【文徒】2020年(令和2)12月1日(第8巻222号・通巻1879号)


Index------------------------------------------------------
1)【記事】宮古島前市議が産経新聞を提訴した
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2020.12.1 Shuppanjin

1)【記事】宮古島前市議が産経新聞を提訴した

沖縄タイムスは11月26日付で「『記事で名誉が傷つけられた』宮古島の前市議、産経新聞を提訴」を掲載している。
《2017年に産経新聞がウェブサイトに掲載した記事で名誉が傷つけられたとして、前宮古島市議の石嶺香織さん(40)は25日、都内で会見を開き、同新聞社に220万円の損害賠償を求めるとともに、記事の削除を求める訴訟を東京地裁に提起したことを説明した。》
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/669225
琉球新報は11月26日付で「『記事で名誉傷ついた』元宮古島市議が産経新聞を提訴 きょう初弁論」を掲載している。
産経新聞の記事で名誉を傷つけられたとして、同社に記事の取り下げと220万円の損害賠償を求めた元宮古島市議の石嶺香織さん(40)が25日、東京地裁で会見を開いた。石嶺さんは「力の弱い個人に対する記事が誹謗中傷につながらないか検証してほしい」と訴えた。》
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1231281.html
石嶺が問題としているのは産経新聞が2017年3月22日付で掲載した「自衛隊差別発言の石嶺香織・宮古島市議、当選後に月収制限超える県営団地に入居」だ。こう書いている。
《市によると、市議の月収は約34万円。石嶺氏には1月と2月の給与として2月21日に税などを引いた約62万円が支給された。県営住宅の申し込み資格は、申し込み者と同居親族の所得を合計した月収額が15万8千円以下とされ、石嶺氏は当選前の平成27年度の所得に基づき入居が認められ、今年2月に入居した。
仲介業者が市議の月収を確認し、資格より大幅に上回るため入居するか確認したところ、石嶺氏は「住む所がないので1年だけ入居させてほしい」と答えたという。》
https://www.sankei.com/politics/news/170322/plt1703220017-n1.html
東京新聞は11月25日付で「【動画】『私が基地に反対する女性だから…』宮古島の前市議が記事削除求め提訴 産経新聞は『名誉毀損に当たらず』」(望月衣塑子)を掲載している。
沖縄県宮古土木事務所によると、市議になった場合でも入居許可は前年の収入で判断されるため、石嶺さんには「市議になっても入居は問題ない。今後、世帯収入が上がった場合は、3年後に収入超過者となり、明け渡しの努力義務が発生する」と伝えたという。
石嶺さんは、産経新聞の取材を受けていないとし、記事の「仲介業者が市議の月収を確認し…入居するか確認したところ、石嶺氏は『住む所がないので1年だけ入居させてほしい』と答えた」との部分については、仲介業者とそのようなやりとりをいっさいしておらず「事実無根だ」と否定している。》
https://www.tokyo-np.co.jp/article/70530
石嶺香織は「note」に11月28日付で「私が3年半経って産経新聞を訴えようと思ったわけ」を発表している。
《今回訴えた記事は、明らかな数字の間違いや私が言っていない発言などが記事にされて おり、誤解が広がったままでいることにとても苦しめられてきました。 記事はネットで全国に流れましたが、島の中で誤解が広がったことが私にとってはとてもつらく、実際の生活に悪影響を及ぼしました
3月22日に団地入居についての記事が出た直後には、団地の駐車場に鉄柱のついたブ ロックが置かれるなどの実害がありました。市議になったことで住所が公開されており、ネット上でも拡散されたため、安心して生活することができなくなりました。
ネット上では私が不正、不法に団地に入居したとの言説が広がりました。 ネット上には以下のような誹謗中傷が今でも残っています。
「資格がなくても不正補助を受ける議員が地方行政を担うことに問題がないと?」
「辞職当然だな 詐欺罪で逮捕も視野」
反日売国奴であり住む家もない」
また、今でも知人などに当時の記事を読んで記事の内容を信じていたと言われることもあります。 しかしこれまで、私自身が事実を伝えていく場はありませんでした。 》
そして、こうも書いている。
《私がなにより問題だと思うのは、産経新聞が自社の思想にそぐわない行動をする議員や市民に対して、社会的、政治的な影響を及ぼすことを目的として、事実と異なる記事を書くという手法を繰り返し、マスメディアの持つ権力を乱用していることです。》
https://note.com/timpab_kaori/n/n3eb8ebdf318d
「弁護士ドットコムニュース」は11月25日付で「『記事は全くの創作』産経新聞、訴えられる 元宮古島市議の県営住宅入居めぐり」を発表している。
《記事が出された当時、誹謗中傷が起こるなどしたことで、「精神的にもかなり疲弊し、産経新聞に抗議を送るだけで精一杯だった」とした(なお、抗議への回答はなかったという)。
また、市議でなくなったあとも、裁判を起こせば、その中傷やバッシングが再燃するおそれがあったという。「恐怖心がわきあがり、なかなか踏み切れませんでした」
しかし、「伊藤詩織さんや大坂なおみさん、MeTooの声をあげる女性たちの存在に励まされた」ことなどから、3年半の時間がたってから裁判に至ったと話した。》
https://www.bengo4.com/c_23/n_12046/
産経新聞は、沖縄報道で誤報が判明し、謝罪に追い込まれたこともあった。産経新聞は2018年2月8日付で「沖縄米兵の救出報道 おわびと削除」を掲載しているのだ。
《12月9日に配信した「危険顧みず日本人救出し意識不明の米海兵隊員 元米軍属判決の陰で勇敢な行動スルー」の記事中にある「日本人を救助した」は確認できませんでした。現在、米海兵隊は「目撃者によると、事故に巻き込まれた人のために何ができるか確認しようとして車にはねられた。実際に救出活動を行ったかは確認できなかった」と説明しています
記事は取材が不十分であり削除します。記事中、琉球新報、沖縄タイムスの報道姿勢に対する批判に行き過ぎた表現がありました。両社と読者の皆さまにおわびします。》
https://www.sankei.com/affairs/news/180208/afr1802080005-n1.html
沖縄タイムスは、産経の言わば「誤報」体質を批判した記事を掲載したことがある。2018年3月5日付の「産経、3記事とも当事者に取材せず痛烈批判 沖縄めぐるネットと新聞報道」がそうだ。三記事とは「<辺野古基地>抗議の市民逮捕を『朗報』」と報じたことであり、「<沖縄県の統計>観光収入を『過大に発表』」したことであり、今回の「<前宮古島市議>団地入居『月収制限超え』」報道である。
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/216274
渡瀬夏彦がツイートしている。講談社の渡瀬昌彦の弟である。
《石嶺香織さんの勇気ある訴えに敬意と賛意を表し、間違いだらけの記事を書いて石嶺さんの名誉を毀損した産経新聞には、当然ながら猛省と記事削除を求めます。》
https://twitter.com/natsuhikowatase/status/1332796809081708545

