【文徒】2019年(令和元)5月23日(第7巻88号・通巻1508号)


Index------------------------------------------------------
1)【記事】毎日が社説で取り上げた幻冬舎社長のツイート問題
2)【記事】劇画狼のおおかみ書房が白取千夏雄「全身編集者」を刊行
3)【本日の一行情報】
4) 加藤典洋 追悼ツイート
5)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2019.5.23 Shuppanjin

1)【記事】毎日が社説で取り上げた幻冬舎社長のツイート問題

早川書房塩澤快浩が呟く。
「カバーとオビが出来ました」
https://twitter.com/shiozaway/status/1130721373825802240
むろん、6月6日(木)にハヤカワ庫JAから刊行される津原泰水「ヒッキーヒッキーシェイク」のカバーと帯である。
https://www.hayakawabooks.com/n/na222fd34db21
私はこの帯が欲しくて買ってしまうのだろうな。「この本が売れなかったら、私は編集者を辞めます。 早川書房 塩澤快浩」と自らの名前を入れているところに私は好感を抱く。部数も結構出るのではないだろうか。この間の大騒動はビジネスの見地からすれば神風が吹いたようなものである。津原自身もこうツイートしていた。
「僕の本を出してきた版元の皆さん、僕と関わったことのある作家、批評家、画家、装丁家、音楽家の皆さん、どうかこの機に便乗して、本を宣伝してください。僕の著書じゃなくて構いません。こじつけに怒ったりしません。こういう時しかお返しを出来ません。ていうか、しなさい。命令です
https://twitter.com/tsuharayasumi/status/1130256992000401409
津原の幻冬舎批判はまだまだ続いている。
「営業のモチベーションを下げたら(『日本国紀』を批判したら)協力できない(本を意図的に売ってもらえない=惨敗の数字が他社にも出回る≒作家生命が断たれる)。1月8日の電話でそう宣告された瞬間の、まさに血が凍り顔はこわばり視界が遠近感を失った瞬間が、まざまざと甦る」
「いま明瞭に思い出した。僕はまず『それ、恫喝だよね?』と担当に聞き返したのだ」
https://twitter.com/tsuharayasumi/status/1130860500542083072
https://twitter.com/tsuharayasumi/status/1130863100272422915
TBSラジオでは武田砂鉄が次のように語っている。武田は河出書房新社の編集者出身の批評家である。
「本は、書き手だけじゃなくて、編集、営業、校閲、書店へ届ける人がいて、取次という問屋さんがいて、一緒になって届けていくもの。売れたら皆で喜んで、売れなかったらそれぞれが反省・検証して。見城さんの言い分は、『売れた本は俺のもの。売れなかったら著者のせい』と見える。これだと書き手は付いて来ない」
https://www.tbsradio.jp/371654
何と毎日新聞は社説で取り上げた。5月22日付で社説「幻冬舎長のツイート なぜ不快感を与えたのか」を掲載した。
「出版界に新風を吹き込む役割を果たした人ではある。ただ、騒動のきっかけになった本への疑念については正面から答えず、禁じ手ともいえる手段で封じようとしたことに、言論の担い手としての姿勢も問われたのではないか」
https://mainichi.jp/articles/20190522/ddm/005/070/057000c
津原泰水がポツリ呟く。
「社説になる人生。」
https://twitter.com/tsuharayasumi/status/1130965052129853440
津原自身がリツイートしているのだが、この指摘は鋭いのではないか。
「いつの間に津原氏が『左翼』に?どっちかって言えば保守でしょ、あの方。日本国紀の内容に踏み込んだ批判してた人は、みんな保守か右翼だよ。左派はそもそも買わないもん(笑)」
https://twitter.com/mitsusato_/status/1130873003686817792
ところで、瀬尾健のこの章は是非読んでおいて欲しい。
百田尚樹『日本国紀』を援用しているようだ。百田の本そのものに長谷川的な?が入っているとは思わないが、ユーザ以外の者を貶め、ユーザに優越感を持たせる論法は百田長谷川ともに共通している。
百田が問題なのは、このような粗悪な言論を涵養してしまうことだ幻冬舎的なやり方がメジャー出版で当たり前になってくると、日本の言論全体が劣化してゆく。長谷川はその端的な症状だ」
https://www.facebook.com/takeshi.seo22/posts/2243334002410224
朝日新聞デジタルが5月21日で掲載した「『日本国紀』批判にどう答える 著者の百田尚樹氏に聞く」で百田尚樹は次のように堂々と語っている。
「騒動については僕も実際のところは知りませんけど、幻冬舎の担当者が困って『ちょっと批判を抑えてくれないか』と言ったところ、津原さんは『その気はない』と。担当者が『そりゃ困る』となると、津原さんの方から『それならもう出さない』というようになったと聞いていますけどね」
朝日新聞が次のような「註」を書いている。
「※津原さんの新刊が幻冬舎から出版中止になった経緯について、津原さんは朝日新聞の取材に『装画がほぼ出来上がり、解説も依頼済みで、完成間近の状態だった。色んな人に協力してもらって、投げ出すわけないんです』と話し、出版中止は幻冬舎から持ちかけられたと主張している。津原さんと幻冬舎の間で言い分は食い違うが、幻冬舎の編集者は朝日新聞の取材に、『日本国紀の販売のモチベーションを下げている作家の著作に営業部は協力できない』と津原さんに伝えたことは認めている」
https://www.asahi.com/articles/ASM5N75D2M5NUCVL04X.html

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2)【記事】劇画狼のおおかみ書房が白取千夏雄「全身編集者」を刊行

「ガロ」の編集者であった白取千夏雄の語り下ろした半生記「全身編集者」がおおかみ書房から刊行された。「コミックナタリー」で知った。
「本書は2017年3月に白取が執筆途中で亡くなったあと、編集者の劇画狼が加筆・再校正を行い、同氏のレーベル・おおかみ書房から発行されるに至ったもの」
https://natalie.mu/comic/news/332042
白取は2017年3月に亡くなっている。白取は白血病であった。
https://mairi.me/-/1140122
「全身編集者」のカバーアートと挿絵を手がけている古屋兎丸が2017年3月20日に次のように呟いていた。
白取千夏雄さんが亡くなってからずっとブログを読み返してる。
特に奥様のやまだ紫さんが亡くなったあたりは涙無くしては読めない。
追悼に白取さんが愛していたやまだ先生の漫画も読もう」
https://twitter.com/usamarus2001/status/843973236576538626
版元のおおかみ書房のホームページには「5/1初版予約分完売。5/13以降にご注の方は、増刷分の印刷が上がり次第のお届けとなります。(6/8~予定)」とある。
https://vvolfbooks.booth.pm/items/1316273
おおかみ書房は劇画狼が主催する版元である。えぇっ!ツイートには、こうある。
「増刷分の在庫が200を切りました。さらにするかどうかは未定なので、必ず入手したい方はご注意を」
https://twitter.com/gekigavvolf/status/1130846956287287297
こうもツイートしている。
「中身に関しては、本当に『インディーズ出版でやる事』のレベルを超えてる内容だと思うので、なんとか2000部、できればもうちょっと増刷重ねたいんだよな。
今のところ、
初版1000部→完売
増刷500部→残り半分くらい
って状況なので、皆さんの応援があればあと500追加くらいは行けるんじゃないかと」
https://twitter.com/gekigavvolf/status/1130813252730904576
おおかみ書房は通販をメインにしている。
「通販メインで売り切るから帯は全く必要ないんやけど(原価も上がるし)、俺の『帯を考えてる時が一番楽しい』を満足させるためだけに帯をつけます」
https://twitter.com/gekigavvolf/status/1130844408775995392
しかし、アマゾンでは売っていない!劇画狼もユニークだ。「ウィキペディア」によれば「劇画狼(げきがおおかみ/げきがうるふ)は、日本の漫画編集者、フリーライター、エロ劇画評論家、元キックボクサー、工員[1]。師匠は元『ガロ』副編集長の白取千夏雄大阪市在住」とある。編集者だが、今も別の職業を持っているようだ。こうツイートしている。
「これ、昼間に出版全然関係ない会社勤めをしながらやる量じゃないな」
https://twitter.com/gekigavvolf/status/1130826970361524226
昼間に出版全然関係ない会社勤めをしていても、こういう呟きをする劇画狼自身もまた「全身編集者」と言えるのかもしれない。
「本職の編集さんが聞いたら失神するような『バカみたいな原価率』でやってるから、無理矢理字小さくしてページ数減らすくらいしか、俺の給料出す方法が無いんだよ!」
https://twitter.com/gekigavvolf/status/1130805747158118400
「全身編集者」はアマゾンで売っていない。

