【文徒】2014年(平成26)9月2日(第2巻166号・通巻368号)

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1)【記事】集英社第73期(2013年6月1日〜2014年5月31日)決算
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2014.9.2 Shuppanjin

1)【記事】集英社第73期(2013年6月1日〜2014年5月31日)決算

集英社は第73期(2013年6月1日〜2014年5月31日)決算を発表した。
売上高は1232億8300万円、前期比98.4%、これは、やはり立派な数字と言えるだろう。もちろん、前年比の推移を見ていると99.7%→95.9%→96.9%→97.9%→98.9%→95.6%→99.4%と来て、今回となる。つまり8期連続で前年を割っているのだ。第66期の売上高は1389億7800万円だから、第66期比でいえば89%ということになるだろう。
それでも他の出版社に比べて集英社が何とか売上減を最小限度にとどめているのは「週刊少年ジャンプ」から生まれるコミックスが圧倒的に強いからである。
細かく見ていくと、そのことがより浮き彫りになる。雑誌売上は748.27億円、前年比96.6%。その内訳は雑誌が368.86億円、コミックスが379.41億円。雑誌の売上をコミックスが上回っているのだ。
書籍売上は164.41億円、前年比96.0%。集英社からすれば書籍で何とか200億円を達成したいところだろう。ビジネス書やライトノベル、児童書など、まだまだ強化できるはずである。
広告売上は110.21億円、前期比96.2%は大健闘と言っても良いのではないか。一方、その他の売上が遂に200億円を突破した。209.94億円、前期比108.7%。集英社において、「その他」が強いのも、「ジャンプ」ブランドのお陰と言うべきかもしれない。
税引き前当期純利益が71.52億円、前期比122.7%。当期純利益は37.56億円、前期比118.0%。微減収増益の決算である。

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2)【本日の一行情報】

◎部数からすれば日本を代表する小説家となった百田尚樹ツイッター朝日新聞社木村伊量社長を評価している。
朝日新聞の木村社長に対する風当たりが強いが、今回の『吉田証言の訂正記事』プロジェクトを作ったのは木村社長だと言われている。彼は朝日新聞の歴代社長が誰もやらなかった火中の栗を拾った。彼がいたからこそ、朝日新聞は訂正記事を出した。木村社長の決断は何年後かに評価されるだろう」
「たしかに今回の朝日新聞の『吉田証言の訂正記事』は実に中途半端で見苦しいものだった。しかし真に責められるべきは、木村社長ではなく、当時、吉田証言の記事を書いた記者であり、それを取り上げたデスクと論説委員である。そして長年にわたり、知らん顔をし続けた歴代社長である」
http://gogotorimaru.blog19.fc2.com/blog-entry-9325.html

◎前川恵司の「朝日新聞元ソウル特派員が見た『慰安婦虚報』の真実」が小学館から刊行された。こういうタイムリーな企画を可能にしているのは「週刊ポスト」「サピオ」の存在である。
http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784093897518

◎柴田鉄治も元朝日新聞記者だが、こちらは従軍慰安婦検証記事について朝日新聞の誠意が裏目に出たと考えているようだ。
http://www.magazine9.jp/article/shibata/14283/

朝日新聞社も黙ってはいなかった。「週刊文春」と「週刊新潮」の特集記事に朝日新聞社の名誉と信用を傷つける内容があったとして抗議するとともに訂正と謝罪を求めた。
http://www.asahi.com/articles/ASG8X66F7G8XULZU014.html
相変わらず元朝日新聞記者の植村隆は沈黙をつづけているが、植村の文章を読んでみたいものである。

朝日新聞はこんなに嫌われている。
http://gogotorimaru.blog19.fc2.com/blog-entry-9333.html
朝日は民衆のルサンチマンを甘く見過ぎているのかもしれない(私でさえいい気味だと思ってしまう)。そのくらい民衆には朝日新聞が偉く見えてしまうのである。産経のみならず読売新聞も総力を挙げて朝日新聞を批判している。
http://www.yomiuri.co.jp/feature/ianfu/20140828-OYT8T50022.html
http://www.yomiuri.co.jp/feature/ianfu/20140829-OYT8T50015.html
http://www.yomiuri.co.jp/feature/ianfu/20140830-OYT8T50004.html
http://www.yomiuri.co.jp/feature/ianfu/20140831-OYT8T50000.html
読売は朝日の福島第一原発の所長・吉田調書のスクープ報道も批判。吉田調書に関しては読売の指摘が一番的確かもしれない。
http://www.yomiuri.co.jp/science/20140830-OYT1T50006.html
読売新聞は「勧誘チラシ」でも、「朝日『慰安婦報道特集」を利用しているようだ。
http://newsoku318.blog134.fc2.com/blog-entry-3205.html

