句誌「天為」を主宰する俳人でもある。
あやとりのエッフェル塔も冬に入る
羽のある蛇を描きて日永かな
こんな句が頭に浮かぶ。

帝国データバンクは「広告関連業者の倒産動向調査(2020年1月~9月)」を発表している。これによれば、2020年1月~9月の広告関連業者の倒産件数は108件。広告関連業者の倒産はリーマン・ショックの翌年、2009 年の 258 件をピークに減少が続き、2014 年には 200 件を下回った。その後も減少し、2016 年には 114 件と低水準を記録したが、その後は増加に転じて、2019 年まで 3 年連続で前年を上回っている。2020年も9月までのペースで発生すると、4年連続で前年を上回る可能性があるという。
業種別にみると、「広告代理業」が57件(構成比52.8%)で最多となり、次いで「広告制作業」が 31 件(同 28.7%)、「ディスプレイ業」が 12 件(同 11.1%)と続いている。
負債規模別にみると、「5000万円未満」の小規模倒産が74件(構成比68.5%)で最多。以下、「5000 万-1 億円未満」が 17 件(同 15.7%)、「1 億-5 億円未満」が 16 件(同 14.8%) と続いた。 「1000 万円-5000 万円未満」は、2009 年時点では全体の半数程度であったが、近年は 7 割前後 まで上昇。対して、負債 10 億円を超える倒産は 2020 年には発生しておらず、50 億円以上に至っ ては 2011 年から発生していない。体力に乏しい小規模事業者を中心に倒産が発生している。
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p201006.pdf

産経新聞が10月17 日付で掲載している「【編集者のおすすめ】『崩れる脳を抱きしめて』知念実希人著 謎と衝撃と驚愕がある」で実業之日本社芸出版部の阿部雅彦は次のように書き始めている。
《「僕にしか書けない恋愛小説です」
現役医師でもある作家の知念実希人さんが自らそう語ったのが本作です。》
https://www.sankei.com/life/news/201017/lif2010170009-n1.html

◎ビジネス書大賞(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は「FACTFULNESS」(日経BP)に決まった。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000434.000018193.html

毎日新聞は10月17日付で「ファクトチェック 学術会議、中国との活動『覚書どおりに開催』は誤り」を掲載している。
日本学術会議が2015年に中国科学技術協会と交わした協力覚書について、大西隆元会長が「覚書を交わしたが活動実績はない」と説明した。この説明に対して、「その覚書どおりに中国科学技術協会と大阪大学東京大学東京工業大学名古屋大学が共同ユニットを度々開催している」という情報が、まとめサイトに投稿され、ツイッターで拡散されている。しかし、日本学術会議に問い合わせたが、これらは覚書に基づく事業ではなく、出典として示された中国語の案内には中国科学技術協会とは別NPO法人名が記されていることから、この情報は誤りだ。》
https://mainichi.jp/articles/20201017/k00/00m/010/110000c

集英社新書「人新世の『資本論』」が早くも4万部を突破!著者の斎藤幸平は次のようにツイートしている。
《11月2日の『人新世の「資本論」』刊行記念イベント、中沢新一さんと初めてお話するの、今からとても楽しみです!こちらもオンラインで、本購入しなくても参加できるので、全国から是非!》
https://twitter.com/koheisaito0131/status/1318024754096295937

◎「少年ジャンプ漫画賞」のツイート。
《「鬼滅の刃吾峠呼世晴先生も漫画賞投稿からデビューされました。投稿作「過狩り狩り」は主人公の顔を隠した意表をつく扉絵で、編集部が「1ページ目から気になる漫画が来た」とザワついたのをよく覚えています。下記リンクから無料で読めます!新世界漫画賞10月期も募集中!》
https://twitter.com/jump_mangasho/status/1317302400735039489
吾峠呼世晴の投稿作品「過狩り狩り」が読める!「鬼滅の刃」の原点だなあ。
http://jumpbookstore.com/client_info/SHUEISHA/html/player/viewer.html?tw=2&lin=1&cid=SHSA_ST01MOL013114001_57

◎トランペッターの近藤等則が亡くなった。ケラリーノ・サンドロヴィッチがツイートしている。
近藤等則さんが亡くなった。二度ほど軽くご挨拶した程度、それも前世紀の話で、ほぼ面識はない。けれど凄まじいトランペットを、幾度となく聴かせて頂いた。若い頃の偏狭な俺には興味をもてぬ類の音楽だったが、凄まじい音には否応なしに揺さぶられた。
御冥福をお祈りします。》
https://twitter.com/kerasand/status/1317840297414422529
これが近藤、最後のツイート。
《土曜日ユーチューブのコーナーがやってきました。
先週はビートルズかと思ったら、今週は気の抜けたコメントコーナー。
デイレクターの指図通りにやってます。》
https://twitter.com/kondotoshinori/status/1317445298663219200

朝日新聞デジタルは10月19日付で「菅首相の著書、改訂版が発売 公書管理の記述消える」(井上昇)を掲載している。
《今回の改訂版で削除されたのは、旧民主党政権運営などを批判した章。東日本大震災後の民主党政権の議事録の保存状態を問題視し、「政府があらゆる記録を克明に残すのは当然で、議事録は最も基本的な資料です。その作成を怠ったことは国民への背信行為」と書管理の重要性を訴えていた。》
https://digital.asahi.com/articles/ASNBM5RD7NBJUTFK00Q.html
日本の政治にとって「言葉」は、このように削除可能なほどに軽い存在なのである。

◎「論座」は元北海道新聞高田昌幸の「昔の内閣記者会は今よりはるかにマシだった~官邸権力との暗闘史」を掲載している。次のくだりは岸首相時代のことである。
《当時の記者らの回顧録を読むと、今と変わらぬ夜回り取材や懇談があったこともわかる。それでも、報道が国民の側に立って権力者に説明責任を求め、その行動自体を大きな記事とする姿勢は明確だった。今よりも記者の立ち位置がはっきりと見え、取材プロセス可視化も進んでいた。》
https://webronza.asahi.com/national/articles/2020101700003.html?page=1
中島みゆきの「時代」を無性に歌いたくなった。

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3)【深夜の誌人語録】

仕事において、まずは楽しいを優先したい。