【文徒】2014年(平成26)4月15日(第2巻69号・通巻271号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】元書店員の本屋大賞批判
2)【記事】河北新報「復興の陰で」から目を背けてはなるまい
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2014.4.15 Shuppanjin

1)【記事】元書店員の本屋大賞批判

元書店員のブログに引き込まれた。元書店員のブログが喝破するには本屋大賞のノミネート作品は「書店員か、もしくはある程度書店に行く人が見ればわかるんだけど、これもう売れてるんですよ」ということになる。何故、こんなことになるのかといえば、元書店員は「全国書店員が選んだ売りたい本を選ぶ賞だと思ってたんですけど、みなさん時間がないのかやる気がないのか知りませんけど、ランキングから適当に引っ張ってきた結果がこれなんでしょうね」と推測している。
「書店員5年目、ああこんな賞もできたんだなーと、一縷の望みをかけてマイナー作家の佳作・良作にぺしぺし票を入れてた私が馬鹿みたいじゃないですか。
所詮ただの物売りです(でした)けど、受賞会見してる作家の周りでニタニタ笑ってる書店員のみなさんは、私とは全く違う生き物なんだろうなあと思いました」
私は、この元書店員の気持ちが痛いほど理解できる。ブログの最後は、こう結ばれている。
「明日からAmazonでバイトです。何も考えずにいられそうです」
http://anond.hatelabo.jp/20140413133010
吉川英治文学新人賞よりも本屋大賞のほうが話題になる風潮はどこか狂ってはいないか。私が受賞者であれば当然のことながら吉川英治文学新人賞を喜ぶ。出版業界そのものが逆立ちを始めているのではないだろうか。「寄らば大樹の陰」とばかりに「本屋大賞」にすがりついているような「街の書店」が生き残れるとは私には到底思えないのである。

                                                                                                                        • -

2)【記事】河北新報「復興の陰で」から目を背けてはなるまい

日本出版インフラセンターは約束通り、第三者委員会を設置して、コンテンツ緊急電子化事業をしっかりと検証すべきだろう。河北新報の「復興の陰で」から出版業界は目を背けてはならないはずだ。そうしないと東日本大震災の復興予算に関して、雑誌ジャーナリズム、出版ジャーナリズムは何も言えなくなってしまう。
河北新報が問題にしているのは緊デジが本来の事業目的と異なっているのではないかということに加え、この事業で電子化されたマンガ本のほぼ総てが既に電子書籍として流通、販売されていたという点である。本来の事業目的と違っているのではないかという問題に関しては日本出版インフラセンターが事業内容を検証する第三者委員会を2013年秋に設けると発表しているにもかかわらず、現段階では設置されていない。
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201404/20140411_73028.html
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201404/20140409_73016.html
記事の背景に関して最低限の説明をしておくことにしよう。
経済産業省による「コンテンツ緊急電子化事業」(緊デジ)は6万冊の書籍を電子化する事業だった。出版社が書籍を電子化するに際して費用の半分を国が補助し、総事業費は20億円。経済産業省はこのうち10億円を震災復興予算として計上した。
http://www.kindigi.jp/about/
緊デジを受託したのは日本出版インフラセンターであった。日本出版インフラセンターの設立発起人は日本書店商業組合連合会日本出版取次協会日本書籍出版協会日本雑誌協会日本図書館協会の5団体。基金を提出したのは日本書店商業組合連合会日本出版取次協会日本書籍出版協会日本雑誌協会の4団体。
一般社員は小学館講談社集英社文藝春秋、新潮社、日本出版販売、KADOKAWA筑摩書房学研ホールディングス、太洋社、ポプラ社白泉社秋田書店三省堂書店主婦の友社全国大学生活協同組合連合会昭和図書、出版倉庫流通協議会、偕成社、数理計画、旺文社、栗田出版販売図書館流通センター、大阪屋、光文社、NHK出版、東京大学出版会朝日新聞出版、毎日新聞社岩波書店中央公論新社有隣堂ジュンク堂書店平凡社東洋経済新報社河出書房新社紀伊國屋書店丸善書店医学書院、太田出版トーハン中央社、版元ドットコム、インプレスホールディングス、日本出版者協議会。
http://www.jpo.or.jp/about/index.html
出版社から日本出版インフラセンターから直接申請もできるが、株式会社の出版デジタル機構が出版社からの申請を代行した。出版デジタル機構の株主が官民出資の投資ファンドである産業革新機構である。
http://www.pubridge.jp/company/
仲俣暁生が昨年「WIRED」に発表した「さようなら、『電子書籍』」も読んでおきたい。
http://wired.jp/2013/08/02/farewell-ebooks/
仲俣は4月12日フェイスブックで次のように書いている。
「とにかく事実をすべて開示すること。国策電子書籍事業に積極的に関与した出版界への信頼回復は、そこからしかあり得ない」
https://www.facebook.com/NakamataAkio

                                                                                                                        • -

3)【本日の一行情報】

◎実物大の「進撃の巨人」。迫力あったろうな。
http://www.huffingtonpost.jp/2014/04/11/attack-on-titan_n_5137007.html?utm_hp_ref=japan&ir=Japan#gunosy