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3)【本日の一行情報】

◎官能小説の分野では「ヤクザモノ」がトレンドなのだそうだ。「サイゾーウーマン」が「官能小説のトレンド『ヤクザモノ』、おぞましい陵辱プレイと愛情深いセックスを対照的に描写」を公開している。
「新たに確立されつつあるヤクザモノの第一人者といえば、草凪優の名が挙がる。さまざまなヤクザモノを手がける草凪氏の作品の中で、特に推薦したいのが『地獄のセックスギャング』(実業之日本社)だ」
https://www.cyzowoman.com/2019/05/post_233762_1.html
これだね。
http://www.j-n.co.jp/books/?goods_code=978-4-408-55446-4
草凪優といえば中原亜梨沙だよね。草凪の「ジェラシー」の装画が良いんだよね。
https://shukado.com/artists/nakahara-arisa/
http://arisa-nakahara.s2.weblife.me/

◎私も購入した。またしても二冊。5月21日に発売された「漫画アクション」11号(双葉社)にモンキー・パンチルパン三世の第1話が「特別採録」されている。
https://natalie.mu/comic/news/332287

◎「アエラドット」が公開した「佐藤浩市が安倍首相を揶揄? 有名人参戦の大炎上が『空騒ぎ』に終わった理由」は「週刊朝日ンライン限定記事」である。
https://dot.asahi.com/wa/2019051800017.html?page=1

◎エンタメの口コミサイトやメディアサイトを運営する「聴きこむ株式会社」は、お一人様向けのソロ活情報共有ソーシャルメディア「ohitoriii」(オヒトリー)の提供を開始した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000031027.html
https://ohitoriii.me/

◎CCCグループのTマガジンは、対象誌約400誌が月額400円(税抜き)で読み放題となる月額定額制雑誌読み放題サービス「T-MAGAZINE」の提供を5月22日(水)より開始した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000328.000000983.html

◎ポーラが展開するアートコミュニケーション「WE/」発行のマガジンリニューアルを記念して、首都圏、関西で展開している書店ブックファーストにおいて6月1日(土)~6月30日(日)まで「あなたを楽園へと誘うブックフェア」を開催する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000053.000036737.html

◎門田隆将がブログ「夏炉冬扇の記」に「雑誌の衰退は何を意味するのか」をエントリ。
「インターネット時代には『この雑誌を手にとらなければ、この情報と論評と視点は決して手に入らない』という編集をしなければ、読者はわざわざ雑誌を買ってくれない。しかし、そのためには、編集者自身に『見識』が必要だ。
だが、編集者がその感覚を磨き、切磋琢磨する努力を怠り、いつまでも“心情左翼”の『団塊の世代』をターゲットにした編集方針から脱却できなかったことが部数低落に直結している」
https://blogos.com/article/378541/
仮に「“心情左翼”の『団塊の世代』をターゲット」にしていなかったら、部数低落はもっと加速していたに違いない。

◎このキャラクター、かわいいね。ジャムムというのか。なるほどジャムの妖精か。主婦の友社が「おでかけジャムムだよ!」を刊行した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000918.000002372.html
https://jammu-world.com/news004.html
著者の「のぶたともじ」は信田朋嗣と同一人物なのだろうか?

小学館は美容誌「美的」とトレンドマガジン「DIME」の2誌がコラボしたメンズ美容プロジェクト「メンズ美的」第2弾「夏を制する爽やかな男前」を始動させた。
https://dime.jp/genre/715290/

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4) 加藤典洋 追悼ツイート

加藤典洋が亡くなった。早すぎる。こちらは五歳年上だが同じ大学で重なる時期があり、話す機会が多かった。真面目で粘り強く、ある種の悲劇性があり、山形での少年期の良心を失わない縮れ毛の青年だった。Twitterでもこの最低の時代への発言をもうすこし読みたかった。冥福を祈る」(巖谷國士
https://twitter.com/papi188920/status/1130806086741553158
加藤典洋氏は『敗戦後論』で日本は戦後と戦前の二重人格に陥っていると指摘したが、さらに人格破綻がすすみ、我を失っている。我に返るためには今一度、加藤氏の議論に戻らねばならない。冥福をお祈りします」(島田雅彦
https://twitter.com/SdaMhiko/status/1130626695608774656
加藤典洋さんの訃報。息が止まりそうになった。いただいた『9条入門』を読了、感想を書いて送ろうと思っていたところだった」上野千鶴子
https://twitter.com/ueno_wan/status/1130829368706469888
「病気療養中だった加藤典洋さんが亡くなられた。悲しい。ただ悲しいです」(高橋源一郎
https://twitter.com/takagengen/status/1130395557082480640
加藤典洋は『敗者が敗者であり続けているうちに…生まれてくるだろう想像力』を、『敗者の想像力』と呼んだ。自分自身が敗者であるという経験と自覚を通じて手に入れられる『ものの見方』にこだわった人だった。あまりに早すぎる死」(沼野充義
https://twitter.com/MitsuNumano/status/1130783328745820160
加藤典洋さんとは1990年代に研究会の調査旅行で最初の年は韓国、次の年は上海にご一緒した。四半世紀も前のことでした。その後駒場のテーマ講義でお話いただいたことも。ご一緒して楽しく愉快なユーモア豊かなとてもヒューマンな方でした。ほんとうに残念だな。心よりお悔やみ申し上げます」(石田英敬
https://twitter.com/nulptyx/status/1130628217360904192
加藤典洋さん。『9条入門』の、1条『天皇制の存続』と9条『戦争の放棄』はセットという指摘と、『現代詩手帖』に短期連載された『僕と一〇〇〇と一の夜』に驚かされたばかり。ひとつひとつ、いい。無理しない言葉でちゃんと詩にしている。加藤典洋という表現者の大事なところ、ここにあると思った」(福間健二
https://twitter.com/acasaazul/status/1130639551989338112
加藤典洋と最後に会ったのは十年ほど前だ。ホテル・エドモンドの地下のバーで、編集者と三人で店が終わるまで飲んだ。そのあとすぐに地震原発事故があり、それに触発された『3・11後の叛乱』について好意的なツイートをしてくれた。また話したいと思っているうちに、訃報を知った」(笠井潔
https://twitter.com/kiyoshikasai/status/1130765648538116096
加藤典洋さんが亡くなられたとのこと、びっくりしました。ご病気だとは知らなかった。加藤さんの『敗戦後論』を初めとする戦後論について、そのうち考えてみたいと思っていました。ずっと前に一度だけお目にかかったことがあります。ご冥福を祈ります」(朴裕河
https://twitter.com/parkyuha/status/1130455256578453505
加藤典洋さんが亡くなった。早すぎる。。本当にお世話になって学賞のパーティーや、養老孟司さんの会でも、いつも興味深いお話を伺って。シャイで、鋭くて、愛が深くて、本質を見つめていらして。。。辛すぎる。まだまだいろいろ教えていただきたかったのに。信じられない。安らかに。。」(茂木健一郎
https://twitter.com/kenichiromogi/status/1130458965718921216
「さきほど加藤典洋さんの訃報に接してなにも手に付かなくなっています。『耳をふさいで、歌を聴く』というすばらしい音楽評論を書いていただいたのはもう8年近く前ですが、人間という生き物への底知れぬ愛情にみちた方で、心の底から尊敬していました。いまはただただひたすら悲しくてたまりません」(アルテスパブリッシング 鈴木茂
https://twitter.com/suzukisgr/status/1130417352913252352
杖道稽古終わって信号待ちの間にTwitter見たら、高橋源一郎さんが加藤典洋さんの訃報を伝えていて、家に帰ったら電話取材。初めてお会いしたのも奇しくも高橋さんのご紹介で、鈴木晶んの家でのBBQの席でした。加藤さんは『ためらいの倫理学を最初に書評してくださった恩人です」(内田樹
https://twitter.com/levinassien/status/1130432594808492032
加藤典洋さんの訃報に、『もうすぐやってくる尊皇攘夷思想のために』をひらく。本書収録の高校での講演原稿『ヒト、人に会う  鶴見俊輔と私』、加藤さんの生涯が伺えて、話し言葉なので読みやすい。惜しい」(幻戯書房 田尻 勉)
https://twitter.com/tajiri28553284/status/1130415446975365120
加藤典洋さん、お亡くなりになりましたか…一度しかお会いしていませんが、帰りに新宿三丁目の『たむら』で焼き鳥を一緒に食べました。お疲れ様でした。合掌」(中原昌也
https://twitter.com/sexybboy_re/status/1130436649731497985
加藤典洋さん『言語表現法講義』は勤めてまもないころに刊行され、興奮しながら読んだ。尊敬する先輩が編集者歴がまだ浅いころに手がけたもので、当時、担当者はたぶん30代になったばかり、加藤さんは40代。その真剣勝負な仕事が、いまもこうして読み継がれ、愛されていることに胸が熱くなる」(岩波書店 渡部朝香)
https://twitter.com/scentofmatin/status/1130513459106291716
「わたしがこれまでに編集した本でもっとも反響が大きくてもっともよく売れたのは加藤典洋さんの本だ…」(畑中章宏)
https://twitter.com/akirevolution/status/1130405269526142976
加藤典洋さん、死去。太宰治賞や小林秀雄賞のパーティで会うと談笑した。一年前の太宰賞パーティの別れ際『一回、対談しよう!』と言われ、握手したら『相変わらず手が冷たいねえ』と笑われた。それが最期だった。もう加藤さんと柄谷行人や中上健次について本音の話ができないのか…悲しい。ご冥福を」
加藤典洋さん、死去の報。加藤さん、昨年『GQ』の村上春樹ーベル賞をめぐる章で私のことを言及してくれてたんですね。泣けてきた。もっとお話したかった。寂しい…」(中森明夫
https://twitter.com/a_i_jp/status/1130399873264521216
https://twitter.com/a_i_jp/status/1130400973954752512
加藤典洋(@ten_kato)さん、亡くなったのか。最後にお会いしたのは、典洋さんが太宰治賞で強く推していた作家・岡本敬三さんを送る会の席だから、もう6年も前のことになるのか…。岡本敬三さんは僕のエッセイ集の編集者でもあるので、しばし会場の隅でしんみりとお話しをした。享年71。若すぎる。合掌」(盛田隆二
https://twitter.com/product1954/status/1130421915611353088
「今夜は『アメリカの影』を読み返します」(中島岳志
https://twitter.com/nakajima1975/status/1130410974240862208
加藤典洋さんが亡くなられたそうです。
ここのところ大変な仕事をやってこられただけに
とても、とてもショックです!!!」(ほんやら洞 甲斐扶佐義
https://twitter.com/kaifusayoshi/status/1130397302441406464

