【文徒】2021年(令和3)3月4日(第9巻40号・通巻1937号)


Index------------------------------------------------------
1)【記事】「どうして、わたしはわたしなの?」が刊行されたトミ・ウンゲラーについて
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
4)【お知らせ】 
----------------------------------------2021.3.4 Shuppanjin

1)【記事】「どうして、わたしはわたしなの?」が刊行されたトミ・ウンゲラーについて

朝日新聞デジタルは2019年2月11日に「トミ・ウンゲラーさん死去 絵本『すてきな三にんぐみ』」(パリ=疋田多揚)を掲載しているが、ウンゲラーについては次のように紹介している。
《31年、仏東部ストラスブール生まれ。56年に渡米し、イラストレーターとして評価される。その後、アイルランドに移住。代表的な絵本に、泥棒が子どもを救う「すてきな三にんぐみ」、「エミールくんがんばる」など。子どもの本のノーベル賞とも言われる国際アンデルセン賞を98年に受賞した。》
https://digital.asahi.com/articles/ASM2C66KHM2CUHBI011.html
これは、これで間違ってはいるわけではない。しかし・・・。う~ん、当時、フランス大使館もこうツイートしていた。
《『すてきな三にんぐみ』など、日本でも子供たちに愛される数多くの絵本を描いたフランス人児童学者トミー・ウンゲラーさんが9日、死去されました。87歳でした。すばらしい作品をありがとうございました。ご冥福をお祈りいたします。》
https://twitter.com/ambafrancejp_jp/status/1095261227410849792
確かにトミ・ウンゲラーが子どもたちに愛される絵本を描いたのは間違いない。しかし、トミ・ウンゲラーは単なる絵本作家ではない。せめて、そのことには触れておくべきではないのだろうか。クレヨンハウスが2019年2月11日にツイートしているように「子どもの本の創作だけでなく、イラストレーターとしての痛烈な社会風刺でも、生き方を示してくれる作家」であったのである。
《〈東京店1階より〉フランス出身の児童学作家、トミー・ウンゲラーが逝去されました。87歳でした。『すてきな三にんぐみ『月おとこ』など、子どもの本の創作だけでなく、イラストレーターとしての痛烈な社会風刺でも、生き方を示してくれる作家でした。こころからのご冥福をお祈りします。》
https://twitter.com/crayonhouse/status/1094866905322508288
例えば様々な珍セックス機械を「妄想」する画集「FORNICON」を手にしてみれば良い。
https://www.kosho.or.jp/products/detail.php?product_id=71220751
「幻想系古本屋 Doris (古書ドリス)」がツイートしている。
《トミー・ウンゲラーによる、自慰のための機械とその使用方法を描いた、ユーモラスでエロティックなイラスト集。 享楽的なイメージなので背徳感は皆無。思わず笑ってしまうイラストです。》
https://twitter.com/info_doris/status/1311537193362485249
美人画専門イラストレーター・篠崎真紀のお気に入りは「EROTOSCOPE」だという。
《トミー・ウンゲラーといえば絵本もいいけれど、エロチックなドローイングばかりを500点以上集めた「EROTOSCOPE」が大好き。モロ、グロが多いので紹介できるページがあまりないんですが、どの画も素晴らしい。》
https://twitter.com/shinozakimaki/status/1095572934209359872
私はユリイカ叢書として刊行された植草甚一の「ぼくの大好きな外国の漫画家たち」(1972)でトミー・ウンゲラーを知った。それだけに、その後、彼の絵本を知って驚いた。しかし、絵本と「FORNICON」や「EROTOSCOPE」は決して分断されて存在しているのではないことも次第に理解できるようになった。こんなツイートもある。
《トミー・ウンゲラーが天寿をまっとうしたけど、中学生のとき図書館で読んだ植草甚一『ぼくがすきな外国の変った漫画家たち』で、ファック、フェラチオ、スカトロジー機械仕掛けに絡めて描きまくるヤバい漫画家ってところから知ったので、後に児童書の世界的作家と知って「自由だなー」と思った》
https://twitter.com/ganko_na_yogore/status/1095371588554317824
トミ・ウンゲラーは一筋縄ではいかない作家なのである。今回、現代書館から刊行された「どうして、わたしはわたしなの?――トミ・ウンゲラーのすてきな人生哲学」にしてもそうだ。同書はフランスの哲学雑誌「フィロゾフィー・マガジン」の連載を書籍化したものであり、子どもたちから寄せられた質問にトミ・ウンゲラーが答えていくという内容なのだが、哲学的な鑑賞に十分耐えられるものである。
しかし、だからといって「子ども」を読者から排除しているわけではない。こうも言えるのかもしれない。「どうして、わたしはわたしなの?」は子供向けに書かれているが、決して哲学者を読者から排除しているわけではないと。私などは「ぼくはといえば、憎しみを憎んでいる」という短いが圧倒的な一にすっかり囚われてしまっている!
http://www.gendaishokan.co.jp/goods/ISBN978-4-7684-5895-2.htm