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2)【本日の一行情報】

◎ドキュメンタリー監督・五百旗頭幸男のツイートを紹介することから、今日のを始めることにしよう。
《7年あまり政権が重視してきたのは、見え透いた嘘をつき、嘘に嘘を重ね、周囲の忖度で正当化し、開き直りを繰り返し、破綻した言い訳で逃げ切ること。
こうした重視が、国会の軽視、説明責任の軽視、客観事実の軽視、記者の軽視、科学者の軽視、ひいては国民の軽視に繋がっている。
「はりぼて」だ。》
https://twitter.com/yukioiokibe/status/1333048978934353920

毎日新聞が11月29日付で掲載した「#排除する政治~学術会議問題を考える 新しい形態の学問弾圧『菅首相は歴史に名前が刻まれる』 木本忠昭・日本科学史学会会長」(岩崎歩)で、東工大名誉教授の木本は次のように警鐘を鳴らしている。
《今回は菅首相が「任命拒否」というわかりやすい排除を行いました。しかし、過去のように学説を直接攻撃しているのではありません。安保法制に反対していたということなどが推定されていますが、政府は表だって言いません。つまり、今回のように学術会議の会員にしないという方策で、外側から弾圧してきています。新しい形態での学問弾圧事件として、菅首相は歴史に名前が刻まれるでしょう。》
https://mainichi.jp/articles/20201127/k00/00m/010/282000c