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5)【深夜の誌人語録】

どんな章であっても心を叩き込め!

【文徒】2019年(令和元)5月22日(第7巻87号・通巻1507号)


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1)【記事】幻冬舎 見城社長ツイッター問題 延焼がつづいている!
2)【本日の一行情報】
3)【月刊「出版人・広告人」6月号予告】
4)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2019.5.22 Shuppanjin

1)【記事】幻冬舎 見城社長ツイッター問題 延焼がつづいている!

田中康夫が大理石彫刻家の投稿をリツイートしながら、呟いている
「RT:田中康夫が出版社の社長にブロックされたそうな。なんと気の弱いこと。無垢を怖れ、力に頼る者のやることだ。
令和の格言 富すれば鈍する 地位は人を駄目にする
小生の諫言を聞く耳持たずブロック遊ばされた見城徹
https://twitter.com/loveyassy/status/1130296554210770944
http://tanakayasuo.me/youtube#Vol529Yassy
「ORICON NEWS」が発表した「幻冬舎見城徹社長、ツイッター&755&冠番組終了を宣言 部数公表の作家に謝罪『お詫び申し上げます』」によれば、5月19日に配信されたAbemaTVの冠番組「徹の部屋」の冒頭で次のように語ったそうだ。
「今、僕のツイッターが騒動を起こしています。ひとえに僕の傲慢と怠慢が引き起こしたものだと思っております。作家の部数を公表したというミスを起こしてしまいました。公表した作家の方に心からお詫び申し上げます」
「申し上げたいことがあります。今回の騒動にけじめをつけたいと思っておりまして、ツイッターは辞める。この先、更新しない。755も更新しない。辞める」
「『徹の部屋』も今回か、次回で。これは僕1人の決断ではできない。番組を作っている制作会社のみなさん、カメラの方々、ディレクター、プロデューサー、それから僕や(アシスタントの)大石(絵里)のヘアメイク、スタイリスト、いろんな方が失業することになる。オーバーですけれども。勝手には決められない。AbemaTVと相談して、今回か次回で終わりにしたいと思っております。僕からの発表でした」
https://www.oricon.co.jp/news/2135831/full/
これに対して津原泰水が呟く。
「なぜ名前を云わん?」
https://twitter.com/tsuharayasumi/status/1130401387378954241
小説も批評もこなす坂上秋成からすれば「津原氏への侮辱はあらゆる作家への侮辱」にほからない。
見城徹津原泰水さんの作品の実売数を公表し、嘲笑したのは端的に言って最低の行いだ。ふざけるなと思う。出版社の社長が著者を不当な方法で、人目に触れる場で攻撃し辱めようとすれば書き手は少なからず萎縮するだろう。津原氏への侮辱はあらゆる作家への侮辱である」
「しかし、如何に見城が最低かは学に関わる大勢の人が書いてくれているので俺はこれ以上言及しない。それよりも、津原さんの著作の実売数が1000部だったというその意味について、書き手や読者や編集者に考えてもらいたいことがある。分かってほしいことがある」
「1000部というのは出版社にとって経済的利益になる数字ではない。そして会社が慈善事業でない以上、それは無視できることでもない。
しかし、1000部本が売れるというのは、本当は凄いことなのだ。1000人の人間がある小説を読むということは極めて尊いことなのだ」
「イメージしてほしい。1000人の人間に届くというのは、ひとつの高校の全生に届いているようなものだ。それだけの数の人間に感動を与えた、与え得るというのは称賛されるべき営為だ」
「作家は読者の心に響くように作品を作り、届くことを祈る。1000人の人間が一冊の小説を読んで、多かれ少なかれ世界の見方を変える。これを美しいと思えないのなら、なんのために学があるっていうんだ? なんのために人が作品を作るっていうんだ?」
「それは会社が手放しで喜べる数字ではないかもしれない。けれど、もしも出版社がベストセラーを出して数字だけを追い続けるというのなら、学に関わらなければいいじゃないか。もっと効率のいい経済活動をすればいいじゃないか。それなのに多くの出版社が、編集者が、学に携わるのは何故なのか」
「そこには矜持がある。祈りがある。美しい物を作り届けることには、資本主義の論理とは異なる、人が生を送ることに希望を見出そうとする意志と倫理がある。学が作られ紡がれ、人と繋がっていくというのはそれを前提にした行為だ。1000人の人間と繋がる言葉を生んだのなら、それは素晴らしいことだ」
「作家が数字のことを一切考えないでいいとは思わない。だが、わざわざ作家などという奇妙で効率の悪い仕事を選ぶ人間の多くは、きっと数字のみに還元できないものを表そうとしている。そこに矜持を持っている。俺はその人たちのことを信じているし、数字の外で愛している」
https://twitter.com/ssakagami/status/1129315357859016704
https://twitter.com/ssakagami/status/1129315901377925121
https://twitter.com/ssakagami/status/1129316458985431047
https://twitter.com/ssakagami/status/1129316891107897344
https://twitter.com/ssakagami/status/1129317322915663872
https://twitter.com/ssakagami/status/1129317728379068421
https://twitter.com/ssakagami/status/1129318262007771138
https://twitter.com/ssakagami/status/1129318646025555968
事態は見城社長がツイッターから撤退した程度では収拾がつかないのかもしれない。「路地裏の迷宮踏査」(東京創元社)の杉江松恋は、こう主張する。
見城徹社長がツイッターを休止することで幕引き、みたいな書き方をするメディアや個人SNSの記事が散見されるので書いておくのだけど、それは本質ではないでしょう。出版が決まっていた刊行物を版元が一方的に中止させたという著者への裏切り行為が問題で、そこは何も解決していない」
幻冬舎は事実関係を公けの場で明らかにし、非があるのであれば潔く認めなければいけない。見城徹氏がツイッターというおもちゃを手放したことなんて本当にどうでもいいことで、会社としての姿勢を知りたいのです。それを表明してくれる会社かどうかということも」
https://twitter.com/from41tohomania/status/1130651355238940672
https://twitter.com/from41tohomania/status/1130651873269100544
残酷な天使のテーゼ」「魂のルフラン」の作詞家・及川眠子によれば、百田尚樹や有本香のツイートは援軍にはならず、むしろ逆効果であることがわかる。
「おそらく予想もしてなかっただろう作家さんたちの激しい抗議に対して、謝罪してTwitterも閉じて会社を守るために何とか沈静化を図る幻冬舎の見城社長。なのにそこに新たに油を投入する百田さん。さらにそれをうちわで扇ぐ有本さんw
素敵です。頑張ってくださいww」
https://twitter.com/oikawaneko/status/1130339510473056256
津原泰水がこんな連続ツイートを投稿している。
「百田さんが新聞に幻冬舎謹製『津原と担当の電話』を語られたので(なんでわかるわけ?)、幻冬舎を追い込まないよう黙ってた事の、1つを書きます。クラウス・フォアマンの装画、日本のスキャナーでデータを取る為、仕方なく僕が自腹で買いました。貧乏作家を養っていたかのような印象操作は迷惑千万」
幻冬舎は額縁代を出してくれました」
「これは1月に頓挫した庫化ではなく、連載からいま売られている親本(四六判)に至る段階の話です。また公正を期す為、クラウスさんが『津原さんにだったら』とたいへん安くお譲りくださったことも付記しておきます。とても安かったですよ、世界のクラウス・フォアマンにしては」
https://twitter.com/tsuharayasumi/status/1130625201912262656
https://twitter.com/tsuharayasumi/status/1130625256106758144
https://twitter.com/tsuharayasumi/status/1130633633604104197
佐久間裕美子が「note」に「みんなウェルカム@幻冬舎plusをおやすみすることにしました」を発表した。
「けれど、先週、見城徹社長が、Twitter上で、幻冬舎からの出版が中止になった津原泰水さんの過去の作品の部数を『晒し』たということを知り、これまで感じたことのない恐怖感を感じました。出版社しか知りえない情報が、作家を攻撃し、恥をかかせるための武器として使われたのです」
佐久間は「日本国紀」についても、こう述べている。
「『日本国紀』ににまつわる最近の動向を遠くから見ていて、もやもやすることが増えました。なぜなら、権利の侵害があろうとなかろうと、人の章をコピーして使う、ということは、絶対にあってはならないことだと教えられてきたし、それを信じて、『書く』という作業をしてきたからです」
https://note.mu/yumikosakuma/n/na0234ae22389?fbclid=IwAR2RLi5VdoMojsIJu6JxSyqe7UXSVOiZX_bwkzW3miOMhzK5JuTEwjmn1mc

