【文徒】2014年(平成26)9月3日(第2巻167号・通巻369号)

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1)【記事】クックパドの「プロのレシピ」と雑誌ビジネス
2)【記事】マガジンハウスが挑戦するキャラクタービジネス
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】クックパドの「プロのレシピ」と雑誌ビジネス

月間利用者数が延べ4400万人を超えるクックパドが始めた課金サービス「プロのレシピ」に出版社13社がレシピを提供することになったが、主婦の友社は「主婦の友キッチン」から料理レシピを提供することになる。
主婦の友キッチン」は4月1日から始めたレンタルレシピサービスであり、料理のプロによるレシピを生活者のシーンに合わせ「料理家別レシピ」「用途別レシピ」としてパッケージ化、ターゲットに訴求力の高い5万点以上のレシピをウエブ媒体や印刷媒体に提供するサービスだ。この8月26日には「主婦の友キッチンレーベル」から「ラクうま!ボリュームおかず90品」も刊行している。
http://www.shufunotomo.co.jp/recipe_service/
http://www.shufunotomo.co.jp/kitchen/
今回、主婦の友社がクックパドに提供するのは約700レシピということだ。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000325.000002372.html
クックパドが出版社の持つレシピを販売するプラットフォームの役割を果たすということでもある。クックパド側の狙いは、どこにあるのだろうか。「TechCrunch」はクックパドの加藤恭輔執行役員に対するインタビューを踏まえて次のように書いている。
「料理の腕が上達した利用者にとっては、クックパッドの必要性が低くなる課題もあったと指摘する。プロのレシピは、クックパッドを卒業した料理上級者に向けて、彼や彼女らが挑戦したくなるレシピを提供する側面もあるのかもしれない」
「プロのレシピ」によって収入源を増やしたいのだろう。
http://jp.techcrunch.com/2014/09/01/jp20140901cookpad/
加藤はなかなか優秀な人物であるようだ。「CNET Japan」の藤井涼の記事によれば加藤は次のようにも発言している。
「紙からウェブへ移ること自体が正解とは思わない。紙でのシズル感や思わず店頭で買ってしまう感覚は、少なくともここ数年はウェブでは勝てない。その思わず買ってしまったレシピを、(プロのレシピを通じて)シームレスにウェブにストックして日常使いできるようになる。また横断検索も提供することで、自分にあった雑誌がカジュアルに分かる」
http://japan.cnet.com/news/service/35053070/
もちろん、私も紙が消滅するとは全く考えていない。ただし、だ。紙の出版物で言うのであれば、レシピのムックや書籍はビジネスとして成立するのだろうが、レシピを中心とした情報を総花的に提供する雑誌のビジネスは難しくなるだろうと予測している。ちなみにオレンジページも「プロのレシピ」に参加するが、10月以降の参加となり5000〜10000点のレシピを一気に提供するそうだ。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000008700.html
オレンジページ」の競合誌たる「レタスクラブ」は開始と同時に提供している。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000907.000007006.html
どの出版社のレシピが強いか、これはこれで見物ではある。書店も売り場を作るに当たって大いに参考になるはずである。

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2)【記事】マガジンハウスが挑戦するキャラクタービジネス

映画プロデューサーとして「おおかみこどもの雨と雪」「電車男」「告白」「悪人」といったヒット作を製作した川村元気と、「LISMO!」「ニャンまげ」など、数多くの人気キャラクターを手がけ、毎日デザイン大賞など国内外の賞を受賞している佐野研二郎の共著「ティニー ふうせんいぬのものがたり」(マガジンハウス)を原作としたアニメ「ふうせんいぬティニー」が9月26日よりNHK Eテレにて放送される。
http://www.atpress.ne.jp/view/50165
実は原作の版元であるマガジンハウスにとって、本格的なキャラクタービジネスへの挑戦は「ティニー」が初めてのこととなる。既に関連商品に関しては、相当動きがあるようだが、「ティニー」のキャラクタービジネスはマガジンハウスの創立70周年記念事業のひとつとして位置づけられているという。担当は「ブルータス」編集長出身の石渡健史執行役員である。
マガジンハウスの擁する全雑誌の表紙に「ティニー」のキャラクターが登場し、「ブルータス」あたりで「ティニー」を特集した一冊が刊行されるというくらいの全社をあげての取り組みができるかどうかがマガジンハウスの経営陣には問われているのではないか。そのくらいの取り組みがあって、初めて世の中は動くのである。「紅旗征戎わが事にあらず」(藤原定家)は、もはや通用しない時代である。