-----------------------------------------------------

2)【本日の一行情報】

紀伊國屋書店は、2021年4月16日(金)に、小田急町田店小田急百貨店町田店8階に新規オープンする。202.71坪。
https://kyodonewsprwire.jp/release/202102271601
もともとは久美堂が出店していた場所だ。

徳間書店は、3月1日(月)に細野豪志(元原発事故収束担当大臣)と開沼博社会学者)による「東電福島原発事故 自己調査報告 深層証言&福島復興提言:2011+10」を刊行した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000325.000016935.html
中川淳一郎が推している。
東京電力福島第一原発事故から10年、今、この本を読んだ方がいいですよ。多分、考えが変わる》
https://twitter.com/unkotaberuno/status/1365846449531932672
細野豪志朝日新聞の退社を決めた鮫島浩の対談を読んでみたいものだ。二人とも京大は佐藤幸治ゼミの出身である。
東京新聞・経済部長の池尾伸一による「魂の発電所 負けねど福島 オレたちの再エネ十年物語」も徳間書店の刊行である。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000324.000016935.html
東京新聞の同僚・望月衣塑子がツイートしている。
東京新聞の池尾伸一記者「 #魂の発電所 負けねど 福島 オレたちの再エネ十年物語」読了。3人の諦めない力に引きこまれ
311に見回れた外資系会社員千葉、牛農家小林、酒屋当主佐藤の3人は飯館村で飯館電力を発足させるも送電線に空きなく、構想白紙に。しかし3人は諦めず‥》
https://twitter.com/ISOKO_MOCHIZUKI/status/1365929813890920448

毎日新聞は3月1日付で掲載した「芥川・直木賞贈呈式 『次作が大事』『感無量』」によれば芥川賞を受賞した「推し、燃ゆ」の宇佐見りんについて、選考委員の山田詠美は「小説としての言葉を使いこなしている。好むと好まないに関わらず、作家にならなくてはならない人なんだと思う」と話したそうだ。
https://mainichi.jp/articles/20210301/dde/014/040/009000c

◎光社の「FLASH」によれば元内閣広報官の山田真貴子と立教大学教授の香山リカ東京学芸大学附属高校の同級生だそうである。
https://smart-flash.jp/sociopolitics/134037

日刊ゲンダイDIGITALは3月2日付で「佐高信『この国の会社』 藝春秋の春砲は自社に向けては発射されなかった」を掲載している。
《しかし、芸とジャーナリズムを両輪にした伝統は健在で、いわゆる春砲が烈しく炸裂している。ただ、それは自社に向けては発射されない。たとえば、『社歌』の発行者は前社長の松井清人となっているが、社長当時の松井については、他社の週刊誌のネタになるような話がとびかった。
ところが、松井は”裸の王様”になっていて、他の社員がすべて知っていた松井の「個人的事情」を知られていないと思っていたらしい。それは官邸筋も把握していて、春砲が湿ってしまうのではないかと危惧されたのである。》
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/285723
当時、常務であった木俣正剛によれば「私生活との公私混同」ということであった。
https://digital.asahi.com/articles/ASL5S5VGZL5SULFA02K.html

