【文徒】2014年(平成26)12月4日(第2巻228号・通巻430号)

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1)【記事】「講談社 平成27年広告企画発表会」に出席して
2)【記事】大阪屋と楽天の協業について
3)【記事】ダイヤモンド社の「攻め」に注目!
4)【記事】雑誌に必要なのは…
5)【本日の一行情報】
6)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】「講談社 平成27年広告企画発表会」に出席して

何でもそうだが、「発表会」と名がつく以上は、スクープが必要だ。発表会に出席していた者だけが、最初に驚きを享受できる仕掛けと言っても良いだろう。講談社が昨日、開いた「平成27年度広告企画発表会」は、どうであったか?今年は小学館集英社の広告絡みの発表会が、ある意味でスクープ満載であっただけに掉尾を飾る講談社に私の期待は否が応にも高まった。
結果から言うと期待していたほどではなかったが、1時間強の間、眠気に襲われることなく、森武文専務にはじまり、「Ai」の藤谷英志編集長、「おとなスタイル」の丸山紀子編集長、「FORZA STYLE」の干場義雅編集長、「ミモレ」の大草直子編集長、「フラウ」の秋吉敦司編集長などの発表を聴くことができた(去年だか、一昨年だと思うが、私はあまりの退屈さに寝てしまったことがある!)。私にとってスクープだと思ったのは「Ai」のダミー版が配布されたことだろう。内容的には、それほどの驚きは感じなかったが、及第点ではある。
ちなみに森専務、藤谷編集長、秋吉編集長には共通項がある。三人とも第一編集局の「FRIDAY」出身者なのである。挨拶には立たなかったが、女性誌を担う第二編集局の出樋一親局長も「FRIDAY」出身である。第二編集局の大黒柱であった「with」は、女性誌の人材を輩出していないということなのだろうか。この辺に講談社における女性誌、ファッション誌の問題点が横たわっており、「FORZA STYLE」と「ミモレ」では社外の人材を登用することになった。私などは、そんな構図を想像してしまった。
蛇足ながら、「FRIDAY」の30周年記念パーティで乾杯の音頭をとったのは、編集長一歩手前の次長で同誌を去った森専務であったようである。

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2)【記事】大阪屋と楽天の協業について

大阪屋の取引先である全国370以上の書店などの店頭で、「進撃の巨人」15巻を買うと、特製イラストカードが貰える。このイラストカードが普通ではない。裏面には「進撃の巨人」のスピンオフ作品である「進撃の巨人 悔いなき選択」や「進撃!巨人中学校」など4タイトルからの特別無料版(合計138ページ)が、2月9日(月)までの期間限定でダウンロードできるQRコードとURLが記載されているのである。
楽天と大阪屋の協業が一歩を踏み出したということである。ここに至るまで時間を随分と要したとはいえ、これは評価したい。何でもはじめの一歩を踏み出さないことには風景は変わらないのだから。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000108.000005889.html
しかし、である。東京23区だと、ブックス児玉、さかえ書店、ブックス音羽、東西書房葛西店しか対象書店がないのである。
埼玉はブックスデボ書楽、千葉は宮脇書店西牧の原店だけ。神奈川に至ってはゼロだ。
大阪だと151店もあるというのに!せめて大日本印刷傘下の書店は大阪屋に帳合変更すべきだし、将来の経営統合を睨んで栗田出版販売帳合の書店を取り込むべきなのではないだろうか。これでは読者に対して機会平等とは言い難いはずだ。
http://books.rakuten.co.jp/event/e-book/camp-shingeki201412/

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3)【記事】ダイヤモンド社の「攻め」に注目!

ダイヤモンド社は「攻め」の姿勢だ。高齢化社会と正面から向き合うべく、シニア向けライフスタイル誌「ダイヤモンドQ」の創刊準備を進めている。創刊準備第2号の特集は「マネー運用」だ。新雑誌ばかりではない。ダイヤモンド・ヒューマンリソースをご存知だろうか。
「この度、『週刊ダイヤモンド』・『ダイヤモンド・ハーバードビジネスレビュー』などを発行する経済出版社株式会社ダイヤモンド社の子会社となり、2014年12月1日より株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソースに社名を変更しました」
「株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソースは、就職情報サービスを通じて創業の精神である『企業と大学と学生を結び、産業界の発展に貢献する』を継続して実践するとともに、ダイヤモンドグループの『総合人材サービス企業』としてテスト・教育・研修など人財開発の領域においても、お客様にご満足いただけるよう邁進する所存です」
ここでも「ダイヤモンド」というブランドを最大限、生かそうとしている。
http://www.diamond.co.jp/go/q/
http://www.diamondhr.co.jp/companyinfo/message.html
出版社の場合、経営規模からし縮小均衡路線に踏み出すと、縮小が止まらなくなるということを忘れてはなるまい。成長戦略なくして均衡はあり得ないということだ。攻撃こそ最大の防御である。

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4)【記事】雑誌に必要なのは…

次のような佐々木俊尚の指摘には私も同意できる。
「…PC時代のWebしか作れないようなメディアとか媒体は多分、生き残れなくてですね。スマホをどこまで最適化していくかっていう状況になっている…」
http://logmi.jp/29888
昨日も書いたが、雑誌にしてもスマホを占拠することなくして生き残れないはずだ。雑誌にとってデジタル戦略はクライアントに対するアリバイ作りでは駄目なのだ。その程度のサイトを擁して満足しているだけの雑誌に明日があるものか。佐々木のスマホでよく読まれるのは500字以下の短文と1500字とか2000字以上の長いものという指摘も重要だ。
私であれば600字のコンテンツからなるプラットフォームを構築し、600字から2000字に至る導線を仕掛け、雑誌ジャーナリズムの生き残る道をそこに見出すことだろう。キイワードは「プラットフォームのようなメディア」である。
出版社には編集力、編集力と連呼する人が少なくないが、その編集力が紙にしか通用しないのであれば、やがて無用の長物に朽ち果てよう。
必要なのは想像力だ。想像力こそがパワーを奪取するのである。