毎日新聞が11月29日付で掲載している「『菅語』を考える 論理的でない受け答え『首相の器ではない』 上西充子法政大教授」は、誰もが薄々感じ始めていることを「国会パブリックビューイング」に取り組む上西充子がハッキリと口に出したのである。
《小池さんとのやり取りの中でも、加藤さんが代わりに答える場面がありました。これに小池さんが納得せず首相の答弁を求めるわけですが、直後に菅さんから出てきた言葉が「官房長官が答えたことと一緒」でした。当然、小池さんは「総理の言葉で答えてほしい」と反発するのですが、審議がしばらく中断します。この間に秘書官が答弁を書いているんですね。
それで、ようやく菅さんが答弁するのですが、内容は加藤さんと同じなんです。「一緒」だというのなら、その内容を自分の言葉で繰り返せばいいのに、それすらできなかった。これを見たとき、私は「首相の器ではない」と思いました。》
https://mainichi.jp/articles/20201128/k00/00m/010/222000c
母校の教授にダメ出しを喰らっちまった。

NHKニュースウオッチ9」で日本学術会議の任命拒否問題を巡り、キャスターから「説明を求める国民の声もある」と振られると、首相は語気強く「説明できることと、できないことってあるんじゃないでしょうか」と言い放ったわけだけれど・・・今度はコラムニストの小田嶋隆に指摘されてしまう。毎日新聞が11月30日付で掲載している「『菅語』を考える 小田嶋隆さんが読む首相の『恐怖政治断行』宣言 『小さな部屋の王様』の恫喝」(金志尚)でのことだ
《その直後に手でパンと机をたたきましたよね。テレビに映っているにもかかわらず、ああいう態度を取ってしまうのは、冷静な人間ではないということがまず言えると思います。
それと、あの発言は一種の恫喝です。あらゆるものに対して説明責任があり、全て言葉と理性で説明がつくという建前の中で、民主主義や法治主義は成り立っています。しかし、「説明できないことがある」と言うのは「俺たちは君たちの知らないところで事を進めるんだ」と言っているのと一緒で、民主的手続きを踏みにじることに他ならない。
これはとんでもない発言です。全国に流れる公共放送で首相が言ったことはもっと特筆すべきでしょう。「俺たちは恐怖政治を断行するよ」と言っちゃったわけですから。図らずもそうした体質が表れたわけです。馬脚を現したと言えます。
https://mainichi.jp/articles/20201129/k00/00m/040/309000c

◎今年で50周年を迎えた「ドラえもん」だが、「ドラえもん」のコミックス&関連書籍が、この1年間(2019年12月~2020年11月)で発行部数が500万部(紙のみ)を突破したという。原作漫画である、てんとう虫コミックスドラえもんシリーズは、この1年間で141万部超。
このブームを牽引したのが全6種類の異なる第1話を完全収録したドラえもん」0巻で、この1年間で累計63.1万部(紙のみ)を突破した。
https://www.oricon.co.jp/news/2177830/full/
新型コロナウイルスで全国一斉休校になったことも好調な理由の一つであろう。

◎次は「呪術廻戦」だという空気が世界で醸成されつつある!「朝日新聞GLOBE+」は11月27日付で「アメリカで見た『鬼滅の刃』大ヒットの光景 『呪術廻戦』に次のブームの予感」を掲載している。
《鬼滅に続く世界的ブームが来るのだろうか。クランチロールのオリジナル・事業開発(日本・アジア担当)を率いるジュリアン・ライハン氏は、こう強調した。
クランチロールは10年以上にわたり日本のアニメを世界に配信しています。現在は7000万人を超えるファンが日本での放送とほぼ同じタイミングで最新エピソードを楽しんでいます。呪術廻戦は、最近の私の記憶の中でも最も期待されている作品の一つです。4カ国のツイッターでトレンド入りするなど、その反応は非常に大きく、急速に人気を得ています」》
https://globe.asahi.com/article/13961091
約束のネバーランド」もあるでよ!小学館の「出会って5秒でバトル」も化ける可能性あり、だと思う。「裏サンデーの作品なんだけれど、売れそうな匂いがする。

◎新潮社から刊行された「スマホ脳」が動きそうだ。スウェーデンで2018年に刊行され、内容は脳科学的見地からスマホの危険性を説いている新潮新書なのだけれど、タイトルも良いし、この手の危険を煽る書物は読者も飛びつきやすいからね。発売わずか一週間で2万部の増刷が決定したそうだが、はてさて、どこまで伸びるか注目しておこう。
https://www.j-cast.com/trend/2020/11/27399738.html?p=all

