【文徒】2014年(平成26)4月16日(第2巻70号・通巻272号)

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1)【記事】日本雑誌協会「マガフェス 9冊の超刊号 同時発売」について
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】日本雑誌協会「マガフェス 9冊の超刊号 同時発売」について

客 日本雑誌協会による「マガフェス 9冊の超刊号 同時発売」なんだけれど、君はどう評価するのかい。
主 こういう取り組みは良いと思うよ。業界をあげて「雑誌の復権」に取り組むことは大切だと思う。それだけにいくつか言っておきたいこともある。
客 どうぞ、どうぞ(笑)。
主 オレだったら「マガフェス」という呼称でなく「マガフェスト」とすると昨日も喋ったんだけれど、その真意を言うと、フェスティバルではなくムーブメントにしなくては駄目だと思うんだ。ムーブメントとは継続だからね。1回で「雑誌の復権」が達成されるなんていうことはないという認識が必要だ。
客 今年の結果をしっかりと総括して来年に繋げるということだよね。「超刊号」という呼称は良いと思った。9社9冊がしのぎを削って、そこから実際、創刊に繋がっていけばベストなんだろうね。
主 しかし、実際9冊を見ると温度差が歴然としていたなあ。店頭に超刊号が並べられて、それを手にとってもらったお客さんに「雑誌はこんなこともできるのか!」と思ってもらわなければ、少しもスーパーじゃないよな。雑誌の日常の延長線上で作られた超刊号には正直言って青ざめたもの。超刊号と名乗る以上、単なる増刊号であってはなるまい。
客 君が及第点を与えていた超刊号は…。
主 「スプラウト」「リリア」「オニヴァ」ぐらいかな。
客 新聞の全面広告でも、9冊の表紙が掲載されなかったね。自信がなかったのかな。
主 あそこで堂々と書影を掲げられるだけのパワーが9冊総ての超刊号にあったかというとオレは疑問だ。それよりも読者を巻き込んだムーブメントにする必要があったんじゃないだろうか。例えばSNSを使って読者から、こういう雑誌を読みたいという声を募って、その声を実現するとか。あるいは各社が超刊号の企画案をSNSで公開し、そこで読者投票を行い上位9誌を超刊号として刊行するとか、そういう仕掛けがあっても良かったんじゃないだろうか。出版社が考えた企画を上から下に流すだけという構図は古いよ。かつて雑誌の創刊は世の中をザワつかせる事件だったけれど、折角、9冊が束になって店頭に並ぶのだから、世の中に波紋を起こすだけのインパクトがあっても良かったんじゃないのかな。
客 9冊の「超刊号」が出たとは報道できるけれど、こんなに凄い内容の9冊が揃ったとは報道されなかったものね。
主 例えばだよ、「ポパイ」創刊号と同じことを同じメンバーで作ったというような超刊号があれば、それだけで話題になるじゃん。いとうせいこうを編集長に迎えて「ホットドッグプレス」を一回限りで復刊するとか。創刊には繋がらないけれど、せめてそのくらいの仕掛けがあっても良かったように思う。
客 マガフェス自体が編集力を問われているということだね。
http://magafes.jp/

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2)【本日の一行情報】

小学館の「よのなかの図鑑」。タイトルも良い。私も小さい頃は図鑑好きであった。やりたい仕事は学校の先生だったりしてね。小学一年生の女の子の場合、やりたい仕事の1位は「ケーキやさん」!初版は6万2000部。シリーズ累計では125万部。
凸版印刷KDDIのコラボによるAR技術を採用。スマートフォンに専用の無料アプリをダウンロードすれば、8つの写真にスマホをかざすだけで関連する動画が見られる仕組み」
そのうちデジタル図鑑の時代もやって来るのだろう。
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20140331/1056286/?n_cid=nbptrn_top_new

◎ジャパンナレッジでアクセス障害が発生。
「現在サービスは回復いたしましたが、システム不具合の根本的な原因究明に至っておりません」
http://japanknowledge.com/personal/

◎4月23日、第3回「マンガ・アニメ等活用商品化セミナー」が京都クロスメディア・クリエイティブセンターで開催される。説明事業者の白糸酒造は「進撃の巨人」の「ちりめん餅」を発売しているというが、こうしたコラボは今回が初めてではない。これまでにも「伏 鉄砲娘の捕物帳」、「宇宙戦艦ヤマト2199」、「装甲騎兵ボトムズ」、「勇者王ガオガイガー」とのコラボを実現している。
http://yukan-news.ameba.jp/20140413-71/
マンガもそうだが、雑誌は「全国」で売られているということを踏まえるのであれば、全国進出を狙う地方企業の手助けを雑誌は担えるのではないか。雑誌はもっともっと「地方」を発掘する必要がありそうだ。雑誌は「地方」にとって「全国」の窓口たり得るコミュニケーション・メディアである。