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2)【本日の一行情報】

スタジオジブリのプロデューサーである鈴木敏夫春新書から「天才の思考 高畑勲宮崎駿」を上梓する。総432頁!
https://natalie.mu/eiga/news/331482
藝春秋とスタジオジブリの関係は良好だ。

荻上チキ、ヨシタケシンスケの共著「みらいめがね それでは息がつまるので」が暮しの手帖社から刊行される。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000025712.html

電通ダイレクトマーケティングは、電通ラジオテレビビジネスプロデュース局、電通九州、電通東日本と共同で、信販売事業の健康食品・スキンケア化粧品カテゴリーにおける「ロイヤル顧客層獲得プランニング」手法の開発に向けて、過去1年以内に同一企業(調査対象各29社)の「健康食品」「スキンケア化粧品」を定期購入している全国30-79歳の男女計3,405名 を対象に調査を実施した。その結果、認知から購入までのファネルにおけるメディア接触から推計した各メディアの売上貢献金額は、テレビ広告はweb広告の貢献金額の約2倍であることがわかった
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000017763.html

◎海外旅行特化のデジタルメディア「旅MUSE」(タビミューズ)を運営するバリーズは、D2C事業を中心とした女子旅コミュニティサービスの拡大を目的として、三越伊勢丹イノベーションズを引受先とする、第三者割当増資を実施した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000012050.html

◎「ORICON NEWS」は「漫画アプリ『comico』世界累計3000万DL突破 編集長は元小学館編集者、海外展開の利点生かす」を公開している。「comico」編集長は小学館出身の武者正昭である。「comico 」は現在、台湾、韓国、タイ、スペイン語圏、インドネシア、国内含めて6つの地域にサービスを提供している。武者によれば「海外においては、日本の人気作品をローカライズして提供するだけでなく、現地においても新人作家を発掘するなどして、それぞれの地域化に合った作品・サービスの提供を行なってまいりました」とのことである。
https://www.oricon.co.jp/news/2135785/full/

◎「現代ビジネス」が「『少年ジャンプ』が模索する、デジタル漫画の『新たな黄金法則』」を公開している。インタビューに応えている籾山悠太という編集者はデキルな!
「『少年ジャンプ+』がはじまって4年くらい経ってますけど、多少の挫折感は感じています。本当は今ぐらいには大成功を収めて圧倒的な存在になっていないといけないんですけど、現状はそうではないので、ちょっとヤバいかな、という焦りはあります。
でも、ジャンプ化で育ったからでしょうか。困難があったときの方が、燃えるんですよね(笑)。
今は本当にデジタル漫画の戦国時代みたいな感じで、勝てば江戸幕府が作れる状況じゃないですか。そのなかで、『少年ジャンプ+は現状、今川義元ぐらいのポジションだと思うんです(笑)」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/64630

小学館少年マンガ誌「週刊少年サンデー」とサイバードは、「名探偵コナン公式アプリ」において、蘭の同級生で親友の鈴木園子が推理をする「推理クイーン・名探偵園子特集」を、5月20日月)から6月12日(水)までの期間限定で実施する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001550.000001661.html

◎「日本国紀」の百田尚樹に私は何の悪意を抱いてもいない。しかし、百田信奉者たる長谷川豊の差別発言を断固として許してはなるまい。糾弾の権利を行使してでも抗議すべきだろう。
https://buzzap.jp/news/20190520-ishin-hasegawa-yutaka4/

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3)【深夜の誌人語録】

現実的な思考を支えるのは理想であり、夢である。

【文徒】2019年(令和1)5月21日(第7巻86号・通巻1506号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】朝日・毎日報道に百田尚樹が激怒!見城社長はツイッター戦線を撤退
2)【記事】これが講談社広報室の実態だ!渡瀬昌彦常務の傲慢
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2019.5.21 Shuppanjin

1)【記事】朝日・毎日報道に百田尚樹が激怒!見城社長はツイッター戦線を撤退

朝日新聞デジタルが5月18日付で「65万部発行『日本国紀』とは? 盗用疑惑に異例の修正」を公開している。
「史実の誤りがある、他の出版物やウィキペディアの記述と似通っ章があるが出典元の明記がないといった批判が出ていた。批判を受けた箇所の一部は、増刷時に告知なく修正されている」
https://www.asahi.com/articles/ASM5J5KJGM5JUCLV00Q.html
集英社編集者の鈴木耕のツイート。
「ようやく朝日が取り上げた。ものすごく遅いけれど、取り上げないよりはいいとしよう…」
https://twitter.com/kou_1970/status/1129686992965423104
それにしても朝日新聞、張り切り過ぎと違うだろうか。最初に目をつけたのは毎日新聞なのだけれど。毎日新聞は5月16日付で「百田尚樹さんの『日本国紀』批判で出版中止 作家が幻冬舎を批判」を、5月17日付で「幻冬舎が『出版、諦めざるを得ない』 津原さん反論、経緯明かす」を公開した。ともに統合デジタル取材センターに属する大村健一による記事だ。
https://mainichi.jp/articles/20190515/k00/00m/040/310000c
https://mainichi.jp/articles/20190517/k00/00m/040/005000c
毎日新聞記者の中川聡子の投稿。
「同部署の先輩、大村健一記者@k_oomura の大特ダネ!
作家、津原泰水さんが、日本国紀批判を理由に幻冬舎に自身の出版を停止されたとする問題。幻冬舎の「出版信条」とは何なのか。作家と編集者、出版社の関係はどうあるべきか。この騒動は重大な問題を提起しています」
https://twitter.com/nakagawas1/status/1129206153412370433
朝日新聞は5月17日付で「幻冬舎社長ツイートに批判 『日本国紀』巡り作家と対立」を掲載誌、翌5月18日付で「幻冬舎の部数公表『ダメージなし』津原泰水さん一問一答」と冒頭に掲げた「65万部発行『日本国紀』とは? 盗用疑惑に異例の修正」を公開している。
https://www.asahi.com/articles/ASM5K4CQ0M5KUCVL012.html
https://www.asahi.com/articles/ASM5K7SKJM5KUCVL03C.html?iref=pc_extlink
讀賣新聞産経新聞東京新聞に比べればわかるように朝日と毎日がイケイケである。
百田尚樹ツイッターで吠え始める。百田のツイッターのタイムラインから、毎日・朝日批判のツイートを拾ってみよう。
「ここ数日、幻冬舎および見城氏をめぐるトラブルを、朝日新聞毎日新聞が大仰に書き立てているが、彼らがその記事で本当に書きたいのは、『日本国紀』の悪口である。
嬉々として書いてる姿に腹も立つが、逆に考えれば、それだけ効いているということなんだろう」
朝日新聞毎日新聞のやり口は、汚いを通り越している!
彼らは津原氏の異常な中傷の実態を知っているくせに、それらを隠して別のイメージで報道する。
おぞましい限り!」
朝日新聞は津原氏を巨悪に立ち向かう英雄に仕立てあげようとしているかもしれませんね。
しかし朝日新聞に騙されて津原氏の過去ツイートを見れば、皆『えっ?』となるでしょうが。
ま、それでも今回の朝日新聞の擁護で、津原氏の本がAmazonランキング急上昇です。
津原氏の炎上作戦、大成功ですね」
朝日新聞などは、津原氏が『日本国紀』の不正を指摘したみたい章を書いているようだが、津原氏は『日本国紀』に対し、わずか1ヶ月あまりの間に数百に及ぶ中傷や侮辱を行なったのだ。
それって明らかに常軌を逸した行動だ(こんなことを書けば、それらのツイートを削除するかもしれないが)」
https://twitter.com/hyakutanaoki/status/1129678012297859072
https://twitter.com/hyakutanaoki/status/1129740556681326592
https://twitter.com/hyakutanaoki/status/1129759680639717376
https://twitter.com/hyakutanaoki/status/1130062763894530048
百田先生は岩波書店も批判せねばるまい。須藤健は岩波書店で児童書の編集をしている。須藤はツイートしている。
「『幻冬舎にはいい編集もいる,見城徹が悪い』とか『幻冬舎と仕事をしようとしている作家を抑圧するな』とか,太平楽な意見が散見されるけど,そもそもの発端は剽窃が指摘されている本を会社ぐるみで売り続けていることにあるのであって,そこは何も変わってない.それも見城徹一人が悪いのか?」
https://twitter.com/ajian1108/status/1129887469061545985
津原泰水を愛読している浅羽通明見城徹社長を全面支持している
「詳細は知りませんが、例の件については、当方、見城徹社長を全面支持しております。売れない商品を売れないと公表してどこが悪いのか。資本制生産様式が主流を占める社会において、版元も著者も市場プレイヤー。情報開示は基本」
「加えておきますが、津原泰水先生は当代珍しいスタイリッシュな作家として愛読しておりますです」
https://twitter.com/asabam1/status/1130241665040408576
https://twitter.com/asabam1/status/1130246024121921536
しかし、幻冬舎見城徹社長は「ツイッター戦線」から撤退を決めたようだ。見城は5月19日午後11時過ぎに次のようにツイートした。
「皆さん、今まで有難うございました」
https://twitter.com/kenjo_toru1229/status/1130115124377767938
20日午前0時1分になると見城は、こうツイートした。
「僕のツイートはこれにて終了します」
https://twitter.com/kenjo_toru1229/status/1130126405616799744