セガの公式アカウントが公表した。
小学館の雑誌『幼稚園』の2021年2・3月号付録は、待望の『UFOキャッチャー』! なんと、「でんどうアーム」付き。
12/26(土)発売予定です。お楽しみに》
https://twitter.com/SEGA_OFFICIAL/status/1332271883136290816
これは話題になる。完売するのは間違いないんじゃないの。

司馬遼太郎賞は、佐藤賢一の小説「ナポレオン」(全3巻 集英社)に決定した。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/70998/
集英社が特設サイトを開設している。
https://www.bungei.shueisha.co.jp/contents/napoleon/index.html
小説すばる新人賞から生まれた才能である。集英社は佐藤「ナポレオン」のコミカライズには取り組まないのだろうか。

毎日新聞は11月28日付で「三島由紀夫:自決から50年 死に場所に呼ばれた元本誌記者・徳岡孝夫述懐 死の淵へ背中を少し押してしまった気がする」(ジャーナリスト・中澤雄大)を掲載している。「サンデー毎日」で発表された記事である。
《「明日ある所に来ていただけますか」。11月24日午後、編集部に作家本人から妙な電話があった。翌25日朝の電話で市ケ谷で来るように言われて出向くと、「楯の会」会員から手紙と「檄(げき)」、写真を渡され、三島の覚悟の程を知る。
当時の佐藤栄作首相は「天才と狂人は紙一重。気がふれたとしか思えない」と言い、マスコミも「狂気」と断じた。しかし徳岡さんは半世紀が過ぎた現在でも、短絡的に暴走したとは信じられない。決死の行動はいつものように整然と、理性的に準備されていたと思っている。そのことは、事件から四半世紀を経て書いた『五衰(ごすい)の人─三島由紀夫私記』に詳しい。》
https://mainichi.jp/sunday/articles/20201124/org/00m/040/007000d
三島由紀夫の原稿用紙にして9枚近い檄を全そのまま載せたのは、何と「サンデー毎日」だけだったのである!

楽天が「2020年 エンタメ年間ランキング」を発表した。
楽天ブックス」の年間総合ランキング1位は、3月の発売直後より話題を集めたゲームソフト「あつまれ どうぶつの森」。2位はCD「smile」。3位は「鬼滅の刃22巻。「鬼滅の刃」は最終話を収録した23巻も発売前ながら予約販売のみで5位だ。
「年間小説・エッセイランキング」の1位は「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」。2位、3位、4位には「鬼滅の刃のノベライズが並んでいる。
楽天Kobo電子書籍ストア」で年間総合ランキング1位は「鬼滅の刃」、2位「キングダム」、3位「進撃の巨人」、4位「ONE PIECE」。
https://corp.rakuten.co.jp/news/update/2020/1126_01.html

◎「少年ジャンプ+」副編集長の「モミー」が「note」に「『漫画雑誌』のアップデートを試みた ~少年ジャンプ+の場合~」を発表している。
《実は僕は「少年ジャンプ+」は、あの「アプリ」だけを指すと思っていません。
広義では「ヒット作創出のサイクル生成」を目指した一大プロジェクトなんです。》
《「少年ジャンプ+」は、元々漫画雑誌の持つ機能をデジタル時代にアップデートしていくことで、仕組みとしてヒット作創出のサイクル生成を目指してきました。》
《作家さんを集めるために、マンガのWEB投稿サービスを作りました。
「ジャンプルーキー!」という名前で「少年ジャンプ+」と同時に始めました。》
《「ジャンプPAINT」の特徴は、「無料」で使えることと、ジャンプの漫画制作のノウハウを勉強できる機能を持っていることです。
商業連載に耐えうる機能を持った「無料」のペイントツールはあまりありません。》
《漫画創作技術を学べるオンリーワンの学校を作ろう、と思いました。
今年始めた「ジャンプの漫画学校」です。》
https://note.com/jumpdigitallab/n/n624452b8c019
編集者にとって必読の章である。

マガシークは、NTTドコモと共同運営するファッション通販サイト「d fashion」で、11月27日(金)より雑誌「GISELe」(主婦の友社)との誌面連動企画の第四弾を開始した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000052613.html

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3)【深夜の誌人語録】

後悔するのは努力が足りなかったからだ。