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3)【本日の一行情報】

エムティーアイが運営する音楽配信サイト「music.jp」は、従来の楽曲配信に加え、電子書籍の配信を開始し、音楽から電子書籍までが揃う総合ストアとなった。電子書籍書店が音楽の配信も行うという逆の動きも出て来るのかもしれない。
http://www.mti.co.jp/wp-content/uploads/pdf/pr/2014/pr_20140901.pdf

ジュンク堂書店池袋本店に柴田元幸書店がオープンした。約半年間にわたって開催される。
http://www.junkudo.co.jp/mj/store/event_detail.php?fair_id=6640

◎eBookJapanは今年も「編集長、オススメの漫画を教えてください2014」を公開した。
http://www.ebookjapan.jp/ebj/special/editors_recommend_2014.asp
私のオススメは、かわぐちかいじの「血染めの紋章」である。
http://www.ebookjapan.jp/ebj/book/60265397.html
しかし、石井隆電子書籍で読めないのは淋しいよね。

中日新聞の沢木範久編集局長が「風紋」で慰安婦報道を取り上げている。
「確かに、朝日の姿勢には首をかしげる。過去の記事を誤りと認めて取り消すのなら、謝罪すべきではないか。それ抜きに『慰安婦問題の本質 直視を』と訴えても、共感の広がりには限度があるだろう」
沢木は「激烈な」朝日批判を繰り広げている新聞に対しても苦言を呈しているが、朝日が謝罪しなかったことによって「過熱」が生じたと私などは思っている。
http://www.chunichi.co.jp/hokuriku/article/column/fumon/CK2014090102000182.html

オーランド・ブルームって創価学会インターナショナルなんだ!
http://www.cyzowoman.com/2014/08/post_13380.html

紡木たく集英社から刊行している同名コミックを映画化した「ホットロード」が大ヒットした!
http://ticket-news.pia.jp/pia/news.do?newsCd=201409010005
80年代ブームが本格的に起きそうだ。

主婦と生活社の「週刊女性」がソーシャルメディアプラットフォーム「note」で記事のバラ売りを始めた。「週刊女性」に掲載された「ジャニーズ」関係の記事をまとめた「週刊女性『J』アーカイブス」が月額300円、「週刊女性『人間ドキュメント』アーカイブス」が月額200円、木村藤子の「幸せの詩が聞こえる」が月額100円だ。
http://www.pieceofcake.co.jp/1198/note_shukanjosei

◎「instagram」が女性ファッション誌にとって競合相手のひとつであることは間違いあるまい。
http://matome.naver.jp/odai/2140940242855947101
雑誌がなくなることはないにしても、雑誌の数は減っていくことに間違いあるまい。

◎gloops(グループス)は、「Mobage(モバゲー)」で提供しているソーシャルゲーム「大戦乱!!三国志バトル」において、講談社のマンガ誌「イブニング」の各作家陣による描き下ろしキャラクターカード第1弾の配信を開始した。
http://gloops.com/news/2014/09/p20140901001.html/
グループスは広告代理店として歴史を歩み始めた企業でもある。

集英社は同社の電子マンガの1巻が無料で読めるキャンペーン「秋マン!!2014」を実施している。
http://www.akiman.jp/

◎「週刊ポスト」9月12日号によれば女性の上司や先輩からセクハラやパワハラを受けたことのある男性は25.5%にも及ぶという調査結果があるそうだ。
http://www.news-postseven.com/archives/20140901_274039.html
そう言えば、女性週刊誌で部下の男性を延々と立たせておいたパワハラが原因で異動となった女性編集長もいたよなあ。「女性セブン」ではありません、念のため!ということは…。

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4)【深夜の誌人語録】

先回りできないのは、怠惰である証明にほかならない。先手は大手であることを忘れてはなるまい。