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2)【記事】これが講談社広報室の実態だ!渡瀬昌彦常務の傲慢

WEDGE Infinity」の「元新聞記者も悩む、日本の新聞は生き残れるのか?」は書評である。「現代アメリカ政治とメディア」を取り上げている。次のような一節が目についた。
「トランプ氏は大統領候補のテレビ討論会で形勢が不利になったときに、つぶやきはじめた虚偽のツイートにより形勢を逆転させることに成功したという」
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/16198
講談社の渡瀬昌彦常務は私に次のようなショートメールを送ってきた。
「金菱氏の言説は事実と異なるものであり、大変遺憾です。抗議は、社としてのものです。そう受け取ってください。渡瀬」
「金菱氏」とは東北学院大学教授の金菱清のことだが、当然、私たちは渡瀬に問うた。「金菱氏の言説」が「事実と異なるもの」だというのであれば、どこがどう事実と異なるのかを説明して欲しいと。しかし、私たちの問いに一切答えようとはしない。渡瀬常務もまたトランプ氏と同じ体質の人物なのであろう。同じ穴の狢、というやつである。わが国の出版ジャーナリズムの一翼を担う講談社の編集トップがこんな有り様なのは、許されて良いのだろうか。
後日、岩本太郎に渡瀬常務名義で送られてきた章を見せられたときは、私はわが目を疑った。岩本の取材申し込みに対して渡瀬から電子メールで送られて来た章だ。こういう章を平気で書ける人物が「言論の自由」を宣う倒錯を私たちは許してはなるまい。その理由を説明する前に、もう一度、渡瀬常務の書いた章をお読みいただきたい。
《すでにご承知かと存じますが、弊社とメールマガジン」との関係は途絶しており、そこで定期的な執筆を続けておられる岩本さんに対しても、お答えすべきことは特にございません。
その点、くれぐれもご留意ください。
週刊金曜日」で執筆される場合には、以下のコメントをお使いいただきたく、よろしくお願いいたします。
「『美しい顔』に関して、主要参考献のひとつである『3・11慟哭の記録 71人が体感した大津波原発・巨大地震』の編者である東北学院大学教授金菱清氏および金菱氏の代理人である版元・新曜社のご理解を得られなかったことはまことに残念です。それ以外の主要参考献である4作品の版元(新潮社・東京大学出版会ポプラ社藝春秋)ならびに著者編者の方々に対しても、金菱氏および新曜社への対応と同様に初出時の参考献未掲載の過失を、「群像」編集部が作者の北条裕子氏と共にお詫びいたしました。また、金菱氏と同様に一部著者に対しては不備のあった点の修正についてご提示申し上げました。昨年12月まで及んだ当該の著者編者の方々との協議と交渉を経て、4月17日に単行本を刊行させていただきました。金菱氏および新曜社以外の著者編者の方々からのご異論やご批判は、現在まで私共が把握している限りでは、ございません。
関係各方面ならびにお読みいただいた読者諸賢のご批評ご批判を真摯に受け止め、今後の出版活動の糧といたしたく存じます」(講談社常務取締役 渡瀬昌彦)
以上です。誤解を招かないためにも一部を抜粋したりせず全を掲載していただきますよう、くれぐれもお願いいたします。
2019年5月10日
講談社 
渡瀬昌彦拝》
私たち「」に対する対応と、「週刊金曜日」とでは対応の仕方が違うというのだ。
講談社メールマガジン」との関係は途絶しているから、どんな質問にも答えられず、「週刊金曜日」には、この章を使ってくれと差し出す。
それにしても「途絶」とは一体、どういう意味なのか。
この間の事情からすれば、「出版人 広告人」に対する広告出稿を打ち切ったということを意味するとしか私には理解できない。だとすれば講談社は「週刊金曜日」に広告を出稿している関係にあり、だから問われれば「誤解を招かないためにも一部を抜粋したりせず全を掲載していただきますよう、くれぐれもお願いいたします」と旦那風を吹かしながら偉そうな条件をつけたうえで、岩本の質問に対する「回答」ではなく、自分たちの勝手な言い分を提供してやっているということなのだろうか。
あるいは取材者である岩本太郎をジャーナリストとして、バカにして、こういう章を電子メールで送ってきたのだろうか。「傲慢」という二字は渡瀬常務の辞書にはないようである。そうでなければ「会話」を拒絶する一方通行の情報提供などしまい。
更に一歩踏み込んで言うのであれば、私たち出版人と「週刊金曜日」をいとも簡単に分け隔ててしまっているわけだが、こうした無根拠な線引きがいわれなき「差別」を生むのではないのだろうか? 渡瀬常務は講談社において、「週刊現代」や「FRIDAY」といった週刊誌ジャーナリズムに長らくかかわってきたはずだが、実は、この程度の認識しか持ち合わせていないことに私は愕然とせざるを得ない。
いずれにしても私たちが渡瀬常務に何よりも聞きたいのは、「金菱氏の言説は事実と異なるものであり、大変遺憾です」と言うのであれば、「金菱氏の言説」のどこがどう事実と異なるのかである。
古今東西、民主主義の破壊者は会話を拒否するのである。渡瀬常務は自らを民主主義の破壊者の立場において恥ずかしくはないのだろうか。NY市立大ジェフ・ジャービスが言っているように「人々のために働くジャーナリストが人々の声に耳を傾けるのは、神聖な義務」なのである。渡瀬常務の「言い得」や「逃げ得」を決して許してはならないのである。

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3)【本日の一行情報】

◎旅行情報誌「じゃらん」が、20代~30代の女性2,032名を対象に数々のアニメに登場するパパキャラクターの中から「理想のパパキャラクター」について調査し、「じゃらん 理想のパパキャラクターランキング」を発表した。「結婚生活が楽しめそうなパパキャラクター」「おでかけや旅行を一緒に楽しめそうなパパキャラクター」「ズバリ!理想のパパだと思うパパキャラクター」でも「クレヨンしんちゃん」の野原ひろしが第1位であった。三冠って凄くない?
https://www.jalan.net/news/article/346596/
クレヨンしんちゃん」の人気のヒミツは「パパ」にあったというわけだ。

◎2018年下半期(7~12月)のABC公査部数が発表された。宝島社の女性ファッション誌「otona MUSE」が179,732部で前年同期比127%と絶好調。この数字は付録のチカラであって、広告媒体の力量を正確に反映している数字ではあるまい。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000863.000005069.html

◎蔦屋書店 主要4店舗(代官山、函館、枚方、六本松)は5月18日(土)より韓国の人気俳優チョン・イルが立ち上げた雑誌「KRIBBIT JAPAN」を先行販売する。2,500円(税込)也。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000300.000009848.html

乃木坂46白石麻衣が、5月17日発売の女性ファッション誌「LARME」040 July(徳間書店)の表紙に1年ぶりにカムバックした。
https://www.asahi.com/and_w/entertainment/ent_546418/

◎日販コンピュータテクノロジイは、日教販より業務自動化技術であるRPA(Robotic Process Automation)ソリューションの追加導入を受注した。
https://www.dreamnews.jp/press/0000194463/

日本テレビのプロデューサー・栗原甚の「すごい準備」(アスコム)はリブロ汐留シオサイト店ならずとも売れそうだ。
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO44849840V10C19A5000000/

