【文徒】2014年(平成26)4月14日(第2巻68号・通巻270号)

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1)【記事】業界史上初の出版社9社9冊の超刊号同時発売
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】業界史上初の出版社9社9冊の超刊号同時発売

4月12日、出版社9社による合同企画「マガフェス’14 9冊の超刊号同時発売!!」が実施され、B5判変型に統一した増刊9誌が店頭に並んだ。発売に先立つ11日には神田神保町三省堂本店8階催事場にて記者発表会が行われた。
挨拶に立った日本雑誌協会の石崎孟理事長は、3年前に理事長に就任以来、雑誌復興を唱えて来たが、「ライバル関係にある出版社がその垣根を越えて一石を投じたのが今回の『マガフェス’14』である」と企画の意義を強調した。
「超刊号」9誌は次の通り。
「mer+」(メルプラス/学研ホールディングス。580円)の正田省二編集長は、好調な『mer』の一つ上の世代、アラサーをターゲットに編集者・ライターとも同じアラサー女子で固めた制作スタッフで臨んだ。読モ、ブロガーのフォロワー6万人の素人市場が狙いだという。
Brilliant(光り輝く)の中から取り出したスペルを誌名にした「Rillia」(講談社。550円)は、既婚未婚、子供の有無を問わず、「ウチから輝くかわいい暮らし」をコンセプトに、ウチ=家&内側を輝かせる、“クッキング、リビング、ビューティ&ヘルス” を柱に情報を発信。秋吉敦司編集長は「Facebookで課題を投げ、雑誌で記録、表彰する」と、雑誌とソーシャルメディアの融合の可能性を語った。秋吉は「フライデー」の編集長だったキャリアを持つ。
光文社の「Sprout」(980円)が提案するのは、新しい健康情報誌。「おいしい野菜を食べに行こう! 買いに行こう!」の特集タイトルが示すように、健康が楽しいという価値観が根底にある。ジョギングが体に良いといって始めた人の7割が挫折しているそうだが、その7割の読者に向けて作っていると大給近憲編集長。
集英社の「On y va」(オニヴァ。500円)はフランス語で「Let's Go」の意。野村英里編集長は、今の60代は見た目も気力体力も若いが、定年などで人生の変わり目を迎えている、そして彼女たちは雑誌と共に育って来た世代だという特徴を踏まえ、いわばネオシニア世代に対して、自分のやりたかったことを思い切り楽しもうと提案する。
「Gift LEON for Kids」(主婦と生活社。880円)の前田陽一郎編集長は「企画趣旨を聞いて、ターゲットレスの『LEON』とは真逆メディアを作りたいと思った」と語った。
小学館の「おもタメ.」(500円)は、学習誌の難しさ、つまり、読者は子供だが購買者は大人で、子供は面白い漫画が多いほうが喜ぶが、大人(親)はタメになる情報が多い雑誌を選びたがる、という誌面作りの難しさの解消を目指したと松井聡編集長。それが「おもしろくて、タメになるすし」という特集に現れている。子供が見やすい誌面だが、寿司に関連するウンチクは大人でも充分満足できる。
9誌中唯一中綴じの「LaLa Begin」(世界文化社。670円)は、徹底リアルなモノ&ファッション女性誌。「かわいいだけじゃ納得いかない」という新しい消費価値観を持った女性に対し、今号では「ブラックドレスから焼肉のタレまで」価値ある女子定番を、リアルショップのスタッフやスタイリストがモデルとなって紹介している。「宝探しができる雑誌」と波多和久編集長は言う。
「子どもと一緒に海外旅行!」(ダイヤモンド社。780円)は、読者アンケートでニーズが高かった、子どもと行く海外旅行の情報誌。数藤健編集長いわく「『地球の歩き方』で蓄積されたノウハウを詰め込んだ」。ママさん編集者が実体験を誌面に反映させている。
文藝春秋の「おいしいものは日本中から取り寄せる」(680円)は、「週刊文春」の大人気連載「おいしい!私の取り寄せ便」10年分から特に評判の高かった逸品を厳選している。各界の著名人が心底気に入っている“お取り寄せ食品”という署名性が信頼されていると西川清史編集長は胸を張った。
「超」に相応しい企画であるかどうかは賢明なる読者が判断してくれよう。
http://magafes.jp/