◎「Rolling Stone Japan」が3月2日付で発表している「細野晴臣の50年間に及ぶルーツ ノンフィクション本とともに読み解く」で田家秀樹は門間雄介の「細野晴臣と彼らの時代」(藝春秋)について「音楽ノンフィクションの金字塔」と絶賛している。門間が次のように語っていることも重要である。
《一番重要なのは、カルロス・カスタネダが書いたドン・ファンリーズで、一番細野さんに影響している作品なんです。これをシリーズで読んでみると、符合するものがあるんですよね。細野さんの今の考えや発言を見ると、ここがこういう風に参照されているんだなという部分があったりするので。そこを一回通ったことが今回大きかったなと思います。》
https://rollingstonejapan.com/articles/detail/35499
細野晴臣と彼らの時代」は1968年の、もうひとつの革命について書かれた一冊なのである。カスタネダを日本で最初に紹介したのは鶴見俊輔である。鶴見はカスタネダアナキズムの可能性を読み取っている。「方法としてのアナキズム」だ。
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480747099/
真木悠介の「気流の鳴る音 ─ 交響するコミューン」もカスタネダにアプローチしている。
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480087492/
中沢新一の「チベットモーツァルト」もカスタネダに言及している。
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000151182
松田聖子の傑作「ピンクのモーツァルト」は作詞が松本隆であり、作曲が細野晴臣である。
https://www.youtube.com/watch?v=JztLm_RiggU

◎学研プラスは、NHK連続テレビ小説「おちょやん」の小説版を発売した。第1巻は「おちょやん 初恋編」。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003195.000002535.html

白泉社は、3月4日に累計200万部突破の「ノラネコぐんだん」シリーズの読み物第2弾「ノラネコぐんだんと金色の魔法使い」を発売する。これを記念して、3月4日(木)~4月4日(日)まで、対象作品を購入すると限定特典としてA6サイズのメモ帳がもらえるキャンペーンを、全国の書店1400店舗で開催する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000448.000046848.html

共同通信は3月2日付で「カジノ運営で新聞経営下支え カナダ最大のトロント・スター紙」を配信している。
《カナダ最大の日刊紙トロント・スター(東部オンタリオ州)は1日、親会社のトルスター社が新聞社の経営下支えのためにオンラインカジノの運営に年内に乗り出すと伝えた。》
https://this.kiji.is/739301706895458304?c=39546741839462401

川上未映子が国際女性デーに短編「刺繍糸」を朝日新聞デジタルに書き下ろした。これがそうだ。
https://digital.asahi.com/articles/ASP2V4R7RP2VUPQJ00G.html

讀賣新聞オンラインは3月1日付で「読売新聞北海道支社、北海道大と包括連携協定…教育研究や人材育成分野で協力」を掲載している。
《読売新聞北海道支社は1日、北海道大と包括連携協定を締結した。稲葉光秋支社長と宝金清博学長が協定書に署名した。教育研究や人材育成の分野で協力していく。》
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210301-OYT1T50189/

◎3月2日付毎日新聞が掲載している「そこが聞きたい ノンフィクションの可能性=作家・下山進氏」で、「アルツハイマー征服」(KADOKAWA)を刊行した下山は次のように語っている。
《…今回アルツハイマー病の研究史をテーマに執筆しましたが、事前に考えたのは取材経費の予算立て。海外取材もあり直接的経費だけでもかなりの額が必要でした。かつてはまずは雑誌に発表して、単行本、庫本にするサイクルがありました。雑誌が衰退し、ノンフィクションを下支えする従来のシステムは完全に崩れてしまった。昔と違って出版社だけで負担できる額ではありません。
しかし、方法はあります。
今回は、スローニュース社というネットニュースのシンクタンク協力で工面でき日米欧にまたがる取材ができました。》
https://mainichi.jp/articles/20210302/ddm/005/070/009000c