◎「春オンライン」が「Googleマップよりすごかった!? 『ぴあmap』が画期的だった理由」を発表した。
「『ぴあmap』は従来の地図のお約束である記号や地番、町の境界線が省略され、その分エリア内の映画館、劇場、美術館、図書館、書店、ライブハウス、レンタルビデオ店、チケットセンターなどがアイコンを用いてギュっと凝縮されていた。色使いも他の地図とまったく異なり、それでいて路地まで描き込まれているので迷わず目的地にたどり着けるのである。そのあたりはマップ作製を担った地図デザインの第一人者、森下暢雄氏の功績が大きく、『最寄り駅から歩くことを想定して道路は省略しない』『見た感じをリアルにするため、公園など緑のある場所には樹木の影を入れる』『原色4色を掛け合わせてたくさん色を作り遊びの雰囲気を出す』といった仕掛けで、楽しさとわかりやすさを両立した新しい概念の地図を生み出した」
https://bunshun.jp/articles/-/11908
Googleマップの時代になると街がバカでかくなって、街から体温が消えて、面白みに欠けるようになった。「悪所」という言葉が私は好きだ。

味の素冷凍食品は、サントリーグループと共同企画した“今夜もお家で乾杯♪選べる!「家飲みセット」当たる!!キャンペーン”を全国で実施する。
https://corporate.ffa.ajinomoto.com/_var/pdf/20190516.pdf
出版社も垣根を超えたキャンペーンにもっともっと積極的に取り組むべきだ。

トーハンは「2018年度『朝の読書』で読まれた本」を発表した。小学校では「かいけつゾロリ」シリーズと「おしりたんてい」シリーズが多くの支持を集めた。いずれも版元はポプラ社である。また、昨年本屋大賞を受賞した辻村深月かがみの孤城」(ポプラ社)、住野よる「君の膵臓をたべたい」(双葉社が中学生、高校生の両方から支持を集めた。更に「5分後に意外な結末」シリーズ(学研プラス)、「5分」シリーズ(河出書房新社)など、5分で読める短編小説を収録したシリーズが、小学校、中学校、高校で支持された。
https://www.tohan.jp/news/upload_pdf/20190515asadokuyomaretahon.pdf

辻村深月かがみの孤城」(ポプラ社)がコミカライズされ、6月19日発売の「ウルトラジャンプ」7月号(集英社)で連載が開始される。
https://natalie.mu/comic/news/331820

朝日新聞デジタルが「長崎)『おもしろい』を大切に 長崎に『変な本屋』開店」を公開。この記事を読むと実際に行きたくなる。
「貸本版の水木しげるの漫画、菌類にまつわる話だけを集めた短編集、足の親指が男性器になってしまった女性の小説――。店主一押しの『変な本』が並ぶ本屋が、長崎市大浦町にオープンした。店主は『正統派ではない本と出会える入り口にしたい』と語る」
https://www.asahi.com/articles/ASM5G747TM5GTOLB00M.html

◎「学研プラス公式ブログ」が「果てしなき夢は終わらない。『超人図鑑』誕生秘話」を公開。「学研の図鑑 キン肉マン『超人』」は「発売前にもかかわらず、インターネットの予約だけですでに3万部を越え(2019年5月上旬時点)、初刷部数は10万部と、図鑑ジャンルだけでなく出版業界全体としても異例の事態となっている」そうだ。この出版社の垣根を超えた図鑑を企画したのは図鑑編集室と辞典編集室を統括する室長でもある芳賀靖彦だ。芳賀は妄想を現実にしてしまったと語っている。
「書店の図鑑の棚で『昆虫』や『恐竜』といったタイトルが並んでいる中に、『超人』の図鑑が混じっていたら面白いだろうなぁ……というのは、実は学研入社当時からうっすらと考えていました。それから漠然とではあるけれど、『キン肉マン』の超人を、こんなふうな図鑑にできたらウケるんじゃないか、ということもずっとアタマの片隅で考えていました。妄想の中での悪ふざけですね(笑)」
https://gkp-koushiki.gakken.jp/2019/05/17/8982/

◎漫画・アニメのオリジナルグッズを販売する通販サイト「AMNIBUS」を運営するアルマビアンカは、「ペルソナ3/4/5」のイベント「ペルソナ3/4/5 Ani-Art STORE 紀伊國屋書店 西武渋谷店」を5月24日(金)より開催する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000961.000016064.html

◎「全広連日本宣伝賞 正力賞」を受賞したジャパネットたかたの創業者である髙田明が次のようにスピーチしている。
《今、日本に元気を与えるために必要なのは「伝える力」なのではないか。そのためにも「伝えたつもり」にならずに、「伝わる」ように努力し続けることが大切だと、改めて感じました》
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000053.000016651.html

◎「PRESIDENT Online」に「サブカル・ニッポンの新自由主義」「ウェブ社会の思想」「カーニヴァル化する社会」などの著書で知られる社会学者の鈴木謙介関西学院大学准教授)が「グーグルが"日本風経営"に目覚めた理由」を寄稿している。
「まさに、かつての日本企業が社員の生活を丸抱えで支えてきたような、そんな経営スタイルの進化形へと向かっているようです」
https://president.jp/articles/-/28655

Wall Street Journalによれば「グーグルは、マーケットプレイスを通じて購入された広告がトラフィック(閲覧者数)を偽ったウェブサイトに掲載されたため、広告代金の返金を求められていた訴訟で、広告主に返金することに同意した」そうだ。
https://jp.wsj.com/articles/SB11636501267260693432204585309560046023770
巨大IT企業の出現で広告ビジネスのルールも変わっていくのは間違いない。日本でもアメリカそのままにはならないにしても、やはり変わるはずだ。

◎「第22回化庁メディア芸術祭受賞作品展」が日本科学未来館フジテレビ湾岸スタジオ東京国際交流館BMW GROUP Tokyo Bay、シンボルプロムナード公園などお台場エリアの様々な施設を会場として6月1日(土)から6月16日(日)に渡り開催される。
http://festival.j-mediaarts.jp/exhibit/outline/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000044620.html