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2)【本日の一行情報】

◎簑谷則美が社長をつとめるキャンディッド・コミュニケーションズが運営するクラブ・ウィルビーを集英社アミューズKDDIサントリーJR東日本新日鉄住金エンジニアリング大和ハウス東芝トヨタ三井不動産が協賛している。クラブ・ウィルビーの代表は残間理江子だ。
http://www.club-willbe.jp/about/

◎「老いがい」という言葉は良いよね。
https://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn1403/sin_k758.html

◎サイト「珍寺大道場」の小島独観が宝島社から「ヘンな神社&仏閣巡礼」を刊行した。棒腹絶倒の一冊なんだよなあ。日本人の信仰のあり方そのものが捧腹絶倒というべきなのかもしれない。
http://tkj.jp/book/?cd=02243001
http://www41.tok2.com/home/kanihei5/

村上智彦の「医療にたかるな」は新潮新書の一冊であったが、日本医師会が主催し、厚生労働省が後援し、新潮社が協力する日本医療小説大賞の最終候補作品が決定した。
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20140409_4.pdf

タモリの「笑っていいとも」の後番組としてスタートしたフジテレビの昼の情報番組「バイキング」(月〜金曜前11・55)は9日放送の視聴率がたったの3・1%であった。フジテレビの凋落を象徴する数字だ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140410-00000075-spnannex-ent

小保方晴子の記者会見を「NHKは通常の番組を変更し、会見開始の午後1時から生中継。当初30分間を予定していたが午後2時25分まで延長した」というけれど、これが公共放送なのかなあとオレは首を傾げる。
http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp0-20140409-1282911.html

◎「LINE マンガ」がライトノベル作品の提供を開始。
KADOKAWA講談社、オーバーラップなどから作品提供を受け、アニメ映画化された『涼宮ハルヒ』シリーズや、4月よりアニメ化される『龍ヶ嬢七々々の埋蔵金』など人気作を現時点で2000冊以上配信している。配信作品は4月中に4000冊以上への拡大を予定しているという」
http://ascii.jp/elem/000/000/883/883651/
アニメ化された「フルメタル・パニック」(著・賀東招二)など3作品の1巻を無料でダウンロードできるキャンペーンを実施している。「LINE」とラノベは相性が良いと思う。LINEkの森川亮社長は来年には世界で10億人のユーザーを目指すそうだ。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N3SQZY6K50XU01.html

◎画像共有SNSPinterest」と「VOGUE JAPAN」とコラボ。
「『Pinterest』上に『VOGUE JAPAN』の公式アカウントが開設され、『VOGUE JAPAN』の写真を活用した展開や、『VOGUE JAPAN』の15周年関連コンテンツが用意される予定となっている」
http://www.mdn.co.jp/di/newstopics/35477/?rm=1

◎第3回デジタルえほんアワードが開催される。
http://www.digitalehonaward.net/

エニグモは、世界中の本やコンテンツをクラウドソーシングで翻訳し電子書籍で販売するプラットフォーム型サービス「BUYMA Books(バイマブックス)」を グランドオープンし、電子書籍の配信を開始した。
http://www.enigmo.co.jp/wp-content/uploads/2014/04/press_20140407.pdf
http://www.enigmo.co.jp/wp-content/uploads/2013/12/press_20131204.pdf

◎米アマゾンは、電子コミック配信プラットフォームcomiXologyを買収したという。
http://japan.cnet.com/news/business/35046425/
http://ggsoku.com/2014/04/amazon-acquire-comixology/

大日本印刷は、廣江彰教授が指導する立教大学経済学部廣江ゼミナールが推進する地域活性化プロジェクト「池袋スマートマップ」を支援し、O2OプロモーションサービスやNFCタグ付きブックカバーなどを提供する。三省堂書店池袋店、ジュンク堂書店池袋本店、芳林堂書店コミックプラザ店、リブロ池袋本店の協力を得て、NFCタグを貼付したブックカバー5000部を配布し、そのブックカバーにNFC対応スマホをかざすことで、池袋駅周辺の飲食店や観光スポットなどの情報が配信され、来店促進につなげるO2Oプロモーションを展開するというわけだ。
http://www.dnp.co.jp/news/10097840_2482.html

アメリカでは広告ビジネスのあり方が大きく変わりつつある。デジタル化とは「取次」とか「代理」というビジネスを無化する力学が絶えず働いているのである。アメリカでは「総合広告代理店」という概念が意味を持たなくなったようである。
「プライベート・トレーディングデスクとは、いわゆる入札運用型広告のバイイングオペレーションを企業内で行い、代理店を通さず直接DSP事業者から買い付けるための機能である。メディアの買い付けまで自社内組織で行う例は、極めて進んだ企業であるが、多くの企業がインハウスにマーケティング組織を持つ傾向は顕著だ」
http://www.advertimes.com/20140411/article153768/