◎ga designは広告制作会社といって良いだろう。ホームページを制作したり、SPツールを制作してきた会社である。
http://ga-design.jp/office.html
この会社が電子書籍ビジネスに乗り出した。運営するブランド名は「ga books」という。第一弾として配信されたのは大手出版社の文学賞で上位にノミネートされたという「虚構のER」。現役医師による医療ミステリーだそうだ。
http://www.ga-books.com/works/2014040001.html
売れるかどうかは別にすれば、電子書籍出版社は誰にでも立ち上げられるのかもしれない。

有斐閣は、判例百選シリーズ等について、EPUB(リフロー)版の電子書籍の配信を開始。既に配信を開始しているPDF(固定レイアウト)版電子書籍とは一部異なるラインナップだそうだ。
http://www.dreamnews.jp/press/0000091501/

朝日新聞出版の隔月刊のマンガ誌「Nemuki+」が創刊1周年を迎えた。6月13日発売の7月号から槇えびし「朱黒の仁」、櫛木理宇原作による箸井地図ホーンテッド・キャンパス」、仁木英之原作による大西実生子「僕僕先生」、秦建日子原作による瓦屋根「殺人初心者 民間科学捜査員・桐野真衣」という4本の新連載がスタートするというが、大朝日が版元であるだけにマンガ家は不自由を強いられるだけに、そうは簡単にコミック事業は定着しまい。
http://natalie.mu/comic/news/114349
それこそ紙ではなくKADOKAWAのように無料のコミックサイトを立ち上げれば良かったのではないか。

◎「背信の科学者たちー論文捏造、データ改ざんはなぜ繰り返されるのか」は小保方騒動を題材にしているわけではない。講談社ブルーバックスから刊行されて絶版になっているという一冊だけれど、勿体ない。こういうの機会損失というんだよね。
http://honz.jp/articles/-/40354

◎ 「アエラ」に少年アヤの「尼のような子」が大きく紹介されたと喜ぶ祥伝社文庫編集部ブログ。
http://bunkoblog.shodensha.co.jp/article/394575706.html

◎宝島社の女性誌「リンネル」とアパレルブランド「ビームス ボーイ」が、ビームス二子玉川、広島、台北(!)3店舗にてポップアップショップをオープン。
http://www.fashion-headline.com/article/2014/04/14/5882.html

博報堂DYホールディングスのグループ横断型組織「博報堂DYグループ・スマートデバイス・ビジネスセンター」の「全国スマートフォンユーザー1000人定期調査」によれば、スマホ保有率は58.1%。スマホを使ったオンライン動画の視聴経験者は10代、20代では9割を超えた。
http://www.hakuhodo.co.jp/uploads/2012/06/201205241.pdf

◎AVデビューを果たした井上英李は有名ファッション誌の読モ出身だそうだ。
http://javfree.me/52845/upsm-259

◎あらゆる領域で「『介して伝える』から『直接伝える』へのシフトチェンジ」が起こりつつあるのだ。しかし、「直接伝える」内容が「ほんとうのこと」であるとは限らない。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38929

大日本印刷が600人のデモ隊に包囲されていた。原因はDNPファイン争議。一昨年、昨年につづくデモであった。裁判が始まってから5年が経過しているという。レイバーネットによればDNPファイン争議とは、こういうことらしい。
DNPファインはDNPの100%子会社。争議のきっかけは、同社の工場で二重偽装請負で働かされていた橋場恒幸さん(50歳)がクビ切りされたことだった。橋場さんの実質上の雇用主はDNPファインだったが、書類上の「名ばかり雇用主」は日本ユニ・デバイス。ユニとファインのあいだにDNPミクロテクニカという会社が入り、DNPファインが払っていた2100円の時給を二重にピンハネ。橋場さんは1060円しか受け取っていなかった」
http://www.labornetjp.org/news/2014/0414kita

◎こういうの甘ったれの戯言というんだよ。訳知り顔で「出版社」を語るな!と言いたくなる。自らが前線で戦うことを放棄し、出版社に総ての責任をなすりつけたところで何の解決にもならないのである。
http://www.huffingtonpost.jp/hogan-kishida/publisher_b_5145354.html

3)【深夜の誌人語録】

私は偽善を選択する悪人であるよりも、偽悪を選択する善人でありたい。