◎「春オンライン」は「週刊春」2月15日号をソースに3月1日付で「『菅と二階の怒りを買った2人が飛ばされた』……NHK有馬キャスター、武田アナ降板の衝撃」を発表している。
NHKアナウンス室長ですら驚くほどの仰天人事だったという。2月10日、NHKニュースウオッチ9」の有馬嘉男キャスター(55)と、「クローズアップ現代+」の武田真一アナ(53)という“二大看板”の降板が発表されたのだ。局内では関係者がこう囁きあった。
「菅政権の怒りを買った2人が飛ばされた――」》
https://bunshun.jp/articles/-/43713

有田芳生は「週刊春」の宣伝マンでもあるようだ。
《明日の「週刊春」。報道された疑惑を国会で追及するのは当然ですが、政党独自の調査機関が必要だとずっと思っています。》
《谷脇康彦総務審議官は、わかった接待3回で約58万円、ご本人は計17万円を超え、1回で10万円を超えたこともありました。総理長男の記事でもそうでしたが、今度も出てきた料理やワインなどの種類が具体的に書かれています。優れた調査報道に脱帽するばかりです。》
https://twitter.com/aritayoshifu/status/1366947211733471234
https://twitter.com/aritayoshifu/status/1366957052480823303
政治社会学者の木下ちがやのツイート。
《山田広報官の入院辞職はやはり春砲でしたね。しかもNTTとはレベルが違う話になりました。》
https://twitter.com/sangituyama/status/1366955347114553353
春オンライン」が3月3日付で「一人10万円超も NTTが山田前広報官と谷脇総務審議官に高額接待」を発表した。
菅義偉首相の長男・正剛氏が部長職を務める東北新社から接待され、減給の懲戒処分を受けた谷脇康彦・総務省総務審議官と、給与の自主返納と内閣広報官辞職に至った山田真貴子氏。2人が、NTTからも高額な接待を受けていたことが「週刊春」の取材で分かった。NTTは総務大臣から事業計画などの認可を受けて経営されており、総務省幹部がNTT側から供応接待を受けることは、国家公務員倫理法に抵触する疑いがある。》
https://bunshun.jp/articles/-/43785
サンフランシスコで仕事をしている朝日新聞の尾形聡彦が舌を巻く
春が報じたNTTによる総務省幹部の高額接待は衝撃的です。旧郵政や旧自治などが2001年に統合された総務省にとってNTT監督は根幹業務の一つ。その担当幹部の谷脇氏がNTT“迎賓館”で何度も高額接待を受けていたとは。98年の大蔵省接待汚職似た構図で、重大な事態だと思います》
https://twitter.com/ToshihikoOgata/status/1367093880164741127
五百旗頭幸男の推理。
《菅政権の金看板が落下した。谷脇氏は「携帯値下げ」を推進する裏で高額接待を受けていたことになる。首相は山田前広報官を更迭しなかったのではなく、できなかったのだろう。7万円の接待を受けた山田氏を更迭すれば、10万円超の接待を受けた谷脇氏を守る理由が立たなくなる。》
https://twitter.com/yukioiokibe/status/1367030512582156288
それにしても、またか!春砲。わが国に週刊誌は「週刊春」しかないのだろうか。茂木健一郎が呟く。
春独走だな。本当は、こういうスクープは新聞とかテレビがやるべきなんだけどね。記者クラブという既得権益にあぐらかいているうちにジャーナリズム魂がどこかに消えたんだろうね。》
https://twitter.com/kenichiromogi/status/1367064157384699904

-----------------------------------------------------

3)【深夜の誌人語録】

どんな章にも祈りを込めたい。

-----------------------------------------------------

4)【お知らせ】 

」2000号まで、あと63号。