ユニクロ文藝春秋に損害賠償などを求めた裁判で最高裁に上告した。私にはユニクロSLAPP(いやがらせ&いじめ)訴訟としか思えない。うがった見方をすれば、たとえ敗訴しようともユニクロ最高裁まで争うことを厭わないというイメージを定着させるだけで雑誌ジャーナリズムを委縮させる効果は充分にある。
http://news.nicovideo.jp/watch/nw1023979

白泉社から「MOE×ムーミンの公式ガイド」が刊行された。
http://www.s-book.net/plsql/slib_detail?isbn=9784592843016
今年はトーベ・ヤンソンの生誕100周年にあたる。
トーベ・ヤンソン生誕100周年記念特設ページ」はこちら。
http://www.moomin.co.jp/tove100anniv/

東京ディズニーリゾートの公式ガイドブック「東京ディズニーリゾート ベストガイド 2014-2015」が電子書籍としても配信された。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000376.000001719.html
これは便利だろう。スマホで読める電子書籍は携行性に優れている。

集英社の少女まんが誌「マーガレット」「別冊マーガレット」の半世紀にわたる足跡を辿る展覧会「わたしのマーガレット展 〜マーガレット・別冊マーガレット少女まんがの半世紀〜」が六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで9月20日より開催される。
http://my-margaret.jp/pages/teaser.html
私も「ベルサイユのばら」の読者であった。50年ともなれば、親子三代で読者ということもあり得るよなあ。

電子書籍ストア「BookLive!」はランシステムが運営する複合カフェ「自遊空間」のクーポンアプリとのサービス連携を開始した。
http://www.runsystem.co.jp/wp/wp-content/uploads/2014/01/fafb9ebc88b005385723a6a77f164602.pdf

村上春樹の短編集「女のいない男たち」(文藝春秋)でも発売カウントダウンイベントが開催される。今回、舞台となるのは紀伊國屋書店新宿本店。18日深夜0時から販売するそうだ。昨年、代官山蔦屋書店で開催された「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」のカウントダウンに際しては、40社以上のメディアが駆けつけ、テレビ局3媒体による生中継があったというが、今回はどうなることやら。文藝春秋の腕の見せどころだろう。
http://www.kinokuniya.co.jp/c/store/Shinjuku-Main-Store/20140408235408.html
昨年も書いたような気がするが、加藤典洋には声がかからないのかなあ。村上の最大の理解者なんだけどね。

祥伝社は「Zipper」「nina’s」などの女性ファッション雑誌やムック・書籍等の編集業務や各種イベントやキャンペーンの企画・演出業務にかかわる契約社員を募集している。契約は1年ごとに更新し、原則3年間ですが、双方の話し合いにより、もう1年延長する場合があるという。月給25万円以上。裁量労働制/1日7時間。
http://tenshoku.mynavi.jp/jobinfo-100119-4-8-1/

東洋経済新報社が記者・編集者を中途採用する。
http://tenshoku.mynavi.jp/jobset/index.cfm?fuseaction=mrjt_NewJobinfo_form&client_id=130589&plan_id=2&contract_id=5&job_seq_no=1&ty=cteo
「平均年収 1,069万円 (賞与・時間外手当含む) 平均年齢43.1歳」なのだそうだ。

田中優子が法政大学の総長なのか!「学研・進学情報」にインタビューが掲載されている。
http://www.hosei.ac.jp/documents/gaiyo/socho/140411_01.pdf
田中優子というと松岡正剛を思い出す。松岡の「千夜千冊」には、こんな文章がある。
「以前に、田中優子を公演後の楽屋に連れていったときは、目の前に美輪さんを前にしただけで涙を溢れさせていた。声も嗚咽したままだった。そのときの短い会話では、美輪さんはあることについて、『ええ、そういうことって、そう、あるのよねえ』と包んだだけなのだ。たったそれだけだったのに、あとで彼女に聞くと、『美輪さんの前ではすべてのことが了解されるんだってことがすごくわかったから。この優しさって何だろうと思ったら、泣けてきた』と言っていた」
http://1000ya.isis.ne.jp/0530.html
松岡の早稲田大学新聞部時代の「同僚」は朝倉喬司であった。
「いかにもいま読んだばかりというふうにわざとらしく書いてきたけれど、実は朝倉喬司はぼくの大学時代の仲間の一人である。朝倉がこのような書き方でしか文章を書かない男であることは、よっく知っている」
http://1000ya.isis.ne.jp/0810.html