ジュンク堂書店仙台ロフト店が8月31日に閉店した。売り場面積1590平方メートル、書籍数28万冊の書店が消えた。たった11年弱で閉店するのであれば、ハナから出店すべきではなかったはずだ。ジュンク堂書店仙台ロフト店がどんなに素晴らしい書店であったとしても、他の書店を閉店に追い込んだのではなかったのか。無責任な出店の結末は無責任な閉店となり、今後、無責任な閉店が全国的に拡大することになるのだろう。「ぼくが真実を口にすると全世界を凍らせる」(吉本隆明)にしても、「真実」を口にすることは大切である。
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201408/20140827_15032.html

小学館の「妖怪ウォッチ2 元祖/本家オフィシャル攻略ガイド」が週間37.5万部を売り上げた。「1」は累積58.9万部だが、これを上回るだろうな。
http://www.oricon.co.jp/news/2041434/full/

講談社の女性ファッション誌「with」10月号は付録あり版690円と付録なし版550円が揃う。付録は二つ。ひとつは人気ブランド「フォリフォリ」と佐々木希のコラボで作ったレザー風ピンクトート、もうひとつは表紙に登場した東方神起の特製ポラカード。
http://navicon.jp/news/25194/

◎「V0GUE JAPAN」10月号の付録はハローキティがグッチのコレクションを身にまとうスペシャルチャーム。
http://www.vogue.co.jp/fashion/news/2014-08/28/special-gift-for-you
文春文庫もハローキティとコラボする。ともに40周年なのだそうだ。10月の
新刊帯についた応募券2枚をハガキに貼り応募すると、オリジナルグッズが当たる。
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2014090100021

新潮文庫が創刊100周年!これを記念して創刊当時の新潮文庫を完全復刻する。お値段は15120円。オレは買わない。
http://www.shincho-shop.jp/shincho/goods/index.html?ggcd=snc00698

◎KKベストセラーズが「メンズジョーカー」の卒業生をターゲットに「メンズジョーカーリラグジー」を刊行。ゆくゆくは月刊化を狙う。
http://www.wwdjapan.com/focus/interview/trend/2014-08-26/1082

名誉毀損では負けることが多い週刊誌だが、「週刊現代」が最高裁で勝利した。島田紳助吉本興業の上告を退けた。
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2014/08/28/kiji/K20140828008824300.html

◎学研ステイフルは「スマホde顕微鏡」を発売。「科学」の付録で売ってきた学研らしい企画だ。何の役にも立たないことは分かっていても欲しくなるんですよね、こういうのって。2700円。
http://www.rbbtoday.com/article/2014/08/27/122792.html

安倍晋三首相からメッセージの届く首相官邸の「LINE」友だちは320万人!安倍の周囲にはソーシャルメディアの達人がいるようだ。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1408/25/news028.html

◎ファッション通販サイト「MAGASEEK」は、「Oggi」の三尋木奈保により厳選された別注カラーで生産した「GIANNI NOTARO-CAROL J.(ジャンニ ノタロ キャロル ジェイ)」のボストンバッグを限定販売している。
http://japan.cnet.com/release/30079204/
三尋木は大活躍である。オンワードの「UNTITLED」とコラボアイテム「洗練美フォルムのワンピース」も手がけた。
http://www.world.co.jp/untitled/news/brand/8839/
編集者の役割が誌面の外側に拡張されてきている。

◎光文社のファッション誌「JJ」10月号の特集は「25歳の秋、『いい女ベーシック』宣言」。読者年齢を上げようとしている。
http://mdpr.jp/review/detail/1410087
女子大生が「JJ」を読む時代に終止符が打たれたということだろう。私は「JJ」を読んでいる女子大生に心底憧れていたが、私にとっては雲の上の存在であった。知り合う女子大生は何故か「アンアン」派だったんだよなあ。
http://mery.jp/44780