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5)【記事】【本日の一行情報】

◎歌舞伎町の新宿ミラノ座が大晦日に閉館する。セルジオ・レオーネの「夕陽のギャングたち」は、ここで見た。
http://www.asahi.com/articles/ASGCT7CZ2GCTUDCB01M.html

望月三起也といえば「ワイルド7」となる読者は何も私だけではないだろう。「W7 新世紀ワイルド7」が実業之日本社から刊行された。オールカラーである。欲しい。ただし定価は5000円+税と高い。カラー原稿をそのままカラーで印刷したそうだ。
http://www.j-n.co.jp/books/?goods_code=978-4-408-61285-0

大塚英志の「角川歴彦とメディアミックスの時代」第3回が公開された。
「人の弱さや脆さの上に成り立つ文化がある。それを擁護し育むプラットフォームは可能なのか。
マークは歴彦にそれを期待し、ぼくはしない。しかし、そういうプラットフォームだけが北米の巨大プラットフォームに対抗できるというマークの主張は正しい。
サヨクみたいだ、と思うかもしれないが、サヨクのオタクは、オタクが『おたく』だった時代にはたくさんいたんだよ」
http://sai-zen-sen.jp/editors/blog/works/1964-1964.html

◎「イルミネーションぴあ 2015年度版」は、やはりこの時期には欠かせない一冊である。
http://www.dreamnews.jp/press/0000102567/

◎世界第5位の発行部数を誇る産経新聞が若手タレントを起用して試読キャンペーンを実施している。1位が読売、2位が朝日、3位が毎日、4位が日経と宅配に守られて日本の新聞が上位を独占しているんだけどね。
http://www.advertimes.com/20141202/article176589/
産経の書評欄は相変わらず充実している。決して「右」ではない。何度も書いてきたが私は右手に産経新聞、左手に東京新聞という読者だ。菅原文太が亡くなったとき、東京は一面でも、社会面でも、文化面でも、名物の「こちら特報部」でも報じていた。

◎待ってました!と掛け声をかけたくなるサービスだ。新日本プロレステレビ朝日は月額999円で新日本プロレスの主要大会などが見放題となる動画配信サービス「NJPWWORLD」を始める。私もプロレスの味方です。
http://weekly.ascii.jp/elem/000/000/279/279771/

◎クックパドはフジテレビとのコラボを始めた。朝の情報番組「めざましテレビ」の天気予報コーナー「お料理予報」で毎日のおすすめレシピを地域別に紹介している。
http://markezine.jp/article/detail/21502
フジテレビは子会社に扶桑社を持ち、雑誌「エッセ」を擁し、腐るほどレシピはあろうにクックパドとコラボするということは、「エッセ」にも、扶桑社にも明日はないということである。

◎アマゾンの2014年の和書総合ランキング。
1位:嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え(岸見一郎、ダイヤモンド社)_
2位:永遠の0百田尚樹講談社文庫)
3位:まんがでわかる 7つの習慣(フランクリン・コヴィー・ジャパン、宝島社)
4位:艦隊これくしょん ‐艦これ‐ 艦娘型録(コンプティーク編集部、KADOKAWA
5位:TRF イージー・ドゥ・ダンササイズ DVD BOOK ESSENCE(TRF、宝島社)
6位:妖怪ウォッチ オフィシャル攻略ガイド(山田雅巳、小学館
7位:長友佑都体幹レーニング20(長友佑都ベストセラーズ
8位:妖怪ウォッチ2元祖/本家 オフィシャル攻略ガイド(レベルファイブ小学館
9位:女のいない男たち(村上春樹文藝春秋
10位:DUO 3.0(鈴木陽一、アイシーピー)
http://www.amazon.co.jp/b/ref=s9_acsd_al_bw_ft_ranking2_1_t?_encoding=UTF8&node=3365513051&pf_rd_m=AN1VRQENFRJN5&pf_rd_s=center-4&pf_rd_r=15428P98XRJ5H7BHYE2A&pf_rd_t=101&pf_rd_p=188204409&pf_rd_i=3365511051

◎学研グループのブックビヨンドが運営する電子書籍書店「BookBeyond」は「学研BookBeyond」とサイト名を変更した。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000114.000009949.html
学研には「学研」というブランドしかないんだよね。結局、雑誌をブランド化できなかった。

ブックウォーカーは、古典、ミステリー、ファンタジー、SF、歴史、ホラーなど、角川文庫収録の様々なジャンルの書籍100冊や、角川書店が編集する電子雑誌「文芸カドカワ」「小説屋sari-sari」が、会員登録して月額500円で何冊でも読める会員制サービスメ角川文庫プレミアムクラブモを始める。
http://www.famitsu.com/news/201412/03066964.html
「文芸カドカワ」が12月3日に創刊されていた。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001104.000007006.html

◎米アマゾンはムーディーズの格付けが「ネガティブ」に引き下げられた。株価も年初来18%超も値下がりしている。
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPL3N0TM5IE20141202

トヨタ自動車が運営する自動車好きのためのポータルサイトGAZOO.com」で人気AV女優の紗倉まながコラムを執筆。
http://news.livedoor.com/article/detail/9533062/

◎ベネッセが300人の希望退職者を募集。
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20141202-OYT1T50096.html

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6)【深夜の誌人語録】

何と毎日毎日、無駄なことばかりしているのかといえば、無駄が価値に通じるからである。無駄を無くしきったとき、想像力が摩滅し、創造力が絶滅する。