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4)【深夜の誌人語録】

ジャーナリズムで最も大切なのは「会話」である。

報道と隠蔽 出版の歴史から「美しい顔」を消さないために 第1回

「〈盗作〉の文学史講談社
一度目はぐうの音も出なかった。何しろ、丸写しだったそうである。栗原裕一郎の『〈盗作〉の文学史』(新曜社)によれば、『講談倶楽部』一九五九年六月号に発表された講談倶楽部賞を受賞した有城達二の「殉教秘聞」が寺内大吉の「女蔵」を丸写ししていたのである。神坂次郎や西村京太郎を蹴落としての受賞であった。
「女蔵」と違ったところはたった三か所! 本筋と無関係な人名などわずか三か所であったという。選考委員には錚々たるメンバーが並んでいる。海音寺潮五郎山岡荘八源氏鶏太有馬頼義がそうだが、誰も見破れなかったそうだ。しかも、この有城は確信犯中の確信犯であった。何しろ「受賞の言葉」までもが盗用だったのである。オール新人杯を受賞した松浦幸男の言葉をパクッていたのである。
『講談倶楽部』は七月号に次のような謝罪文を掲載したそうである。最近の講談社から発表される多くの文章がどこか居丈高なのとは違って、こちらは低姿勢に徹している。
《小誌六月号に発表しました、第十二回講談倶楽部賞当選作品〝殉教秘聞〟は、その後、各方面からのご指摘により、調査の結果、〝小説春秋〟(昭和三一年八月号)所載の〝女蔵〟を盗作したことが判明しましたので、ここに受賞を取消し、第十二回講談倶楽部賞は〝該当作なし〟といたします。
尚、今回の不祥事につきまして、読者の皆様を始め、寺内大吉氏、ならびに関係各位にご迷惑をかけました不明を、深くおわび申し上げます》
この「殉教秘聞」の「盗作」を基準に置くのであれば、小幡亮介の「永遠に一日」は佐々木基一が言い張るように「盗作」(著作権法的にいえばということである)ではあるまい。ただ、開高健との因縁が絡んでいることに注目しておきたい。
さあ二度目である。
一九五七年下期の芥川賞開高健の「裸の王様」であった。大江健三郎の「死者の奢り」との争いであった。「裸の王様」を強く推したのは中村光夫佐藤春夫に加え、丹羽文雄であった。大江健三郎は半年後の一九五八年上半期の芥川賞を「飼育」で受賞している。
開高健は遅筆であったという。芥川賞を受賞したことによって遅筆によるトラブルも発生した。その頃、芥川賞を受賞すると、受賞第一作は『文學界』(文藝春秋)に掲載することになっていた。ところが遅筆の開高はこれを仕上げられなかった。そこで開高は『群像』(講談社)のために書いた原稿を『文學界』に回してしまう。これが講談社の怒りを買ってしまう。〝文学の鬼〟なる異名を業界中に轟かせていた大久保房男が激怒し、以後16年もの長きにわたって『群像』から干されてしまったそうだ。開高が小説においても、またノンフィクションにおいても講談社から代表作を発表していないのは、このためである。小説で言えば『日本三文オペラ』は文藝春秋であるし、『ロビンソンの末裔』は中央公論社であり、『輝ける闇』『夏の闇』は新潮社である。ノンフィクションでは『ずばり東京』『ベトナム戦記』ともに朝日新聞社の刊行である。
北康利は『佐治敬三開高健 最強のふたり』のなかで次のように書いている。周知のように『佐治敬三開高健最強のふたり』の版元は講談社である。
《当時の文壇には掟があったのだ。芥川賞を受賞すると、受賞後の第一作を『文學界』三月号に載せなければならない。
発売日は二月七日。読者も期待している。必死に机にかじりついた。締め切りは迫るが、どうしても書けない。またぞろ鬱が頭をもたげてくる。
そしてついに事件が起こる。
これより少し前のこと、講談社の『群像』編集長の大久保房男が開高に原稿を依頼してきていた。
大久保は文壇きっての強面で知られた名物編集長だ。断るわけにはいかない。開高は苦しみがらも「なまけもの」と題された一二〇枚の原稿を書きあげて大久保に渡した。みずからの体験が濃厚に投影されている、闇市世代の貧乏学生の煩悶を題材とした作品だった。
〈こういう作品をそのころに私はけっして書きたくなかったのだけれど受賞後のマスコミ攻勢にたまりかねて、ついせっぱづまってしまって、書いたのだった〉(「夏の背後(8)」『開高健全作品 小説7』)
そう告白しているほどで、彼はもう一度書きなおそうと講談社に赴いて原稿を持ちかえった。
ところが、そうこうするうちに『文學界』の締め切りが迫ってきた。なかば錯乱状態におちいっていた彼は禁断の行為に走る。なんと「なまけもの」の原稿を『文學界』に渡してしまったのだ。
当然のことながら大久保は激怒し、絶縁状を叩きつける。それから十六年もの間、開高は講談社に何も書かせてもらえなかった》
谷沢永一が『回想 開高健』(新潮社)を刊行したのは一九九二年のこと。同書で谷沢は「…開高健が、逝った。以後の、私は、余生、である」と書いている。開高と谷沢は無名の頃より、言ってみれば文学における同志であった。大阪天王寺中学で開高の一年上だった谷沢が主宰していた同人誌『えんぴつ』に開高は加わっている。『開高健青春の闇』(文藝春秋)の向井敏も『えんぴつ』の同人だった。開高が壽屋宣伝部(現サントリー)に入社するのが一九五四年二月。向井敏電通に入社するのは一九六〇年四月。この三人とも本の虫であった。
『群像』が新人文学賞を設けていることは、よく知られている。第二一回(一九七八年度)の新人文学賞には、中沢けいの「海を感じる時」と小幡亮介の「永遠に一日」の二作品が選ばれた。中沢けいの「海を感じる時」は、講談社から単行本として刊行されているが、小幡の「永遠に一日」は遂に単行本として刊行されることなく今日に至っている。「永遠に一日」は今や忘れられた小説である。ある意味、呪われた小説というべきかもしれない。何故に「永遠に一日」が歴史から消えてしまったのか? いわゆる「盗作」が問題とされたのである。
すなわち小幡亮介の「永遠に一日」は開高健の代表作である『夏の闇』に酷似した部分があったと新聞などで指摘され大騒ぎとなったのである。
当時の『群像』新人文学賞の選考委員は佐々木基一佐多稲子島尾敏雄丸谷才一吉行淳之介という顔ぶれであった。丸谷を除けば全員が絶賛しての受賞であった。選考委員を代表して佐々木は『群像』一九七八年八月号に「『剽窃』を考え直す」を発表している。ここで「永遠に一日」を擁護するとともに「永遠に一日」に対する『群像』新人文学賞の授賞を取り消さないことをはっきりと明記している。
しかし、これにて一件落着とはならなかった。開高の盟友でありつづけた谷沢永一が黙ってはいなかったのである。佐々木の「『剽窃』を考え直す」を厳しく批判する文章は『読書人の園遊』に収められている。
谷沢永一の『回想 開高健』を読めばわかるように佐々木基一は『えんぴつ』時代から開高を高く評価していた。開高が『夏の闇』を発表した際にも、開高と佐々木は『夏の闇』をめぐって対談もしている。谷沢にすれば、そんな佐々木が小幡の「剽窃」に気がつかなかったこと自体が信じ難かったはずである。それだけ谷沢の佐々木に対する口調は厳しさを極めた。こんな具合だ。
《それはともかく佐々木基一のこの文章は、もしこれを現代国語の入学試験に問題文として出題すれば全受験生を当惑させるに違いないほど、文章としての矛盾に満ちている》
栗原裕一郎の『〈盗作〉の文学史』は、次のように書いている。
《作家・開高健の生みの親ともいうべき佐々木が、開高の代表作といっていい『夏の闇』からの剽窃に気づかぬばかりか、わかったようなわからないような理屈で問題の所在を曖昧にしている様に対する怒りこそが、谷沢を批判に差し向けたのではないか》
大岡昇平の『最初の目撃者』(集英社文庫)に収められた「盗作の証明」は、この「永遠に一日」事件に大岡がインスピレーションを受け書き上げた短編である。小幡は小説にはなったが、作家としては消えてしまったのである。
栗原の『〈盗作〉の文学史』の調査によれば、その後、小幡亮介は『群像』一九八一年七月号に「欲望」を発表し、それから約十年にわたり沈黙を守り、『群像』一九九一年九月号に「森の奥で」を発表している。ただし、単行本として一冊にまとめられることはなかった。小幡に文学的才能がなかったかといえば、そうではないようである。三田誠広は『新しい書き手はどこにいるか』(河出書房新社)で「欲望」を取り上げ、次のように評価している。
《それにしても、うますぎると、と私は思う。そして、うますぎる、とひとに感じさせるのは、結局は、表現がうまくいっていないのではないか、という気がする。だが、怖ろしいほど才能のある人だ。次作を、期待する》
怖ろしいほどの才能をもってしても、デビュー作における「盗作」の汚名は雪げなかったのである。二度あることは三度ある。果たして北条裕子には、どのような運命が待ち受けているのだろうか。
今度が三度目ということになる。
激賞された北条裕子「美しい顔」
「美しい顔」は新聞の文芸時評では絶賛されていた。例えば東京新聞では佐々木敦が褒めちぎっている。こんな具合だ。
群像新人賞受賞作の北条裕子『美しい顔』(『群像』6月号)は、大変な力作だ。「選考委員激賞」とあるのを横目で見つつ、どれどれお手並み拝見といった気分で読み始めて、すぐさま瞠目した。そのまま熱に浮かされるようにして一気に読み終えてしまった。これはちょっと相当に凄い小説である。力作と書いたが、まさに言葉に宿る「力」が尋常ではない》
選考委員が激賞しているからといって別に驚くには値しない。「永遠に一日」のときもそうだったし、完全盗作の「殉教秘聞」にしてからが錚々たる選考委員は寺内大吉の「女蔵」とたった三か所を除いて同じものであっても、誰も気づくことなく激賞したと言われている。佐々木敦は、こうまで書いている。
《しかも、作者は実は被災者ではないのだ。北条裕子は東京都在住であり、あの日も、あの日からも東京に居て、これまで被災地に行ったことさえないのだという。しかし、それでも彼女はこの小説を書いたのだし、書けたのだ。書く必要があったのだ。このことはよくよく考えてみるにたることだと思う。これは才能の問題ではない。なぜ書くのか、何を書くのか、というのっぴきならない問題なのだ。小説を書くことの必然性の問題なのだ》
佐々木ばかりではない。毎日新聞が掲載している田中和生文芸時評は「マイッタ」で始まる。批評家としてテキストに切り込むことを放棄して、テキストを前に降参してしまっている? 昨今、文学界において批評家は絶滅危惧種なのだろうか。参ってしまうのは私たち読者である。