◎「WWD JAPAN COM.」が電通MCプランニング局総合プロデュース推進部の前田敦子部長と博報堂DYメディアパートナーズ出版ビジネスセンター雑誌局業務推進部の近藤秀之部長にインタビューをしている。
前田部長の発言で重要なのは、次のような箇所である。
「相手は、これまでファッション雑誌に出稿したことがない企業がほとんど。編集長の顔も名前も知らないことが多い。『ヴェリィ』の事例では、今尾編集長のプロモーションビデオを社内で制作。彼女の過去の実績と抜群の読者インサイト力を伝えるプレゼンテーションに生かしている」
http://www.wwdjapan.com/focus/column/trend/2014-08-27/868
近藤部長の発言ではこんなところだ。
「クライアント自身のメディア化が進行していて、広告主自身が直接ターゲットと広く深くつながることがコミュニケ―ション設計の中心になっている。またスマートデバイスの伸張によって店舗とECがシームレスになっており、オムニチャネル化が進行している点も見逃せない」
http://www.wwdjapan.com/focus/column/trend/2014-08-28/874

◎「ONE PIECE(ワンピース)」(集英社)の広告紙面を集めた「ニッポン縦断! OPJ47クルーズ新聞展」(福井新聞社主催)が福井新聞社新聞おもしろ館で開催中。
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/event_calture/53648.html

トーハンは100万以上の絵本パンフレット「ミリオンぶっく」2014年版を発行。今回、ミリオンの仲間入りを果たしたのは谷川俊太郎の「もこもこもこ」だ。トーハンはまた新たな企画として、白泉社の絵本雑誌「MOE」とのタイアップ企画を実現する。毎月の記事と連動したフェア企画を組み、希望する書店にパッケージ送品するというものだ。
http://www.tohan.jp/whatsnew/news/1002014/
こういう企画は評価したい。

◎情報センター出版局は、全国のファミリーマートとローソンに設置されているマルチコピー機で、「旅の指さし会話調」シリーズをカラープリントができる新サービス「指さしPrint STYLE」を開始した。
http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=63115

小学館は「フラワーコミックス」40周年を記念し、埼玉県越谷市の「イオンレイクタウンkaze」において、萩尾望都田村由美水城せとななどが参加するトークショー&サイン会&複製原画展を9月20日〜23日まで開催する。
http://flowers.shogakukan.co.jp/news/news_20140828.html

◎ブックビヨンドは、電子書籍配信ストア「Google Play(TM)ブックス」で、学研グループの電子書籍のうち約1700点の配信を開始した。年内には2000タイトルを超すそうだ。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000064.000009949.html

学研ホールディングスは学習塾大手の栄光ホールディングスの3.9%の株式を取得し、資本業務提携を結んだ。
http://www.marketnewsline.com/news/201408291716000000.html

◎ファッション誌「GINGER」(幻冬舎)は、ファッションアプリ「iQON」とコラボレーションして、同誌でも人気のブランドが購入出来るオンライン・ショッピングモール「USAGI ONLINE」とともに“USAGI ONLINEの秋冬アイテム”をメインアイテムとするコーディネートコンテストを実施。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000075.000007254.html

◎BookLiveの「電子書籍の利用に関する意識調査」によれば、紙の本と電子書籍を合わせた月間の平均読書量は2.21冊。全体の6割以上が電子書店を「知っている」そうだ。
http://booklive.co.jp/release/2014/08/281100.html

◎新潮社も色々なことを考えるよなあ。新潮社で自費出版をすると「山の上ホテル」執筆プランを利用できる。
http://www.shinchosha.co.jp/tosho/yamanoue_hotel.html

◎ebookjapanが東京創元社創立60周年を記念して「愛されすぎる東京創元社フェア」を開催。マンガ家が描く東京創元社の名作は面白そうだ。
http://www.ebookjapan.jp/ebj/special/t-sogen_cp.asp