◎出版社は決して「大きい組織」ではないのだが、出版社にとっては耳の痛い話だ。むろん、耳さえ痛くならない関係者も多いだろう。
「森川氏は現在イノベーションを起こすことに成功した事例について、『既存のプロダクトを持っており、それを壊すような正反対の性質を持ったプロダクトであることが多いのではないか』と指摘する。しかしそんなプロダクトを作ろうとすると、『内部に邪魔する人がいて、調整が必要になる』(森川氏)とのことなので、結局小さい組織が早く成長すると考えているそうだ。とにかく速いスピードでユーザーに価値を提供できることが重要となるという」
http://jp.techcrunch.com/2014/04/10/jp140410-nes05/

井上ひさしの「完本 ベストセラーの戦後史」(文春学藝ライブラリー)がベストセラーを6つのパターンに分類しているが、これは今でも妥当する。
1)セックスもの 2)真相はこうだ、もの 3)愛と死もの 4)人生論もの 5)実用書もの 6)占い、予言もの。
http://www.excite.co.jp/News/reviewbook/20140411/E1397154891402.html

◎「Dモーニング」に搭載された画像切り取り機能の評判が良いようだ。ソーシャルリーディングに一歩踏み出しているのは間違いあるまい。
<使い方は簡単で、読んでいて「ここだ!」と思ったら、画面をタップしてメニューを出します。「切り取り」を選び、範囲を指定。四隅にある「『」のような記号で切り取りたい箇所を設定し、「完了」をタップします。するとカメラロールに画像を保存したりプリントするだけではなく、「Twitter」や「Facebook」を選んで投稿できます。
切り取られた画像には「#Dモーニング」のクレジットが入り、投稿にも「#Dモーニング」のハッシュタグがつきます。制限はそれだけ。かなり自由に切り取って投稿することができます>
http://www.excite.co.jp/News/reviewapp/20140411/E1397146836670.html

サントリー緑茶「伊右衛門」CMで伊右衛門夫妻を演じる女優の宮沢りえと俳優の本木雅弘のコンビが10年を迎えた。
http://news.mynavi.jp/news/2014/04/11/189/?gaibu=hon

◎私は恐らく吉田浩とやらが手がけた本を一冊も読んでいないだろう。吉田は講談社から「本を出したい人の教科書」を刊行している。ま、「錯覚実用本」の類である。
http://www.j-cast.com/mono/bookwatch/2014/04/11201898.html
こういうサイトを見ると本当に吐き気がして来る。
http://shuppan.wizbiz.me/about/profile_index01.html
口直しに最相葉月の「仕事の手帳」を読んだ。
http://www.nikkeibook.com/book_detail/16927/

◎クレヨンハウスはワンテーママガジン「いいね」を創刊。創刊号の特集は「きもちいい下着」だ。
http://www.crayonhouse.co.jp/shop/g/g4910032260548/
クレヨンハウスの落合恵子は創刊に際して次のように語ったそうだ。
「平和や命を守らない方向に大きな力が働くとき、それに対抗していくすべは、愛する人たちとの確かな暮らしです」
http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2014041202000002.html
もうちょっと肩の力を抜けないものか。雑誌の狙いとして良い線をいっているだけにそう思う。

講談社は「イットラブ」や「Rillia」を何とか定期刊化したいところだろう。
http://itlovemag.com/
http://www.wwdjapan.com/business/2014/04/11/00011278.html

アメリカでは、インターネット広告がテレビを抜いた。
http://nyliberty.exblog.jp/22429253/

西尾維新の「物語」シリーズ最新刊「終物語下」(講談社) は、週間9.3万部を売り上げ、シリーズ7作連続、通算9作目の首位をオリコン“本”ランキングBOOK(総合)部門で獲得した。シリーズ第6弾「花物語」のTVアニメ放送が5月31日から始まる。
http://news.nicovideo.jp/watch/nw1023149

集英社の「別冊マーガレット」に連載されている八田鮎子の「オオカミ少女と黒王子」がテレビアニメ化されることになった。
http://natalie.mu/comic/news/114219

◎「週刊少年ジャンプ」歴代TVアニメ化作品一覧。2011年から急に増えている。
http://nendai-ryuukou.com/article/048.html

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3)【深夜の誌人語録】

時間にだらしのない人間は得てして人生にだらしないものである。