《マイッタ。
第六十一回群像新人賞を受賞した、北条裕子の長篇「美しい顔」(『群像』)を読んだ感想だ。新人賞受賞作であることを忘れ、気がつくと作品に強く引き込まれて、激しく感情を揺さぶられた。ついに二〇一一年に起きた東日本大震災を「表現」する作品が登場したと言っていい》
《フィクションこそ現実にかぎりなく接近できる、という小説の起源以来の逆説を証明しているがゆえに、震災後における小説の可能性を示す作品になっている》
群像新人賞受賞のスピーチで北条裕子は文学をほとんど読まないと発言したようだが(本来、ここいら辺りから首を傾げても良いと思うのだけれど)、「週刊読書人ウェブ」で坂口周はこの発言を踏まえて次のように書いている。
《スピーチでは、文学をほとんど読まない、と言っていたが、「書く」側だけの文学との付き合い方をすると、ベタな問題意識に絡め取られて気が付かない場合も多い。例外はいくらもあるだろうが、私の経験則に基づけば、読まない人は書き続けること(書くべきことを生み続けること)が難しい》
しかし、この文章につづくのは、
《誤解なきよう付け加えるが、当選は当然の出来だと思った。同じ語尾を反復して叩き付ける文体や、虚構の「私」に憑依した語りの熱量に抗いがたい魅力がある。読書していた機中で涙したくらい。また、気が動転していく描写を一人称で平気で書き切る蛮勇をみると、小説形式の本来的な自由さを再認させてくれもした》
という文章である。それでも、これに「が、書くことで「憤り」を昇華した今、なお書き続けられるのか、ということである。余計な心配に終わればいい」と加えたのは、坂口の批評家としての最低限の「抵抗」なのだろう。
結論は急がないが、坂口の心配とは別の意味で、北条裕子は「なお書き続けられるのか」という問題に直面することになる。
参考文献未掲載と言い張る天下の講談社
最初に気がついたのは読売新聞であった。読売新聞は二〇一八年六月二九日付で「芥川賞候補作に参考文献つけず、掲載誌おわびへ」を掲載したのである。講談社群像新人文学賞を選考委員に激賞され受賞し、芥川賞候補にもなった北条裕子の「美しい顔」に関して、「講談社は、同作を掲載した文芸誌「群像」6月号に参考文献の一覧をつけていなかったなどとして、7月6日発売の同誌8月号におわびの文章と参考文献を掲載する方針」なのだと読売新聞は書いたのである。
《震災直後の被災地や遺体安置所の様子などについて、石井光太さんのノンフィクション『遺体』(新潮文庫)や、被災者の体験記をまとめた金菱清編『3・11 慟哭の記録』(新曜社)などを参考にしたとみられる部分があり、参考文献が示されていなかったという》
講談社では「参考文献をつけなかったことに加え、被災地の描写にほかの著作物と類似した表現があったことを著者とともにおわびしたい」としている》
「被災地の描写にほかの著作物と類似した表現があった」とは、つまり「類似」の程度によっては「盗用」の可能性が部分的にではあれ、あるということではないのかと私は読売新聞の記事を読んで思った。新聞の文芸時評で絶賛されていることからすれば、北条裕子の「美しい顔」が小説として並々ならぬ「力」を持っていることは間違いないにしても、参考文献の一覧とお詫びを発表しなければならないような事態を何とか事前に避けることはできなかったのだろうかとも思った。佐々木基一が小幡亮介の「永遠に一日」を擁護するにあたって、多様な語彙を動員してみせた「『剽窃』を考え直す」を思い起こしていた。その点を谷沢永一に揶揄されることも含めて……。
朝日新聞デジタルは「芥川賞候補作、参考文献示さず類似表現 掲載誌でおわび」を掲載し、「参考文献は以下の通り」だとしている。
《『3・11 慟哭の記録』(金菱清編/東北学院大学震災の記録プロジェクト、新曜社)▽『メディアが震えた テレビ・ラジオと東日本大震災』(丹羽美之、藤田真文編、東京大学出版会)▽『ふたたび、ここから 東日本大震災石巻の人たちの50日間』(池上正樹著、ポプラ社)▽文藝春秋 2011年8月臨時増刊号『つなみ 被災地のこども80人の作文集』(森健取材構成)》
新聞は抑制した表現を選択していたがネットメディアやソーシャルメディアは違った。かつて佐野眞一の盗用疑惑を徹底的に追及したことのある荒井香織は次のようなツイートを連続して投稿していた。
《北条裕子(芥川賞候補)の盗作&剽窃疑惑、『群像』編集部は問題部分の対照表を自主的に作り、速やかに発表したほうがいいだろうな。そして新人賞も速やかに返納したほうがいいだろう。グズグズしてると、どこかのライターが盗用対照表とか作って大騒ぎし始めるかも》
芥川賞事務局は北条裕子の候補作を取り下げたほうがいいんじゃないかなあ。あるいは群像編集部から申し出て辞退したほうがいいのでは。盗用が発覚した小説を選考会にかけたってしょうがないだろ》
《しっかし、芥川賞候補作が盗用ってスゲー話だな。北条裕子とかいう作家は厚かましいにもほどがあるなあ。石井光太氏は大震災直後から被災地でハードな取材して作品を書いたわけで、被災地に一度も足を運んだことがない作家がその人の文章をパクるなんて、開いた口がふさがらないぜ》
『群島と大学―冷戦ガラパゴスを超えて』『〈群島〉の歴史社会学小笠原諸島硫黄島、日本・アメリカ、そして太平洋世界』『近代日本と小笠原諸島―移動民の島々と帝国』で知られる石原俊は次のようなツイートを投稿していた。
芥川賞候補者の「剽窃」問題。文系研究者間の「剽窃」は著作権法上違法でなくても厳しい制裁を受ける。リファレンスのルールが厳格だからだ。他方、その基準が甘いノンフィクションや評論等のジャンルの作家が、研究者の長年の調査成果を上手に「剽窃」する事例を何度もみてきた。ええかげんにしとけよ》
《実にセコいやり方で研究者の地を這うような調査成果をお上手に「奪って」いく「剽窃」まがいに手を染めてきたノンフィクションライターや評論家は、Twitter上を含め、そこらへんに何人もいますよ。「左派」「リベラル」「良識派」とみられている人物も含めてですね》
これは文化人類学者の磯野真理のやはりツイッターにおける指摘だ。
《改ざんは意図的にやらないと起こらない。一方盗用は、「このくらいならいいや」という著者側の甘さに起因し、それを放置すると、もっと派手な盗用が次から次へと起こることがあるという。
これは学問の世界の話だけど、小説はどうなんだろう。
ちなみに私は、人との会話から得たインスピレーションも必ず参考文献に入れなさいというトレーニングを、修士の時に受けました。
他の研究者のアイデアや言葉を無断で、もしくは適切な表示なく流用することも盗用
ちなみに悪気がなかった、というのは理由にならないそうです。なぜならこれは研究者として当然身につけておくべき心得だから》
「文学」は「盗用」「剽窃」に甘く、「学問」は厳しいのだろう。
東京新聞が6月30日付で掲載した「芥川賞候補作 複数の類似表現 講談社『群像』におわび掲載へ」は、こう書いている。
芥川賞直木賞を主催する日本文学振興会は「対応を検討中で、候補から外すかどうかも含めて何も決まっていない」としている》
毎日新聞は6月29日付で「芥川賞候補 北条さん小説、他作品と類似表現 出版元謝罪」を掲載し、こう書いている。
芥川賞の選考会は同月18日に開催。賞を主催する日本文学振興会は「現在対応を検討中」としている》
共同通信文芸時評を連載し、「美しい顔」を奥行きある震災文学として評価している阿部公彦のツイートである。
《北条裕子さん「美しい顔」(『群像』6月号)の無断借用問題。この作品、私も共同通信文芸時評でとりあげています。作品の芯となる「いらいら」「怒り」の部分が借用でなければいいな、と思っています》
『旅』の元編集者にして紀行エッセイストの竹内正浩はただ一言ツイートしている。
《まるっきり剽窃じゃないか》
講談社によれば石井光太のノンフィクション『遺体』(新潮文庫)に大きな示唆を受けていたということだが、石井のノンフィクションは小説家を刺激するようだ。石井自身がこんなツイートをしている。
《『ウェンディのあやまち』(美輪和音)という小説が送られてきた。幼児置き去り餓死事件を題材にしたミステリー。拙著『「鬼畜」の家 わが子を殺す親たち』が参考文献だとか。わざわざこう記してくれるのは嬉しい。ストーリーも面白いです》
石井は今回の件をどう考えているのだろうか。朝日新聞デジタルは6月29日付で「新潮社『修正を含め対応要望』 芥川賞候補作の類似表現」を掲載している。
《石井さんは北条さんと講談社から謝罪文を受け取ったとし、「東日本大震災が起きた直後から現地に入り、遺体安置所を中心として多くの被災者の話を聞き、それぞれの方の許諾をいただいた上で、まとめたのが『遺体 震災、津波の果てに』(新潮社)です。北条裕子氏、講談社には、当時取材をさせていただいた被災者の方々も含め、誠意ある対応を望んでいます」と書面で述べた。
新潮社ノンフィクション編集部は「複数の類似箇所が生じていることについては、単に参考文献として記載して解決する問題ではないと考えています。北条氏、講談社には、類似箇所の修正を含め、引き続き誠意ある対応を求めています」とした》
ちなみに、石井光太の『遺体』について講談社ノンフィクション賞選考会選評(同作は落選)で野村進はこういって痛烈に批判している。
《この人は、社会的弱者への共感ではなく、むかしの見世物小屋的な指向で題材を選んできたような気がします。しかも徹底的に取材しているわけでもない。とりわけ、海外にいて反論できない社会的弱者を晒し者や作り話のネタにしてもいいのかと私は思いますね。
第一、題材がこんなに重いのに、内容はなぜこんなに類型的で予定調和的なのでしょうか。このようなテーマでのノンフィクションの量産は事実上不可能なのに、なぜ次から次へと出せるのか。ようするに単なるネタ扱いで苦しむ人々に正面から真筆(引用記事の誤植ママ)に向き合っていないためではありませんか》
石井光太の『遺体』は、そもそも批判の目を向けられがちな、フィクション傾向の強い作家による作品であるということも含めて考える必要があるかもしれない。選考会では野村進のみならず、高村薫立花隆といった選考委員から『遺体』はノンフィクションとして否定されてしまったが、芥川賞候補にまでなった小説の圧倒的リアリティを支えるパーツの役割を果たしているという事態をノンフィクションの側はどう考え