◎「週刊文春」4月17日号で東京新聞の記者が書いた記事の編集部によって書かれた「高齢処女だなんて、キムチ悪いわ」というキャプションが話題になっている。これも「憎悪の商品化」が生んだセクハラ&ヘイトキャプションなのかもしれない。
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-5506.html
ブログ「村野瀬玲奈の秘書課広報室」は左派系おもしろブログの代表格だ。村野はサイバー政治団体「世界愛人主義同盟」秘書課勤務なんだそうだ。いずれにせよ、私からすれば「高齢童貞」も気持ち悪いが、「週刊文春」は「高齢童貞」の原稿を載せていたっけ。
書籍のタイトルも確かに一線を越え始めている。祥伝社新書は「どの面下げての韓国人」(豊田有恒)だもんな。私は別に親韓派ではないが、他国の書店に「どの面下げての日本人」なる書物が置かれていたならば、書かれている内容にかかわりなく、その書店なり、版元なりに必ず抗議に向かうことだろう。こういうタイトルをつける編集者に愛国心はあるのかと逆に問いたい。
http://www.s-book.net/plsql/slib_detail?isbn=9784396113650
4月4日の朝日新聞に「どの面下げての韓国人」の広告が掲載されたが、これに対して弁護士の神原元は朝日新聞に対して広告掲載の経緯を明らかにするよう内容証明を出したそうだ。神原は次のようにツイートしている。
「4月4日、朝日新聞にこのような広告が掲載されました。明らかなヘイトスピーチで、このような広告の掲載自体許されないと考えます。本日、朝日に対して掲載の経緯を明らかにするよう内容証明を出しました」
https://twitter.com/kambara7/status/453805937623433216
ちなみに豊田は原発推進派であり、神原は反原発派である。

◎アマゾンVSグーグルの戦いは見物である。アマゾンがスマートTVやスマホ進出ででグーグルの領域を侵犯し、グーグルがECショッピングでアマゾンの領域を侵犯しようとしている。
http://biz-journal.jp/sankeibiz/?page=fbi20140411012
アマゾンのIT企業としての強みは、広告依存型のビジネスモデルではなくグローバル化を果たしたことである。

◎「Sprout」(光文社)は「超刊号」の一冊。鎌倉や葉山だけではなく南房総に目をつけたところは鋭い。
http://mart-magazine.com/contents/sp/sprout.html

◎「LaLaBegin」(世界文化社)も「超刊号」の一冊だが、デジタル版も刊行している。自分自身で描いたという波多和久編集長のイラストがステキではある。
http://ebookstore.sony.jp/item/LT000017904000348062/

◎「オニババ」ではなく「オニヴァ」(集英社)もこれまた超刊号。死ぬまでセックスが男の60代なら、死ぬまでキレイが女の60代なのだろう。
http://onyva.shueisha.co.jp/index.html#sampleBox
昔、熟年という言葉がよく使われたけれど、当時は45歳以上をそう言ったんだよね。団塊の世代は男も女もイケイケなんだろう。

◎「ホドロフスキーと100人座禅大会」なんてあるの!ホドロフスキーによる説法まであるのか。「エルトポ」や「ホーリーマウンテン」が懐かしい。
http://dacapo.magazineworld.jp/presents/134130/

◎「まちなか読書会」で有名な甲府の春光堂書店。「深沢七郎外伝」を見せるところなど、なかなかのものです。
http://www.harulight.com/
宮川大輔店長とD&DEPARTMENTナガオカケンメイトークセッションをネットでも聞くことができる。
http://www.ybs.jp/radio/dr/2014/03/24162627.html
D&DEPARTMENTには山梨日日新聞山梨放送を中核とする山日YBSグループが一枚噛んでいる。
http://www.d-department.com/jp/shop/yamanashi/

小学館の「ベツコミ」5月号は創刊45周年を記念して読み切り集2冊が附録となっている。紙の附録が王道だとふと思ったりして。
http://natalie.mu/comic/news/114348

◎4月12日に六本木ヒルズで宝島社の雑誌「InRed」とFMラジオ局 J-WAVE 81.3 FMとのママ世代に向けたコラボイベント「InRed×J-WAVE MOM'S HOLIDAY」が開催された。
http://news.ameba.jp/20140413-223/

◎「週刊プレイボーイ」のグラビアに46歳熟女の北山みつきが下着姿で登場するという。
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2014/04/14/kiji/K20140414007973030.html
実は私は北山みつきのファンである。北山の「ホレホレ節」(ハワイ移民による労働歌である!)を題材にした「あなたの笑顔」は素晴らしい。
https://www.youtube.com/watch?v=gY8ib4rncQI
「ホレホレ節」について詳しく知りたければ、これをお読み下さい。
http://www.arc.ritsumei.ac.jp/folksong/multiculture/009.html

                                                                                                                        • -

4)【深夜の誌人語録】

才能は人を窮地に追い込み、努力は人を窮地から救う。