◎テレビドラマ「昼顔」名台詞集。
「臆病な男はいるけど、真面目な男なんていないわよ」
http://mery.jp/44581

◎写真集「書店男子〜メガネ編〜」がリブレ出版から刊行された。協力書店はアニメイトヴィレッジヴァンガード紀伊國屋書店三省堂書店、書泉、文教堂芳林堂書店宮脇書店
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1408/29/news093.html

◎「主婦の友社の電子絵本シリーズ」が配信を開始した。第一弾は8冊。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000324.000002372.html

◎書店に岩波新書が置いてなくとも少しも不思議ではない。「アベノミクスの終焉」なる岩波新書の一冊の内容がどんなに素晴らしくとも、買い切り条件で、しかも低マージンと来ては岩波新書に商品としての魅力はないのが普通の商売人の感性である。この普通の感性を戦後70年にわたって理解しようとしない岩波書店のビジネス感覚は歪んでいるとしか私には思えない。
http://yukan-news.ameba.jp/20140828-15834/

◎宝島社の「SPRiNG」と「CUTiE」が付録と訣別。休刊へのカウントダウンが始まったのではないだろうか。
http://mdpr.jp/review/detail/1410703

公正取引委員会は日本出版者協議会に対して電子書籍は非再販であると口頭で回答したそうだ。
http://shuppankyo.cocolog-nifty.com/blog/2014/08/post-ed1c.html

◎「honto」を運営する大日本印刷DNPグループの書店およびトゥ・ディファクトは共同で、講談社日本推理作家協会の協力のもと、江戸川乱歩賞60周年を記念したコラボ企画「江戸川乱歩賞60周年記念 hontoコラボカフェ」を9月19日まで、ドットDNP「hontoカフェ」で開催している。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000009424.html

◎ユーザベースは、伊藤忠テクノロジーベンチャーズをリードインベスターとして、第三者割当増資により総額4.7億円を調達。講談社も出資した。
http://www.uzabase.com/press/pressfinance20140901/

大島優子の写真集「脱ぎやがれ」(幻冬舎)は「手ブラ表紙」効果で売れるんだろうね。
http://woman.infoseek.co.jp/news/entertainment/japantechinsight_94800

小学館の「@DIME」は、パナソニックの炊飯器「Wおどり炊き」とのコラボ企画による、北海道での稲刈り体験ツアーに参加できるレポーター親子5組10名を募集している。
http://dime.jp/genre/155203/

◎「WWD JAPAN COM.」が意欲的なインタビューを繰り広げている。これは「メンズクラブ」(ハースト婦人画報社)の戸賀敬城編集長の発言だ。
「昨年開催した某ラグジュアリーブランドのショップイベントでは、1時間半という短い時間ながら記録的な売り上げを達成しました。ラグジュアリーの部門でもリアリティのある発信を続けてきたことで、読者の購買につながったのだと思います。イベントは、顧客に対してのロイヤリティだけでなく雑誌のマネタイズにも貢献しています。広告収入は、毎年前年比120%をキープできています」
http://www.wwdjapan.com/focus/interview/trend/2014-08-30/1243
編集長は黒子ではなく人寄せパンダにならなければならないのである。

◎これは元フジテレビアナウンサーの長谷川豊だけど、その通りだよね。
「メディアって全部同じですよ?メディアってのは人間が作ってるんです。聖人君子が作ってるんじゃないんです。そもそも『一歩引いて参考意見として』接する媒体のことを『メディア』と言うのです。日本人の多くが勘違いしてるんですけど、『正しいことを伝える媒体』なんてものはどこにも存在しません」
http://blogos.com/article/93498/

◎クックパドが出版社13社と提携し、月額360円で見放題になる「プロのレシピ」サービスを開始した。提携したのはNHKエデュケーショナルオレンジページ、KADOKAWA、柴田書店集英社、_主婦と生活社主婦の友社、新星出版社、セブン&アイ出版、宝島社、辰巳出版日東書院本社、扶桑社。料理研究家も提携している。大原千鶴、大森麻里、きじまりゅうた、栗原心平、ケンタロウ、小崎陽一浜内千波平尾由希、本田よう一、松見早枝子、マロンという面々である。
https://info.cookpad.com/press/2014/0901/1

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3)【深夜の誌人語録】

その気になれば一人でも相当のことができる。群れて傷を舐め合う必要はないのである。